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第118回 ダイハツTAFT
2020.8.27

世界的なブームと言っても過言ではない「クロスオーバーSUV」に対する私の想いはすでに車評オンライン第96回で一度ご報告しているが、このたびダイハツTAFTに試乗する機会がもてたので、TAFTに対する私の印象をご報告するとともに、次回の車評オンラインで、もう一度「クロスオーバーSUV」に対する直近の私の想いをまとめてお伝えしたい。ちなみにSUVとはSpotrts Utility Vehicleの略称で、本来はJeepに代表さるようなオフロード性が重視されたモデルだった。クロスオーバーSUVは、伝統的なSUVとは異なり、乗用車系のプラットフォームを活用、あるいは乗用車系モデルの派生車として広範囲なユーザー層を目標としたモデルで、、セダン、クーペ、ハッチバック、ステーションワゴンなどの伝統的、古典的な車種とは異なり、「よりアクティブなライフスタイルをアピールできる」モデルだ。なおクロスオーバーSUVというネーミングに関しては異論があるかもしれないし、SUV/クロスオーバーという記述もあるが、私は一つの車系として「クロスオーバーSUV」と呼ばせていただくことにしたい。

今やロールスロイス、ベントレーなどの高級車ブランドをはじめ、ランボルギーニ、フェラーリ、ポルシェなどのプレミアムスポーツカーブランドなどからの「高級クロスオーバーSUV」も目を見張るものがある。ポルシェの場合、カイエンとマカンを合わせた世界販売台数はポルシェ全体の6割を優に超えると聞く。私の住んでいる地域(東京都大田区)でもマカンはポルシェスポーツカーよりはるかに多く見受けられる。またレクサスの最近の国内販売台数をみてみるとクロスオーバーSUV(LX、RX、NX、UX)が、伝統的なモデル(LS、RC、CT、LC、GS、IS)をはるかに上回っており、2020年6月の国内販売実績は、クロスオーバーSUV 2,385台に対して伝統的なモデルはわずか506台だ。また最近のトヨタのモデル展開はまさにクロスオーバーSUVに焦点が充てられていっても過言ではない。

そのような中で軽クロスオーバーSUVといえばまずはスズキ・ハスラーを挙げることができる。2013年に導入された初代ハスラーはかなり前の車評オオンライン第44回で高い評価を与えており、2世代目のハスラーの試乗評価は行えていないが、2019年の販売台数は57,840 台と、SUV市場のナンバー1に輝くとともに、コロナウィルスの影響も大きい2020年7月単月でも8,831台が販売され、SUVカテゴリ-のナンバー2の座を守っているロングセラーだ。

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TAFTが目指したものは?

そしてダイハツがこの領域にチャレンジしたのが今回のTAFTだ。ハスラーを意識はしたものの、直接の競合車と考えたわけではないようで、独自の軽クロスオーバーSUVを追求したという。ダイハツTAFTは発表時の写真をみただけではそれほど強く私の心を捉えなかったが、今回の試乗を機にこのモデルをいろいろな角度から検証してゆく過程で印象が大幅に向上、今では私自身が所有したい1台にもなるとともに、4,000台という目標販売台数に対して発売一か月後にすでに18,000台の受注を得て好調なすべりだしも見せている。以下TAFTの商品企画上の要点と魅力をまとめてみたい。

TAFTのキーポイント
開発を指揮されたチーフエンジニアによるTAFTのキーポイントが以下の4点だ。
① タフで力強い「デザイン」
② 広大な視界で解放感と非日常感をもたらす「スカイフィールトップ」
③ 日常からレジャーまでのアレンジ自在の「フレキシブルスペース」
④ DNGAによる確かな「基本・安全性能」と「良品廉価」

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内外装デザイン
TAFTの外観スタイルはなかなかダイナミック&アクティブで魅力的だ。スズキ・ハスラーの外観スタイルも悪くはないが、初代同様に丸形ヘッドランプにこだわったフロントの顔つきが私にとってはいま一歩だ。ハスラーに比べてTAFTの方が好感が持てる上に、リーズナブルな価格で、ブラックパック、クロームパック、ホワイトパックなどの個性化が可能なのも大きな魅力だ。ちなみに私のチョイスはブラックパック(冒頭の2枚の写真)だ。ただしインターネット上のTAFTの外観スタイルに対する評価の中には「不細工なのですぐ飽きる」、「毎日見るとうんざりする」などのコメントも多く、好き嫌いが分かれる、あるいは私同様見慣れるまでに若干時間を要するデザインかもしれない。

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TAFTの内装デザインもなかなか好感が持てる。ハスラーの前席は横移動が可能なのに、TAFTはセンターコンソールを設けているためできないが、充分な前席スペースに加えてドライバーオリエンテッドな(ドライバー主体の)コックピットも好感が持てるもので、インパネデザイン、シートデザイン、メーターのデザインと視認性などにも◎を与えたい。

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スカイフィールトップ
全車に標準装備されたスカイフィールトップ(前席の頭上に大きく広がる固定式のガラストップ)はTAFTの非常に大きな魅力点だと思うが、企画段階ではいろいろな議論があったようだ。スライディングサンルーフではこの前席上方視界、解放感の確保は不可能だし、サンルーフのような通気性こそないが、ルーフにガラスを固定することによる車体剛性のメリットも大きいはずで、標準装備化により車体構造の作り分けをしなくてよいのも大きなメリットだ。ガラスは三重構造で、外側がスモーク、内側がグリーンガラスで、間に紫外線、赤外線カットのための中間膜が配置されており、重量も約5㎏と決して重すぎないのがいい。TVコマーシャルでも繰り返しスカイフィールトップをアピールしているが、私も他車にはない商品価値を与えてくれるこのルーフに大きな拍手を送りたい。

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フレキシブルスペース
軽自動車の限られた車体寸法の中で、車内スペースをどのように確保し活用するかは大きな挑戦だが、TAFTは後席のスライド、リクライニング機構などは組み込まず、荷室を自由にアレンジできるフレキシブルスペースとして設計されており、様々なシーンに対応できるのは大きな魅力だ。後席ヘッドレストを外して倒すと荷室は完全にフラットとなり、また前席ヘッドレストを外して後方に倒すと、写真のように大人が足を伸ばして寝ることが可能となるのもうれしい。ただし一点だけ、後席のシートバックに3段階程度のリクライニング機構があると後席に座っての長距離走行も楽になるではないかと感じた。

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動力性能
今回短時間だがターボ仕様とNA仕様の両方に試乗することができた。エンジンとトランスミッションは基本的にはタントと同じようだが、タントにはターボ仕様、NA仕様全体に装着されている、前後進切り替え用の遊星ギヤを巧みに利用した画期的なD-CVTはTAFTの場合ターボモデルのみに装着される。限られた試乗時間、試乗条件だったのでそのメリットを十分に体験することはできなかったが、エンジンの不足のないトルクとともに、非常に満足のゆく走りを体感することができた。NA仕様もそれなりの走りを示してくれたが、私の選択肢はターボモデルだ。

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ハンドリング、乗り心地
基本的にはタントと同じDNGAプラットフォームだが、TAFTはリヤドアがスライド式ではなくヒンジ式のためサイドシルをまっすぐに通すことができるため、剛性面、衝突強度の面ではTAFTの方が有利なようだ。サスペンションはタントと同じ、フロントはストラット、リアはトーションビームで、165/65の15インチタイヤが全グレードに装着され、好感の持てる操縦安定性と、フロントシートの特性も貢献してか、総じて良好な乗り心地を示してくれた、ただし大きめの凹凸乗り越え時のショックはやや気になった。

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安全性能
TAFTで大いに評価したいポイントとして安全性能も挙げることができる。それは全グレードに電動パーキングブレーキやオートブレーキホールドに加えて、「スマートアシスト」の17種類の予防安全機能(全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール、レーンキープコントロール、ふらつき警報、路線逸脱警報、駐車支援システムなどなど)が標準装備されることだ。TAFTのターゲットカスタマーは若年層のようだが、これらの安全機能は家族内メンバーや、高齢者の運転にとっても非常に大きな安心材料になることは間違いない。

バリューフォーマネー
スカイフィールトップに加えてこれらの予防安全機能、さらにはLEDヘッドランプ、オートエアコン、バックカメラ、自動ドアロックなどが全車標準装備されて、2WDが135~160万円、4WDが148~173万円という価格はバリューフォーマネーという視点からも非常に魅力的だ。見慣れるまでは好き嫌いが分かれるデザインかもしれないし、高齢者層へのアピールには若干時間を要するかもしれないが、高齢者がアクティブなライフスタイルをアピールできるクルマであることも間違いなく、今後次第に販売台数を伸ばしても全く不思議ではない。TAFTの商品開発をされたダイハツの開発陣に心から拍手を送りたい。

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最後に次回のテーマである「クロスオーバーSUVに対する直近の私の想い」にむけてのイメージ写真で締めくくりたい。上からロールスロイス カリナン、ランボルギーニ ウルス、ポルシェ マカンだ。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

関連書籍
ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
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