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2024年3月22日

2024年3月8日に、ホンダ・アコードの新型が発売されました。日本市場では約1年ぶりの復活になります。ここでは、11代目となる新型アコードの概要ならびに特徴と、歴代アコードの足跡について簡単に紹介します。(レポート:武田隆)

新型アコードの外観です。プラットフォームは先代からのものを進化させており、ホイールベースは変わらない2830mmで、ボディのシルエットも旧型のイメージを受け継いでいます。とはいえ各部は、後述するハイブリッドシステムなどを含め全体に進化をとげています。

ボディ外観は、全長が4975mmとなり、先代とくらべて75mm伸び、ファストバック的スタイルをよりスマートにしています。とくにデザインとしては、プレスラインが非常にシンプルになって、プレーンな印象のボディとなり、新しさを感じさせます。

内装も変わって、最新のトレンドに沿った水平基調のインストルメントパネルとなり、すっきりして、かつ広さを感じさせます。中央のディスプレイは12.3インチまで大型化して横長になりました。国内で販売しているホンダ車として初めてグーグルを搭載しています。またHonda SENSING(センシング)360が国内で初搭載され、センサーで車両の360度を検知します。

技術的に大きな注目点は、ハイブリッドシステムのe:HEVの改良です。従来は2つのモーターをエンジンと直列配置していましたが、斜め上下に並べる並列配置に変えました。これにより横方向のスペースに余裕ができ、モーター形状を最適化し、かつエンジン、モーターそれぞれの走行時に最適なギア比を設定できるようになりました。2リッターエンジンも従来からのアトキンソンサイクルに加えて直噴とし、性能を全面的に向上。電動の制御装置なども軽量化、高出力化を果たしています。価格は544万9400円(税込)となっています。

今回のアコードは11代目に相当。アコードは1976年にデビューした初代以来、50年近い歴史を重ねています。シビックよりやや大人しい印象もありますが、元来世界戦略車の役割をいちばんに果たしてきたのは実はアコードです。合理的なFFをいちはやく採用した上級のコンパクトカーとして、とくにアメリカで圧倒的な支持を得て、今ではスタンダードサイズのセダンへと成長しました。ここでは歴代アコードの足跡をふりかえります。

初代アコードが1976年に誕生したときは、ヨーロッパ的な香りのする3ドアハッチバックボディでした。1972年に登場した大衆車シビックの“兄貴分”という成り立ちですが、シビックと違い当初からアメリカへの輸出を明確に考えて開発されました。

2代目は1981年に登場。成功した初代のキープコンセプトの雰囲気で、サイズは少し大型化。エンジンは1.8リッターも追加されました。初代の途中から加わっていたセダンと、それにハッチバックの2種類のボディ構成です。4輪ABSや三次元リアダンパー、電子制御燃料噴射PGM-FIなど、当時の先進的技術の採用が目立ちました。1982年からはオハイオ工場で日本メーカー初となる米国現地生産が始まり、アメリカでの躍進が本格化します。

1985年登場の3代目は大きく変わり、リトラクタブルヘッドライト採用により、スポーティでノーズの低いボディとなりました。変形ダブルウィッシュボーンを前輪に採用し、FF車では世界初となる4輪ダブルウィッシュボーンとなっています。また、4ドアセダンの存在感がこの頃から目立ついっぽう、2ドアハッチバックは「エアロデッキ」と称する特徴的なロングルーフのスタイルとなりました。さらに1988年には、アメリカから逆輸入で左ハンドルの2ドアクーペを導入。エンジンは2リッターも追加、DOHCエンジンを採用していました。

4代目は1989年に導入されました。この時代、アメリカでは乗用車販売台数1位の座を、フォード・トーラス、トヨタ・カムリと三つどもえで争い、1989年からは3年連続で1位を獲得。さらに累計生産は1989年7月に500万台を達成しています。4代目は、上級車種として5気筒のインスパイア(およびその姉妹車ビガー)を追加しましたが、引き続きアコードは4気筒を搭載。ちなみにビガーは、2代目、3代目ではアコードの姉妹車として設定されていました。エンジンは2次バランサーを装備し、運転席エアバッグや4WSも採用されました。低くスレンダーなセダンボディは、“若あゆ”のようなフレッシュさが目をひきました。この4代目は3ドアハッチバックがなくなり、アメリカから、引き続きクーペに加え、5ドアワゴンが逆輸入されました。

1993年からの5代目は、4代目までの成功により“世界のスタンダードのクルマとして自信をつけていた”というべきか、ボディも立派になった印象です。初代以来しだいに大型化していましたが、全長4675mmとなり、もはや米国においても初代のようなコンパクトサイズではなくなりました。日本ではセダンが初めて3ナンバーとなっています。ボディなど安全性の追求が充実し、助手席エアバッグも装備。環境性能にも配慮しつつも、エンジンはVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)も搭載し排気量は2.2リッターに達しています。

6代目は1997年に導入。アメリカなど国外市場とは、仕様の異なるボディとなり、日本向けは先代よりもやや小型化して、セダンは再び5ナンバーサイズとなりました。全車VTECエンジンを搭載し、先代ではスポーツグレードのSiRが追加設定されていましたが、この6代目ではEuro(ユーロ)Rも設定。リアには5リンクダブルウィッシュボーンを採用しています。2001年には久しぶりに全米で乗用車販売台数1位を獲得しています。

2002年に導入された7代目は、大型で上級のインスパイアが北米ではアコードとして売られ、日本仕様はヨーロッパと共通ボディとなりました。北米仕様より小さいとはいえ、再び3ナンバーサイズになったウェッジシェイプなデザインのボディは、優れた空力性能を実現していました。スポーツ志向のEuro Rも引き続き設定され、走りの質も高めていました。さらに後のHonda SENSINGにつながる先進安全装備も採用され始めています。

2008年にモデルチェンジした8代目は、引き続き欧州と共通のボディで、欧州製プレミアムセダンと戦えるクルマを目指して開発。全長は4.7mの大台を初めて超え、ウェッジシェイプのスタイリングは精悍さが増した印象です。走りにこだわる欧州でも通用するようにその性能を追求、また先進安全装備もいっそう充実させています。エンジンは最大2.4リッターまで搭載しています。

9代目は2013年に登場。北米向けとボディが統一され、アメリカではやや小型化になりましたが、日本では全長が4.8mを超えてさらなる大型化となり、上級セダンらしい佇まいが印象的でした。とくに日本では全車がハイブリッドとプラグインハイブリッドになりました。当時はi-MMDと言っていましたが、後のe:HEVと基本的構成が同じ、2モーターのシリーズ式ハイブリッドであり、意欲的な電動化技術をアピールしました。

アメリカより遅れて2020年に日本に導入された10代目は、新世代プラットフォームを採用して、イメージを刷新するモデルチェンジとなりました。全長はついに4.9mまで大型化。低重心、低慣性をテーマに安定した走りを追求しています。低く流れるようなファストバック的スタイルとなり、流行するSUV(スポーツ ユーティリティ ビークル)にはない、セダンタイプ乗用車ならではの魅力を追求していました。

今回の11代目は、この10代目の路線を進化させたものと思われます。アコードの累計販売台数は今では2000万台を超え、世界的に支持されるモデルに成長しています。初代から続く“世界戦略車”である以上、日本の国情のみでサイズ等を決定できるものではないこともあってか、日本での台数はあまり多くないものの、世界標準でつくられたアッパークラスセダンの日本製モデルが導入されるのは、日本市場にとっても意義あることだと思います。

(レポート:武田 隆)

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