今回は予定を変更して息抜きの「スペシャル編」をお送りします。肩の力を抜いて、「クスッ!」と笑っていただければ幸いです。
「車よりワシを見てくれ!」 1915 Ford Model T Special

「フォードT」はアメリカで最初に大量生産された車だから今でも手に入りやすいし、老人たちは家族の一員のような懐かしさを感じるだろう。この写真を撮った時、車は既に90歳を越えているが、おじいさんの方もかなりの年代物だ。当時のスタイルで身を固め、愛車の横でポーズをとる姿は微笑ましく、見ている方も思わず口元がゆるんでしまう。 (カリフォルニアのレース場で)
「おデブさん」 1951 Ferrari 166/212 Uovo Touring
男達はみんな軽蔑の目で見ているみたい。ワタシ、もう一寸ダイエットしなくちゃ!

この車は、自動車に関しては専門外の「彫刻家」がデザインしたため、ボリューム感が極端に誇張され「Uovo」(タマゴ)の愛称で呼ばれています。 (ミッレミリア/イタリア・ブレシアにて)
「色が地味だからってみんなソッポむかないでよ」 1951 Ferrari 212 Export Touring Berlinetta LeMans

Export シリーズは「212」の中でもレース用の「高性能版」で28台が造られ、特にツーリング製のベルリネッタは10台しか存在しない希少モデルです。ルマンやミッレ・ミリアで大活躍したというのに・・ みんな~ッ! 振り向いて~ッ! (カリフォルニア/ペブルビーチにて)
「だれだッ! 高い車にこんないたずら書きしたのは!」 1951 Ferrari 212 Inter Vnale Coupe

現代のレースカーにスポンサーのステッカーは当たり前ですが、1950年頃はゼッケン番号の他はせいぜいメーカー名を大きく入れるだけでした。だから1951年第2回「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に出場したこの車を見た当時の観客には、かなり強烈な印象を与えた筈です。 (カリフォルニア/ペブルビーチにて)
「ビックリ!ロールス・ロイス(その1)」1954 Rolls Royce Phamtom Ⅳ State Landaulette by Hooper

この車は なんと英国エリザベス女王の車です!! 「ファントムⅣ」は、超高級車ロールス・ロイスの中でも別格で、僅か18台だけが王室や各国元首などのために特注で造られました。屋根の後部が皮張りになっているのは、パレードの時オープンにするからで、ナンバープレートは無く、ドアと前後に王冠のマークが入っています。 (イギリス・グッドウッド マーチ伯爵邸にて)
「ビックリ!ロールス・ロイス(その2)」 1965 Rolls Royce Phantom V Limousine

サイケデリック調で、一度見たら絶対忘れないこの車は、知る人ぞ知るザ・ビートルのジョン・レノンが所有していた車です。「ファンタムV」は高級車の代名詞「ロールス・ロイス」の中でも値段が1.5倍もする最上級モデルで、わが国でも皇室の御料車として使われている程の格式の高い車です。ジョン・レノンは当時インドに強い関心を持っていた影響かもしれませんが、このセンス、貴方には理解できますか。 (イギリス・グッドウッドにて)
「ビックリ!ロールス・ロイス(その3)」 1931/38 Rolls Royce-PhantomⅡ Marlin Drophead Coupe

第2次世界大戦でドイツと戦ったイギリス空軍を代表する戦闘機が「スピットファイヤー」で、エンジンはロールス・ロイス製でした。その戦闘機のエンジンをむりやり詰め込んでしまったのがこの車で、一見何でもない上品なスタイルも、よく見ると なんと車体の半分がエンジンで、僅かに見える排気管の焼け具合からも只者でないことが判ります。 (カリフォルニア・ペブルビーチにて)
「ビックリ!ロールス・ロイス(その4)」 1920 Rolls Royce 40/50hp Armoured Car

高級車「ロールス・ロイス」の中でも一番の変わり種はこの車でしょうか。その信頼性に目を付けたイギリス国防省が普通の乗用車を改造して、回転する銃座と機関銃を備えた「装甲車」を275台造らせました。中東やインドのほか、アイルランドの反乱鎮圧にも使われました。映画「アラビアのロレンス」で知られるT.E.Lawrenceが砂漠で使用していたのもこれと同じタイプです。(イギリス・グッドウッドにて)
「こわ~い!」 1998 Lotus Elise 340R(英)

最近の自動車は世相を反映してか「眼のつり上がった」怖い顔が多い。バックミラーに映ったとき。相手を威嚇しようと言う訳でもないだろうが、それにしても爬虫類を思わせるこの顔は、最近見た中では一番コワイ顔だ。 (イギリス・グッドウッドにて)
「笑っていいとも」 1953 EL Cabgallo Special(米)

前回が「コワ~イ顔」だったので、今回はこんなユーモラスな顔にして見ました。これを造った人はキット”良い人“でしょうネ。車は手造りのスペシャルですが、各地で元気に活躍しており、イギリスにも遠征していました。 (カリフォルニア/レース場にて)
「お晩です」 1965 Alfa Romro 2600 SZ Special by Touring

・・・と思わず言ってしまいたくなるユーモラスな表情です。こんな車がバックミラーに映ったら自然に笑ってしまいますよネ。なんとも愛嬌のある滑稽な顔付きには心がなごみます。この車はザガートがごく少数造ったスペシャルで、市販車にはない眉毛が追加されています。 (トリノ/アルファロメオ・ミュージアム)
「歌舞伎が好きだった?」 1922 Wisconsin Special 12.5 Liter

速度記録を狙った車だから空気抵抗を考えて細身に造られています。ラジエターに空気を取り入れるため開けられた穴の形は、流れの効率を考えての事だと思いますが、歌舞伎の隈取を連想させるユニークなものですね。 (カリフォルニア/ブルックス・オークション会場にて)
「 あッ!ワニだーッ!! 」 1925 Sunbeam 350CV

この「ワニ」そっくりのプロポーションを持つ車は大正時代の速度記録車です。今から100年も前の1925年(大正14年)、「マルコム・キャンベル」の操縦で時速243キロの世界記録を出した車で、エンジンは18,322ccもあります。このタイヤで時速250キロとは考えただけでも恐ろしくなります。 (パリ・レトロモビルにて)
「不時着した飛行機? いいえ、これでも自動車です」 1965 Goldenrod (米)

地上最速を目指して造られたこの車は、6.9リッター/608馬力のクライスラー・エンジンをこの長い胴体に縦に4基積み込んでいて、合計で2,432馬力もあったから、普通の車だったら20台分以上にもなります。製作したのはアメリカのサマーズ兄弟で、後ろに見えるのがボンネヴィルで出した時速409.277マイル〈約652キロ〉の表示です。1秒間に「181メートル」走るので、これは東名高速で、東京インターから海老名サービスエリアまでの31.3キロを173秒(2分53秒)で走り切る、信じられない速さです。 (イギリス・グッドウッド)
「俺はモンスターだーッ!! 」 1933 Napir-Railton 24 Liter

この車のエンジンは24リッター(24,000cc)あります。軽自動車なら36台分、原付バイクなら480台分に相当するエンジンです。1933年当時、トラック周回24時間 平均時速230キロの世界記録を持っていた車ですが、バック・ギアが無いようで、後退するときはみんなで押していました。タイヤは現代の物を履いているようですが、当時はもっとプアなタイヤだから24時間に何本換えたことでしょう。 (イギリス・グッドウッドにて)
「クルマか飛行機か?」 1922 Leyat Herica
“お兄ちゃん、これ自動車なの? 飛行機なの?” “うーん・・・ 走って見なけりゃ わかんないなあ

自動車発達の歴史をたどれば色々の奇想天外なアイデアも試みられており、「プロペラカー」と言われるこの方式は、今でも湿地帯で平底のボートに生かされています。1950年代には折り畳みの翼があって実際に空を飛ぶ「自動車」もありました。 (イギリス・グッドウッドにて)
「安全運転で願いまーす」 1912 AC Sociable

この車のドライバーは後の席に座りますから、幌を上げた時の前方確認はどうしているのか心配です。雨が降っても運転席には屋根が有りませんが、これは馬車時代からの影響を強く受けています。100年以上前の車ですが、このスタイルは現代でも東南アジアで見る事が出来ます。 (カリフォルニア/ペブルビーチにて)
「除雪車か??」 1934 Ford V8 Brewster Town Car

雪国で生活した事のある方ならお馴染みの「除雪車」そっくりですが、このウイングは雪を掻くものではありません。この当時の速く走るイメージとして波を蹴立てたボートからヒントを得たものと思われます。この「波切り」のモチーフはこのあとも自動車のデザインによく使われています。 (カリフォルニア/ペブルビーチにて)
「Q:タイヤか? クルマか?/ A:タイヤのクルマです」 1999 VW New Beetle

フランスのタイヤ・メーカー「ミシュラン」が、前後対象型の新しいフォルクス・ワーゲンからヒントを得て造った宣伝用のディスプレーで、ドアとハンドルが付いているので移動は出来ますが、街の中は走れないようです。 (カリフォルニア/レース場にて)
「空飛ぶ円盤?」 1952 Alfa Romeo 1900 C52 Disco Volante

イタリア語で「ディスコ・ヴォランテ」のニックネームを持つこの車は、ボディが薄くて丸いから名前の通り「空飛ぶ円盤」のようにも見えます。全部で3台しか造られなかったこの車の初代オーナーは、イタリアを代表する名女優「ジーナ・ロロブリジータ」だったと言われています。 (トリノ/アルファロメオ・ミュージアム)
「スプーン曲げのユリ・ゲラーを覚えていますか?」 1976 Cadillac Sedan de Ville/Uri Geller

1980年代後半、テレビでスプーン曲げが良く放映されていました。このカビが生えたような自動車は、超能力者と称する「ユリ・ゲラー」が曲げた膨大なスプーンの墓場だったのです。それにしても、スゴイというか、気持ちわる~いというか、コメントの仕様がありません。洗車はどうするんでしょうね。因みに、「スプーン曲げ」が超能力なのか、力で曲げているのかは諸説あって僕には判りません。
「第2次大戦のアフリカ戦線で?」 1935-40 Citroen Truck

この車が第2次大戦で実際に使われていたのは事実ですが、実はこの写真はフロリダのディズニーランドで「インディアナ・ジョーンズ」のアトラクション会場へ向かう途中に置かれていたものです。これだけは塗り替えや手入れが不要、というよりやってはだめですね。でも、ディズニーランドでは古臭く塗る技術も持っているからね。
「超豪華とはこのことです」 1938 Bugatti T57 SC Corsica Roadster

「ブガッティ」は1930年代の古き良き時代を代表するフランスの超高級車です。ボディはもちろん特注のオートクチュールですが、シートにご注目! 本物のワニ皮です!! しかも まるまる2頭分。いささか成金趣味と思うのは貧乏人のヒガミで、このレベルの車には当然の選択なのでしょう。 (カリフォルニア/ペブルビーチにて)
「ちょっとキツイんだよなあ・・・」 1988 Lamborghini Countach LP5000

ずっと以前、「スーパーカー・ブーム」という高そうな車に子供が群がって写真を撮った時代がありましたが、その時の主役がこの「カウンタック」でした。ドアは昆虫の羽根のように斜め後ろに跳ね上がるだけなので、乗るには足から滑り込むしかなく、普通の人でもかなりコツがいりそうです。このドライバーも乗り込むのが大変そうでした。 (カリフォルニア/コンコルソ・イタリアーノにて)
「イタリアの古都にて」 1985-88 Ferrari Mondial 3.2 Pininfarina 2+2 Coupe

ミラノの東 約80キロに「ブレシア」という古い歴史のある町があります。車好きにはミッレ・ミリアのスタート/ゴールとしてお馴染みのところです。写真の場所は「ロッジア広場」といい、正面の建物は昔の宮殿跡で、今は市庁舎となっています。すぐ隣がミッレ・ミリアの車検場なので、当日は車検の終わった車が夕方のスタートまで、広場一杯に駐車します。
「これが本物のステーションワゴンだ!! 」 1942 Buick Special Estate Wagon

最近では使い勝手の良さからわが国でも多くみられる、後ろにドアがある「ワゴン/バン」タイプの元祖です。アメリカでは西部開拓時代からあり、そのまま直訳すれば「駅馬車」となりそうですが、あちらは「ステージコーチ」とよばれる長距離バスで、こちらは一寸駅まで荷物を取りに行くための車です。 (カリフォルニア/モントレーにて)
「え! たべるな?」 1938 BMW 328 MM

この写真は車より「場所」が主役です。ここはサンマリノ共和国のリベルタ広場でミッレ・ミリアのチェックポイントになっており、衛兵付きのお偉方がずらりと並んでいます。その頭上の看板にご注目下さい。上には「LA TABERNA CAFFE RISTORANTE」と書かれています。レストランの名前が「たべるな」ではどうしたら良いでしょう。
―― 次回はパッカードの予定です ――


