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第84回 英国人のハートをつかんだフィガロ
2019.7.27

 友人から、英国にニッサン・フィガロがあふれているのをご存知かとのメールと、その様子を載せた「AUTO EXPRESS」誌のURLが送られてきた。筆者は残念ながら知らなかったので、早速、記事を確認したら、2016年7月6日の記事で、フィガロオーナーズクラブ主催のフィガロ生誕25周年記念ミーティングが紹介されていた。フィガロは1991年に国内販売専用車として2万台が限定生産されたが、記事によると4500台ほどが英国にあり、購入価格は2000~2万ポンド(1991年の平均為替レートは1ポンド:238円として47.6万円~476万円。英国のフィガロオーナーズクラブが設立された2009年には1ポンド:146円として29.2万円から292万円)と記されている。国内での新車販売価格は187万円であった。愛される理由は、まずは、まだ英国車が元気であった1950年代をしのばせるレトロでキュートなデザイン、稀少性、そして何よりも魅力なのは故障しないという信頼性だという。

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上の2点は英国のフィガロオーナーズクラブ紹介のパンフレット。クラブは2009年3月に設立され、メンバーは英国のみでなく、日本、ニュージーランド、オーストラリア、米国、カナダ、ドイツ、フランス、ベルギー、スエーデンなどワールドワイドで1600名ほど。メンバーたちはクラシカルな姿に現代的な機能を備えたちょっと風変わりなフィガロは、乗るひと、見るひとたちを笑顔にしてくれるし、混雑した駐車場でも容易に駐車でき、探す時も見つけやすいなど満足しているようだ。

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上の4点は「AUTO EXPRESS」誌に掲載された、2016年に開催されたフィガロオーナーズクラブ主催のフィガロ生誕25周年記念ミーティングの様子。当日は英国ウォリックシャー州にあるロクゾールアビーホテル&エステート(Wroxall Abbey Hotel & Estate)に275台のフィガロが集結したとある。(Photos:Auto Express)

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1989年10月、幕張メッセで開催された第28回東京モーターショーに登場し、熱い視線を浴びるフィガロのプロトタイプ。(Photo:Nissan Motor Co., Ltd.)

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上の5点の写真は第28回東京モーターショーに出展されたフィガロのプロトタイプ。エンジンフードの形状、サイドシルモールディング、リア周りの処理、リアウインドー形状など量産車とは異なる。(Photos:Nissan Motor Co., Ltd.)

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上の3点はフィガロクラブのクラブマガジン「FIGARIST」パイロット号。フィガロは限定2万台を3回の抽選で販売され、抽選に申し込むと、自動的にフィガロクラブのメンバーとなり、クラブマガジンがついてきた。そして運が良ければ抽選に当たった。このマガジンは全3号発刊の期限付き会員誌であった。第1回は8000台分を、1991年2月14日、バレンタインデーに申し込み開始、3月14日締め切り、4月6日抽選結果発表。第2回は6000台分を、同年3月15日申し込み開始、6月16日締め切り、6月29日抽選結果発表。第3回は6000台分を、同年6月17日申し込み開始、8月31日締め切り、9月14日抽選結果発表。いずれの回も契約後3カ月以内に納車されると記されている。フィガロの名前は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」に登場する主人公の男性の名前から借用したもので、マガジン表紙中央には「恋愛のために生きる。フィガロ」のコピーが控えめに載る。それにしても、英国のファンの多くは、フィガロを女性とみなして「SHE」と称している。

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フィガロの魅力的なカタログ。パリ、東京、ニューヨークのシーンが載るが、3人の若手気鋭監督を起用した、全編フィガロが疾走するオムニバス映画(全3編)、パリ編「LIBRARY LOVE」をA. アグレスティ監督、東京編「月の人」を林海象監督、ニューヨーク編「KEEP IT FOR YOURSELF」をクレール・ドニ監督、そして総合プロデューサーにアーティスティックな映画の製作者として国際的に著名なキース・カサンダーを迎えて製作し、ゴールデンウイークの東京を皮切りに、札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、福岡で公開された。

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これもカタログの一部。フィガロはリアピラーとサイドルーフレールは固定されているが、スライディングソフトトップを備え、オープンエアモータリングが堪能できた。ソフトトップの開閉は手動であったが、本革シートやパワーウインドーを標準装備していた。フロントフェンダーとエプロンはBe-1と同様「フレックスパネル(Flex Panel)」樹脂製。ベースは初代マーチで、ボディー架装は高田工業で委託生産された。MA10ET型987cc直列4気筒OHCターボ76馬力エンジン+3速ATを積む。サイズは全長3740mm、全幅1630mm、全高1365mm、ホイールベース2300mm、車両重量810kg、乗車定員4名。ボディーカラーは四季をイメージした、上段左からエメラルド(春)、ペールアクア(夏)、下段左からトパーズミスト(秋)、ラピスグレイ(冬)の4色で、ルーフトップ部はいずれもホワイトであった。テレビドラマ「相棒」の中に登場する杉下右京の愛車フィガロは黒に塗られている。

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 日産自動車の初代マーチをベースとしたパイクカー・シリーズは、バブル景気が始まった1987年に「Be-1」が発売され、バブル景気絶頂期の1989年に「パオ」が発売され、そして、バブル景気が終焉を迎えつつあった1991年に「フィガロ」が発売されている。日経平均株価の変化に注目すると、1986年の最安値1万2881円に対し1987年の最高値は2万6646円に上昇。1989年12月には最高値3万8915円を記録している。しかし、1990年に入るとバブルははじけ、10月には最安値2万221円に暴落している。1991年はやや持ち直し、最高値2万7146円/最安値2万1456円/年平均2万4295円を維持するが、1992年には最安値1万4309円まで下落している。
 フィガロ誕生と同じ年の5月に伝説のディスコ「ジュリアナ東京」が誕生している。1994年8月には消滅したバブル時代最後のあだ花であった。

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執筆者プロフィール

1937年(昭和12年)東京生まれ。1956年に富士精密機械工業入社、開発業務に従事。1967年、合併した日産自動車の実験部に移籍。1970年にATテストでデトロイト~西海岸をクルマで1往復約1万キロを走破し、往路はシカゴ~サンタモニカまで当時は現役だった「ルート66」3800㎞を走破。1972年に海外サービス部に移り、海外代理店のマネージメント指導やノックダウン車両のチューニングに携わる。1986年~97年の間、カルソニック(現カルソニック・カンセイ)の海外事業部に移籍、うち3年間シンガポールに駐在。現在はRJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)および米国SAH(The Society of Automotive Historians, Inc.)のメンバー。1954年から世界の自動車カタログの蒐集を始め、日本屈指のコレクターとして名を馳せる。著書に『プリンス 日本の自動車史に偉大な足跡を残したメーカー』『三菱自動車 航空技術者たちが基礎を築いたメーカー』『ロータリーエンジン車 マツダを中心としたロータリーエンジン搭載モデルの系譜』(いずれも三樹書房)。そのほか、「モーターファン別冊すべてシリーズ」(三栄書房)などに多数寄稿。

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