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2018年4月10日

フォルクスワーゲンe-ゴルフに試乗しました。その様子をお伝えします。(レポート:相原俊樹)


 3月下旬のある晴れた日、フォルクスワーゲンe-ゴルフに試乗する機会を得たので、その印象をお伝えしよう。e-ゴルフは100kW/136PSを発揮する電気モーターが動力源の純EV(電気自動車)だ。エネルギーを供給するのはリチウムイオンバッテリー。車両の床下スペースにこれをフラットに配置することで、重量バランスを最適化している。と同時に、パワートレイン(動力源から駆動輪の前輪に力を伝達する一連の機構)も専用品に変えてある。ごく大づかみに言えば、内燃機関ゴルフとの違いはこれだけ、e-ゴルフは7.5代目ゴルフの美点をそのまま活かしたEVだ。

 事実、走り始めの印象はごく自然。私は最初、ドライブモードの”D”で走ったのだが、これだとブレーキを踏んでから減速するまでの”空走感”がやや気になった。そこで”B”を選ぶ。これがいい。アクセルペダルをほんの少し放すだけで、じわりと”エンジンブレーキ”が効く。前車との車間距離を目測しつつアクセルペダルを踏む角度を徐々に緩めてスピードを落としていき、最後にブレーキペダルに足を踏み換えて確実に停止。市街地ではこういう運転がごく自然にできる。
 回生ブレーキによるバッテリーチャージを積極的に行う”B”モード。その旨みは高速道路に乗っても変わらない。ただ速度域が高い分、ペダルを放したときの”制動感”が高まる。この日、私と同行したパッセンジャーは、普段マニュアルギヤボックスのオープン2シーターに乗る愛好家だが、巡航中、彼から「今、ブレーキ踏んだ?」と聞かれ、私が「いや、アクセル緩めただけ」と答える場面が一度ならずあった。乗り手は自分の意思で減速するのに対して、パッセンジャーはこれを受け身で感じるしかない。とりわけ”B”モードでは”エンジンブレーキ”の効きがやや唐突に感じられるのかもしれない。
 高速道路では静粛な巡航性能が印象的だった。最大の騒音源はロードノイズ。ほかの音源が静かなだけにかえって際だってしまうのが惜しい。

 e-ゴルフは発進から100km/hまで9.6秒で到達する。私は一度だけフル加速を敢行した。エンジンの咆吼がまったくないまま、みるみる車速を上げていく。EV初体験の私には新鮮だった。ただし巷間伝わるような、「最初から最大トルクを発するモーターの威力で首が仰け反るような加速」というのではない。ここでも「自然」という表現が当てはまる。ウォルフスブルクの技術陣にとって、加速力はいかようにも強めることはできるのだろうが、ゴルフの性格をよく踏まえた設定だと思う。それでも屈曲路ではコーナー脱出時の加速がいいので運転が楽しい。
 EVで最大の関心事は航続距離。e-ゴルフではJC08モードで301kmとあるが、あくまで一つの目安で、走行パターンにより大きく変わりうる。そして今回EVを試乗するに当たり一つ発見があった。例えば東京なり横浜から東名高速道路に乗って、御殿場までドライブするとしよう。ルート途上、足柄と海老名サービスエリアには充電設備が設置されている。但し、これを使うには専用のカードもしくは事前に登録されたクレジットカードが求められる。だから友人のEVを借りて長距離ドライブに出かけようと思えば、事前の手続きが必須となる。ご注意あれ。
 ちなみに今回の試乗では東名青葉インターから大磯まで有料道路を使い、大磯周辺を走って横浜・港北まで戻る総計およそ100km余りを走った。出発時に310km程度を示していたパワーディスプレイは、車輌返却時に175kmに減っていたが、この程度の距離なら無充電でも不安はない。
 e-ゴルフはEVゆえの特殊性を極力排除して、内燃機関の自動車から乗り換えてもほぼ違和感を覚えないクルマだった。動力源が変わってもゴルフはやはりゴルフ。フォルクスワーゲンの地に足のついたクルマ作りを感じさせる1台である。

取材協力:フォルクスワーゲン港北

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