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第96回 クロスオーバーSUV
2018.10.29

SUV (スポーツ ユティリティー ビークル)は当初はアメリカを中心にフルサイズピックアップ派生のワゴン車として生まれオフローダーが主体だったが、その後はモノコック構造で日常生活での利便性も高いライフスタイルカーとして発展、現在日本市場においてSUVの販売はすでに登録車全体の20%を占めるほどまでに成長した。近年は異なる車種の掛け合わせともいえる「クロスオーバーSUV」が世界市場で急速に拡大、高級ブランドからの導入も目を見張るものがある。日本市場ではコンパクトクラスが発展、今回三菱エクリプスクロスとスバルXVを限られた時間の試乗だが評価する機会が得られたので、それらの印象も含めてクロスオーバーSUVについて語りたい。

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トヨタC-HR

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アウディQ2

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ポルシェマカン

クロスオーバーSUVの成長
最近の日本市場でのクロスオーバーSUVの人気車種としては、国産車ではトヨタC-HR、ホンダヴェゼル、日産ジューク、マツダCX-3、などがあり、輸入車ではミニクロスオーバー、アウディQ2、ベンツGLA、BMWX1などをあげることができるが、今回ここでご紹介する三菱エクリプスクロスとスバルXVはまさに最新のコンパクトクロスオーバーSUVだ。加えて最近ポルシェ、ベントレー、ジャガー、マセラティ、ランボルギーニなどの高級ブランドからも次々に導入され、これまでの、セダン、クーペ、ステーションワゴン、ハッチバック、スポーツカーなどというカテゴリーが大きく変革するタイミングにあるといっていいだろう。それだけに今後内外のメーカーがどのような車種展開をするかは非常に興味深く、SUVを中核とする商品戦略のあり方によってメーカーの将来が大きく揺さぶられる可能性もある。

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三菱エクリプスクロス

三菱エクリプスクロスの狙い
これまでに三菱エクリプスクロスには一度試乗する機会をもったが、この度オフロードにおけるS-AWC(後述)の体験を含む試乗の機会がえられたので、まずはその印象も含めてレポートしたい。エクリプスクロスはSUVとしての基本性能の高さ、優れた走行性能に加えて、スタイリッシュクーペの世界観と日常生活における使いやすさを組み合わせた三菱のグローバル戦略車だ。2017年10月に欧州、11月に豪州、ニュージーランド&アセアン地域、2018年1月に北米市場への導入を先行させており、日本市場への導入は2018年3月だ。駆動方式は2WDと4WDがある。

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内外装デザイン
外観デザインのコンセプトは「躍動、そして挑戦」で、ベルトラインやキャラクターラインによる前傾姿勢、傾斜したリヤウィンドー、精悍なイメージを狙ったフロントフェイス、筋肉質の前後フェンダー、二分割されたリヤウィンドーなどが特徴で、なかなかスポーティーでダイナミック、かつ存在感のあるデザインに仕上がっており、レッドダイヤモンドと呼ぶ深みのある赤いボディーカラーも魅力的だ。ただし外装の複雑な面や多くの部品による構成の煩雑さは否定できず、今後もう一歩洗練された方向に踏み込んでほしいと思うのは私だけだろうか?内装デザインはブラックとシルバーのモノトーンでシンプルだがスポーティーな造形をしており、スポーティーな「クロスオーバーSUV」の内装としてなかなか魅力的なものに仕上がっている。

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室内居住性と実用性
エクリプスクロスの居住性と実用性の高さは十分に評価に値する。リアシートの6:4分割、200mmスライド、9ポジションのリクライニング機構などによる後席空間の多様性と不足のないレッグスペースなどに加えて、クーペ風のデザインながらリヤのヘッドルームも十分に確保されている。各種ファミリーイベントへの対応の自由度が高いことはエクリプスクロスの大きな魅力点だし、60mmスライドするだけで9インチのゴルフバック4個が積載可能なスペースが確保できることもゴルフファンにとって貴重なポイントとなろう。

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走りと燃費
エクリプスクロスは全グレードに新開発の1.5 Lダウンサイジング直噴ガソリンターボエンジンが搭載さており、筒内噴射と吸気ポート噴射をきめ細かく制御することにより優れた燃費性能と排気ガス特性を維持しつつ、2.4L NAエンジンをしのぐ中低速トルクを発揮、8速スポーツモード付のCVTとの組み合わせにより良好な動力性能を発揮してくれる。実用燃費は今回計測できていないが、JC08モードでの燃費値は、15.0(2WD)、14.0km/L(4WD)となっている。今回は走行条件が限られており、ハンドリング・乗り心地に関しては広範囲なコメントを差し控えたいが、総じてハンドリング、乗り心地にも好感が持てた。

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S-AWC

S-AWC
エクリプスクロス4WD車には、アクセル開度や車速、走行条件などにより後輪へ伝達するトルクを常に適切にコントロールする電子制御4WDシステムに、アクティブヨーコントロールのブレーキ制御を追加したS-AWC(スーパー オール ホイール コントロール)が搭載されており、「Auto」、「Snow」、「Gravel(グラベル)」の切り替えが可能だ。一般道の試乗ではその効果の程を知ることはなかなか至難だが、今回三菱自動車広報部が用意してくれた検証プログラムは説得力のあるものだった。御殿場近郊の広いダートコースで、まずは世界的なラリードライバーである増岡浩氏がハンドルを握り、パイロンを設置したコースでS-AWCのオン(Gravel)とオフの状態で、フルスロットルで走行、助手席、後席で違いを体感させてもらい、その後自分でハンドルを握り、S-AWCの制御によるコントロールを体験することができた。オフの状態でアクセルを踏み込んだ状態でパイロンでセットされたコーナーに入るとクルマのコントロールは至難の状態になるが、オンの状態ではアクセル全開でも、車速と駆動力、コーナリングが見事に制御されることを確認することができた。雪や凍結路で走行する機会の多いユーザーには安全の視点からも有効なシステムであることは間違いなく、このS-AWCシステムを多くの方々に認知いただき、一般ユーザーに普及させるためにも、三菱自動車には降雪地帯での試乗イベントに加えてS-AWCありなしのモデルの事故率のデータを蓄積されることを是非お勧めしたい。

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スバルXV外観スタイル

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スバルXV内装デザイン

スバルXV Advance
スバルXVにも一言触れておきたい。2017年4月にフルモデルチェンジしたスバルXVは日本市場でスバルの基幹車種となっているが、このモデルもまさにクロスオーバーSUVで、寸法的にはエクリプスクロスと非常に近いが、スバルらしく全てのモデルが4WDだ。ベースモデルのエンジンは自然吸気の1.6Lと2.0Lだが、10月に入ってe-BOXERという2.0Lエンジンと電動技術を組み合わせたXV Advancceが導入され、この度幸運にも新型フォレスターの試乗会に合わせて広報車を借り出し箱根を往復することができたので以下簡単にご紹介したいが、XV Advenceは車格的にも価格的にも、エクリプスクロス4WDと非常に近似している。

外観スタイルはエクリプスクロス同様ステーションワゴンとSUVの掛け合わせと言えるもので、エクリプスがよいかXVがよいかは人により好みは分かれるかもしれない。内装のデザインテーマは不思議なほど両車は似ているが、細部にわたる質感のつくり込みはスバルXVが一歩上だ。動力性能はノーマルモードだとエクリプスクロスに軍配が上がるが、XVにはSモード(スポーツモード?)の選択が可能で、このモードに切り替えると変速プログラムも変わり走りはかなりスポーティーなものになる。箱根往復の満タン法による燃費はSモードの多用も影響してか12.5km/Lとやや期待を下回った。XVのハンドリングは称賛に値するレベルで、その要因としては曲げ剛性が2倍に、ねじり剛性が1.4倍になった新しいプラットフォーム(スバルグローバルプラットフォーム)によるところが大きいと思われる。また乗り心地も大変好感の持てるレベルで、走行の質感に関しても拍手したい。スバルXVと三菱エクリプスクロスがお互いに競合相手となることは間違いなく今後の市場動向から目を離せない。

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マツダCX-4

マツダCX-4の日本市場導入に期待
2015年のフランクフルトショーで私が一目でほれ込んだモデルがマツダCX-4というクーペ風SUVだった。残念なことにマツダはCX-4を中国市場専用車として開発、前回の東京モーターショーでは短期間控えめに展示しただけで、日本市場への導入に関しては一切公言しなかった。正直言って開発初期からなぜ日本市場と北米市場に対する考察がなかったのかは理解に苦しむところだが、最近になって2019年ごろの日本市場投入を検討中らしいことがインターネット上でうわさされ始めており大変うれしく思っている。

クロスオーバーSUVの今後
エクリプスクロス、XV、CX-4などがそろえば日本におけるコンパクトクロスオーバー市場はますます活性化してゆくだろう。クロスオーバーSUVの生活の道具としての高い実用性、躍動感のあるデザイン、そして様々な走行条件下におけるドライバビリティ―と安全性などが活動的なライフスタイルの人達にますますアピールすることは間違いなく、一方で内外各社からも様々なクロスオーバーSUVが相次いで導入されることは容易に予測でき、厳しい競争が待ち構えていることも間違いないので、今後の各メーカーの対応に注目してゆきたい。


三菱エクリプスクロスのスペック ≪内はスバルXV≫
・全長 4,405、 ≪4,465≫mm
・全幅 1,805、 ≪1,800≫mm
・全高 1,685、 ≪1,550≫mm
・ホイールベース 2,670、 ≪2,670≫ mm
・車両重量 1,550、 ≪1,550≫kg
・エンジン 直列4気筒直噴インタークーラーターボ、≪水平対向4気筒ノンターボ≫
・排気量 1,498、 ≪1,995≫ cc
・圧縮比 10.0、 ≪12.5≫
・最高出力 150ps(110kW)/5,500rpm、
≪145ps(107kW)/6,000rpm (モーター13.6ps)≫
・最大トルク 240 Nm(24.5 kgf・m)/ 2,000~3,500rpm、
≪188 Nm(19.2 kgf・m)/4000rpm(モーター65 Nm≫
・駆動方式 4WD
・変速機 8速スポーツモードCVT、≪リニアトロニック前進無段≫
・タイヤ 225/55R18、 ≪225/55R18≫
・タンク容量 経由60、≪48≫L
・JC08モード燃費 14.0、≪19.2 ≫km/L
・車両本体価格(消費税込み) 2,922,480円(中間グレード)、
≪2,829,600円≫ (Advance モデル)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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