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2012年7月11日

スバルBRZの開発について、その狙いなどを主査にお聞きしました

2012年6月28日に富士山の裾野でスバルBRZの試乗会に参加してきました。その間、約30分という短い時間でしたが、幸いにもBRZ開発主査の、スバル商品企画本部主査 佐藤公彦氏と2人で対談する機会を得ることができました。「スポーツカーファン」の立場から、事前に用意していたいくつかの質問をし、その質問に答えていただいた佐藤氏からのコメントの要点をまとめてみました。

BRZ/ 86の開発の狙いは?
■このクルマは、”新しい次元の運転する楽しさ”が開発コンセプトです。
元々トヨタとスバルの共同開発には、お互いの得意分野を生かして1+1=3となるような相乗効果を狙いとしていました。やはり実際には、前例のない大きなチェレンジになりましたね。
ひとつは新開発の水平対向エンジンによるリッターあたり100馬力の達成と低重心化です。加えてオーバーハングの短縮や、ドライバーの着座位置などにも徹底的にこだわりました。
これはあくまでスバル調べですが、現在生産中のモデルではBRZ/86は世界最小のFR・2+2クーペになります。またボクサーエンジンのメリットを最大限生かして低重心を実現したわけですが、重心高が460mmという数値は非常に低く、スーパーカーなどと同等の数値になっています。この恩恵は大きく、このクルマの運動性能を高めることになりました。

このクルマの生い立ちは?
■スポーツカーを作りたい、という機運はもともとスバルの社内にもあったのですが、具体的に動き出したのは2007年頃からで、まず水平対向エンジンを搭載したFRスポーツをスバルサイドで手作りで作ったのです。そのクルマはトヨタサイドからもOKが出たので、”普段でも使えて、週末にはサンデーレースに使えるようなスポーツカー”というコンセプトがトヨタサイドで決定されて開発がスタートしました。この判断には豊田章男社長の影響が大きかったようです。そんな関係もあってエクステリアとインテリアデザインについてはトヨタが担当し、エンジンを含めたシャシー関係や生産に関してはスバルが担当、販売は両社ですることになったわけです。

走りの性能については?
■我々スバルが担当した、水平対向エンジンなどのパワートレイン関係は、トヨタサイドの意見を取り入れながら性能面や、走りを高めていきました。また、単なる速さだけでなく”走り感”にも注力しています。

“走り感”の充実とは?
■スポーツカーは、どのギアからもアクセルを踏んでから気持ちよくスピードが出るのは大切であると考えています。そのためにこのクルマは、2000rpmから3000rpmあたりのトルクを太くしています。これはあくまでも走行しているギアにもよりますが、60km/hから80km/h前後の速度領域は非常に楽しいです。また同時に”走り感”に欠かせないエンジンの音質もきちんとチューニングしていますから、ぜひ堪能していただきたいですね。

開発責任者が感じるトヨタ86とBRZの違いは?
■トヨタの開発陣とも様々な話し合いを行なって、多くの議論も重ねてきました。デザインに関するチーフはトヨタサイドですが、スバルが担当した走行性能に関しては、ドイツの著名なスポーツカーのレベルまで高めたと考えています。ただ、最終的にそれぞれのクルマをまとめる段階になって、トヨタはトヨタの考え方で、スバルはスバルの今までの伝統も考慮して少し異なる方向になりました。スバルサイドでは大人っぽさのある走り、と同時に”安定感”を求めました。専用のダンパーやサスペンションなどで、BRZの足回りをまとめているのはそのためです。

BRZの今後の展開について?
■市場の動向にも影響されますが、今後も進化をさせていきたいと考えていますので、みなさん期待していてください。

BRZのファンに向けてメッセージは?
■BRZ/ 86というクルマは、今までしばらくこのジャンルに該当するクルマは無かったので、久しぶりの登場でしょう。クルマは人や荷物も運ぶ道具です。ただ単なる道具だけでなく、運転を楽しむことも大切なことだと考えています。BRZ/ 86は、いろいろな意味でポテンシャルをもったクルマですから…。BRZはとにかく”新しい次元の運転する楽しさ”を徹底的に追求したクルマです。私が願うのは、このクルマで操る喜びを感じ取って欲しい、ということです。

対談が終わって
佐藤氏との対談が終わって感じたことは、やはり富士重工業のエンジニアはこうしたクルマが好きな人が多いから、ファンに支持されるクルマが開発できるのだ…ということでした。試乗を終えた私はいくつかのリクエストをしておきました。ひとつは価格の安いエントリーモデルを必ず残して欲しいこと、16インチで良いのでしなやかなグリップ力のあるタイヤの装着、スピードメーターを含めたインテリアを見直して欲しいことでした。インテリアは、このジャンルのクルマが評価される大きな要素だからです。ただ、早くもBRZ/ 86はイギリス最大の自動車技術専門誌グループであるUKIP Media & Eventsが主催する「ビークル ダイナミクス インターナショナル アワード(VDI アワード)」において「2012年カー オブ ザ イヤー」を受賞し、平成24年5月末時点でのBRZの受注台数は、5078台と計画台数を大きく上回っていることは、スポーツカーの分野が低迷している日本市場で大きな期待ができるといえるでしょう。
尚、BRZのインプレッションについては、小早川隆治氏の「車評オンライン」をご一読ください。 
                                              編集部

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