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第98回 2019年次 RJCカーオブザイヤー
2018.12.27

今回は2019年次RJCカーオブザイヤーの選択結果をご紹介したい。国産車を対象にしたカーオブザイヤー、輸入車を対象にしたカーオブザイヤー・インポート、技術を対象としたテクノロジーオブザイヤーの選択は、昨年11月1日から今年の10月31日までの間に導入されたものの中から、まず11月1日に会員の投票により各カテゴリーにおける上位6車、6技術を選出、続いて11月13日に、もてぎサーキットに各カテゴリーのベスト6を集めて最終選考会(テストデー)を開き、サーキット内にある一般路、評価路で試乗評価後、無記名で投票することにより決定。また今年は特別賞も選定、12月17日に授賞式を行った。

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RJCとは?
RJCは「日本自動車研究者・ジャーナリスト会議」と呼ばれる1991年に設立された特定非営利活動法人で、定款には自動車の性能、利便性などの評価を行い、国産車、輸入車の製造、販売、購入、使用などに関わる人たちすべてに対して、直接もしくは諸種の媒体を通じて提言を行う、また自動車の交通、安全、環境保全などの問題に対しても貢献することをめざすとある。2018年度の会員は59名だ。ジャーナリストが多いが、大学教授、交通評論家、自動車研究家など幅広いバックグラウンドをもった人たちの集まりで、私も2002年以来会員となってきた。

もてぎサーキットにおける最終選考会
RJCカーオブザイヤーの各賞の投票前に実施されるもてぎサーキット内における最終選考会はこれまでも非常に貴重なイベントだと思ってきた。どんな経験豊かな人でも、一年間の間に各所で行われてきた新型車の限られた時間の試乗会や、長距離評価を行うことのできた一部モデルの評価だけをベースに順位づけを行うことは決して容易ではなく、同一条件で相対比較する意義が非常に大きいからだ。加えて評価用に設定しているコースはサーキットではなく、路面が適度に荒れコーナリング評価も可能な一般路と評価路で、私たちは一般ユーザーの使用条件に近い条件で評価することが出来る。その結果もふまえてサーキット内の会議場において1位から6位までの採点(1位6点、2位5点、3位4点、4位3点、5位2点、6位1点)を無記名で行い、メーカー、インポーター関係者の立会いのもとで開票し順位を決定するが、テストデーまでに自分が仮決定していた順位が、もてぎサーキット内での最終選考会で変動することを毎回体験している。

投票が無記名であることの意義も大きい。記名方式だと、どうしてもメーカー、インポーターの思いを気にしての配点になってしまうことが避けられないからだ。また投票総数が50名前後になることの統計上の意義も大きく、偏った選択が一部に仮にあったとしても投票数多いことで適切な方向に向かうことで、納得性の高い、適正かつ公正な選考結果となることを毎年実感している。

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2019 RJCカーオブザイヤーの選考結果

三菱エクリプスクロス  253点
日産セレナe-POWER  175点
ホンダクラリティ―  163点
ホンダCR-V  145点
マツダCX-8  144点


2019 RJCカーオブザイヤー: 三菱エクリプスクロス
受賞理由
≪スタイリッシュなクーペスタイルのコンパクトSUVというだけではなく、三菱自動車独自の電子制御4輪駆動技術「S-AWC」により、高い走破性、操縦安定性を確保。新開発1.5L直噴ターボエンジン+8速スポーツモード付CVTは、中低速トルクを向上させることで、活発な走行性能を実現した。≫

2019 RJCカーオブザイヤーに選定された三菱エクリプスクロスはSUVとしての基本性能の高さ、優れた走行性能に加えて、スタイリッシなデザインと日常生活における使いやすさを組み合わせた三菱のグローバル戦略車だ。ベルトラインやキャラクターラインによる前傾姿勢、傾斜したリヤウィンドー、精悍なイメージを狙ったフロントフェイス、筋肉質の前後フェンダーなどにより、スポーティーでダイナミックな外観デザインに仕上がっており、内装デザインも、クーペ風のデザインながらリヤのヘッドルームも十分に確保された上に、スポーティーなクロスオーバーSUVの内装として魅力的なものに仕上がっている。居住性と実用性の高さも十分に評価に値する。各種ファミリーイベントへの対応の自由度が高いことはエクリプスクロスの大きな魅力点だ。

全グレードに新開発の1.5 Lダウンサイジング直噴ガソリンターボエンジンが搭載さており、優れた燃費性能と排気ガス特性を維持しつつ、2.4L NAエンジンをしのぐ中低速トルクを発揮、8速スポーツモード付のCVTと組み合わせにより良好な動力性能を発揮してくれる。

4WD車には、S-AWC(スーパー オール ホイール コントロール)が搭載されるが、S-AWCとは、電子制御4WD、AYC(前輪の左右駆動力差を電子制御し、旋回性能と旋回時のトラクションを向上させる機能)、ASC(滑りやすい路面などで4輪のブレーキを独立制御すると同時に、エンジン出力も最適に制御しトラクション性能を向上させる機能)、ABSを統合制御して、駆動性能および車両の旋回性能と安定性能を広範囲な走行条件で向上させる車両運動統合制御システムだ。

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2019 RJCカーオブザイヤー・インポートの選考結果

BMW X2  236点
ボルボV60  161点
フォルクスワーゲンポロ  154点
アウディA7スポーツバック  146点
アウディA8  125点
ボルボXC40  123点


2019 RJCカーオブザイヤー・インポート:BMW X2
受賞理由
≪SUVとクーペを融合させたBMW独自のSAC (スポーツ・アクティビティ・クーペ)としてアグレッシブなプロポーションを持つ。1.5L直列3気筒ターボ+7速DCTのFFモデルと、2.0L直列4気筒ターボ+8速スポーツATの4WDモデルを用意。ダイレクトなステアリングとパワフルな走りに加え、小回りのきく優れた日常性能を持つ。≫

昨今クロスオーバーSUV市場の拡大は目を見張るものがある。輸入ブランドの中ではBMWがSAV (スポーツ・アクティビティー・ビークル)と呼ぶカテゴリーのモデルを積極的に導入、すでにX1、X3、X4、X5、X6があり、今秋導入されたのがX2、X7で、遠からずX8も導入されるようだ。

X2は今回RJCカーオブザイヤー・インポートに選ばれたモデルだが、X1のプラットフォームを活用しながら、トヨタC-HRに近いコンパクトなクルマに仕上げており、クーペ風の魅力的な外観スタイルでありながら、後席居住性、トランクスペースなどの実用性も不満のないレベルで、1,535mmの全高は、立体駐車場はもちろん自宅の駐車場などの面でメリットと感じる人も少なくないはずだ。

動力性能的には2Lはもちろんだが、3気筒の1.5Lでも十分にスポーティーな走行が可能で、加えて高い車体剛性も貢献してか、直進時、ワインディングロード走行時ともに非常に楽しめる操縦安定性を備えており、まさにスポーツ・アクティビティ・クーペと呼ぶにふさわしいクルマに仕上がっている。


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2019 RJCテクノロジーオブザイヤーの選考結果:

e-POWER(日産セレナe-POWER)    233点
対向車対応機能(ボルボV60)  187点
進化したプラグインハイブリッド(ホンダクラリティPHEV)   181点
1.5Lダウンサイジング直噴ターボエンジン(三菱エクリプスクロス)  169点
ディジタルアウターミラー(レクサスES)    110点


2019 RJCテクノロジーオブザイヤー: 日産セレナe-POWER
受賞理由
≪エンジン、バッテリーといった主要パーツを既製の自社製品を使って構成、基本原理は単純なシリーズハイブリッドながら、低燃費の電動車両を低コストでまとめあげた。減速回生ブレーキを有効に活用することにより、運転を楽しくかつ負担軽減する「ワンペダル操作」をも実現するシステムである。≫

2代目ニッサン ノートは2012年9月に導入されたが、2016年11月のマイナーチェンジ時に追加されたe-POWERパワートレイン搭載車が好評を博し、コンパクトカーのベストセラーとなった。そのe-POWERパワートレイン搭載車の第2弾として導入されたのがセレナe-POWERだ。5代目セレナは2016年8月に導入され、2018年2月にe-POWERが追加されて販売台数が大幅に拡大されている。

e-POWERを一言でいえば、エンジンで発電してモーターだけで走る「発電機式電気自動車」で、EVとの最大の違いは発電のためのエンジンを積んでいるため充電の心配なくモーターのみで継続して走行できることだ。セレナe-POWERは基本的にはノートe-POWERと同じモーター、同じ1.2L3気筒エンジンを活用、ノートより500kg以上も重い車両重量をカバーするために、モーター出力を25%、バッテリー容量を20%、エンジン出力を7%アップしているが、後述のように実に活発な走行が可能で登坂路も含めてエンジン発電のみで不足なく走れるというのは大変魅力的だ。e-POWERパワートレイン搭載車の現在の比率はノートで6割、セレナで4割とのこと。

セレナの場合1.8kWh(セル数96個)のリチューイオンバッテリーをフロントシート下とセンターコンソール下に分けて搭載、320 Nmのモーターと1.2Lの3気筒エンジン(62Kw)がエンジンルームに収まっている。まず脱帽したのは静止状態からフルトルクの期待できるモーターならではの走りと静かさだ。S(スマート)モードでの加速の良さに驚いたが、ECOモードでも十分に満足のゆく走りをみせてくれた。静粛な走行が可能なのは、モーター駆動であることが最大の要因であることは言うまでもないが、走行中のセカンドシート、サードシートの人達との静かな車内でのコミュニケーションが容易なことも大きな魅力だ。

ECOモードとSモードで可能なe-POWERドライブ(ワンペダルドライブ)は、アクセルペダルを戻すことにより0.15Gまでの減速をしてくれるため一旦慣れると運転することが実に快適で楽しいだけでなく、通常のクルマに比べてドライバーがブレーキを踏む機会が70%も減るという。雪が積もった路面や氷結した路面での通常のブレーキでは、タイヤがロックしてスリップしやすいが、e-POWERの場合、回生でなめらかに減速できるためブレーキペダルを踏まずに減速することができるため、安全上のメリットも大きいことが予測される。

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2019 RJC特別賞:ホンダ・Nバン
受賞理由
≪軽バンの新基準となることを目指して開発。荷室を低床化、また助手席からリヤシート、テールゲートまでフラットな空間を実現。さらに軽バン初のセンターピラーレス仕様とすると共に、テールゲートを使い分けることで、高さのある荷物の積載をもさらに効率良くスムーズに行うことを可能とした。「積む・運ぶ」を快適にするとともに、日常生活を豊かにした。≫

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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