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2012年2月3日

「ソープボックスダービー®」をご存じですか?<br/>昨年開催された東京モーターショー2011で、親子で参加できる木製モックカーによるタイム競技などのファミリーイベントを行なっていたので目にされた方もいらっしゃると思います。しかし、まだ日本ではなじみの薄い「ソープボックスダービー®」。そこで、NPO法人日本ソープボックスダービー®の方に、その歴史、活動について教えていただきました。 

◆日本ソープボックスダービー®のご紹介◆

1933年に始まったソープボックスダービー® は、エンジンがない手作りのクルマで坂道を下る重力カーレースの総称です。毎年春になると、アメリカで行われる”オールアメリカン・ソープボックスダービー®国際大会”参加をめざす親子の熱戦が全米各地で繰り広げられ、日本でも、日本代表選考会としてソープボックスダービー®日本グランプリが開催されています。日本ではまだ馴染みが薄いですが、世界(特に自動車産業国が中心)でさまざまな形で親しまれているソープボックス®の魅力を、NPO法人日本ソープボックスダービー®の活動などを通して、ご紹介します。
 
 当初、ソープボックスダービー®のクルマは”工場から切り出した石けんを入れて運ぶ木箱”を車体として使っていたので、”ソープボックス”ダービーと言われるようになったといわれています。
 日本国内では富士スピードウェイのご協力で施設内のミーティングルームや構内路をお借りし、国際大会で使う本物のレース車両を用い、”クリニック”と呼んでいるクルマの組み付け指導や体験会、日本大会に向けた練習会を年間数回実施しています。
 レースで使うクルマ(キット)が親子の手作りだということがソープボックスダービー®の特徴で、本家のアメリカでは「自分の実力を知り未知の知識や技術に挑戦する」このクリニックの機会を、とても重要に考えています。
 体験会では、子どもが、NPO法人日本ソープボックスダービー®によって事前にセットアップされたクルマで走り、親はそのフィーリングを聞きながら、クリニック・スタッフの下で再調整をします。子どもとのやり取りのむずかしさに加え、調整も簡単ではありませんが、親子で学びながら最速に挑戦することによって「楽しいひととき」を感じていただけたらと思っています。

 NPO法人日本ソープボックスダービー®では、神奈川県秦野市で毎年開催しているソープボックスダービー®日本GPの企画運営を行っています。
 大会は、市内の一般道でレースを行う日本代表選考会が中心ですが、前日の車検や重量調整を含む一泊キャンプをとおして地域交流も大切にしています。
 参加の条件は、親子でエントリーすることと、ドライバーが8~17才までの少年少女であることの2点です。参加する子どもには、日本代表を懸けた真剣勝負からフェアプレイ・粘り強さ・冷静な判断力を学び、悔しさをぜひとも経験してほしいと願っています。ちなみに、レースに出場するクルマは一部の個人所有を除き参加者へは本部のものを貸し出しており、部品もタイヤも同じものを使い、ウェイトのハンディがないようドライバーとクルマの合計重量を測定し調整するなど、条件に配慮しています。そして、「日本代表の誇りと自覚を持って、アメリカで80年近く続く伝統レースへ参加し、勝負の厳しさと異文化交流を体験すること」を目的に、日本GP優勝者にはオールアメリカン・ソープボックスダービー®国際大会の参加権を授与し、毎夏1名をアメリカ・オハイオ州のアクロンに派遣しています。

 アメリカでは当たり前の、しかし日本の社会ではまだ根づいたとはいえないボランティア活動ですが、いわゆる商業主義とは一線を画した理念によって運営するオールアメリカン・ソープボックスダービー®国際大会のやり方を、私たち日本ソープボックスダービー®も活動の中で実践しており、参加者家族や地域の方、マンパワーをくださる賛同者の皆さん、ソープボックスダービー®卒業生、大学生等がなくてはならない存在として数々の年間イベントで活動しています。
 
 その他、日本GPと同時に地域の子どもを対象にソープボックスダービー®カーを使った交通安全教室「集まれ! まめレーサーの交通安全教室」を開催するなど、私たちはソープボックスダービー®カーを通してクルマを操る楽しさだけでなく、クルマが持つリスクも同時に伝えることにより、交通安全に対する意識の教育を行っています。
 また、約10分の1のモデルのソープボックスダービー®カー(木製キット)と計測器を仕込んだ長さ10メートルのコースを使い、「地球のチカラではしる!ソープボックス®モックカーの工作・レース」を随時開催し、子どもたちにモノづくりの喜びとたがいに競い合い向上していく楽しさを伝えています。

 私たちは「日本一丸!ソープボックスダービー®で子どもを育てる!」という思いで活動を続けて、「親と子のコミュニケーションの場を作る」ことには成功できたと思っていますが、国際大会ではまだ勝利がありません。「なぜか?」と考え、分かってきたのは「子どもたちには物理法則を身体で理解する感性が足りない」ということでした。
 重力、重さ、摩擦、抵抗などについて、日本の子どもはテストでは良い点数を取ります。しかし、「身体で分かっている」わけではありません。つまり、物理現象を理解した上で、車両作製、コース取り、運転操作への応用ができていないのです。大人は、机に向かうことだけが勉強だと、ケガを恐れて工具を取り上げてこなかったでしょうか。理科離れの原因とその弊害がここにも現れているのではと思えてなりません。
 今の子どもたちに必要なのは、ロジカルなものの考え方、科学技術の応用と工夫についての、実体験を通したトレーニングだと考えます。ソープボックスダービー®はエンジンこそありませんが、クルマの原点です。
 私たちはこの活動をとおして、子どもたちが物理現象(重力、摩擦、空気抵抗など)を感じ、モノづくりの楽しさに触れる知と感性のトレーニングの場を提供し、次の世代の子どもたちの教育、そして自動車産業への貢献をしたいと願っています。

NPO法人 日本ソープボックスダービー®

http://www.nsbd.org/

・アメリカ本部(ALL-AMERICAN SOAP BOX DERBY)
 http://www.aasbd.org/
・ALL-AMERICAN SOAP BOX DERBY 公式Youtubeチャンネル
 http://www.youtube.com/user/aasbdorg

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