News

2024年2月15日

第3回 「車評オンライン Ver.Ⅱ」
※2021年度から休止した小早川隆治氏による「車評オンライン」を引き継ぎ、 “車評チーム”のメンバーによる試乗・評価に切り替えることになり、2022年より「車評オンライン Ver.Ⅱ」と名称を変更してスタートしました。

アバルト 500e Turismoカブリオレ 試乗レポート
2024年1月31日(水)大磯プリンスホテルを拠点として今年も輸入自動車試乗会が催された。同日に多数の輸入車が試乗できる非常に貴重な試乗会であり、今回も車評メンバー5名によって多くの試乗を実施したので、ここではそのうち2台の試乗レポートをお届けしたい。試乗は早朝8時から午後4時ごろまで行なわれ、試乗コースは小早川隆治さんが設定したコースで一般道路と高速道路も含まれており、各車同じコースを走ることで極力公平な評価を心がけて実施している。(レポート:車評チーム 小林謙一)

【概要】
今回試乗したアバルト 500e Turismoカブリオレは、ガソリンエンジンではなく、完全なEV(電気自動車)である。このアバルト初となるEVに搭載されたモーターの出力は155PS、トルクは235Nmを発生し、小さなボディには充分な動力性能である。「アバルト」ブランドとして、特別にチューニングされた排気音を車体左サイドに取り付けられたサウンドジェネレーターによって、走行中は回転数に合わせて発生。また停止中ではアイドリング状態に発する独特なチューニングのエンジン音でドライバーにEV車であることを感じさせないイタリア車らしいユニークなシステムを搭載していることが最大の特徴である。「このエキゾーストノートは“レコードモンツァ”の排気音を時間をかけて忠実に再現した」と担当者は語っている。試乗したのは、アバルト 500e Turismoカブリオレで試乗車内の資料には、車体色はアシッドグリーンで、価格は6,450,000円と公表されているモデルである。

一見黄色のようだがアシッドグリーンという名称の特徴的なボディカラーのアバルト500e Turismo カブリオレ

【評価手法】
■以下、試乗評価に関して説明します。以前から弊社が主体となって結成している「車評チーム」は、確認する項目を明示して、その評価を続けてきました。同時にそれぞれの項目に関しての短評を行ない、5点満点で評価として採点して、平均値を出すことでそのクルマの総合評価としています。評価する項目は16に及びますが、今回のような一般の試乗会では実用燃費が計測できないので、燃費評価を無くして以下の15項目で実施しています。
1.商品コンセプト 2.外観スタイル 3.内装デザイン 4.運転の楽しさ 5.性能&走り感 6.ステアリング/ハンドリング 7.ブレーキング 8.振動&騒音 9.乗り心地 10.室内居住性 11.前後座席12.操作機器&メーター類 13.利便性/使い勝手 14.全体の品質感 15.お買い得感
車評オンライン Ver.Ⅱでは、各項目に1から10ポイントの点数をつけて、合計点の平均値を「総合評価点」のポイントとしています。
※尚、「車評チーム」による新型車の評価手法は、マツダRX-7の開発責任者や1991年にマツダチームがルマンで優勝した時にモータースポーツ主査を務めていた小早川隆治氏が設定された車評用「評価シート」をベースに採点しています。

評価者:車評チーム
車種:アバルト 500e Turismo カブリオレ
寸法:全長3675㎜ 全幅:1685㎜ 全高:1520㎜
車重:1380㎏
ミッション:AT(今回は「スコーピオンモード」で全走行)
定員:4名
タイヤ:ブリヂストン「ポテンザスポーツ」前後ともに205/40R18 86H
テスト:晴天(一時雨) 室内温度25℃設定
全走行距離:40㎞
高速道路30% 一般道70%程度
平均燃費:— ※今回は測定不可能

短評
ロングセラーになったフィアット500シリーズの派生プレミアムホットモデルとして誕生し「アバルト」のブランドネームを背負った初のEVモデル。今までのEVの概念とは全く異なり、ガソリン車とは対照的に構造的に音を発することがないEVの「走り感」を、ガソリン車が走行中などに発する排気音を模した音をアクセルと連動してドライバーに届けることで運転する楽しさを感じさせようというコンセプトで開発されている。EVは乗りたいが、ドライブしている際の「走り感」も大切にしたいというクルマを求めている人には、一度試乗して実際に体験してみることをお勧めしたい。

1:商品コンセプト 8点
今までのEVとは異なるコンセプトがユニークであり、他のメーカーのEVに一石を投じるモデルとなるのではないか、と思わせてくれる点を評価したい。走りを大切にするイタリア車ならではの発想とも思える。

2:外観スタイル 8点
ボディに大きく配置されたアバルトのエンブレムやおしゃれで鮮やかなカラーリングなど、新しいアバルトのイメージを感じる。

3:内装デザイン 8点
フィアット500に通じる、加飾は少ないがシンプルでスポーティなイタリア車らしいおしゃれなデザインで全体が統一されている。

4:運転の楽しさ 6点
EVとして考えれば、走りに関してかなりつくりこまれた印象であり、後方から聞こえてくる排気音を模した音によって、ガソリン車の運転の楽しさが伝わってくる。

5:性能&走り感 6点
加速力は充分であり、中間速度の領域からの加速も力強い。高速道路でもアバルトモデルの一族として、まったくそん色ない走りを感じた。

6:ステアリング&ハンドリング 7点
素直なハンドリングの印象は強い。クイックなハンドリング傾向で、コントロール性も良く、スポーティな走りが楽しめる。

7:ブレーキング 8点
ブレーキペダルを踏むと瞬時に連動して制動力が発生する。ブレーキの立ち上がりも自然で強力に効き、扱いやすい印象。

8:振動、騒音 8点
今回はテストのために排気音を模した音は、走行中にオンにしていたが、オフにすれば通常のEVと同様にモーター走行のため静かな室内になるだろう。遮音は充実しているようでタイヤからの音も低く抑えられており、振動も少なかった。

9:乗り心地 5点
一般道の段差などでは扁平率の高い40タイヤによる影響があるのか、ミニレーサーと表現したい乗り心地。逆に高速道路では継ぎ目の部分も含めてスポーティな乗り心地が実現されており、この車のキャラクター性は充分に反映されているといえるだろう。

10:室内居住性 4点
基本はフィアット500であり、後席は十分なスペースは確保されていない。ただ、このクルマを選ぶ条件には、問題にはならないだろう。逆にドライバーシートも含めて前席の足元、ショルダー部など十分なスペースが確保されている。

11:座席 9点
運転席および助手席は、サイズも大きくバケット形状でありスポーティな運転には最適である。座面は固いが約1時間の運転では痛みや疲れなど一切なかった。質感も高くイタリア車のシートは高級感があると感じる。

12:操作機器、メーター類 8点
すべて手が届く操作系の配置であり、わかりやすいスイッチ類が好ましい。丸型のメーターも大きくて見やすいことも美点。

13:利便性、使い勝手 5点
このクルマは高い実用性が確保されているとは言えないが、2人でのドライブであれば後席のスペースとリアのトランクルームを使用すれば、日本の一般的な2泊程度の荷物は十分に積み込んで旅行に行けるだろう。また、開口部の大きいカブリオレは開放感もあり、山道や郊外のドライブには楽しめる装備であることは間違いない。

14:10-15モード&実測燃費
短時間の試乗会のため計測できず

15:全体の品質感 7点
全体の鮮やかなペイント、ホイール、ドアやミラーのつくりなど全体の質感は高い。価格を考えれば当然かもしれないが、素材や仕上がりには十分に質感に気が配られている印象である。

16:お買い得感 3点
アバルトはもともとブランド力も高く、価格の設定は仕方がないが、EVの中でも高額な印象は否めない。
※500eは国の補助金などの優遇策があり、国からは450,000円、地方自治体からは400,000円(東京都の場合)が交付される(2024年2月現在)。

総合評価点:6.7点
※車評評価チームでは、そのジャンルごとに採点し、総合評価点5点が標準的なレベルとしています

3大魅力点
1.EVとしてユニークなエンジン音を発するシステム搭載
2.トルクある走り、高速道路も楽しめるEVの1台
3.イタリア車しかない各所に楽しいデザインの演出

シートだけでなくステアリングやインパネにも肌触りのよい高級素材のアルカンターラを採用したインテリア
センターにアバルトのサソリがデザインされた18インチアルミホイール
^