第117回 Automobile Council 2022

2022年6月20日

■エムベースのリニューアルにあたって
三樹書房ウェブサイトのリニューアルに伴い、この連載のアイコンを変更した。画像に並ぶカタログは主に1950年代のアメリカ車のもので、この頃はテールフィンが一時代を築いていた。この画像にしたのは、実はわけがある。現在、1960年代までのアメリカ車の変遷をまとめるべく執筆作業を続けているのである。もちろんこれまでに蒐集したカタログや写真資料などをふんだんに収録して、読者の皆様に楽しんでいただけるものとするべく、日夜頭を悩ませている。刊行を気長にお待ちいただければ幸いです。

今回は、4月15日(金)~17日(日)の3日間、幕張メッセで開催された「Automobile Council 2022」の会場で、筆者の目に留まったものをいくつか紹介する。

会場マップと会場の様子。

今回の主催者テーマ展示は、「究極のツーリングカー/DTMマシーンの魅力」と、この「スーパーカードリーム」であった。1960年代後半から1970年代にかけて、レーシングカー譲りの進歩的ミッドシップ・レイアウト、最新鋭マルチシリンダーのパワフルなエンジン、そしてそれらを包み込む有名カロッツェリアの優美なボディーをまとった、いわゆるスーパーカーたちが続々と登場。子供たちをも熱狂させ、カメラを片手に写真を撮りまくる「スーパーカーブーム」を引き起こした。クルマは左上から時計回りに、1975年Ferrari 365 GT/4 BB(Berlinetta Boxer)、1968年Lamborghini Miura P400、1971年 De Tomaso Pantera、1976年 Lamborghini Countach LP400。

長くは続かなかったが、1970年代後半に巻き起こったスーパーカーブームでは、子供たちがスーパーカーを撮るためにカメラ片手に街中を駆けずり回った時期があった。上の2点は、そのころ富士フィルムが発行したA3サイズのフジカラーF-Ⅱ400の販促シートで、片面にはFerrari 365 GT/4 BBを載せ、裏面には「写そうスーパーカー!撮影虎の巻。キミもスーパーカメラ小僧になれる!」のタイトルで撮影のコツを指南。同時に当時問題になっていた撮影マナーに対しては、「キミも“マナー”を守って安全撮影しよう!」と基本マナーの指導も忘れていない。これはモーターショー会場で配布されたと記憶する。

本田技研工業はシビック生誕50周年を記念して「170カ国、2700万台以上の出会いをつむいだCIVICの50年」と題して、1972年初代シビック2ドアと1984年TEAM YAMATO CIVICを展示。壁面には初代から11代目までのデザインスケッチを配するなど、見ごたえのある展示をしていた。

日産自動車は、発売を間近に控えたRZ34型フェアレディZのカスタマイズドプロトのほかに、写真手前から1970年初代S30型フェアレディ Z-L、1982年2代目HS130型フェアレディ 280Z Tバールーフ、1989年4代目GCZ32型フェアレディ Z 300ZXツインターボ 2by2の4台が展示されていた。

マツダは、2021年11月に立ち上げたレーシングチーム「MAZDA SPIRIT RACING」の活動を軸に、モータースポーツをより身近で気軽に楽しむこと、またジャンルを問わず道具をあやつりスピードに挑戦する人や応援する仲間と繋がり、共にスピードスポーツを盛り上げていくことを目指し、新たに開始する「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING」の取り組みについて発表した。展示されていたのは、初公開されたMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER、1968年コスモスポーツ マラソン デ・ラ・ルート仕様、ファミリア プレストロ-タリークーペ レース仕様の3台であった。

これは珍しい、1961年スバル360コマーシャル。ヴィンテージ宮田自動車からの出展。お値段はなんと1500万円!

スバル360コマーシャルのカタログ。356cc強制空冷2サイクル直列2気筒16hp/4500rpm、3.0kg-m/3000rpmエンジン+3速MTを積む。車両重量400kg、最大積載量150kg、最高速度80Km/h。価格は37.5万円であった。

アルヴィスの日本総代理店である明治産業は2019年に続きアルヴィス6台を出展した。最も興味をひかれたのは、アルヴィスのエンブレム「レッドトライアングル」の奥に控えた、現存するのは5台といわれる、アルヴィス最初の量産車1922年アルヴィス10/30。下段は1921年に発行されたアルヴィス10/30の広告。「世界のベストライトカー」のキャッチコピーと「すべて個人所有の絶対標準モデルでの、最近の成功事例をいくつか紹介します。」として、1921年4月29日から6月6日の間に、3つのレースで4つの金メダルを獲得、5月28日のヒルクライム大会では7つの1位を獲得。6月6日のヒルクライム大会では出場した全種目で1位を獲得したとあり、レースにめっぽう強かったようだ。広告を見てお気づきだと思うが、エンブレム「レッドトライアングル」の頂点が上にあり、しかもウイングがついている。1923年アルヴィス12/40では三角の頂点は下になり、ウイングのない現在の形になった。1921年12月14日に、初めて社名にアルヴィスが入り「The Alvis Cars & Engineering Co. Ltd.」となっている。

アルヴィス10/30は1920年3月に最初のプロトタイプが完成。スコティッシュ・モーターショーに出展。1920年7月に発売された。価格は2シーターが630ポンド、4シーターは720ポンドで、即納できるとある。

主なスペックを記すと、エンジンは1460cc(ボア×ストローク 65×100mm)直列4気筒SV、圧縮比4.5、30hp/3500rpmで、アルミ製ピストン、ギアポンプによる加圧式潤滑システムを採用するなど先進的なエンジンであった。4速MTを積み、最高速度97km/h、燃費は11.7km/L。サイズはホイールベース2794mm、全長3886mm、全幅1460mm、全高1490mm(幌装着時1610mm)、車両重量711kg。ブレーキは前輪には無く、後輪にドラムブレーキを装備。

2022年アルヴィス3リッター・グラバー・スーパークーペのカタログ。これはContinuation model(継続生産モデル)で、アルヴィス社が所有する1966年式グラバー・スーパークーペから必要となる部分を3Dスキャニングしてデジタルデータ化し、当時と同様の工法で製造している。主なスペックは、2993cc直列6気筒OHVマルチポートインジェクション172hp/5000rpmエンジン+5速MTを積み、電動アシスト付きラック&ピニオン式ステアリング、パワーアシスト付き前後輪ディスクブレーキ、エアコン、パワーウインドーなど、デザインを損なうことなく現代の交通事情にマッチする改善が施されている。サイズはホイールベース2832mm、全長4788mm、全幅1700mm、全高1380mm、車両重量1610kg。

京都伏見で1998年創業のシトロエン専門店「アウトニーズ(Autoneeds)」は、1台の2CVを会場に持ち込み、会期の3日間をかけてオーバーホールの実演を行うというユニークな展示を行っていた。

アウトニーズ社が配布した「Build Your Dream DS」と題するDSオーダープログラム。2CVのレストアは国内で行うが、DSについてはオランダの自社工場とヨーロッパ各地のシトロエンスペシャルショップと技術提携することで高品質のレストアを提供するとしている。オリジナルに忠実にレストアするだけではなく、好みに応じたカスタマイズにも対応している。レストア工程の90%をオランダで実施し、日本に輸送後、残工程を京都の工場で仕上げるという。また、アウトニーズ社はDS、2CVのレンタカーも実施している。

今年、新たに設定されたSUV&GEARコンセプト展示として、1962年に登場したプレミアムSUVのルーツ「1977年ジープ ワゴニア」と1977年のカタログ。

上の4点は、最初のジープ ワゴニアである1962年型のカタログ。フロントフェースはジープらしい力強さを感じさせるデザインであったが、1966年型ではごく平凡なフロントフェースとなってしまう。230cid(3769cc)直列6気筒OHC 140hp/4000rpm、29.0kg-m/1750rpmエンジン+3速MT(オプションでAT、2WDにはオーバードライブ)を積む。サスペンションはフロントが2WDはトーションバーによる独立懸架(4WDはオプション)、4WDはリーフスプリング+リジッドアクスル、リアは全車リーフスプリング+リジッド。サイズはホイールベース110in(2794mm)、全長183.7in(4666mm)、全幅75.6in(1920mm)、全高64in(1626mm)。

ガレージ伊太利屋から出展された1965年フィアット600 Dムルティプラと1955~1960年フィアット600ムルティプラのカタログ。1955年のジュネーブショーで発表されたフィアット600セダンは4輪独立懸架で、フィアット初のリアエンジン車であった。翌1956年には派生車種としてフォワードコントロールのデュアルパーパスバージョンの600ムルティプラが登場する。ムルティプラのフロントサスペンションは600セダンとは異なり、フィアット1100のものが移植されている。サイズはホイールベース2000mm、全長3530mm、全幅1450mm、全高1580mm。エンジンは633cc直列4気筒22hp/4600rpmであったが、1960年に600 Dとなり、エンジンは767cc直列4気筒29hp/4800rpmに強化され、ファイナルギア比が5.375:1から4.85:1に変更されている。ムルティプラには4-5シーター、6シーターおよびタクシーの3バージョンが存在する。

上の2点は、ポルシェジャパンから出展された1973年ポルシェ911カレラRS 2.7と発売当時の広告。1972年パリモーターショーに登場した新しいトップモデル、911カレラRSは徹底的な軽量化が図られ、その卓越した性能で来場者を魅了した。広告に「ポルシェ カレラRS:500人の男だけが乗る。」と、いまでは性差別だとクレームがつきそうなコピーが示すように、当初は500台限定だったこの特別シリーズは、1973年7月に生産終了するまでに1525台が製造されている。リアスポイラー付きのエンジンカバーは、後に “ダックテール”の愛称で呼ばれるようになる。

ポルシェ カレラRSのカタログ表紙と、カタログに差し込まれていた「ポルシェカレラRSのレタリングは、リーフレットに記載されているものとは異なり、上の写真のような新しいレタリングになります。」と、レタリングの変更を告示するシート。出展車両には新しいレタリングが採用されていた。

上の3点はポルシェ カレラRSのカタログ。主なスペックは、2687cc(ボア×ストローク90×70.4mm)空冷水平対向6気筒210hp(DIN)/230hp(SAE)/6300rpm、26.0kg-m/5100rpm(DIN)エンジン+5速MTを積む。サスペンションはフロントがウイッシュボーン+トーションバー、リアはセミトレーリングアーム+トーションバー。サイズはホイールベース2271mm、全長4102mm、全幅1652mm、全高1320mm、車両重量960kg。0-100km/h加速5.8秒、最高速度245km/h。

今年、マルシェには26店舗が開店した。左上はAutomobile Councilのオリジナルグッズなどを販売するオフィシャルショップ。右上は三樹書房のショップ。

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