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第94回 新型スズキジムニー(その2)
2018.8.27


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前回に続き今回も新型スズキジムニーを取り上げるが、20年ぶりにフルモデルチェンジした新型ジムニーは私にとって不思議なほどインパクトの大きい新型車だ。以下それぞれの項目に関しての私の印象を改めてまとめてみよう。

Active Life Style Car
「新型ジムニーの開発目標は、林業、建設業、狩猟、レスキューなど様々なプロの方達が選ぶクロスカントリー4WD車だった」とスズキで開発に携わった方たちが異口同音に言われている。たしかにこれまでのジムニー、ジムニーシエラはまさにそうだったし、今後もプロの方達の選択が中核となることに疑問の余地はない。しかし新型ジムニーがこれほどまでに話題となり、一般ユーザーが厚い視線を注ぎ、すでに目標(年間国内販売台数:ジムニー15,000台、シエラ1,200台)を大幅に超える販売台数が実現しつつある理由は、プロの方達の求めている要件に加えて、商品コンセプト、内外装デザイン、使い勝手、一般公道での使い易さなどが一般ユーザーの心を捉えているからであることは間違いない。新型ジムニーは一般ユーザーが胸を張って乗れる「Active Life Style Car」(私が定義したもので、意味するところは「ライフスタイルが活動的な人にマッチしたクルマ」)に仕上がっていると言えるとともに、バリューフォーマネーも非常に高く、大都市に住む活動的なライフスタイルを持つ人たちの日常の足として、あるいはスポーツカーなどを所有する人たちのセカンドカーとしても大いにアピールするのではないだろうか? 以下新型ジムニーの魅力点を私の視点からまとめてみたい。

魅力的な内外装デザイン
発表会の会場で真っ先に私の心を捉えたのも、内外装デザインと室内空間への心配りだった。軽自動車の外観デザインは「可愛さ」を求めるものが多い中、新型ジムニーの外観デザインは「機能美」を徹底的に追求したもので、デザインコンセプトは「プロの道具」、キーワードは「操作性」、「プロテクト性」、「メンテナンス性」、「サバイバル性」だったようだ。「軽」の車体寸法をフルに活用した力強い造形と細部のつくり込みが大きな特徴で、軽に乗ることのネガティブイメージを全く感じさせない新型ジムニーの外観デザインは、決してプロの方達だけにアピールするものではなく、街乗り主体の活動的なライフスタイルを持つ一般ユーザーにも新鮮な印象をもって受け入れられるものになっている。新型ジムニーがこれだけ大きな初期反応を巻き起こしている大きな要因は、この外観デザインにあるといっても過言ではないだろう。

内装デザインも合理的で無駄のない機能美を追求したもので、インパネ、ドアトリムともに水平基調の力強い造形と良好な質感が新型ジムニーの大きな魅力だ。箱型のメータークラスターと、大径で視認性の良いタコメーター、スピードメーター、センターに集約された操作性の良いスイッチ類、各種コントロール系なども好感が持てる。またシートも新設計で、フロントシートはクッションフレームの幅が70mmも拡大され、不足のないシートサイズと乗り心地が確保されている。

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室内空間への心配り
車体寸法をフルに活用した室内空間への心配りも新型ジムニーの大きな魅力だ。ドライバーシートに座った際のクルマのサイズ感は多くの軽自動車以上のものだし、40mm拡大された前後乗員間距離も貢献して、私のドライビングポジションでは後席の膝前に握りこぶしが一つ入る余裕があり、後席座面の前後長がやや短いのが気になるものの、後席に大人がゆったりと座るスペースがある。後席乗員の頭とサイドウィンドーやルーフとの距離は不快にならないスペースが確保されている。更に後席を倒すことによりフルフラットに近い荷室空間ができるのも大きな魅力点だ。2人乗りならかなりな荷物を積載可能だし、前報のように大人3人とその手荷物を積んでの霧ケ峰トリップも全く苦にならなかった。更に前席、後席ともに倒せば、大の大人がまっすぐに横になることができるため、ドライブ先で大人二人が車中で仮眠することも可能で、このような多角的な活用が可能な室内空間はプロの方達はもちろんのこと、一般ユーザーにとっても大きな魅力となるはずだ。

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オフロード性能とオンロード性能
ジムニーが伝統的にプロの方達の求める優れたオフロード性を有していたことは事実で、私も現役時代に各種のクロカンを広範囲に評価し、ジムニーのオフロード性能には一目を置いていた。新型ジムニーでは新設計のラダーフレーム、新しく追加されたXメンバーと追加されたクロスメンバーなどにより従来モデル比1.5倍のねじり剛性が確保され、更に左右輪の空転を防止する電子制御式のブレーキLSDトラクションコントロールが採用されたため(全車標準装備)、今回はテストする機会が持てなかったが悪路走破性が一段と向上したことは想像に難くない。プロの方達はもちろんのこと、オフロードを楽しむ機会のあるユーザーにも大変うれしい進化となるはずだ。

一方のオンロードの走行性に関しては、ラダーフレーム、前後輪リジットアクスルのオフローダーから想像していた一般道における乗り心地、ハンドリング、NVH(振動、騒音、乗り心地)が私の予測をかなり超える気持ちの良いクルマに仕上がっていることに驚いた。首都高速などの継ぎ目がほとんど気にならず、高速道路におけるロードノイズや風切り音などがなかなか良くおさえられており、住宅地などの凹凸のある路面での低速走行時の乗り心地も決して悪くない。新しいプラットフォームに加えて大型化されたボディーマウントゴムによる振動の吸収なども大きく貢献しているのだろうが、このようなオンロードでの走りの改善は市街地に住まわれていて日常の足として使われたい一般ユーザーにとって非常にうれしいことだ。

ハンドリングは決してクイックではないが直進時のセンターフィールが良好な上に、新規に装着されたステアリングダンパーによる減衰効果も機能してか、凹凸によるキックバックが非常に少なく、舵角を与えた時の反応が素直でハンドリングの質感も総じてなかなか好ましいレベルに仕上がっている。

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満足のゆく走りと燃費
新型ジムニーのエンジンはR06A型というスズキの現在の主力ユニットで、これまでのK6A型に比べて最大トルクこそ若干低いが過給圧の低い状態からの過渡反応は良く、更に4.8kgの軽量化も図られている。高速道と一般道による霧ケ峰往復は大人3人+それぞれの手荷物と、ジムニーにとってはかなりな荷重の追加となったが、高速道路の巡航は全く苦にならなかった。標高のかなり高い霧ケ峰では凹凸の激しい山間路を一人乗車でも評価してみたが、軽のオフローダーとは思えないスポーティーで満足のゆく走りを体感することができた。

実用燃費は、高速道路走行時のメーターによる燃費値は16~17km/L(カタログ値は16.5 )、一般道と山間部走行時のメーター燃費が11~13 km/Lと驚くほど良いレベルとはいえないが、今回はほとんどの区間は3人乗りだったこと、従って登坂路では通常よりは一段低いギヤの使用頻度が高かったことなども考えるとなかなか良好なレベルと言えそうで、カタログ値などの比較でみれば旧型ジムニーよりは大幅に改善されているようだ。

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安全性への配慮も怠りなし
強化されたラダーフレームも衝突時の過重伝達に貢献することは間違いないが、SRSカーテンエアバッグを含む6つのエアバッグ、ヒルホールド、ヒルディセントコントロールが標準装備され、デュアルセンサーブレーキ、標識認識機能、誤発信抑制機能などを一部グレードに採用するなど安全への配慮も怠りない。

ATかMTか?シエラは?
8月初旬に行われたスズキの試乗会では新型ジムニー、ジムニー シエラの両方に試乗することができたが、それぞれのAT、MTの乗り比べは出来ていないので、どちらがおすすめかは明確にできないことと、港北ニュータウン周辺の短時間のみの試乗ではシエラよりもジムニーの方がむしろ乗り心地が良く、広範囲な条件での試乗ができなかったこともあってか、1.5Lエンジンのメリットもそれほど体感することができなかった。私の個人的な選択としてはデザイン、維持費なども含めてジムニーで十分ではないかというのが正直なところだが、多くのメディアが幅広い試乗記を掲載されており、購入希望を持たれる方はそれらをご覧になるとともにご希望モデルの事前試乗をおすすめしたい。

出来利弘さん
今回の最後に、前報の霧ケ峰往復が実現できた出来利弘さんのレポートをご紹介したいが、まずは出来利弘さんをご紹介しよう。レーシングカート、各種フォーミュラレースの経験を積みながら、コンピューター関係、クルマ関係の仕事につき、ディーテクニックという会社を創設、ドライビングスクール、コンプリートカーの企画、販売などを行い、39歳からアメリカのビジネスも立ち上げるとともに、RE(ロータリーエンジン)を搭載したフォーミュラカーレース(全米スターマツダ・プロシリーズ)で日本人初のドライバーとしてフル参戦、帰国後は執筆業も開始、三栄書房の「REVSPEED」、「ニューモデル速報シリーズ」などに執筆、株式会社DEKI企画とともに「ディーテクニック・ウェブビルディング」というプロジェクトも立ち上げ、一般ユーザー向けのメンテナンス、カスタマイズの業務もされているエキスパートだ。

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出来さんのレポート
新型ジムニーのデザインをWebで見て一目惚れ、潔い商品企画に衝撃を受け、実に30年振りに新車を衝動買いした。近年珍しいスクエアなデザインはプロが使う道具としての機能に徹して磨かれたもので、ジムニー伝統のアイコンも入っている。デザインは非常にバランスが良く、隅々まで手を抜いていないディテールにスズキの気迫を感じた。「未来」を提案しようと多くのクルマが採用するつり目のデザインに疲れ果てた私の心にジムニーはシンプルかつ機能美溢れるデザインと愛らしい丸目デザインで現れた。長く分厚いボンネットは軽自動車らしからぬボリューム感があり、視覚的にも安全性の高さを物語る。垂直なウインドと80タイヤでも格好良いデザインができることをこのクルマで証明された。単にレトロでなく、車内が日差しの影響を受けにくく、夏場も快適であり、タイヤエアボリュームがあるため、ハーシュネスを抑え込めるなど、きちんと機能的な役割を果たしている。水平基調のインパネは安価な素材を使いながら、シボの使い方やチリに気を使い、こだわりの立体的なメーターと相まって本格オフローダーの所有満足度を高めている。このデザインだけでも価値ある一台である。

FRレイアウト、ラダーフレーム、パートタイム4WD、3リンクリジットサスなど独自のメカニズムで、コストがかかっても守るべき伝統を貫くことは容易ではなかったと想像する。最新の低燃費エンジンと自動ブレーキを始めとする最新の安全装備、快適装備の充実など現代として『欲しい装備』をきちんと揃え、低価格を実現しているのも重要なポイントだ。乗り心地のよさ、その自然な操作フィールの全て、気持ち良いエンジンの鼓動など基本に忠実な作り込みが、普通の人からエンスージアストまで街中で日常の足として乗るだけでもこれほど楽しく、快適な車はそうあるものではない。

昭和から平成へと変わる時代に日本から素晴らしい名車の数々が生まれた。当時の車たちを知る辛口のエンスーでも新型ジムニーに乗ればきっと気に入るだろう。ジムニーはこの走り、この個性の出し方で『本来、日本車の車作りとはこうあるべき!』と改めて再認識させてくれた。スズキには、どうかこのままコンセプトを変えないでジムニーを売り続けて欲しい。ジムニーはユーザーからの意見と希望をしっかりと聞き、自社ブランドの商品企画に見事に活かした素晴らしいき好例である。また今後大いに他メーカーからもこういったモデルが生まれて欲しいと願う。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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