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第102回 日産DAYZ
2019.4.26

3月末に日産、三菱の新型軽自動車「DAYZ(デイズ)」、「eK(イーケイ)ワゴン」が発表され、4月下旬に横浜で日産DAYZの試乗会が行われた。2代目となる新型軽は日産が開発を担当してパワートレイン、プラットフォームを一新するとともに、内外装デザイン、室内居住性の大幅改善、走りの進化も含めて非常に魅力的な軽自動車に変身しており、日産のいうように「Game Changerとして軽市場を変革するモデル」になりそうなクルマだ。生産は三菱の水島工場で行われる。今回は以下日産DAYZの試乗記を中心にご報告したい。

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新型軽自動車の導入
2013年に導入された初代の「DAYZ」、「eKワゴン」は、プログラムマネージメントは日産と三菱の合弁会社NMKVが行い、三菱が開発、生産して日産へ供給が行われたが、6年ぶりのモデルチェンジとなる2代目DAYZのプログラムマネージメントはこれまでと同じくNMKVだが、開発は日産、生産が三菱となった。

2018年の国内販売台数はDAYZが14.1万台、eKワゴンが4.4万台と圧倒的に日産が多く、日産車の国内新車販売台数の中ではマーチの1.2万台をはるかにこえ、ノートの13.5万台をも上回り日産のベストセラーカーとなっている。初代日産DAYZの累計販売台数は43万台とのこと。新型DAYZの開発にあたっては、パワートレイン、プラットフォーム、パッケージングを刷新しただけでなく、先進運転支援装備プロパイロットを軽自動車として初搭載するなど、日産が率先して開発を担当したという。一部の報道には,新型エンジンはルノーのもののような表現もあるが、基本寸法以外全ての開発は日産のエンジニアによって行われたとのこと。

新型DAYZのパブリシティーにある星野朝子副社長の以下の言葉はまさに新型DAYZにかける日産の想いを集約していると言ってもいいだろう。『"技術の日産"が、その技術と情熱で、日本の軽自動車の常識を変えるべく開発に取り組んだ商品です。私達日産は、Game Changerとして軽市場を変革して参ります.』

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その新型日産DAYSの試乗会がこのたび日産の横浜本社をベースに行われ、自然吸気モデルとターボモデルの両方に試乗したが、一言でいえば大変魅力的なクルマに仕上がっていることを確認することができた。日産によると近年軽自動車のファーストカー比率(登録車との複数保有がないユーザー層)が拡大、半数近い軽保有者が併有なしだという。新型DAYZの導入によりますますファーストカー比率は高まりそうだ。

外観スタイル
まず外観スタイルだが、しっかりとした骨格をベースに、躍動感と精度感をキーワードにつくり込まれており、ヘッドランプ、テールランプのブーメランシグネチャー、キックアップしたサイドラインとCピラー周りの造形も含めてなかなか好感が持てるもので、軽であることのネガティブさをほとんど感じないものとなっている。ただし日産、三菱の新型シリーズの中で私が最も魅力を感じている外観スタイルは三菱のeK X(イーケイ クロス)という軽SUVで、軽自動車であることのマイナスを全く感じさせないもので、三菱eKシリーズの販売にかなり貢献するのではないだろうか。

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内装デザイン
内装デザインは日産、三菱とも共通で、「快適な室内空間」、「軽であることを感じさせない質感」、「いろいろなものが効率よく収納できる使い勝手」などを含めて魅力あふれるものとなっている。エアコンのタッチパネルも非常に使い易く、些細なことだが、車検証と取り扱い説明書の為のポケットを左フロントドアに設けたことにも拍手したい。なぜなら私の所有するクルマでもインパネポケットの最大のスペースを占領しているのが車検証、取扱説明書だからだ。9インチの大型NAVI画面も非常に使い易いが、一寸心配なのはそのコストが20万円を超えることで、スマホによるNAVIが浸透している中でこのNAVIの需要がどのように推移するかは興味深い。内装で一点気になったのは革巻きハンドルの触感だ。「クルマの内装の触感の中で最も大切なのはハンドル」といっても決して過言ではないので、欧州系のクルマの革巻きハンドルを是非参考にして、もっとしっとりとした触感を実現してほしいところだ。

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パッケージング
パッケージングという視点からは、軽自動車の枠いっぱいの外形寸法は変わらないものの、65mmも拡大されたホイールベースが貢献して室内空間が一段と向上、中でもフーガ並みという後席の膝前スペースは「これが軽か?」と疑いたくなるほどのもので、後席のリクライニング、スライド、フラット化などに加えて凹凸のないフラットなリアフロアなどにより実に多岐にわたる活用が可能だ。65mmのホイールベースの拡大を可能にしたのは日産が今回開発した新型エンジンと、新開発のCVTなどのパワートレインによりコンパクトなエンジンルームが実現したことによる。

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動力性能
動力性能の良さにも脱帽した。まず初めに試乗したのは自然吸気仕様だったが、S-HYBRID(スマートシンプルハイブリッド)システムによるモーターアシストも貢献してか、自然吸気でも充分に満足のゆく走りを示してくれた。リチウムイオンバッテリーを搭載したS-HYBRIDシステムは「ハイウェイスター」グレード全てに搭載されており、日産の技術者の説明によればゼロ発進時には機能しないとのことだが、一旦発進したすぐあとからは機能するようで、走りだけではなく燃費にも貢献していることは明らかだ。ターボ仕様の走りは一段と良好で、高速道路の走行も全く苦にならなかった。改善されたCVTの制御にも起因してかエンジン騒音もほとんど気にならなかった。

ハンドリングと乗り心地
ステアリング・ハンドリングは特筆に値するレベルではないが、リニアリティーは良好で、ロールもそれなりに抑えられており、ワインディング路の走行も苦にならない。ただし振動騒音面からみた場合、試乗した2台とも15インチの55タイヤが装着されていたが、タイヤの特性にも起因してか、路面からの細かい振動伝達(特に後席におけるタイヤからの細かい突き上げ)と、粗粒路走行時のロードノイズが気になった。燃費を若干犠牲にしてでも、タイヤの特性をもう一歩改善して欲しいと思うのは私だけではないだろう。またシートの快適性という視点から見た場合フロントシートはなかなかのものだが、後席のシートの着座感に関してはもう一歩改善を期待したいところだ。

プロパイロット
パブリシティーでは冒頭に述べられている軽自動車初搭載の「プロパイロット」にも是非触れておこう。セレナ、リーフ、エクストレイルなどに搭載されているものと同じで、今回は限られた走行条件と走行時間だったので、長時間の変化に富んだ交通状況での評価は出来ていないが、交通渋滞、長距離ドライブなどにおけるドライバーの運転操作の負担軽減は明らかであり、多くのユーザーにとって非常にうれしい装備となるだろうし、販売促進の大きなツールにもなりそうだ。

同じく軽自動車として初めて採用されたハイビームアシスト、移動物を検出可能なアラウンドビューモニター、先進事故自動通報システム(SOSコール)などに加えてインテリジェントエマージェンシーブレーキ、車線逸脱警報、車線逸脱防止支援システム、踏み間違い衝突防止アシスト、ハイビームアシストなど安全の向上に対する諸施策もぬかりがないのも新型DAYZの特色だ。

果たしてゲームチェンジャーに?
このように見てくると、新型DAYZ、eKワゴンはまさにゲームチェンジャーとしての特色を広く備えており、月間8000台というDAYZの販売目標台数はかなり控えめな数値と言ってもよく、一方で三菱の販売目標台数4,000台もeK Xの市場反応によってはかなり上回る可能性を秘めており、今後の販売台数動向は非常に興味深いものがある。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
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