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2012年4月28日

メルセデス・ベンツ 歴史に残るレーシング活動の軌跡 1894-1955』刊行にあたって、本書を企画したきっかけや思いをお伝えします。

 今から数年前に、私の良き友人であり、英国のヒストリアンとして多くの自動車歴史関連書を執筆してきたブライアン・ロング、美穂夫妻とともにヨーロッパ各国を訪問しました。目的のひとつは欧州自動車メーカーの広報部に挨拶に伺う事でした。当時のダイムラー・クライスラー社の広報部に伺うと「あなたは日本人ですか?」と聞かれ、「そうです」と答えると、「それならこの本を知っているでしょう」といわれて菅原留意著『メルセデス・ベンツ グランプリカーズ』二玄社(1997 年刊)を見せてくれました。詳細なイラストでまとめられ日本で刊行されたこの本を、広報部内でも非常に高く評価されていたのです。当時のダイムラー社は、クライスラー社と合弁していた時代でしたが、メルセデス・ベンツのアーカイブには予想していた以上に大量の資料が保管されていました。私は将来「レーシング時代のメルセデス・ベンツ」の写真集を日本で編集して出版することを約束して、当時の貴重な写真を年度別に申し込むことにしました。それらのプリントは帰国してから数カ月後に約束どおりに日本に届きましたが、誠実で親切な広報部の方々の対応には、頭の下がる思いでした。
 その後、数年が瞬く間に過ぎてしまって、写真は保管したままになっていました。そんなときに医師でありクルマ愛好家の宮野滋氏に相談する機会を得ました。宮野氏は、欧州車の中でもベンツに関しては徹底的に調べていて、以前からベンツのレーシング活動に関する執筆もされていたので、この写真集製作の協力をお願いしました。そして宮野氏が快く承諾してくれたことで、本書を進めることができたのです。こうして完成までには数年間がかかってしまいましたが、ダイムラー・ベンツ社広報部との約束がようやく実現できることになったのです。

(編集部 小林謙一)

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