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2022年2月25日

第41回JAIA輸入車試乗会が開催されました。「一気に電動化へ舵を切った欧州メーカー」と題して、その様子をお伝えします。(レポート:武川明)

一気に電動化へ舵を切った欧州メーカー

コロナ禍により2年ぶりの開催となった輸入車試乗会。会場も雰囲気も元のままだが、その様相はこれまでとはずいぶん違ったものになっていた。何が変わったかと言えば、出展車両の電動化が一気に進んだのだ。前回(2020年)は電動系車両と言えば、テスラぐらいのものだったが、今回は全出展車両67台のうち半分近い31台が電動系車両で占められたのだ。世の中、とくに欧州ではここ数年、電動化の波が押し寄せ、自動車メーカー各社は一気にそちらに舵を切ろうとしている。その波は予想以上にはやく、日本の市場にも到達することになった。

ちなみに31台の内訳はプラグインハイブリッド(PHEV)が13台、ピュアEVが17台、ハイブリッド(HEV)が1台ということになる。日本では電動車両と言えば、HV=HEVが中心で、PHEVがちらほら、EVと言えば限られた数車種という構成だが、輸入車のラインナップを見る限り、一気にピュアEVに進み、PHEVの先を行ってしまった感がある。ちなみに残り36台の内訳はガソリン車28台、クリーンディーゼル8台と、ディーゼルも頑張っている感がある。

日本メーカーも含め、電動化の動きはここ数年、急速に進みつつある。エンジン開発規模縮小に踏み切ったり、2050年を目標に脱内燃機関、完全EV化を標榜するメーカーも現れている。ただ、それを可能にするためにはインフラの整備が欠かせない。たしかに日本においても2013年の日産リーフの登場以降、充電インフラの整備は一気に進んだ感がある。高速道路のサービスエリアや道の駅、コンビニなどでチャデモ方式の急速充電設備が数多く設置されている。日本中、どこへ行っても充電には困らないようになっている。しかし、それは保有車両30万台程度を前提にした充電インフラである。もし販売車両の半分以上がEVやPHEVに置き換わったとしたら、とても現在のインフラでは対応しようがないであろう。そもそも電力供給が追い付くのか。そうした点を踏まえて、官民挙げてインフラ整備に本気で取り組む必要があるだろう。

それはともかく、電動化への急速なシフトを踏まえ、今回の輸入車試乗会では充電器を紹介するコーナーが会場の一角に設けられ、数社が展示説明会を行った。各社がアピールするのは急速充電よりもむしろ普通充電設備の方だった。EV、PHVが増えていくと、マンションなどでは共有設備として普通充電器を設置するケースも出てくるに違いない。200ボルトの普通充電器であっても夜間充電をしておけば、朝にはほぼフル充電にできる。もちろん、一戸建てのオーナーも家に充電設備を設置し、割安の夜間電力を利用して常にフル充電にしておくことも可能だ。通勤や通学、買い物といった日常の使い方であれば、この夜間充電にスーパーやコンビニなどの急速充電を組み合わせれば、何不自由なくEVライフをエンジョイできるに違いない。またマンションなどでの共同設備としての設定には補助金も出る。これから輸入車も含め、電動車両のバリエーションが増え、販売台数が増えていくことは、普通充電という身近な充電設備設置というビジネスチャンスが広がっていくことになるだろう。

さて30台ものEV、PHEVが試乗に供された今年の輸入車試乗会には臨時の充電スタンドが会場に設けられ、その3本の普通充電プラグはいつもいずれかの電動車両につながっていた。時代は変わったと思わせる光景である。それでは今回試乗することのできた電動車両について、簡単に紹介してみたい。

◎プジョー508 GT HYBRID

プジョーのフラッグシップ・モデル508はこれまでガソリン1.6lターボとディーゼル2lターボの2タイプだったが、新たにプラグインハイブリッドが加わった。「1.6lガソリンエンジンと電動モーターの組み合わせでシステム合計最高出力225ps、システム合計最大トルク360Nm」の動力性能を発揮する。またEV走行での航続距離は56km(WLTCモード)に達し、買い物や通勤といった日常の足としては十分といえる。

外観はルーフが低くスポーティーさを感じさせるスタイル。白いボディとルーフおよびミラーの黒のツートンが精悍さを表現している。

運転席にすわり、アクセルをそろり踏んでみる。モーター駆動特有のスムーズで静かな発進だ。一定の踏み込みではモーターだけで加速するが、少し強めに踏み込むとエンジンが回り出しモーターをアシストし、力強い加速感を見せてくれる。インパネを見るとモーター、モーター+エンジン、エンジンという3つのモードが選べることが分かる。

EVらしい静かでスムーズな動力は、しなやかな足回りとあいまって、あくせくせずのんびりとドライブを楽しみたいリラックスな気分にさせてくれる。もちろんモーター、エンジンをあわせて225psの動力性能を持つのだから、ダイナミックでアグレッシブな走りをしてみたいと思えば、アクセルをちょっと踏み込むだけで、満足させてくれるに違いない。そのとき、サスペンションもそうした走りを難なく受け止めてくれるしっかり感を持っていると感じた。

◎テスラ モデル3

世界でもっとも売れているEVであるテスラはこれまでの自動車の進化型というより、新種の車だ。電池とモーターで走るというだけでなく、あらゆるところが車らしくない。乗り込もうとしてドアの開け方からして最初は戸惑う。運転席回りには大きなモニターがでんとあるだけでいたってシンプル。このモニターがカーナビとなりクルマの情報を表示し、バックの際はリアモニターとなる。一昨年試乗した時も思ったが、この大きなモニターのリアビューが見やすいことに驚く。全く死角がないため、狭い転回路でもビクビクすることなく安心して後退ができる。

運転席に座ると始動の方法からして戸惑ってしまう。センターコンソールあたりにキーの代わりになる名刺大のプレートをかざし、ブレーキを踏みながらステアリング右側の小さなレバーを押し下げると、スタンバイだ。あとはアクセルを踏むだけ。走りは極めてリニア。踏み込みに応じてリニアに加速する。まるでゴーカートを操っているようだ。足を戻すと減速し、ブレーキを踏むことなく、停止できる。この走りの味わいも従来のエンジン車や試乗に供された他の電動車両とは異なる。異次元の乗り物に乗っているようだ。

今回試乗したのは後輪駆動のベーシックモデルで、価格は479万円。後輪駆動でありながらトランク容量は巨大、ボンネットにあたる部分もエンジンなどの機器類がないため、荷物がかなり入る。価格は日産リーフとほぼ同等で、電池容量も公表はしていないが、同様の50kWh付近と思われる。チャデモ変換器を使って充電すると50kWしか出力は出ないが、テスラ専用の充電器を100kW近い出力で充電できるそうで、30分程度でかなりの電気をため込むことができる。

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