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2023年2月25日

第42回JAIA輸入車試乗会が開催されました。ヒュンダイIONIQ5/BYD ATTO3/フォルクスワーゲンID.4の試乗レポートをお伝えします。(レポート:武川明)

昨2022年のJAIA輸入車試乗会はEV、PHVといった電動車の多さに目をみはったが、今年はそれに輪をかけて電動系のラインナップが増えた。しかも昨年は欧州勢を中心としたものだったが、今年はさらに中国、韓国勢が加わった。さながら電動車の乗り比べ会の様相を呈していた。試乗した各車に共通しているのは操作系、例えば始動(起動)キー、シフトレバーといった基本的なものの形状や位置がガソリン車とは異なることがほとんどで、乗り出す前に戸惑ったこともあった。中にはブレーキペダルに足を載せるだけで、起動(始動)するクルマもあった。メーター類もスピードメーターとタコメーターが二つ鎮座するイメージのガソリン車とはずいぶん違う。なにか未来のクルマに乗り込んだように錯覚する。走りはもちろん、モーターの直線的な加速感だが、クルマによって、ゴーカートのようにちょっと踏み込めばグンとモーターが回転を増すものも、じわじわ回転が上がるものもある。また回生の強さや、発進から停止までワンペダルで行なえる方式の採用・不採用についてもそれぞれ、異なっていた。EVはエンジン音がないゆえ、低速時に歩行者に注意を促す人工音を付けているが、これについても千差万別。好き嫌いがわかれるようなサウンドもあった。

◎ヒュンダイIONIQ5

ヒュンダイのIONIQ5は、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会の2022-2023インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したモデルだ。デザインの先進性に専門家から高い評価を受けており、これまでのクルマのイメージを“いい意味で大きく逸脱している”印象を受けた。このデザインのせいか、ずいぶんコンパクトに見えるが、スペックを見て驚いた。全長×全幅×全高は4635×1890×1645と全幅は190mm近くある。ちなみに同じEVの日産アリア(2WDのB6)は4595×1850×1655だから全高を除いてIONIQ5の方が上回る。重量は、というとアリアの1.92トンに対し1.87トンと軽くできている。その差は電池容量だろうか。アリアの66kWhに対し、58kWhと8kWh小さい。重量と電池容量から“電費”はと見ると、WLTCモードで498kmとアリアの470kmを上回っている。値付けはどうか。IONIQ5はベースグレードが479万円とアリアB6の539万円にくらべかなり安い。しかもアリアは執筆時点で受注を止めており、再開時はかなりの引き上げになると見られている。というのも先に受注を再開したリーフは583万円(60kWh容量のe+G)と受注停止前に比べ約100万円の価格アップをしたからである。
IONIQ5はバッテリー容量58kWhのベースグレードと72.6kWhのVoyage、Lounge、 Lounge AWDの3タイプ、計4タイプがある。Lounge AWDは2モーターによる4輪駆動。価格はベースグレードが前述のとおり479万円、最も高価なLounge AWDが589万円と約100万円の差がつく。
さて同じEVのアリアなどと比較をしてみたうえで、実際に試乗した感想を書いてみたい。試乗したのは最上級グレードのLounge AWD。先ほど書いた通り、ドライブしてみて大きいと感じることはなく、むしろコンパクトで取り回しがしやすい、と思った。アクセルはいい意味で敏捷で、ステアリング遊びが小さく、きびきび走れる味つけである。3段階に設定された回生の強さを最大にすると、ワンペダルで操作できる。ワインディングを走ると、運転がうまくなったように感じ、ドライブが楽しくなる。高速道路ではアクセルをちょっと踏み込むだけで、“胸のすくような”加速感を味わえ、短いアプローチでも安心して合流できる。
内装は外装同様に“未来感”が強い。直線基調でシンプルな造形をベースとしている。インパネの部分にはiPadが2枚並んだような形状でメーターパネルとカーナビなどのインフォ画面が並んでいる。右ハンドルの日本車でいえば方向指示器があるあたりにシフトレバーの役割を果たすスイッチがある。Loungeグレードのシートは本革。座り心地は硬めだが、ホールド感がしっかりしている。シート地も含め内装は白系のため、全体に明るい雰囲気の室内だった。

◎BYD ATTO3

BYDは中国・深圳で早くから電気自動車用バッテリーや電気バスの開発を手がける電気自動車大手。日本では電気バスをかねてより販売し、全国に納入事例があるが、いよいよ今年から乗用車タイプのATTO3を販売にこぎつけ、JAIA試乗会初日の1月31日に価格を発表した。発表された希望小売価格は444万円。国の補助金を付けると300万円台で手にすることができる。ATTO3は58.56kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電航続距離は485km。ボディ形状はSUVでサイズは日産リーフと同じクラスながら、全幅が1875㎜とアリアよりも25㎜大きくなっている。外観はオーソドックスなSUVともみえるが、内装はかなりユニーク。ドア内側にはレンチを思わせる形状のパネルがあり、その下にはギターの弦を思わせる太くて赤い糸が張ってある。これは収納した荷物のカバーの役目をする。
運転席に座り、操作系やモニターを確かめたうえで、アクセルを踏み込む。ほんの少しアクセルに力をかけるとすっと速度が上がる。ステアリングも敏捷だ。回生を強くするとアクセルのちょっとした戻しで強い減速が得られ、思いのままに速度を調整できる。同じく敏捷なステアリングと相まって、ワインディングのようなところは運転が楽しくなる。電気自動車の走りが好きと思える人には楽しいクルマといえるだろう。

◎フォルクスワーゲンID.4

フォルクスワーゲンID.4は“Way to Zero”すなわち温室効果ガス排出ゼロ達成に向けて開発した専用プラットフォームによる、同社として日本で最初となるフル電動SUVである。ボディサイズは4585×1850×1640と日産アリアとほぼ同サイズで、決して大柄とはいえないが、ラゲッジルームや室内の広さ、ゆとりをアピールするSUVの電動カーである。そのバッテリー容量は公表された標準のLiteが52kWh、大容量のProが77kWhwを搭載、WLTCモードによる一充電走行距離はそれぞれ435km、618kmとなっている。Proは大容量のバッテリーを搭載しているだけあって、車両重量は2140kgと2トンを優に超える。モーターはリアにあり、後輪を駆動輪とする“RR(リヤモーター・リヤ駆動)”方式を採用している。
ドアを開け、シートに座りブレーキペダルを踏むと起動する。スターターボタンもスイッチもない。スマートエントリー&スタートシステムとVWでは呼んでいる。メーターパネル右横にあるスイッチを向こう側に回すとD(ドライブ)、もう一回回すと回生ブレーキが強いB(ブレーキ)モードとなる。逆に回すとR(リバース)になる。
今回試乗したのは大容量モデルのID.4Proだが、2トンを超える車重をものともせずに、パワフルな走りを見せる。アクセルを踏み込めば、それに応じてもたれることなく加速していく。ただし、今回乗った多くのEVとは少し異なり、ゴーカート感はない。回生もそれほど極端に効いているような設定ではなく、ガソリン車から乗り換えても違和感はないだろう。そこが世界でたくさんの人たちに愛用されているVWらしい味付けかなと思わせた。

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