第22回 VWポロ 1.2L TSIエンジン搭載車
第22回 VWポロ 1.2L TSIエンジン搭載車
・試乗グレード  TSIハイライン
・全長  3,995mm
・全幅  1,685mm
・全高  1,475mm
・エンジン形式  CBZ
・種類  直列4気筒SOHC
          インタークーラー付ターボ(2バルブ)
・排気量  1,197cc
・最高出力  105ps(77kW)/5,000rpm
・最大トルク  17.8kgm(175N・m)/1,550-4,100rpm
・車両本体価格  2,420,000円(税込)



ポロの進化の歴史

1975年に初代ポロが導入されてから、今日までどのように進化してきたかを外観、内装写真、車体寸法も含めて簡単におさらいしたい(カッコ内の数値は全長×全幅×全高、ホイールベースmm)。

初代ポロ

(3,512×1,559×1,344、2,335mm)
1975年にビートルの実質的な後継車として導入されたFFの3ドアハッチバックモデル。エンジンは当初は900cc、後に1.1L、スポーティーな1.3L搭載のポロGTが追加された。

2代目ポロ

(3,655×1,590×1,350、2,335mm)
1981年にモデルチェンジ、一まわり大きくなってワゴン風スタイルで登場したのが2代目。その後セダン、3ドアHB(クーペと呼ばれた)とバリエーションが増えた。エンジンは1.0L、1.1L、1.3L、1.3Lスパーチャージャー、ディーゼルなどが搭載された。

3代目ポロ

(3,715×1,660×1,435、2,410mm)
1994年にモデルチェンジされた3代目は安全性を大幅に高めたモデルで、はじめて4ドアモデルも設定された。1996年から日本への本格導入が始まり、日本仕様には1.6Lエンジンが搭載され、1999年にはGTIモデルも登場した。

4代目ポロ

(3,890×1,665×1,480、2,470mm)
2001年に登場した4代目では、内外装質感が大幅に向上、日本仕様は4ドアと2ドアが用意され、1.4LのDOHCエンジンを搭載、その後1.6Lモデルや1.8LターボのGTIも追加された。1975年からの世界における累積販売台数は1060万台。

5代目ポロ

(3,995×1,685×1,475、2,470mm、1,080kg)
2009年3月のジュネーブショーで発表された5代目は、2代目ゴルフのサイズ(3,985×1,665×1415、2,475mm)に非常に近くなった。日本には2009年10月に1.4Lの自然吸気エンジンと7速DSGを搭載した「ポロ1.4コンフォートライン」が導入され、以来6000台近くが販売されたが、さる5月、待望の1.2L TSIエンジンが導入され、「ポロTSIコンフォートライン」「ポロTSIハイライン」というラインアップとなった。

5代目ポロのプラットフォームは4代目がベースだが、ボディーには高張力鋼板や超高張力鋼板が広範囲に使われたほか最新の接合テクノロジーを駆使し、強固、かつこれまでよりも軽量なボディーを実現、フロントには新設計のマクファーソンストラット式サスペンションが採用された。外観は、オーソドックスだが、エレガントになった。内装の進化はそれ以上で、同クラスの日本車にはない質感を実現している。1.2L TSIエンジン、ドライツインクラッチの7速DSGによる走りと燃費は大変満足のゆくもので、加えてリニアなステアリング・ハンドリング、しなやかで高質な乗り心地、静粛性などの動的性能も大幅に改善された。

いつから発売?

2010年5月から発売。

お値段(車両本体価格)は?

2,420,000円



クラス概念を打ち破るクルマ

ポロ1.2L TSI搭載車を一言でいうならば、従来のクラス概念を超えた、ダウンサイジングが加速する今後の世界市場にとって意義が大きいモデルであり、開発にかかわった人たちに敬意を表したい。最大のポイントは、VWが近年情熱を傾けてきたTSI(小排気量化するとともに過給により実用領域のトルクと燃費を飛躍的に向上させた直噴エンジン)とDSG(6又は7段のマニュアルトランスミッションに二組のクラッチを組み合わせ、電子制御で自動変速する高効率の変速機)による「実用領域」における満足のゆく走りと燃費の両立である。加えて内外装の質感、更にはハンドリング、乗り心地、ドライブフィールなどの動的質感の面でも従来のクラス概念を打ち破るものだ。


シンプルかつエレガントな外観スタイル

外観はオーソドックスだが、エレガントなデザインになった。中でもフロント、サイドまわりの、シンプルだが質感の高い造形がいい。新型ゴルフにも採用された新しい顔つきは、アウディのシングルフレームグリルほどのインパクトはないが、視覚的に重心の低さや横幅をアピールするとともに、適度なクローム調のアクセントにより質感とシャープなイメージを与えている。サイドのキャラクターライン、スカート部分の造形も力強く、質感に満ちており、日本車にありがちな薄っぺらさがない。外観スタイル面での注文としては、ややオーソドックス過ぎることと、顔つきやリア周りに、もう一歩個性的でセクシーなキャラクターが作りこまれていればと思う。もっとも「このオーソドックスさがいい」という人も少なくないとは思うが。


2ランクは上の内装の質感

外観以上に質感がアップしたのが内装だ。外観同様「オーソドックス過ぎる」という見方も出来なくはないが、スラッシュ成形のダッシュボード、細部にわたるクローム調のトリミング、ステアリングホイールの握り感、視認性の良いメーター、更にはシートの見栄え、着座感など、同クラスの日本車の、プラスティッキーな造形と質感で、コストダウンの圧力が見え見えの内装に比べると、はるかに上質だ。ダウンサイジングに際してのユーザー心理を見事に「先取り」しているといえよう。ただし、後席はまるでクーペに乗っている錯覚を覚えるほどの閉塞感があることと、エアコンルーバーのクローム調トリムが左右のドアミラーに反射するのは残念だ。


快適なシートと便利なシートアレンジ

シートも、形状、サイズ、着座感、ホールド感、縫製、見た目の質感など、いずれをとっても多くの日本製の同クラスのモデルよりもずっと好ましく、約500kmの長距離ドライブでもシートの快適性は光った。後席中央用の3点シートベルトもうれしい。シートバックだけを倒すことも出来るが、リアシートクッションを持ち上げて前方に倒せば(ダブルフォールディング)フラットで、大きなカーゴスペースが生まれる。カタログには記載がないが、リアカーゴエリアの2段式の物入れも、濡れたものや、一緒にしたくない荷物の収納などに便利だ。一点、後席シートバックの角度が同行の車評メンバーから「やや立ちすぎている」という声があったことは報告しておきたい。


スポーツカーもたじたじの走り

1.2L TSIエンジンは従来の1.4L TSIの鋳鉄製のエンジンブロックからアルミダイキャスト製に変わり、ブロックだけで14.5kgも軽量化され、更にメインベアリングを小型化したクランクシャフトで−2kg、シリンダーヘッドで−3.5kgなど、合計で24.5kgもの軽量化を実現している。バルブは2バルブSOHC化されているが、小径ターボ、水冷インタークーラー、電子制御式のウェイストゲートなどにより最小のターボラグを実現、1,550rpmで175Nmの最高トルクを発揮するエンジンは、市街地、高速、登坂などいずれの走行条件でも、とても105馬力の最高出力のエンジンとは思えない走りをしてくれるし、Sレンジに入れればスポーツカーもたじたじの走りとなる。

7速DSGの、加速はもちろん、降坂時のプロ顔負けのシフトダウンなどの変速ロジックは脱帽ものだ。市街地での発進加速や登坂の発進時に、場面によっては唐突さがあるという車評メンバーの声はあった。たしかにゴルフのDSGよりやや発進時のショックが大きいように感じたが、私は違和感のあるシーンにはほとんど遭遇しなかった。人によりアクセルペダルの踏み込み方に差があるからかもしれないし、エアコンの稼働が関係するかもしれない。


大変良好な実用燃費

今回の最大の注目点のひとつでもあった燃費は173.5kmの車評コースの実測燃費が15.3km/Lとなった。ゴルフの1.4L TSIエンジン搭載コンフォートラインの実測燃費、14.5km/Lよりもかなり良く、自然吸気エンジン搭載の軽自動車の実用燃費に近いが、20.0km/Lというカタログ値を意識したためか、カタログ値に対する実測値の達成率は77%で、欧州車としてはギャップが大きい方だ。高速セクションの燃費は18.5、市街地は9.7だった。車評終了後の八ヶ岳往復466km(8割程度が高速)の実測燃費は17.4km/Lとなった。高速道路だけを、燃費を意識して走れば20km/L近く行けそうであり、45Lのタンク容量で、800?近くを給油なしで走れるのは大変うれしい。


あらゆる速度で心地いいハンドリング

ゴルフの電動パワステも大変気持ち良いが、ポロの電動油圧パワステによるステアリング・ハンドリングもセンターがクリアーで、まっすぐ走ることが気持ち良く、それなりの舵角を必要とする八ヶ岳高原ラインなどでのステアリング・ハンドリングも大変気持ち良かった。185/60R15というサイズのタイヤだが、かなりなハードコーナリングでも十分期待にこたえてくれる上に、乗り心地の良さ、ロードノイズの低さ、タイヤを交換する場合のコスト、冬用タイヤのコストなどを考えるとき、実に適切なサイズのタイヤが選択されているといえよう。


上質な乗り心地

試乗したポロ1.2L TSIハイラインの乗り心地は、市街地、低速時の大きめのギャップの乗り越え時のショックがやや大きいことを除き、市街地、高速、凸凹のあるワインディングなどほとんどの路面で、大変しなやかで心地良く、質感の高い乗り味を提供してくれた。高い車体剛性に加えて、両グレードともに185/60R15という決して太すぎないタイヤ、適切なサスペンションセッティング、更にはシートなどが影響しているのだろう。クラスを問わず日本車の中にはまだ空想の世界を想定したかのようなオーバーサイズタイヤを選定し、日常領域における乗り心地への配慮に欠けるモデルが少なくないだけに、VWの成熟した思想に拍手したい。


驚くほどの静粛性

そして驚くほど室内が静かだ。適切なサイズのタイヤ、十分な車体剛性などに起因してか、路面の荒い、いわゆる「粗粒路」を走っている時の前後輪からのノイズの低さには驚かされた。このクラスの日本車でこれに匹敵するロードノイズの低さを誇るクルマないといっても過言ではない。このクルマのあとに乗った自分のRX-8の、(かなり摩耗が進んだタイヤを装着しているとはいえ)、ロードノイズの高さに思わず愕然とした。ポロで評価したいのはロードノイズだけではない。エンジンノイズ、風騒音も望ましいレベルに抑えられており、総じて騒音も従来のクラス概念を超えたものとなっている。


クルマの良さが表現されていないカタログ

以上のような仕上がりを見せてくれたポロ1.2L TSIエンジン搭載車だが、48ページにわたる立派なカタログの多くのページが単なるビューティーショットで飾られており、TSIやDSGの説明やポロが目指した乗り味などの説明が少ないのは余りにも残念だ。販売、マーケティングに携わる人たちのこのクルマの意義に対する理解の低さに起因しているのだろうか? 同様なことはアウディのカタログにも言えるが、日本市場でVWやアウディを購入する層にはオピニオンリーダーが多いはずであり、購入後自分の選択が正しかったことを周辺にアピールし、その人たちの購入意欲をそそる強力なセールスマンとなってくれるケースは少なくないはずだ。当面は販売店に広報資料も配り、購入者はもちろん、関心のある見込み客にカタログと広報資料を合わせて手交するなどしてはどうだろうか?


ポロ1.2L TSI搭載車は誰におすすめ?

従来のポロは、女性比率が60%というデーターもあるが、ポロ1.2L TSIエンジン搭載車は、気持ちの良い走りと、優れた燃費に加えて、静的、動的な質感も従来のゴルフを凌駕するレベルに仕上がっており、価格もリーズナブル、車両寸法的にみても5ナンバーサイズ故に取り回しも楽で、性別、年齢を問わず、非常に幅広いユーザー層におすすめ出来るクルマだ。ダウンサイジングを検討中の方には是非試乗をお勧めしたい一台だ。今回の一連の評価の結果、私にとっても「今一番欲しいクルマ」の一台になったことも申し添えておこう。

VWポロ1.2 TSIの+と−
+ 105馬力とは思えない走りと、軽自動車に近い燃費の両立
+ ハンドリング、乗り心地、静粛性などの高い動的質感
+ 内装を中心としたクラス概念を超えた質感
− クーペのような閉塞感のある後席
− エアコングリルのクロームの左右ドアミラーへの反射
− 低速で大きな凹凸乗り越えた時のショック



小堀和則氏によるメカニズム解説

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TSIエンジンの開発とその発展の歴史

フォルクスワーゲン社が世界に誇るTSI(ターボ・スパーク・インジェクション)エンジンは、排気量=ハイパワーという従来の常識を打ち破るべく開発された。もともとエンジンの排気量をダウンサイジングしても、過給器によって空気の吸入量(充填効率)を増やしてやれば、十分な出力が得られることは認知されていた。日本でも1980年代に各メーカーから多数のモデルが発売されている。しかし、ターボやスーパーチャージャーといった過給器付きガソリンエンジンは、燃費の低下などデメリットも多かったことも事実であった。TSIエンジンでは、これに極め細やかな燃料供給量と噴射タイミングを実現する直噴システムと、より高い過給圧を実現した過給器を組み合わせることで、従来のエンジンの弱点であった低速域のトルクを30〜50%の向上に成功。さらにダウンサイジングによるフリクションの低減とあいまって、ドライバビリティと低燃費を両立させたのである。日本市場への導入は2007年2月からで、まずゴルフGTに1.4リッターTSIツインチャージャーが搭載された。その後、1.4リッターTSIシングルチャージャー、2リッターTSIとラインナップを増やし、今やニュービートルとV6エンジン搭載モデル以外のフォルクスワーゲン車は、すべてTSIエンジン搭載モデルとなっている。


1.2リッターTSIエンジンの技術的な特徴

そのダウンサイジング技術の集大成ともいえるのが、ゴルフ・トレンドラインや新型ポロに搭載された1.2リッターTSIエンジンだ。先代のポロ1.6スポーツラインに搭載されていた1.6リッターNAエンジンの後継として開発されたこのエンジンは、SOHC2バルブというシンプルなレイアウトが特徴で、ねずみ鋳鉄製(一般に普通鋳鉄と呼ばれる。黒鉛が片状(二次元断面の顕微鏡観察面での形状)の黒鉛を含有する鋳鉄。基地組織によってその呼び名は異なる)ライナーを備えるアルミダイキャスト製シリンダーブロックやプラスチックと鋳造マグネシウムの2ピース構造タイミングケースなどを採用し、軽量化とフリクションの低減を実現。水冷インタークーラー付きターボチャージャーには、電子制御式ウェイストゲートバルブがTSIエンジンとして初採用されており、レスポンスの低下を招くターボラグを最小限に抑えることに成功している。また、ECUは日本専用のセッティングが施されているという。組み合わされるトランスミッションは、高い伝達効率を誇る7速DSGのみの設定だ。これらの結果、新型ポロの10・15モード燃費は、日本に導入された歴代のフォルクスワーゲン車で最高となる20.0?/L(燃費値換算によるCO2排出量は116g/?)を達成した。さらに「平成22年度燃費基準+25%」をクリアするとともに「平成17年度低排出ガス基準75%低減(4つ星)レベル」にも適合。75%のエコカー減税と購入補助金の対象車となり、価格面でも日本車にせまることとなった。なお、生産は旧東ドイツ地域のケムニッツ工場を中心に行われているが、チェコや中国でもすでに生産が開始されており、粗悪な燃料でもパフォーマンスを維持することができるというから、その先見の明には驚きを隠せない。この生産から実用、市場戦略までをワールドワイドで対応するテクノロジーは、かつて全世界で約65年間にわたり2100万台以上生産したビートル(タイプ1)を彷彿とさせるものであり、フォルクスワーゲン社ならではのお家芸といえるだろう。また、電気モーターを採用するハイブリッドシステムとの相性も非常に良いというから、今後もますます目が離せないソリューションへ発展していきそうである。

小堀和則のセカンドオピニオン
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待望のTSIエンジン搭載
発売前から話題となっていた1.2リッターTSIエンジン搭載の新型ポロが今回の試乗車だ。エンジンの排気量はミニマムだが、動力性能は先代に設定されていた1.6リッターNAエンジンを凌いでおり、VW車ではお馴染みとなった7速DSGと組み合わされている。極低速域こそ多少の違和感をおぼえるが、いったん走り出してしまえばスムーズそのもの。TSIエンジンの特徴であるフラットなトルクを、余すことなく路面に伝えてくれる印象だ。また、ハンドリングや乗り心地も洗練されていて、静粛性もクラストップレベルに仕上げられている。まさにコンパクトカーの優等生といえる完成度を誇っており、万人にお勧めできるモデルといえるだろう。思ったより燃費が伸びなかったのは、常時エアコンをつけていたことか原因かもしれない。街中走行で急激に燃費が悪化したことから見ても、小排気量エンジンに対するエアコンのエネルギーロスは大きいと思われ(もちろんそれだけではないが)、改善の余地はありそうだ。

今年はポロイヤー
1.2リッターTSIエンジンを搭載した新型ポロは、発売後わずか1ヵ月で3500台を受注するなど、すでに大ヒットモデルとなっているが、先日、SUV風にドレスアップされた「クロスポロ」が新たにデビューした。ベースモデルに比べてワイルドながらも都会的なセンスにあふれた内外装と、215/40R17タイヤがもたらす軽快なハンドリングは、ポロの新たな一面をアピールするには十分であり、こちらも人気モデルとなりそうだ。さらに今秋には、最高出力180PSを発揮する1.4リッターツインチャージャーエンジン搭載の「GTI」も導入予定だというし、今年度はポロが日本の輸入車市場を席巻する「ポロイヤー」となるだろう。



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