第150回 P項-4「ポルシェ・2(356B/C/カレラ)」(独)

2026年2月27日

<Type356B・前期型> (1959~61)

新しく登場した「356B」を見た一部のマニアは「これはポルシェではない」と言ったとか。ポルシェの最大の特徴は「地面にぺったり」と表現される程、低い姿勢が売り物だったが、今度のポルシェはフェンダーは高く、ヘッドライトの位置も上がり、バンパーも高くなり、「これじゃあ普通の車じゃん」と言いたかったようだ。今は見慣れたから写真で見てもさほど違和感を感じないが、リアルタイムで写真を撮りまくっていた僕自身も、初めて見た時は今までとは全く違った車になったと感じたことを覚えている。前と横から見た特徴は、ボンネット上のクロームハンドルの先端が「三味線のばち」の形になった事、ウインカーが「一体型から独立」した事、バンパーの下に「エアダクト」が付いた事、「バンパーガード」、「三角窓」、「ホイールキャップ中央にエンブレム」が全車標準装備になった事があり、後部では「ライセンス・ランプがバンパーに移った」。前期型の特徴はフロント・ボンネットの先端が旧型と同じく「丸い」、後部エンジンフードは「1つ」が識別点だ。

(写真59-1a~e)1959 Porsche 356B 1600 Super Coupe     (1961-03 港区青山通り)

路上で最初に見つけた「356B」がこの車だった。ご覧のように斜め上を向いて駐車していたから、鼻ずらを突き上げる姿勢から、第一印象が歪められた可能性もあるかもしれない。

(写真59-2ab)1961 Porsche 356B 1600 Super Karmann Hardtop Coupe (1961年 赤坂見附/三和自動車前)

建物の窓ガラスに書かれているようにここはポルシェの輸入元「三和自動車」の入り口だ。場所は地下鉄銀座線「赤坂見附」駅のすぐ裏だ。路上駐車が禁止される以前だったから、周りには色々なポルシェが一杯停まっていた。写真の車はポルシェとしては珍しい固定された段付き「ハードトップ」で「カルマン社」の特製だ。(参考に添付した356Aとの違いを比較して)

(写真59-3ab)1961 Porsche 356B 1600 Super Karmann Hardtop Coupe  (1966-11 東京外車ショー/晴海)

カルマン製のハードトップ・クーペだが見た目ではボディが段付きの他には、付いている付属品も変わらない。

(写真59-4ab)1960 Porsche 356B 1600 Super Coupe (1977-01 TACSミーティング/東京プリンスホテル)

こちらはファストバックの標準型クーペだ。

(写真59-5ab)1961 Porsche 356B 1600 Super 90 Coupe (1961-06 第2回外車ショー/晴海貿易センター)

1600シリーズのエンジンは今まで「60hp」と「75hp」の2種だったが、1960年更に強力な「90hp」が「スーパー90」として登場した。リアトランクには「Super 90」のバッジが付けられた。

(写真59-6a~e)1961 Porsche 356B 1600 Cabriolet        (1966-06 原宿/表参道)

「356B」は途中でモデルチェンジするので、写真の車は「前期型」となる。特徴はフロント・ボンネットの先端が「円形」であること、リアのエンジン・換気孔が1つという、従来と変わらないのが前期型だ。ボディサイドに「Custom Coachwork by Reutter」のバッジが付いているが、「Reutter社」はポルシェ以前の1930年代「VW」試作車以来の長い付き合いで、ポルシェ社のコーチビルダーを務めてきたから、この車もスペシャルではなく、カタログ・モデルかもしれない。

(写真59-7abc)1961 Porsche 356B 1600 Super 75 Hardtop (1961-06第2回東京外車ショー/晴海貿易センター)

前出の「カルマン」製のハードトップ・クーペは固定式だったが、カタログ・モデルのこの車は「脱着式」のハード・トップだから、取り外せばオープンカーになる。だから「クーペ」とは名乗れない。

(写真59-10abc)1960 Porsche 356B 1600 Roadster    (2009-10 ラフェスタ・ミッレミリア/明治神宮)

初期の「356B」の排気量は1600cc1種で、「1600」(60hp)、「1600 Super」(75hp)、「1600 Super 90」(90hp)と、出力によって3種があリ、ボディは「クーペ」「ロードスター」「カブリオレ/ハードトップ」と「ハードトップ・クーペ」が選べた。写真の車は「ロードスター」で、フロント・グラスの支柱 (Aピラー)がボディと一体ではない。

(写真59-11abc)1961 Porsche 356B 1600 Cabriolet         (2009-11 明治神宮外苑)

こちらは「カブリオレ」で「Aピラー」がボイディと一体で同色に塗装されている。

(写真59-12a~e)1961 Porsche 356B 1600 Super Coupe (2017-11トヨタ・クラシックカー・フェスタ/神宮)

前期型「356Bクーペ」の最も標準型として参考になる車だ。

<Type356B・後期型> (1962~63)

(参考60-0)356B 前期型と後期型の比較。

後期型の特徴は前、横から見た際、「ボンネットの先端が丸から四角に変わった」、「右のフロントフェンダーに給油口の丸い蓋が付いた(左ハンドルのみ)」、「ボンネットの後端にエア・インテークが開けられた」、後部では「ボンネットのグリルが2つになった」、「クーペの窓が大きくなった」などが前期型との識別点だ。

(写真60-1ab)1962 Porsche 356B 1600 Coupe     (1977-01 TACS/東京プリンスホテル)

後期型になってボンネットの先端が「丸」から「四角」になった。

(写真60-2abc)1962 Porsche 356B 1600 Super Coupe  (1962-05 輸入外車ショー/二子玉川園)

リアウインドが大きくなり、エンジンの排気孔が2つになった。

(写真60-3a~d)1962 Porsche 356B 1600 Super Coupe  (1962-08 虎ノ門/アメリカ大使館付近)

赤坂の「アメリカ大使館」から「外堀通り」に向かう道路で見つけたポルシェだ。後ろの「生駒商店」は自動車ガラスの専門店のようだ。この辺りから「赤坂見附」にかけては裏通りにも小規模の専門店が幾つもあった。

(写真60-4a~d)1962 Porsche 356B 1600 Super Coupe  (2013-11 トヨタ・クラシックカー・フェスタ/神宮)

(写真60-5a~e)1963 Porsche 356B 1600 Super Coupe (2016-08 オートモビル・カウンシル/幕張メッセ)

右のフロント・フェンダーに給油口の丸い穴があけられた。

(写真60-6ab)1963 Porsche 356B 1600 Super 90 Coupe  (1977-01 TACS/東京プリンスホテル)

(写真60-7ab)1963 Porsche 356B 1600 Super 90 Coupe  (1979-05 TACS/筑波サーキット)

(写真60-8ab)1963 Porsche 356B 1600 Super 90 Coupe  (1986-11 モンテ・ミリア/神戸ポートアイランド)

「356B」のエンジンは「1600」(60hp)、「1600 Super」(75hp)、の2本立てだったが、1960年同じ排気量で強化版「1600 Super 90」(90hp)が登場した。ロッカーやプッシュロッドなどは軽合金に換えられ、φ40のダブル・チョークのソレックス・キャブレター付きで最高速度は185km/hだった。

(写真60-9ab)1961 Porsche 356B 1600 Super 90 Roadster (2009-10 ラフェスタ・ミッレミリア/明治神宮)

(写真60-10ab)1962 Porsche 356B 1600 Super 90 Roadster (1995-08 コンコルソ・イタリアーノ/カリフォルニア)

「スーパー90」のオープン版がこちら。リアには「90」の証が張り付いている。

(写真60-11abc)1960 Porsche 356B 1600 Super 90 2+2 Beutler Coupe (1998-08 ラグナセカ/カリフォルニア)

この車はスイスの「ボイトラー社」が5台限定で造ったスペシャル・カーだ。2列シートの「2+2」で、ポルシェには珍しく当時世界的に流行していた「テール・フィン」が遠慮がちに見られる。

< Type356C (1963~65)

「356C」に切り替わった1963年には、次期モデル「901」(後の911) が9月のフランクフルト・ショーでデビューし、64年から生産が始まり65年から発売されたから、「356C」はつなぎ的存在で、全輪ディスクブレーキに変わった以外、あまり変化が無くやや影の薄い存在だった。1965年4月で生産は終了した。日本にはクーペ40台、カブリオレ2台が輸入されている。

(写真61-1ab)1963 Porsche 356C 1600C Coupe  (1966-05 富士スピードウエイ)

(写真61-2ab)1963 Porsche 356C 1600C Coupe  (1983-08 晴海貿易センター)

(写真61-3ab)1963 Porsche 356C 1600C Coupe  (1984-01 TACS/明治公園)

(写真61-4a~d)1964 Porsche 356C 1600C Coupe (1986-11 モンテ・ミリア/神戸ポートアイランド)

(写真61-5ab)1964 Porsche 356C 1600C Cabriolet (1981-05 筑波サーキット)

外見では後部トランク上の「Porsche」のあとに「C」とあるのが唯一の見極めポイントだ。「1600 C」は75hpで実質「356B 1600 Super」と変わらない。

(写真62-1a~e)1963 Porsche 356C 1600SC Coupe (1967-05 富士スピードウエイ)

(写真62-2a~d)1964 Porsche 356C 1600SC Coupe (1977-04 筑波サーキット)

(写真62-3abc)1964 Porsche 356C 1600SC Coupe  (1977-01 TACS/東京プリンスホテル)

(写真62-4ab)1964 Porsche 356C 1699SC Coupe  (1980-11 SCCJ/富士スピードウエイ)

(写真62-5ab) 1964 Porsche 356C 1600SC Coupe (1985-11 大阪万博公園)

(写真62-6ab)1963-64 Porsche 356C 1600 SC Cabriolet  (1995-08 コンコルソ・イタリアーノ/カリフォルニア)

「1600 SC」は「356B 1600 Super 90」の後継車だが、「95hp」迄強化された。もっとも大きな改良点は「4輪ディスク・ブレーキ」が装備された事だ。

<1500GS/2000GSカレラ2/カレラ・アバルト>

我々の目から見れば、「ポルシェ」はノーマル仕様でも立派なスポーツカーだが、ポルシェ社ではこれらは単に「ツーリングカー」であって、レースの為の車は以下に登場する特別チューンされた「GS」仕様の車で、殆どワークス仕様のまま市販された。

(写真70-1a~d)1955 Porsche 356A 1500 GS Carrera Dx Speedster (2010-10 ラフェスタ・ミッレミリア/神宮)

(写真70-2a~e)1958 Porsche 356A 1500 GS Carrera GT Coupe  (1988-11 モンテ・ミリア/神戸ポートアイランド)

(写真70-3abc)1958 Porsche 356A 1500 GS Carrera GT Coupe (1988-08 コンコルソ・イタリアーノ/カリフォルニア)

(写真70-4abc)1956 Porsche 356A 1500GS Carrera GT Cabriolet  (1998-08 ラグナセカ/カリフォルニア)

1956年高性能4カム版「1500 GS カレラ」が誕生した(一部1955年から)。「DX 」(100hp)と「GT」(110hp)の2種があった。

(写真71-1abc)1961 Porsche 356B 2000GS Carrera 2 Hardtop  (1980-11 SCCJ/富士スピードウエイ)

(写真72-1abc)1964 Porsche 356C 2000GS Carrera 2 Hardtop (1977-04 TACS/筑波サーキット)

(写真72-2a~e)1963 Porsche 356C 2000GS Carrera 2 Coupe  (1965-11 東京オートショー駐車場/晴海)

(写真72-3ab)1964 Porsche 356C 2000 GS Carrera 2 Coupe (1998-08 ラグナセカ/カリフォルニア)(

(写真72-4abc)1964 Porsche 356C 2000GS Carrera 2 Coupe    (1994-11 京都ホテル)

(写真72-5abc)1964 Porsche 356C 2000GS Carrera 2 Coupe  (2016-08 オートモビル・カウンシル/幕張) 

(写真72-6ab)1964 Porsche 356C 2000GS Carrera 2 Cabriolet     (1994-11 京都ホテル)

ポルシェでは高性能版を「カレラ」と名付けて別格視して来たが、1961年更にそれを上回る超高性能版「カレラ2」を登場された。それが「356B 2000GS カレラ2」だ。1963 年以降はベースが「356C」に変わっただけで「356C 2000 GS カレラ2」として継続された。エンジンはレーシング用に開発されたDOHC空冷水平対向4気筒1966cc 130hp/4600rpmで、最高速度は200km/hだった。

<カレラ・アバルト>

(写真75-1ab)1960 Porsche 356B 1600 GTL Carrera Abarth Coupe (2004-08 ラグナセカ/カリフォルニア)

(写真75-2a~e)1960 Porsche 356B 1600 GTL Carrera Abarth Coupe (1995-08 ラグナセカ/カリフォルニア)

1960年「アバルト」が「ポルシェ356B 1600GS カレラGT」のシャシーに「ザガート製」のアルミ・ボディを架装したスペシャルで20台造られた。最後は僕の書いた絵で、専門店でコピーして貰い、後年現地でオーナーにプレゼントした。

   ―― 次回は「ポルシェ911」の予定です ――

^