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2023年7月14日

第2回 「車評オンライン Ver.Ⅱ」
※2021年度から休止した小早川隆治氏による「車評オンライン」を引き継ぎ、 “車評チーム”のメンバーによる試乗・評価に切り替えることになり、2022年より「車評オンライン Ver.Ⅱ」と名称を変更してスタートしました。

日産セレナ e-POWER ハイウェイスターV 2WD試乗レポート
2023年6月30日(金)、新東名を中心に首都高速、東名において、日産セレナ e-POWER ハイウェイスターV 2WDの試乗を実施しましたので、その試乗レポートをお届けしたい。都内を早朝出発したため、渋滞にはほとんど遭遇せず、比較的高いスピードで千キロ弱を6人が乗車し走破した。(レポート:車評チーム)

【概要】
日産セレナは1991年に“バネットセレナ”として初代が発売された同社の主力ミニバンで、30年を超える歴史のなかでブランドが定着し、ファミリー層を中心に支持されてきた。今回試乗したのは2022年11月28日にモデルチェンジされ登場した6代目モデル。
この新型セレナは「初代から受け継がれる“BIG”、“EASY”、“FUN”のコンセプトに代表される室内空間の広さや利便性はそのままに、移動時の快適性を追求し、最先端技術の搭載や様々機能の充実を図ることで、家族との大切な時間を思い切り楽しむことのできるミニバンとして、さらなる進化を遂げました」(プレスリリース)という。最先端技術としては、先進運転支援システム「プロパイロット2.0」が最上位グレードに搭載されたほか、動力システムは第2世代「e-POWER」がメーンとなっている。第2世代e-POWERはモーターユニットに1.4リッターの専用エンジンを組み合わせたもので、エンジンの作動音を抑制するとともにパワフルで気持ち良い加速性能を目指したという。
モデル構成は、e-POWER搭載車4タイプと2リッターエンジン(MR20DD)搭載車3タイプで、いずれも2WD。乗車定員は8人(最上級モデルのみ7人)。価格は2,768,700円から4,798,200円まで。このほかオーテックバージョンやライフケアビークルなどが用意されている。
試乗したのは、日産セレナ e-POWER ハイウェイスターV 2WD。エンジンはHR14DDe-EM57。塗装色/内装色は、利休-リキュウ-/スーパーブラック(2トーン)/ブラック。車両本体価格(消費税込み)は3,686,100円。これにホットプラスパッケージ、アダプティブLEDヘッドライトシステム、プロパイロットパーキングなど合計782,100円のメーカーオプション、後席専用モニターHDMIなど合計230,563円のディーラーオプションがついている(価格は消費税込み)。総額は4,698,763円となる。

【評価手法】
■以下、試乗評価に関して説明します。以前から弊社が主体となって結成している「車評チーム」は、確認する項目を明示して、その評価を続けてきました。同時にそれぞれの項目に関しての短評を行ない、5点満点で評価として採点して、平均値を出すことでそのクルマの総合評価としています。評価する項目は16に及びますが、今回のような一般の試乗会では実用燃費が計測できないので、燃費評価を無くして以下の15項目で実施しています。
1.商品コンセプト 2.外観スタイル 3.内装デザイン 4.運転の楽しさ 5.性能&走り感 6.ステアリング/ハンドリング 7.ブレーキング 8.振動&騒音 9.乗り心地 10.室内居住性 11.前後座席12.操作機器&メーター類 13.利便性/使い勝手 14.全体の品質感 15.お買い得感
車評オンライン Ver.Ⅱでは、各項目に1から10ポイントの点数をつけて、合計点の平均値を「総合評価点」のポイントとしています。
※尚、「車評チーム」による新型車の評価手法は、マツダRX-7の開発責任者や1991年にマツダチームがルマンで優勝した時にモータースポーツ主査を務めていた小早川隆治氏が設定された車評用「評価シート」をベースに採点しています。

評価者:車評チーム
車種:日産セレナ e-POWER ハイウェイスターV 2WD
タイヤ:ダンロップ「エナセーブ」205/65R16 95H
テスト:晴天(一時雨) 室内温度25℃設定
全走行距離:960.3km 消費燃料:レギュラー 52.96リッター
高速道路80% 一般道20%程度
平均燃費:18.1km/L

短評
ミニバンとして無駄のない端正なデザインと5ナンバーサイズを基本とした適度なボディ寸法と共に広い室内空間、各シートに用意されたドリンクホルダーや2列目シートに設置されたトレイなど、親切で実用的な装備の数々は非常に便利。燃費などの経済性も高く、数年間使うことを考えれば、定期的に大人数で移動する方やアウトドアを楽しむ家庭に最適なクルマ

1:商品コンセプト 8点
コンセプトが明確であり、ミニバンとしての必要な要件を満たす無駄のない設計デザインが高い評価

2:外観スタイル 8点
新しいVモーショングリルのデザインは新鮮な印象、ファミリーで使用することを目的に設計されたクルマとしてそのサイズなども高く評価したい

3:内装デザイン 8点
ブラウン基調でWステッチの入った高級感のある室内で、素材も含めて日産車らしいシンプルなデザイン

4:運転の楽しさ 6点
ミニバンの中でも特に前後方の視界のよい運転席により、安心して運転できる

5:性能&走り感 6点
充分な加速力あり、中間速度領域からの加速力も充分。重心の高さも走り感への影響は少なく、ハンドリングもミニバンとして車体は穏やかでしなやかに動く

6:ステアリング&ハンドリング 7点
革巻きのハンドルの質感は高く、素直なハンドリングの印象は強いが、低速域の軽いステアリングには慣れも必要で好みも分かれるところ

7:ブレーキング 7点
エコノミーモードによる回生ブレーキは、通常のブレーキに加担してくれることにより、慣れてしまえば止まることには優利。回生ブレーキが付いているブレーキペダルとして評価すると操作時の違和感は少ない

8:振動、騒音 8点
モーター走行により静かな室内、エンジン稼働時の騒音も低く抑えられており、振動も少なくて、会話もしやすく、音楽等も聞きやすい。ただ、空気圧設定2.8kPa(kgf/cm²)と高圧であり、路面によってはタイヤのトレッド部あたりからの音が室内に入る部分に関しては、改善を求めたい

9:乗り心地 8点
高速道路では継ぎ目の部分も含めて良好な乗り心地だが、一般道の段差などでは高圧タイヤによる影響があるのか、前席を除いた2列目以降の後席は突き上げ感があり今一歩

10:室内居住性 9点
3列共にどのシートでもドリンクスタンドなどの装備も充実。2列目のシートの足元が窮屈感あるが、フルシートを使っても足元のスペースは確保されている

11:座席 9点
運転席および助手席は腰の部分をサポートしている形状であり好ましい。2列目、3列目シートに関しても、座面も背もたれの大きさや硬さなど適度であり、400km程度の走行でも疲労は少ない。後席からの視界も充分に確保されている

12:操作機器、メーター類 8点
ディスプレイ式メーターは見やすいが、操作系は複雑。ナビも大きく便利だが、直立ではなく角度をつければさらに見やすいだろう。音声コントロールがダイヤル式で使いやすく、すべてのスイッチ類は座ったままで操作できる点は高評価

13:利便性、使い勝手 9点
家族などの複数で使用するには最適なクルマ。子供に限らず、大人6人でも充分な実用性が確保されているといえるし、先代のモデルから継承されている、上下分割式のデュアルバックドアの利便性は高い

14:10-15モード&実測燃費 8点
高速道路走行が主だったとはいえ、6人乗車によるテストで燃費は18.1km/Lをマーク。数値的には、軽自動車並みの平均燃費を記録したことに、e-POWERにとっては不利な高速主体の試乗テストでの優れた燃費は、チーム全体で高い評価

15:全体の品質感 8点
室内やシート、ラゲッジスペースなど、特徴的なグリルまわりも含めて全体の品質感は高く、外国車の同クラスと比べても決して劣っているとは思えない。全体に使われている素材や仕上がりは、高級感を感じる好ましい印象

16:お買い得感 5点
国産車でオプション部品を含めトータルの価格が約470万円(試乗車)と安価とは言えないが、装備や機能面では充分である。しかしエントリーモデルの280万円程度なら購入を検討しやすいが、様々な装備を付けると500万円近くなってしまうのはファミリーカーとは言えないだろう

総合評価点:7.6点
※車評評価チームでは、そのジャンルごとに採点し、総合評価点5点が標準的なレベルとしています

3大魅力点
1.広い室内と多彩なシートアレンジ等、実用車として親切な装備の数々
2.e-POWERの静かさとスムーズさ、無駄のない端正なデザイン
3.数年間使うことを考えれば、大家族に最適な実用車の一台

改善希望点
450万円を超える? 国産車の価格帯として考えると、乗り心地に影響する高圧タイヤの設定は本当に必要か? 最後まで疑問が残った。バックドアのウインドー部分が開閉して荷物の出し入れに便利だが、バックドアの開閉は電動にしてほしい。また細かい点だが、スマートキーのボタンにある操作表示は見にくく、この点は早急に改善してほしい

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