第11回 2022年/Z GT500がデビューイヤーで二冠を達成

2025年4月27日

1号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリがドライバー部門で2連覇を達成したほか、チーム部門でもNISMOが2連覇を果たすなど、2015年のスーパーGTで大きな飛躍を果たしたニッサン勢だが、その後のシーズンでは苦しい戦いを強いられていた。

2016年は3連覇を狙うNISMOの1号車「MOTUL AUTECH GT-R」、松田次生/ロニー・クインタレッリが開幕2連勝を果たしながらも、その後は苦戦が続いたことから、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリのランキング3位がニッサン勢の最上位となったほか、2017年も23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリは最終戦のツインリンクもてぎでポール・トゥ・ウインを達成しながらもランキング2位に惜敗した。さらに2018年も第2戦の富士スピードウェイを制した23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリがニッサン勢の最上位となったが、ランキング8位に留まっており、ライバル陣営から大きく離されていた。
ニッサン勢の低迷期はその後も続いた。2019年も23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリがニッサン勢の最上位となるランキング3位でフィニッシュしたが、勝利を挙げることなくシーズンを終えた。

さらに新型コロナウイルスの影響により、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの3コースだけを使用して変則的に争われた2020年も23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリが第3戦および第6戦の鈴鹿サーキットを制するなど、2勝をマークして、ニッサン勢の最上位でシーズンを終えたものの、タイトル獲得は果たせずにランキング6位に終わっていた。 そして、R35型GT-Rのラストシーズンとなった2021年も、NISMOの23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリが第3戦の鈴鹿サーキット、TEAM IMPULの12号車「カルソニック IMPUL GT-R」の平峰一貴/松下信治が第5戦のスポーツランドSUGOで勝利を獲得したが、タイトル獲得には至らず、12号車「カルソニック IMPUL GT-R」の平峰一貴/松下信治がランキング8位、23号車「MOTUL AUTECH GT-R」の松田次生/ロニー・クインタレッリがランキング9位でシーズンを終えている。

こうして2008年にデビューしたR35型GT-Rは、有終の美こそ飾れなかったが、13年間に5回のドライバーチャンピオン(2008年/2011年/2012年/2014年/2015年)と41勝をマークした。2021年に惜しまれつつ引退することとなったが、スーパーGTにおけるニッサンの活動を受け継ぐことになったのが、RZ34型Zをベースとしたニューマシン、ニッサンZ GT500だった。
同モデルは文字どおり、2022年に発売された新型Zをベースとしたマシンで、ベース車両のエクステリアを活かしたエアロダイナミックスを開発。市販モデルは3000ccのV型6気筒ツインターボ、VR30DDTT型エンジンが搭載されているが、GTマシンには規則によりNISMOがレース用に開発した2000ccの直列4気筒ターボ、NR4S21型エンジンが搭載されており、R35型GT-RをベースとしたニッサンGT-R NISMO GT500で培った技術をキャリーオーバーしながらも、軽量化やエンジンの燃焼特性の改善、各種制御定数の最適化、冷却性能の向上などアップデートが行われており、ニッサン勢は同モデルを武器に素晴らしい走りを披露していた。

2022年もNISMOの23号車「MOTUL AUTECH Z」を筆頭に、NDDP RACINGの3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」、TEAM IMPULの12号車「カルソニックIMPUL Z」、KONDO RACINGの24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」と計4台の新型ZがGT500クラスにエントリー。 そのなかで幸先の良いスタートを切ったのが、23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生/ロニー・クインタレッリで、開幕戦の岡山国際サーキットで3位に入賞。Z GT500のデビュー戦でポディウムフィニッシュを達成した。 続く第2戦の富士スピードウェイでは、12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが3位で表彰台を獲得。さらに第3戦の鈴鹿サーキットでは、3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」の千代勝正/高星明誠がZ GT500での初優勝を獲得するなど、ニッサン勢はニューマシンを武器にトップ争いを沸かせていた。 その勢いは中盤戦になっても衰えることはなかった。第4戦の富士スピードウェイで12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが2位、24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」の佐々木大樹/平手晃平が3位入賞を果たすなどニッサン勢がダブルポディウムを達成。第5戦の鈴鹿サーキットでは23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生/ロニー・クインタレッリが予選でベストタイムをマークしたほか、決勝では12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが最後尾からの劇的な逆転でシーズン初優勝を獲得した。 続く第6戦のスポーツランドSUGOで、トップ争いを支配したのは3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」の千代勝正/高星明誠でシーズン2勝目を獲得。さらに23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生/ロニー・クインタレッリが2位に入賞するなど、Z GT500は日本の主要サーキットを次々に攻略する。 第7戦のオートポリスでは24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」の佐々木大樹/平手晃平が予選でトップタイムをマークし、ポールポジションを獲得。決勝では優勝こそ果たせなかったが、24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」が3位で表彰台を獲得した。

そして最終戦となる第8戦のモビリティリゾートもてぎでは、12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが2位で表彰台を獲得し、平峰一貴/ベルトラン・バゲットがドライバー部門で初めてタイトルを獲得した。同時にTEAM IMPULがチーム部門で27年ぶりにチャンピオンを獲得するなど、Z GT500がデビューイヤーで二冠を達成した。

2022年はベースモデルをGT-RからZにスイッチ。開幕戦の岡山で23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生/ロニー・クインタレッリが3位で表彰台を獲得した。「Z GT500のフィーリングはとてもいい。これからもっと速く仕上げたい」と松田はニューマシンに好感触。クインタレッリも「ストレートでもパワーを感じた。クルマの戦闘力の高さを感じることができた」と手応えを語る。  
第2戦の富士では予選で10番手に出遅れていた12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが猛追を披露、「今回、僕たちのクルマはバランスがあまりよくなかったけれど、結果的に3位でポイントを獲得できた点は良かった」と平峰が語るように3位で表彰台を獲得した。  
Z GT500が初優勝を獲得したのは第3戦の富士だった。予選3番手の3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」の千代勝正(写真右)/高星明誠(写真左)がオープニングラップでトップに浮上。「今回はチームの勝利だと思います。結果でチームに返すことができたので嬉しいです」と千代が語るように、3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」はそのまま完璧なレース運びを見せ、ニューマシンでの初優勝を獲得した。  
第4戦の富士で12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴(写真左)/ベルトラン・バゲット(写真右)が2位に入賞。「優勝が見えていただけに悔しい気持ちがありますが、ベストを尽くせたと思います」と平峰。24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」の佐々木大樹/平手晃平が3位で表彰台を獲得した。
第5戦の鈴鹿では予選で15位に止まっていた12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットが猛追を披露。「予選15番手からトップに上がれるとは思っていなかった」と平峰、「強いレースペースで戦うことができました。平峰選手のチームメイトであることを光栄に思います」とバゲット選手が語るように脅威の逆転でシーズン初優勝を獲得した。  
第6戦のSUGOでは13周目に雨が降り始め、路面がウエットになるなどコンディションが刻々と変化。この状況に対応したのが、予選で3番手につけていた23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生(前列左から3人目)/ロニー・クインタレッリ(前列右端)と予選で11番手に出遅れていた3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」の千代勝正(前列左端)/高星明誠(前列左から2人目)で、ミシュランタイヤを武器に新型Zが1-2体制を形成した。44周目に23号車「MOTUL AUTECH Z」がピットインしたことで、3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」が首位に浮上。その後も完璧なレース運びを見せた3号車「CRAFTSPORTS MOTUL Z」の千代勝正/高星明誠がシーズン2勝目を獲得し、23号車「MOTUL AUTECH Z」の松田次生/ロニー・クインタレッリが2位でニッサン勢が1-2フィニッシュを達成した。  
第7戦のオートポリスでは、24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」の佐々木大樹/平手晃平が予選でトップタイムをマーク。決勝でも3位入賞を果たし、シーズン2度目の表彰台を獲得した。「優勝を逃してしまったのは残念ですが、予選だけでなく決勝でも強さを発揮できつつあるので自信を持って最終戦を戦いたい」と佐々木が語れば、平手も「速さで言えば、今大会で一番速いクルマだったと思います。最終戦は勝利で終わりたい」とのことで手応えのある一戦となった。  
第8戦のモビリティリゾートもてぎでは、その時点でランキング2位だった12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴(右から1人目)/ベルトラン・バゲット(右から3人目)が安定した走りを披露。予選で3番手につけると決勝でも2位入賞を果たし、12号車「カルソニックIMPUL Z」の平峰一貴/ベルトラン・バゲットがドライバー部門、TEAM IMPULがチーム部門でタイトルを獲得。新型Zはデビューイヤーで3勝をマークし、7年ぶりにニッサン勢がスーパーGTのGT500クラスでチャンピオンに輝いた。  
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