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2023年11月17日

2023年10月26日(木)から開幕した「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」のプレスデイを取材する機会を得ました。その様子をお知らせします。(レポート:相原俊樹)

2023年10月26日(木)から11月5日(日)まで(一般公開は10月28日(土)から)、東京ビッグサイト(江東区・有明)にて「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」が開催された。一般公開に先立って、プレスデイを取材する機会を得たので、その様子をお知らせしよう。

「東京モーターショー」から名称を改めた同ショーは、クルマの枠を超えて広く「モビリティ」をアピールするイベントへと脱皮を図っている。今年はその第1回目だ。

会場はエリアごとに「車両・車体・部品・次世代モビリティ関連」「KidZania」「部品・機械器具」の3つに分かれている。本稿では各メーカーがコンセプトモデルを一斉に展示する「車両・車体」エリアを紹介する。目前に迫ったEV新時代を模索するエリアだ。以降、アトランダムに撮影したモデルをお目に掛ける。

スーパーカーあり、乗用車あり、業務用バンあり。果てはバイクまで。EVの可能性を多岐にわたり検討していることが窺えるが、どれも「途上」にあり、これぞ決定版と呼ぶには今ひとつというのが素直な感想だ。

そんななか、マツダのブースは出色だった。「Mazda Iconic SP(マツダ・アイコニックSP)」と名づけられたコンセプトカー。私はその姿を認めた瞬間、しばしその場に立ち尽くすほど魅せられた。虚飾を排したクリーンな表面処理、ウェッジに頼らない古典的なフォルム。こんな流麗な2ドアクーペが現れるのなら、自動車の未来も捨てたものではないと感じた。

完璧なバランスを保つ「Mazda Iconic SP」。そのけれんみのないデザインは往年のピニンファリーナに一脈通じる。イタリア流でもイギリス流でもない日本独自の自動車美を形にしている。


「2ローターRotary-EVシステム」と呼ばれるパワートレインも魅力的。モーター駆動だが、電力を供給するのが2ローターのロータリーエンジンなのだ。しかもそのロータリーエンジンは、カーボンニュートラルな燃料に対応する。

マツダのブースにはもう1つ、地味だが重要な展示車があった。脚が不自由な人でも乗れるスポーツカーである。

既存のロードスターを一切改造することなく、後付けのレバー(赤いノブが付いた部分)によってブレーキと加速をコントロールする。改造を要さない後付けパーツなのでコストは望外に安く、しかも健常者が乗ることもできるという。私も実際、運転席に座ってレバーを動かしてみたが、操作は思いのほか簡単そうだ。

「脚が不自由な人でも自由にスポーツカーに乗れる喜びを提供したいとの思いから作りました」とは説明員氏の言葉。まさに「モビリティ」を広いユーザー層に提供する佳作であり、今回のショーの志にピタリ合っていると思った。

最後に私が個人的に惹かれた1台を紹介する。会場の片隅の小さなブースに展示された「FIAT 500 EV」である。

前から見ると綺麗にレストアされたただのフィアット500だが、後ろに回ると見事にEV化されている。名古屋のチンクエチェント博物館が展示した1台で、トリノの「OG」というカロッツェリアがレストアとEV化を手掛けたそうだ。内装も含めて仕上がりは申し分ない。

表舞台から退いて久しい50~60年代の名車をていねいにレストアしたうえで、エンジンの代わりにモーターを搭載するというプロジェクトには、一定のビジネスチャンスがあるのかもしれない。そうして往年の名車が現代の路上を元気に走れるようになるのであれば、これもまた「モビリティ」の拡大に繋がるだろう。


自動車図書専門の出版社、三樹書房/グランプリ出版は意気軒昂だ。専門性の高い技術書から、内外の人気車種を取り上げた読み物まで、自動車好きなら気になるタイトルがズラリと並んでいる。どれも立派な装丁のハードカバー本なのも同社の出版物の魅力だろう。ソフトカバー全盛の現代にあって、いかにも「本を読むぞ」という気にさせる。

話をジャパンモビリティショーに戻そう。前身の東京モーターショーは1959~87年の長きにわたり晴海で開催された時期があった。あのころの東京モーターショーはまさに夢の世界、自動車の明るい未来に希望を持たせてくれるイベントだった。今回、主催者は名称をジャパンモビリティショーと変えて、展示内容を一変させる英断を下した。会場を訪れた子どもや若者たちは、「モビリティ」の未来に胸を膨らませたのだろうか。このイベントの効用が本当にわかるのは、これから2、3年後かもしれない。

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