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2021年4月30日

2021年4月7日(水)、大磯プリンスホテルを拠点に第6回JAIA輸入二輪車試乗会・展示会が開催されました。その様子をお伝えします。(レポート:小林謙一)


2021年4月7日(水)に催されたJAIA輸入二輪車試乗会・展示会に今年も参加することができました。この試乗会は、大磯プリンスホテルを拠点として、いくつもの外国メーカーの新型オートバイを乗り比べができるという、非常に価値のある試乗会ですが、試乗時間は45分間で1人6台までの試乗が許されています。今年もBMW、BRPジャパン、ドゥカティジャパン、ハーレーダビッドソンジャパン、KTMジャパン、ハスクバーナ・モーターサイクルズ・ジャパン、トライアンフジャパンなどの有名メーカーが参加されており、事前予約として国内外で人気の高いスクランブラーモデルを中心に試乗を申し込むことにしました。

◆BMW R nine T Urban G/S
このモデルは人気のR NINE Tの中でも往年のR80G/Sのデザインを継承したタイプであり、2本のアップマフラーやフロントフェンダーが特徴。試乗車は、GS誕生から40周年を祝うモデルで、R100GSのブラック&イエローのカラーが施された「40周年スペシャルエディション」の中の一台。スタイリングは、単なるロードモデルではなく、GSシリーズのような本格的なオフロードでもなく、通勤にもレジャーにも使用できるデザインであり、ファッショナブルで好ましい。

排気量1170ccの水平対向エンジンの独特の吹け上がりは、やはりBMW唯一ともいえるもので、トルクも十分で適度な振動も心地よい。ハンドリングも軽快であり、ブレンボ製のブレーキは剛性感があり、効きはシャープ。身長175センチほどの私にはBMWの中では足付き性は良いほうである。いつも試乗時に感じるがBMWのシートは硬すぎず、柔らか過ぎず安心感がある。電動スロットルによるスロットルもレスポンス良く加速も滑らかにこなす。

希望としては、この車格と価格を考えるとタコメーターはぜひ標準装備して欲しい。またハンドル幅がもうすこし短く、内側になればさらに乗りやすくなると感じた。R nine T Urban G/S は日常使いにも週末のツーリングなどにも適しているし、カジュアルなライダーウェアでも乗ることもできる、オールラウンドなオートバイといえる。

BMWらしい作りの良さと品質の高さを兼ね備えた、価値のある一台である。
 
 
◆ハスクバーナ Svartpilen 401
ハスクバーナ・モーターサイクルズ・ジャパン社は、2020年度は前年比で26.3%も販売台数を伸ばして、販売新記録を達成している成長メーカーである。個人的にも一度も試乗したことがなかったので、2021年2月に発売されたばかりのSvartpilen 401の試乗を予約してみた。Svartpilen 401は、インドで生産されるモデルで、水冷DOHC4バルブ単気筒44馬力のエンジンを搭載する。ミッションは6速で車両重量は約152kgと発表されている比較的軽量なオートバイで、日本での価格は715,000円(10%税込)である。

Svartpilen 401は、非常にコンパクトで軽量、コントロール性も良く、835㎜のシート高も関係して、足付き性も良く、一言で言えば、「初心者にも乗りやすいオートバイ」である。
メーターは、デジタル表示で見やすく、クラッチもスロットルも軽く、排気量を感じさせない。エンジンのトルクもあり、レスポンスも良い単気筒で、排気音は乾いた音質であった。

デザインは、近年の流行を取り入れたもので、特に若いライダーに好まれるデザインと思う。Svartpilen 401は、操作類は軽く、取り回しもしやすく、乗りやすい一台であり、増え続けているという女性ライダーにもお薦めできる。
 
 
◆KTM250アドベンチャー
このKTM250アドベンチャーは今年度のニューモデルであり、KTMのスタッフに聞いたところでは、今までのモデルからのダウンサイジングなのだという。248.8㏄の水冷単気筒エンジンは、30馬力を絞り出し、車両重量も約159kgと軽量である。デザインはひと目でKTMのファミリーであることがわかり、異型のヘッドランプは特に個性的に写った。

メーターはデジタルでクラッチもスロットルも意外に軽い。シートも柔らかくて、ツーリング使用でもライダーの疲労は少ないと思われて好ましい。ただ、左右のミラーは角型で試乗中は見にくかった。エンジンは、シングルの単気筒と思えないほど、シャープに吹き上がるが、なぜか250㏄クラスとしてパンチ力は感じられなかった。しかし、軽い車体も好ましく、特にコントロール性に優れており、林道や砂地などでも十分に楽しめるオートバイであることを確認した。試乗を終えて、メーカーの方にお聞きしたところ、価格は679,000円(税込)であり、実用燃費は通常の使用でリッター25㎞以上走るそうである。

◆ドゥカティ・スクランブラーSixty2
今回試乗したのは、ドゥカティのスクランブラーSixty2というモデルだった。
コンパクトなボディであり、万人向けするクラシカルなデザインを取り入れた好ましいもの。フューエルタンクなども親しみやすいデザインで、特徴的なL型Vツインエンジンなども見事は収められており、全体のまとまりが良くデザインの破綻は感じられない。ポジションの自由度も高かった。車体はスリムでクッションはすこし固めだが、シート高は790㎜であり、足付き性も良くて両足がべったりと付くほど。

空冷のV型2バルブ399㏄40馬力エンジンは、適度な振動があり、トルクの出方も自然で走り感に優れた印象。特に中・低速の領域は楽しい。効きのしっかりしたブレンボ製のブレーキやKYB製のモノショックサスペンションやステップ部など、販売価格の920,000円(税込)に見合った質感の高さを感じる。車両重量(乾燥)167kgしかなく、ハンドル幅もあり、取り回しは非常に楽だった。
サスペンションは前後とも少し固く、試乗では道路のギャップに突き上げを感じるときもあり、2人乗りでのツーリングには少し不向きに思えるが、日常の足として使用するには最適な一台だと思う。

◆トライアンフ900タイガーGT PRO
トライアンフタイガーは、個人的に興味があって、この試乗会では毎回試乗しているモデルである。ミドルクラスのアドベンチャータイガー800が、900シリーズに移行して、フルモデルチェンジしたので、どのように変わったのか? 確かめたかった。
新しいシリーズには、タイガー900GT、タイガー900GT PRO、タイガー900RALLY、タイガー900RALLY PROの4つのタイプがあり、試乗車は、このうちの900GT PROだった。デザインは、従来モデルを踏襲しており、アドベンチャータイプであることをそのまま具現化している。実用性の高いフロントスクリーンも長距離のツーリングには、有効であり、直立に近いライディングポジションは疲れにくく、個人的には一番好きである。サスペンションは、電子制御によって様々なセッティングが可能だが、試乗にあたっては全てスタンダードの状態であった。

排気量のわりにクラッチは軽く作動し、ブレンボ製のブレーキはしっかりとした剛性感があって、しっかりとした制動力を発揮する。メーター類はデジタルメーターで見やすく、様々な情報が表示され、わかりやすい。足付き性も良く、両足はきちんとかかと部分まで着く。シートもトライアンフらしい作りの良いもので、柔らかく安心感もあり、ロングツーリングには最適なシートと思われる。もちろん2人乗りのツーリングにも十分にその効果を発揮するだろう。

リファインされた888㏄水冷3気筒並列DOHC12バルブエンジンは、中低速を充実したとメーカーの方から説明があったが、2サイクルエンジンのような鋭い吹き上がりは従来のまま残されており、やはりレスポンスの良さは特筆できる。確かにどこからでも加速を始めることができ、中低速は以前よりもトルクが太くなり、確実にアップしていると感じた。
トライアンフの担当者の方に聞いたところでは、実用燃費は10㎞ぐらいではないか?とのことだった。私の経験だが、走り方によっては、もっと良いと思うし、ストロークのある前後のサスペンションも好ましく、日常使いからツーリングまで、あらゆるシーンをこなす1台であることは間違いない。タイで製造されているという、トライアンフならではの作りの良さも考えると、販売価格158万円(税込)は決して安価とはいえないが、今回の試乗車の中ではベストな1台だった。

◆トライアンフ・ボンネビルT100(900㏄)
2019年に試乗した際に、その高い品質感、ライダーが安心できる乗り心地、心地よい排気音とレスポンス、中低速のあるエンジン特性など、最も気に入った1台として印象に強く残ったモデル。その後、親しい友人にもこのT100を勧めて、現在は一緒にツーリングする1台になっている。
往年のボンネビルのイメージをそのまま継承したデザインであり、ベテランライダーには、懐かしく親しみやすい。近年の流行りとはまったく異なるクラシカルなイメージであるが、メーカーの方によると、「古いボンネビルはやはり乗るのはメンテナンスなどが大変だから、新しい今のボンネビルに乗りたい…」という若いトライアンフファンが多いと聞いた。私のような会社員の場合、休日に少しオートバイに乗って楽しみたい、と考えている人には、乗りたいときに安心して乗れることが最も重要である。そう考えると往年の名車のデザインを引き継いでいる現代のボンネビルなどは、やはり信頼性も高いので多くのトライアンフファンに選ばれているのだと思う。

メーターはアナログだが、見やすい、ブレーキは近代化されておりブレンボ製で効きは十分だった。セミアップハンドルで、少し前傾になるポジションもやはり乗っていて視界も良く、丸い左右のミラー配置も良く見やすかった。操作類もシンプルでなじみの位置に配置されておりコントロールも容易である。

2本のマフラーはキャブトン型で、ステンレス製の品質感は高い。試乗の際にいつも感じることだが、他の部品にもトライアンフならではのこだわりを感じさせる部分は多く、オーナーには、高い品質感は”所有する喜び”を与えてくれるものだと考えている。本来オートバイはエンジンやマフラーなど、駆動関係の部品はほとんどが露出されているので、自動車以上にそのデザインや材料や加工方法にも配慮する必要性を感じている。こうした部品ひとつひとつに対するこだわりをもつことは、ぜひ国産のオートバイメーカーも考えて欲しい。

最後に

予定通り6台の試乗を終えて、メーカーごとにその個性の違いを体感することができた。これは同時に試乗しないとなかなかわかりにくく、同時試乗が可能なJAIA試乗会ならではの利点であり、二輪評論家や専門家には絶好の機会であることは間違いない。やはりBMWやトライアンフの質感の高さと大人の走り感、ワクワクするような高揚感を感じさせてくれるドゥカティの乗り味、オートバイの未来を示唆しているようなKTMやハスクバーナ、どのモデルも個性があって楽しく、それぞれの魅力をもったオートバイであった。自動車と異なり、オートバイはモデルのよってその個性やキャラクターは大きく異なる。オートバイを選ぶ際にはできるだけ現車を試乗して、自分の使用方法などを考え、その目的に最適な一台を選択して、大切に乗っていただくことをお薦めしたい。

2021年4月15日 小林謙一

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