第125回 ロータリーエンジンを復活させたマツダ

2023年1月27日

ローターの形状とeを合わせたエンブレムとe-SKYACTIV R-EVのバッジ。

2023年1月9日、マツダモーターヨーロッパから「電気の時代に向けて生まれ変わったロータリーエンジン」と題するリリースが送られてきた。内容は「マツダは温室効果ガス削減というグローバルな課題に対するマルチ・ソリューション・アプローチとして、2023年のブリュッセルモーターショーでMX-30の新しいパワートレインを発表する。今春より欧州市場で発売される、マツダのコンパクトクロスオーバー(MX-30)に搭載される独自のプラグインハイブリッドパワートレインには、新開発のロータリーエンジンで駆動される発電機が搭載される。新型MX-30は2023年1月13日10時にブリュッセルモーターショーで公開される。」というものであった。

 そして、1月13日にロータリーエンジンを発電機として使用するプラグインハイブリッドモデル「 MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV(エムエックス サーティー イースカイアクティブ アールイーブイ)」がブリュッセルモーターショーで初公開された。

上の4点はブリュッセルモーターショーの様子。黒色のモデルは特別仕様車「Edition R」で、黒基調の外板色および内装色としながら、ルーフサイドにはマツダ初の乗用車である「R360クーペ」のルーフ色を復刻したマルーンルージュメタリックを差し色として採用している。また、フロアマットやシートのヘッドレストには、ローターの形状を模したエンブレムやエンボス加工などの専用デザインが施されている。最上段の写真の人物はマツダモーターヨーロッパのマルティン・テン・ブリンク(Martijn ten Brink)社長&CEOとマツダの上藤和佳子MX-30 プログラムマネージャー。

特別仕様車「Edition R」のルーフサイドに差し色として復刻採用されたマルーンルージュメタリック(Maroon Rouge Metallic)のルーフを持つ「R360クーペ」のカタログ。

上の2点はMAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EVの構造図。マツダ初の量産バッテリーEV(BEV)として2020年に導入したMX-30は、マイルドハイブリッドモデルも一部市場向けにラインアップして、マツダの電動化を主導してきたモデルであり、今回登場したMX-30 e-SKYACTIV R-EVはMX-30 BEVの基本的な提供価値はそのままに、BEVとしての使い方を拡張したシリーズ式プラグインハイブリッドモデルで、BEVが35.5kWhの駆動用リチュームイオンバッテリーを積み、1充電走行距離256km(欧州WLTCモード)なのに対し、R-EVは半分ほどの17.8kWhのバッテリーを積み、EV走行時の1充電走行距離は普段使いには十分な85kmとし、長距離走行時対応としてロータリーエンジン駆動の発電機と50Lの燃料タンクを組み合わせ、レンジエクステンダー(航続距離延長装置)としている。

 また、普通・急速両方の方式に対応した充電機能や1500Wの給電機能、使用シーンに合わせて選択できる「EVモード」「ノーマルモード」「チャージモード」の3つの走行モードを備えている。

上の5点はMX-30 R-EVに搭載されたコンパクトな電動駆動ユニット。新たに開発された発電用8C型ロータリーエンジンは、必要とされる出力性能をコンパクトに実現できるロータリーエンジンの特長を活かし、高出力モーター、ジェネレーターと同軸上に配置してモータールームに搭載している。駆動はすべてモーターで行われる。モーターの最高出力はMX-30 BEVの107kWに対し、MX-30 R-EVは125kWであり加速性能はMX-30 BEVより若干優位にある。

MX-30 R-EVのモータールーム。

MX-30 R-EVの運転席。「EVモード」「ノーマルモード」「チャージモード」の3つの走行モード切り替えスイッチはシフトレバーのすぐ脇に装着されている。

マツダ初の量産バッテリーEVとして2020年に導入されたMX-30

2020年3月、Mazda Motors UK Ltd.から発行されたMAZDA MX-30 FIRST EDITIONのカタログ。「ALL-ELECTRIC MAZDA」とある。

2020年9月、Mazda Motors UK Ltd.から発行されたMAZDA MX-30のカタログ。「100% ELECTRIC. 100% MAZDA」とある。

2020年9月に発行された国内仕様MX-30のカタログ。この時点では国内仕様にはBEVモデルの設定は無く、マイルドハイブリッド(M HYBRID)のみの設定であった。M HYBRIDは2L直列4気筒直噴ガソリンエンジンSKYACTIV-G 2.0 にモーター(ベルトISG〈Integrated Starter Generator〉方式)と24Vリチウムイオン電池、DC-DCコンバーター、回生協調ブレーキからなるシステム。減速エネルギーを回生して電力として活用するほか、発進加速時のモーターによる駆動アシストなどによって、走り・燃費・環境性能をより高いレベルで実現するという仕掛け。

2021年3月に発行された国内仕様MX-30 BEVモデルのカタログ。

アウディ A1 e-tron Conceptのこと

2010年3月に開催されたジュネーブモーターショーに、アウディから世界初のロータリーエンジンで駆動されるジェネレーターをレンジエクステンダー(航続距離延長装置)としたEVが出展された。フル充電では市街地において50kmほどはバッテリーEVとして走行でき、走行距離を延長したいときにはレンジエクステンダーによってさらに200kmほど走行可能であったが、量産には至らなかった。

 ロータリーエンジンを使いこなすマツダならできると確信していたが、13年かかった。簡単なことではないのだろう。

上の3点はアウディ A1 e-tron Conceptの外観と運転席。

上の3点はアウディ A1 e-tron Conceptの構造図。駆動用モーターの最高出力は75kW(102ps)/240Nm、380V/12kWhのリチュームイオンバッテリーは、リアアクスル前のフロアアッセンブリーにT型に装着されている。ラゲッジコンパートメント下に設置されたレンジエクステンダーは、5000rpmでピーク効率を達成する排気量254ccのロータリーエンジンによって15kWのジェネレーターを駆動する。燃料タンク容量は12L。レンジエクステンダーの重量は、エンジン、ジェネレーター、専用のパワーエレクトロニクス、インテークおよびエキゾー スト、冷却ユニット、断熱遮音材、サブフレームも含めて70kgほどという。車両重量1190kg、0~100km/h加速10.2秒、最高速度130km/h以上。シングルフレームグリルに付く4リングエンブレムの後ろに充電プラグ用のソケットが隠されている。

^