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第114回 新型フェアレディZ
2022. 1.27

 例年なら、1月は「東京オートサロン」を紹介するのであるが、感染力の強いオミクロン株に恐れをなし、行けなかった。しかし、今年のサロン会場で日産自動車が、新型フェアレディZの日本市場向けモデルを公開したので、これを取り上げることにした。6代目Z34型が2009年に登場してから実に12年ぶりの7代目(車種記号は6代目と同じZ34)の登場である。

2020年9月16日、ニッサンパビリオンで発表されたフェアレディZプロトタイプ。 後方には初代(S30)から6代目(Z34)フェアレディZが並ぶ。

◆ 2022年1月14日、東京オートサロンで公開された新型フェアレディZ

 日産自動車の内田誠社長兼CEOが寄り添う黄色いクルマは、今年6月下旬ごろに発売される240台限定の「Proto Spec」で、2020年9月に公開されたプロトタイプから着想を得た特別仕様車である。イカズチイエローとスーパーブラックの 2 トーンのボディカラーのエクステリアには、専用カラーのレイズ(Rays)製19インチアルミ鍛造ホイール(チタニウムゴールド)や、4 輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ(イエロー)などを装備する。インテリアには、本革・スエード調ファブリックコンビシート(イエローセンターストライプ、イエローステッチ、イエローアクセントライン)などを採用すると共に、インストパネル、ドアトリムクロス、MTシフトノブブーツ、ニーパッドなどに専用カラーステッチを施している。VR30DDTT型3.0L V-6 ツインターボ298kW(405PS)/6400rpm、475N・m(48.4kgf-m)/1600-5600rpmエンジン+6速MTまたはマニュアルモード付フルレンジ電子制御9速AT(9M-ATx)を積む。サイズは全長4380mm、全幅1845mm、全高1315mm、ホイールベース2550mm。価格(消費税込み)は696.63万円。

「Proto Spec」はオンラインでの注文となり、フェアレディZメルマガ会員登録が必要で、240 台を超える応 募があった場合は抽選となる。応募開始は2月7日(月)の予定。

サロン会場で配布された冊子の1ページ。ただし、載っているのは北米仕様。冊子は三樹書房の梶川さんがリスクを冒して集めてくださったもの。

上の3点は、会場に参考出品された「FAIRLADY Z CUSTOMIZED PROTO」。新型フェアレディZをベースにしたカスタマイズプロトモデル。最下段は会場で配布された冊子から。

これは会場に登場した、2022年のSUPER GTに参戦する新型「NISSAN Z GT500」。

◆ 初代(S30)のカタログ

 新型フェアレディZは、歴代の「Z」へのオマージュを感じさせるデザインをまといながら、内外装に先進的な最新のテクノロジーを感じさせるクルマに仕上げたと言われている。

 初代S30型のシルエットやフロント&リアのアイコニックなモチーフを引き継いだ魅力的なデザイン。フードのバルジ形状やLEDヘッドランプのティアドロップ形状は、S30型のデザインを彷彿とさせる。また、四角いジオメトリックなグリル開口も歴代Zの持つアイコンを継承しており、サイドシルエットは、長いノーズから続くルーフラインの先に垂直に切り立つテールエンドと、フロントフェンダーよりもわずかに低く、なだらかに傾斜するリアのデザインによって、S30型がもつ特徴的なサイドシルエットを表現している。リアのデザインは、S30やZ32などいくつかの歴代Zが持つテールランプからインスピレーションを得たデザインテーマを現代風にアレンジし、より魅力的でZ特有のデザインに仕上げている。

 そこで、参考までに1969年11月に発売された初代フェアレディZ(S30)のカタログを紹介する。

標準的なモデルのフェアレディZ。L20型1998cc直列6気筒SOHC 130ps/6000rpm、17.5kg-m/4400rpmエンジン+4速MTを積む。価格は93万円。ホイールカバーはオプションであった。

上の2点はフェアレディZ 432。4バルブ、3キャブレター、2カムシャフトを意味する「432」のネーミングどおりのホットなモデルで、初代および2代目スカイラインGT-Rと同じ、S20型1989cc直列6気筒DOHC 160ps/7000rpm、18.0kg-m/5600rpmエンジン+5速MTを積み、0-400m加速15.8秒、最高速度210km/hの俊足であった。価格はマグネシウムホイール付きが185万円、スチールホイール付きが160万円で、標準モデルの2倍の価格であった。

フェアレディZ 432-R。コピーは「必ず勝つ性能を秘めたレーシングバージョン。無限のハイチューンの可能性を秘めたレース仕様車」とある。1969年11月、日産自動車発行のサービス週報(184号)にはZ432(PS30〈D〉)の詳細は記されているが、Z432-Rについては「ラリー、レース専用のPS30SB車が有りますが、特別扱いのため一切紹介していません。」と記されていた。

フェアレディZの運転席。

Z432の透視図と各部メカニズム。左上に描かれたS20型エンジンは、R380に搭載されたGR-8型とは全くの別物で、GR-8型、GR-7型等のレース用エンジンで得たノウハウを織り込んで、量産に適するよう新たに設計されたエンジンである。

上の3点は米国日産で発行されたDATSUN 240-Z(初代フェアレディZ)のカタログ。L24型2393cc直列6気筒SOHC 150hp/5600rpmエンジン+4速MTを積む。

1970年に日産自動車で発行された、米国を含む輸出用フェアレディZ「DATSUN 240-Z SPORTS」最初のカタログ。エンジンはL24型2393cc直列6気筒SOHC 151hp/5600rpm(SAE)、20.1kg-m/4400rpmで、米国、ハワイ、グアム、カナダ、プエリトリコには4速MT、ラジオ、時計、電熱線プリントリアガラスなどが標準設定され、その他の国向けには5速MTが積まれ、ATの設定は無かった。外観の特徴は前後バンパーにオーバーライダーが付き、前後フェンダーにサイドマーカーランプが付く。テールゲートには2つのエアアウトレットルーバーが付き、リアクオーターピラーには丸型のZではなく「240Z」のオーナメントが付いていた。米国での価格は3526ドル。ポルシェ914のベースモデルは3595ドルであった。

◆ 生産中止となった4代目フェアレディZ(Z32)

 フェアレディZは4代目の時、日産自動車の業績不振などを受け、2000年8月に生産終了となってしまった。米国では日本国内より早い1996年型を最後に販売終了している。1969年から2000年に生産中断するまでに、国内で約22万台、海外で約122万台販売しており、世界で最も多く販売されたスポーツカーであった。

米国日産で発行された1995年型(左)と1996年型(右)Nissan 300ZXのカタログ。31cm×24cm、28頁の立派なカタログだが、1995が1996に変更され、オプションの部分がわずかに変更されている以外まったく同じであった。何か違いは無いかとカタログを読み込んでいくと、米国日産の資金調達欄に、1995年型版には「日産(日産自動車)は毎年40億ドル近くを米国産の商品とサービスの購入に充てています」とあるが、1996年型版には「日産は毎年30億ドル近くを米国産の商品とサービスの購入に充てています」と、10億ドルも少なくなっており、カタログからも厳しさが読み取れた。Zカー中止のショックで、カタログを作る気力も失せたか、予算が取れなかったのであろう。

1996年型Nissan 300ZXのカタログから、新型フェアレディZのリアデザインは、このZ32にインスパイアーされているようだ。

◆ 2001年のデトロイト・ショー(NAIAS)に登場したNissan Z Concept

米国で1996年、国内で2000年に生産中止したフェアレディZであったが、世界中のスポーツカーファンから復活を熱望され、2001年1月、デトロイトで開催された北米国際自動車ショー(デトロイト・ショー)に登場したNissan Z Concept。

◆ フェアレディZの復活

上の4点は2002年7月に復活発売された5代目フェアレディZ(Z33)。VQ35DE型3498cc V型6気筒DOHC 206kW(280PS)/6200rpm、363N・m(37.0kgf-m)/4800rpmエンジン+6速MTまたはマニュアルモード付フルレンジ電子制御5速AT(5M-ATx)を積む。5代目(Z33)は2008年12月までの6年間に25万台以上を販売した。また、発売前にスポーツカーとしては異例の9500台の受注を獲得する人気で、ブランドイメージ回復に大きな役割を果たし、業績の「V字回復」の象徴的存在となった。

上の5点は2003年に米国日産で発行された2004年型Nissan Zのカタログ。エンジン、トランスミッションは国内仕様と同じ。国内ではロードスターは2003年10月に追加発売されたが、米国では7月に先行して発売されていた。

 米国ではZの旧車人気も高く、昨年9月に米国の人気サイト「Ranker(ランカー)」が視聴者の投票によって、日本製クラシックカー(旧車)の人気車種ベスト20を発表したが、1位が初代スカイラインGT-Rで、2位がダットサン280Z(2代目、S130)、3位に初代ホンダNSXが入り、4位にニッサン300ZX(3代目、Z31)が選ばれていた。

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執筆者プロフィール

1937年(昭和12年)東京生まれ。1956年に富士精密機械工業入社、開発業務に従事。1967年、合併した日産自動車の実験部に移籍。1970年にATテストでデトロイト~西海岸をクルマで1往復約1万キロを走破し、往路はシカゴ~サンタモニカまで当時は現役だった「ルート66」3800㎞を走破。1972年に海外サービス部に移り、海外代理店のマネージメント指導やノックダウン車両のチューニングに携わる。1986年~97年の間、カルソニック(現カルソニック・カンセイ)の海外事業部に移籍、うち3年間シンガポールに駐在。現在はRJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)および米国SAH(The Society of Automotive Historians, Inc.)のメンバー。1954年から世界の自動車カタログの蒐集を始め、日本屈指のコレクターとして名を馳せる。著書に『プリンス 日本の自動車史に偉大な足跡を残したメーカー』『三菱自動車 航空技術者たちが基礎を築いたメーカー』『ロータリーエンジン車 マツダを中心としたロータリーエンジン搭載モデルの系譜』(いずれも三樹書房)。そのほか、「モーターファン別冊すべてシリーズ」(三栄書房)などに多数寄稿。

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