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第109回 私の2019カーオブザイヤーマツダCX-30
2019.11.27

今回は、9月20日に導入されたマツダの新型クロスオーバーSUV CX-30に色々な道路条件で試乗することができたので、その試乗記をメインに、ダイハツ/トヨタが11月5日に導入した新型コンパクトSUV(ダイハツロッキー、トヨタライズ)の試乗会で短時間試乗することができたのでその短評も合わせてご報告したい。世はまさにクロスオーバーSUVブームと言っても良いぐらいに新型車の導入が相次ぎ、販売台数が拡大しているが、セダン、クーペ、ステーションワゴン、ハッチバック、従来型SUVなどの古典的なジャンルとは異なる新しいジャンル、「クロスオーバー」への挑戦がメーカーにとってますます重要な課題となってくることは間違いなさそうだ。

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箱根や千葉などの変化に富んだ走行条件下で試乗を行うことが出来たCX-30 20S L-Packageは、2リットルガソリンエンジンのFFだが、その魅力的な内外装デザインと質感、日本市場でも非常に使いやすいサイズとパッケージング、動的質感と人馬一体感などの面から、既存のクロスオーバーとは一線を画す大変魅力的なクルマに仕上がっており、私の視点ではまさに2019カーオブザイヤーと言いたいクルマに仕上がっていることが確認できたので、私の感じたCX-30の魅力をご報告したい。

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主査のメッセージ
CX-30担当主査の佐賀尚人氏によると、『私たちが大切にしたものは、誰が運転してもちょうど良い大きさと感じられることを追求したボディーサイズによりどこへでも行きたくなるフットワーク、感性にあったものを所有する歓びを具現化したデザイン、家族、友人との充実した時間を共有できる十分な室内空間、高い車両性能がもたらす心地よさと安心感からくる心のゆとり、これらすべてを、CX-30を通して提供することを目標とした』とのこと、以下それぞれの項目における印象を述べたい。

外観スタイル
『日本の美意識を礎として深化したマツダのデザインテーマ「鼓動-Soul of Motion」を採用した新世代商品の第2弾で、Car as Art (クルマはアート)と呼べるレベルまで美しさを追求すべく、通常ならこれと相反するはずの居住性や荷室容積などにも一切妥協することなく、チーム一丸となって創り上げた。エクステリアデザインは「Sleek & Bold」がコンセプトで、伸びやかなクーペの美しさと大胆なSUVの力強さという相反する二つの表情を併せ持ったデザインを実現した』というチーフデザイナー柳沢亮氏の言葉通り、外観スタイルはCX-30の非常に大きな魅力点になっているといえよう。

書道の筆づかいの動きである「溜めと払い(とめとはらい)」をテーマとして、面の動きで「反り(そり)」、「移ろい(うつろい)」を表現したとのこと、美しく生命感を感じるデザインが実現されており、ボディー下部の幅広のクラツディング(黒い樹脂部分)、寝かされたCピラー、クーペ風のリヤスタイルなども大きな役割を果たしている。ベンツGLAやレクサスNXもCX-30に近い諸元で、両車ともクルマの狙いはかなり近似していると思われるが、デザインの魅力という点ではCX-30の方が明らかに上だ。

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内装デザイン
『人間中心の思想と、日本の伝統的な建築にみられる「間(ま)」の考え方に基づいてデザインした』という内装デザインも大変魅力的で、質感も満足のゆくレベルに仕上がっている。メーターフードを起点に助手席のドアトリムまで続くウィング状のカーブ、ドライバー中心のコックピットデザインも好感が持てる。前後シートの形状、着座感も良好で、走ることが非常に気持ち良く楽しいクルマだ。ステアリングホイールの形状、触感は国産車の中では群を抜くものといえよう。些細だが少し気になったのは走行中に制限速度が表示されるのは便利だが、本来自分が走っているのではない側道の数値がかなりな頻度で表示されたことだ。

ボディーサイズと室内空間
CX-30は全長が4,395mm、全幅が1,795mm、全高が1,540mmとCX-5より一回りコンパクトで、最小回転半径も5.3mと混雑した市街地でも扱いやすく、立体駐車場も使えるのがうれしい。その割にはCX-5と同等の740mmの前席カップルディスタンス(運転席と助手席の距離)が確保され、後席の膝前スペース、ヘッドクリアランスも不足なく、大人4人が快適に過ごせる室内空間に加えて430Lの荷室容量が確保されている。高すぎない荷室開口部下端の高さと十分な荷室開口幅が確保されていることも使い易さに貢献、また最廉価モデルを除いて「パワーリフトゲート」が標準装備されるのもうれしい。

「CX-3では一寸コンパクトすぎる」、「CX-5ではやや大きすぎる」という方は多いのではないだろうか?CX-30はアメリ市場、欧州市場にも十分に受け入れられるパッケージング、ウェルカムされる内外装デザイン、魅力的な走りによりグローバル市場におけるマツダの最量販車種となっても決して不思議ではないモデルだ。

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車両性能と心地よさ
今回試乗したのは20S L-Packageという車両本体価格が¥2,794,000の2リットルエンジンの前輪駆動車だが、動力性能に不足はなく、エンジンは高回転まで気持ち良く回り、価格的にもリーズナブルだ。今回の箱根往復、千葉のかずさアカデミア往復の試乗距離は362kmの燃費値は12.7km/Lとなったが、箱根からの帰路の渋滞が激しかったので、通常であればもう少し良いデータとなるだろう。レギュラーガソリンであることもいい。

ディーゼル、AWDは短時間の評価しかできておらず、間もなく導入されるSKYACTIVE-Xにもまだ試乗する機会が得られていないので、これらのモデルに対するコメントできないのが残念だが、今回試乗評価したFFも、新世代の車両構造技術、さらにはG-ベクタリングコントロールプラス(GVCの進化版で、ドライバーの素早いハンドル操作に対す車両の追従性を高めるとともに挙動の収束性をたかめたもの)などに起因してか、ステアリング・ハンドリングの応答性、リニアリティーなどが良好で、非常に走ることが心地よいクルマに仕上がっていた。i-ACTIV AWD(状況に応じて前後輪へのトルク配分を自動的に最適化する全輪駆動方式)とG-ベクタリングコントロールプラスが協調して運動性能を向上させたというAWDも含めて総じてCX-30のステアリング・ハンドリング特性は望ましいものに仕上がっているものと思う。

乗り心地も総じて良好だが、唯一低速での凹凸の乗り越え時には後席での突き上げ感がやや気になったことと、静粛性も非常に良いのだが、粗粒路におけるタイヤからのロードノイズだけは是非改善して欲しい。

今回一緒に試乗を行った武田隆氏のコメント
売れ筋のSUVカテゴリーの、ファミリーでも使いやすいサイズということで、待たれていたモデルだと思う。外観は、マツダ3と同様の新世代のマツダ・デザインとなっており、プレスラインを廃した、徹底してスムーズな造形に美しさを感じる。SUVなのに、タフさではなく美しさを目指すのがマツダらしい。SUVであろうとなかろうと、まずは「マツダ」であり、ブランドが目指すクルマづくり、世界観がはっきりしているのをあらためて感じた。  内装の上質感は、外観以上に感じる部分と思う。ダッシュパネルのスマートなカーブなどの美観もさることながら、ステアリングフィールの良さ、シートの重厚なフィット感など、慎重に設計されていると感じた。  

走りに関してもなかなか上質。静粛でしなやかな走りは、ほかの日本車もよくなっているので、CX-30が突出しているとは思わないが、マツダ車は、内外装も含めた全体で、しなやかさ、美しさに統一感がある。ただ、低速域でのゴツゴツ感だけは残念で、大げさに言えばこのクルマの目指す「美しさ」がそこだけ「破綻」していると思った。同クラスのドイツ車よりは、たぶんかけているコストが違うため仕上げの緻密さでかなわない面もあるが、価格では上回る下位クラスのモデルと比べると、CX-30のほうが上質と感じる部分も多いと思う。


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ダイハツロッキー&トヨタライズ
11月5日に導入された新型コンパクトSUV(ダイハツロッキー、トヨタライズ)の試乗会が千葉のかずさアカデミアで行われ、短時間だが試乗することができたので以下はその短評だ。

このモデルは東京モーターショーでダイハツのブースに展示され、「コンパクトなサイズの魅力的なSUV」として印象に残ったので、千葉における試乗は楽しみだった。全長3,995mm、全幅1,695mm、全高1,620mmという5ナンバーサイズのコンパクトSUVだが、プラットフォームはダイハツが注力しているDNGA(Daihatsu New Global Architecture)の第2弾商品で、エンジンは1リットルの3気筒インタークーラーターボエンジン、変速機はダイハツが独自開発してきたスプリットギヤを用いたD-CVT、駆動は2WDと4WDがある。4WDにはダイナミックトルクコントールシステムが組み合わされ、路面状況に応じて適切な制御をしてくれるとのこと。

試乗してまずうれしかったのは室内が大人4人乗れる広さがあることだ。またトランクスペースも後席使用時で369L、デッキボードを取り外すと2WD車では449L(4WD車は407L)のスペースがあり、これならいろいろなファミリーユースに十分に使用可能だ。ダイハツとトヨタとの大きな違いはフロントデザインで、トヨタライズは一目で見てトヨタ車と分かるのもいい。

次にうれしかったのは「このエンジンは本当に1リットル?」と言いたくなるほどの満足のゆく走りを示してくれたことと、CVTの走行時によくある回転数と車速のマッチしない違和感がダイハツのD-CVTでは全くなく、実に気持ち良く走れたことだ。加えてワインディングロードを爽快に走り抜けるハンドリング性能にも脱帽した。ただし2WDは16インチタイヤ装着車も、17インチタイヤ装着車も路面の凹凸による突き上げがかなり気になり、最後に乗った4WD車のレベルなら許容できたので、是非早急に対応されることを願う。

ダイハツロッキー、トヨタライズを一言でいうと、非常に魅力のある小型SUVで、むしろ大型のSUVよりも狭い山間路などでははるかに扱いやすく、実用性に優れており、価格も170万円~242万円(ダイハツロッキー)と高くないことから、今後かなりな販売実績に結びつくのではないだろうか。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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車評 軽自動車編
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