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2022年10月3日

2022年10月7日(金)から静岡県駿東郡小山町の富士スピードウェイの敷地内に、富士モータースポーツミュージアムが開館する。同館は、同時にオープンする富士スピードウェイホテル1~2階部分にあり、展示車が国内・海外メーカーとの連携によって常設展示されるミュージアムとしては、世界初の試みであるという。自動車歴史関係書籍を主としている弊社が、開館前に見学することができたので、その一部を紹介したい。

「レースの熱気の背景にある、クルマを鍛える場としてのモータースポーツの魅力と意義を伝えること」がこのミュージアムのミッションであるという。
19世紀にフランスで催された自動車レースが最古のレースといわれているが、この富士モータースポーツミュージアムでは、レースが始まってから約130年間の足跡を、時代を追って様々なレースを約40台のマシンと共に紹介している。

この富士モータースポーツミュージアムのためにトヨタによって復元されたトヨペットレーサー。1951年にトヨタの販売店によって製作されたこのマシンは、同じ頃にデビューした日産ダットキングと船橋のレース場を走ったことが記録として残っている。エンジンはS型エンジンを搭載し、メーター類なども当時の量産車(SD型)のものを流用していた。

スタイリングや各仕様は、当時の写真などを元にして考証され、復元されたトヨペットレーサー。当時と同じ手法である“手たたき”によりつくられたというボディと共に特徴であるリベットなど、実車と同様に見事に再現されている。なお、ボディサイドに引かれているラインや前後のホイールに塗られているブルー色の色調に関しては、「多摩川スピードウェイの会」会長の片山光夫氏が保管されていた珍しいカラー写真が色の決定時に役立ったという。

ホンダコレクションホールで保管・管理されていたこのRA272は、第一期ホンダF1参戦の1965年シーズンを戦ったマシン。1.5リッターエンジン時代の最終戦のメキシコGPで優勝した実績がある。純国産製マシンであり、12気筒のDOHCエンジンを横置きに配置する。近年、ホンダによって当時の仕様に再度修復が施されている。

二輪メーカーとして急成長していたホンダは、1959年から世界二輪グランプリレースに参戦している。3年後の1961年には125ccと250ccのクラスでチャンピオンシップを獲得し、1966年には、50cc/125cc/250cc/350cc/500ccの5クラスを制覇する偉業を残した。展示車は、高橋国光氏が1961年の西ドイツグランプリで日本人として初めて優勝(1位)した時の記念すべきマシンである。このRC162もホンダコレクションホールの保管車両。

マツダのロータリーエンジンの耐久性や性能の高さなどを内外に証明するため、“世界で一番過酷な耐久レース”といわれていたルマンに挑戦し、1991年に見事な優勝を果たしたマツダ787B。優勝した実車の787Bは、広島のマツダ本社で保管されているが、遠方の方々はなかなか見る機会が少ないだろう。展示車はそのレプリカであるが、マツダによって製作されて、当時の仕様を忠実に再現しており貴重なマシンといえる。マツダ787Bと同時に展示されているエンジンは、1990年から大幅に出力を向上させたマツダR26B・4ローターエンジン。

このミュージアムのコンセプトは「モータースポーツがクルマを鍛え、進化させた熱い歴史を語る」と明記されている。富士モータースポーツミュージアムは立地も良く、都心からも約1時間30分程度であり、日帰りも可能な博物館である。中部地域からも関西地域からも高速道路が完備されていているので、一泊することで無理なく往復は可能だと思う。日本は欧米などの諸外国に比べて、モータースポーツの認知度は低いといわれているが、一人でも多くの方々にこのミュージアムを見学してもらい、様々なレースに出場した伝説のマシンなどを実車で見ることで、モータースポーツの魅力を堪能することを期待したい。
入場料は、窓口購入の場合:大人平日1800円/日祭日2000円 オンライン予約の場合:大人平日1600円/日祭日1800円、団体予約は10月上旬に公表予定で、定休日に関して開業初年度は無休と発表されている。

富士スピードウェイホテルは「モータースポーツとホスピタリティの融合」がコンセプトであり、“唯一無二の体験を提供する”と発信している。運営は、WORLD OF HYATT(ハイアット)があたる。客室は120室あり、目の前には富士スピードウェイのコース、もう一方では美しい富士山が眺望できる景色の素晴らしい場所のホテルである。

この55m2のデラックスルームから富士山ビューが楽しめるという。

部屋にはモータースポーツに関する書籍や写真などが飾られている。

スイートからのサーキットビュー。

ルーフトップテラスからサーキットを臨む。

天気が良ければ富士山が見えるが、内覧会当日は雲がかかっていた。

(まとめ:編集部)

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