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2023年2月24日

2023年1月31日~2 月2日にかけて、大磯プリンスホテル駐車場を会場に第42回JAIA輸入車試乗会が開催されました。その様子をお知らせします。(レポート:相原俊樹)

2023年1月31日~2 月2日にかけて大磯プリンスホテル駐車場にて、第42回JAIA輸入車試乗会が開催された。昨年に続き、入念な感染症対策を講じたうえでの実施だ。私は幸運にも参加の機会を得て、複数の輸入車を試乗した。そのなかから2台のフランス車の印象をお伝えしよう。

デザイン!

DS 4の見どころはなんといってもデザインだ。シャープなプレスラインが織りなすボディは彫刻的。特にリヤクオーターウインドーからテールにかけては複雑なキャラクターラインが交錯しているのだが、煩雑な感じは一切なく、デザイナーの高い手腕に感嘆する。

全長4415×全幅1830×全高1495mm。Cセグメントに属するボディはSUVというよりは4ドアクーペに近い。写真ではわかりにくいが、ボディパネルには随所に複雑なプレスラインが走っているのだが、煩雑な感じはなく、むしろクリーンかつ彫刻的な造形に目を奪われる。

高いデザイン性はインテリアで一層際立つ。細部の凝った仕上げはDSならではの美点だろう。例えばドアパネルやセンターコンソールなどに設えられたクローム仕上げのコントロール類には独特の細かな刻み模様が施されており、DSではこれを「クル・ド・パリ文様」と呼ぶのだそうだ。

細かな刻み模様が施されたドアパネル上のパワーウインドースイッチ。独創性と使いやすさを両立させたグッドデザインだと思う。

昔からのシフトレバーは過去の遺物となり、小さなレバーで「D」や「R」のポジションを選ぶ。ギヤシフトはパドルで行うので、いったん走り始めればこのレバーに触れる必要はない。

DS 4にはモデル名E-テンスというPHEV、ブルーHDiというディーゼルターボ、ピュアテックというガソリンターボの3種類のパワーユニットが用意される。試乗車はガソリンエンジン版のピュアテックだった。私は試乗を終えたあと初めて知ったのだが、排気量わずか1.2Lの直列3気筒だという。今回の試乗では海岸沿いの有料道路を主体に走ったが、その限りではエンジンはスムーズそのもので、3気筒ゆえのハンディは一切感じなかった。

少しアクセルを踏めば、130psの最高出力と230Nmの最大トルクはこの大柄なボディを瞬時に力強く加速させる。乗り心地も秀逸で、舗装の継ぎ目を乗り越える際、「タン!」という音は聞こえてくるが、ショックは一切伝わらない。乗り手の意図に当意即妙に応じるエンジンと絶妙な乗り心地はDS 4の魅力で、短距離の試乗でも高速ツアラーの片鱗を見せる辺りは「DS」の名前に恥じない。

試乗中、唯一手に余ったのはバックでの駐車。運転席から振り返っても車両直後の様子は見えないので、バックカメラが映し出す映像だけが頼りだ。

思えば、フランスではかつてシトロエンの上級モデルにあった高性能GTや、リムジン級豪華車が絶えて久しい。いつか近い将来、DSからシトロエンSMやDSプレスティジの現代版が復活して欲しい。そんな夢を見させてくれるDS4の試乗だった。

テクノロジー!

 ルノー・ルーテシアE-テックハイブリッドの注目点はなんといっても独創性溢れるパワートレインだ。1.6L直列4気筒ガソリンエンジン、メインモーター、スタータージェネレーターの3つの動力源を搭載し、メインモーターのみのEV走行、エンジンとメインモーターの両方を適宜使い分けるハイブリッド走行、そしてエンジンだけの走行という3種3様の走り方ができる。

私が特に注目したのは、ガソリンエンジンとメインモーターの力を連結させるクラッチの代わりにドッグ式ギヤボックスを採用した点。このギヤボックスは素早いギヤチェンジが可能な反面、回転数の異なる2つの動力源を合わせる瞬間、強いショックを生むので乗用車にはおよそ不向きと思われた。ルノーではエンジン側のスタータージェネレーターにシンクロナイザーの機能を持たせてドッグ式ギヤボックス固有の欠点を一掃したという。果たしてその走りやいかに。

全長4075×全幅1725×全高1470mmのコンパクトな外寸は混んだ都市部や狭い路地を走るのにも最適。前後のオーバーハングが短いのも好ましい。

外観上、これがE-テックハイブリッドだと識別する手掛かりは、テールゲートに貼られた「E-TECH HYBRID」の小さなエンブレムのみ。

走り出しは必ずEVモードなので、運転席の私に聞こえてくるのはかすかな路面騒音だけだ。有料道路に乗って少しアクセルを踏む。ここでエンジンが始動したのは間違いないのだが、いくら耳を澄ませても特に音質に大きな違いはない。EV走行からハイブリッド走行へいつ移行したのか、まったく体感できないことにも感心した。内燃機関とモーターとの連係プレーはそれほどまでに巧みで、乗り手はこのルノーがハイブリッドであることを意識せずに乗ることができる。私が試乗前に抱いた懸念は杞憂に過ぎなかった。

しっとりとした乗り心地はいかにもフランス車らしい。一見すると表皮の張りが強そうなシートだが、座ると身体を巧く包みこんで快適。一方、舗装の継ぎ目を乗り越える際はそれなりのショックと音を伝えてくるものの、普段の足として気軽に使うにはちょうどいい足回りの設定だと感じた。

奇をてらったところがまったくない、オーソドックスな運転席回り。それだけに構えることなく乗れる。

その反面、従来の概念とは完全に異にするメーター表示。左の青いカーブが充電量。右の赤いカーブがガソリン量を示す。

ハイブリッドという最新技術とドッグ式ギヤボックスという旧来の技術を融合させる柔軟な発想。そしてその発想を実用に耐えるまでにこなした高い技術。フランスの自動車文化の独自性と深みを実感させるルーテシアE-テックハイブリッドだった。

最後に、今年も試乗会開催を決定した日本自動車輸入組合と、実際の運営に当たったスタッフの皆さまに感謝申し上げます。

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