三樹書房
トップページヘ
syahyo
第86回 ルノールーテシア R.S.
2017.7.27

7月に入り、ルノージャポンからルーテシア ルノー・スポール(R.S.)のマイナーチェンジモデルが発売となったのを機に箱根で試乗会が開かれ、改めて運転することの楽しさに脱帽するとともに、今回試乗車を借り出し長距離・評価も行い、千葉在住のブライアン・ロングさんもお訪ねして試乗いただいたので、以下ブライアンさんの短評も含めてご紹介したい。箱根ならびに今回の試乗はいずれも「シャシーカップ」というグレードで、2013年11月の「車評オンライン」でもこのモデルに非常に高い評価をしているが、今回の試乗を通じて改めて「心からクルマを愛する人たちが開発したモデルである」ことを再確認した。

04-dai8601.jpg

ルーテシア R.S.とはどんなクルマ?
ルノー・スポールはF1をはじめ各種のモータースポーツで活躍してきたレーシングコンストラクターであるとともに、ルノーの各種市販モデルのスポーツバージョンの開発も行っている。ルーテシアのベースモデルは1.2Lの自然吸気エンジン、価格も200万円前後とリーズナブルで、累計生産台数は1200万台にもなるというルノーの中核車種だ。ルーテシア R.S.は1.6Lのターボエンジンを搭載、足回りのセッティングや走行モードの選択なども含めてクルマ好きには大変魅力的なクルマに仕上がっている。グレードは、サーキット走行を前提にしエンジン出力が220psのトロフィー(¥3,290,000)、ベースモデルのシャシースポール(¥2,840,000)、当初はその間にあったが中断、今回改めて追加されたのがシャシーカップ(¥3,090,000)だ。サイズ的には遠からず日本にも導入される新型VWポロと非常に近似しており、不足ない後席居住性と荷物積載性を併せ持ち、家族との日常生活と休日のスポーツドライブの両方を楽しむことのできる5人乗りのコンパクトファミリーカーだ。

ブライアン・ロングさんのコメント
以下はすでに80冊近いクルマの歴史本を執筆、私も永年にわたりお付き合いしている千葉在住のイギリス人、ブライアン・ロング(Brian Long)さんの短評だ。ブライアンさんは英国コベントリー生まれの自動車歴史家で、ドライビングもうまく、クルマの適切な評価が出来る人で、かつて車評チームの貴重なメンバーの一人として活躍してくれた。

『私が自宅のドアを開けた瞬間、シルバーのカッコ良い物体が心地良く目に飛び込んできて、数秒後に友人(小早川)がその車を家の前に停車させた。近くで見てみると、最近良くありがちな装飾に頼っただけの似たようなエコボックスカーとは違って、シックにまとめられている。この大きなアルミアロイホイールは、スムースに走ることの難しい日本のような国ではノイズが増大してしまうので必要ないと思われるが、少なくとも良いデザインバランスと言える。ひと通りスタイルチェックを終え、ランチをとった後、ドライブしてみる。最初に感じたのは素晴らしいサポート感と心地のいいシート、そしてエグゾーストノートである。インテリアには何点かの不満、例えば私の長い足とステアリングホイールの間のクリアランスがないため非常にきつい、またラジオコントロールの位置がハンドル操作の邪魔になるところにあったりするものの、基本的には人間工学的視点にとても満足している。

エンジンに関しては低速トルクが豊富で、日本の日常生活における交通状況でも非常に使いやすく、自動変速もスムーズな上に、コーナリング時にも固定式パドルシフトが便利だ。ただし「スポーツモード」ではなく「ノーマルモード」を選択した場合のシフトアップがやや早すぎるのは、コーナリング時の走行にはちょっと残念だ。サスペンションは、大径タイヤやスポーツセッティングともよくマッチしており、ハリはあるが、決して疲れないもので、電動パワーステアリングも、駐車時には電動であることが明確に分かるので、「パーフェクト」とまでは言えないものの非常によくできている。ルーテシア R.S.は、この種のクルマとしては珍しいキャラクターを備えており、かつて広島のあるメーカーが使ったGLC(グレート リトル カー)という称号がまさにあてはまるクルマに仕上がっている。』

04-dai8602.jpg

04-dai8603.jpg

04-dai8604.jpg

04-dai8605.jpg

04-dai8606.jpg

04-dai8607.jpg

04-dai8608.jpg

内外装デザイン、居住性
外観スタイルは、従来型から全体としては大きくは変わっていないが、ルノーが「R.S.ビジョン」と呼ぶ、フロントのチェッカーフラグ型のLEDとヘッドランプ周りが一目で新型と分かるもので、フロントバンパーやアルミアロイホイールのデザインも変更になっている。今見てもなかなか新鮮なデザインで、アイデンティティもクリアだ。同じく基本的には変わっていない内装デザインだが、室内における赤色のアクセントは減っており、むしろやや地味になった感もあるが、赤色のシートベルトはかなり派手だ。メーターは多くのドイツ車とは一線を画すもので、パドルシフトレバーは固定されているので、ワインディングロードでは使いやすい。

室内スペースは、私のドライビングポジションにセットすると、後席の膝前には握りこぶし2つがぎりぎり入り、荷室ともども「広い」とは言えないものの、ファミリーカーとして十分使えるものだ。シートはブライアンさんのコメントにもあるように前席の着座感、ホールド感、振動吸収性などが非常に良好だが、箱根での試乗で後席に乗った時には後席の快適性、振動吸収性にも頭が下がった。開発エンジニアや、コストを取り仕切る部門の人たちのシートに対する思いが入れが、多くの日本メーカーの場合と比べてかなり違うのではないだろうか。

04-dai8609.jpg

04-dai8610.jpg

04-dai8611.jpg

04-dai8612.jpg

04-dai8613.jpg

走る、曲がる、止まる
ルーテシアR.S. (シャシーカップ)は、走る、曲がる、止まるの領域がとにかく楽しいクルマに仕上がっている。まずは走りだが、1.6Lターボエンジンの最高トルク(24.5 kgm)が1,750rpmで得られること、6速のデュアルクラッチの自動変速機のセッティング、さらにはR.S.ドライブと呼ぶ走行モード(ノーマル、スポーツ、レース)などが相まって実に爽快な走りが楽しめる。ノーマルモードでも十分スポーティーな走りが可能だが、スポーツモードに切り替えるとはるかに胸のすく走りとなり、レースモード(ただし手動変速へ切り替えが必要で、変速はパドルシフトによる手動となり、横滑り防止装置も解除される)にしてその気で踏み込むと、実にダイナミックな走りが得られるとともに、スポーティーな排気音も楽しめる。一般ユーザーがスポーツモードやレースモードをどのくらいの頻度で活用するかは興味深いところだが、家族と一緒の日常生活時にはノーマルモードで快適に、燃費にも配慮した走りを、時折一人でスポーツドライビングを楽しみたいときには、スポーツモードやレースモードを活用すれば、1台で何台分かの楽しみを味わうことのできる、実に貴重な装備だ。尚今回の横浜往復、アクアライン経由の千葉往復など約250km(うち約80%が高速)の走行における実測燃費は、11.7km/Lとなり、特筆できる値ではないが、「スポーツモード」や「レースモード」でのトライも含んだものなので、決して悪くない。

「ローンチコントロール」という停車状態から最大の加速力で発信する機能も非常にマニアックで面白いのだが、ブレーキとアクセルを同時に強く踏み、その状態からブレーキを離すことにより急加速が実現できるこのモードは、サーキット走行も前提にした「トロフィー」には非常に望ましいモードだが、それ以外のモデルには不必要ではないだろうか?

ルーテシアR.S. (シャシーカップ)のハンドリングもスポーティーで大変魅力的だ。まずは直進時のオンセンターフィールがいい。そしてそこから舵角を与えて時のクルマの挙動がリニアで、気持ちが良い。また感心したのは私が良く評価に使う箱根の凹凸ワインディング路だった。多くの国産車がばたつくこの評価路をルーテシア ルノー・スポールは実にフラットに気持ち良く走破してくれた。車体剛性の高さ、ダンパーの中にセカンダリーダンパーが組み込まれているメリット、電子制御デフ、振動吸収特性の優れたシートなどによるものだと思う。

ただし205/40R18タイヤには一言言及しておきたい。それは市街地の低速走行時のタイヤからの突き上げとロードノイズがやや気になるからだ。優れたシートのお陰でシート上の乗員への振動伝達はそれほど気にならないが、このモデルで18インチタイヤの性能を100%使う走行シーンはほとんどのユーザーにとって皆無に近いと思うし、初期コスト、タイヤ交換時のコストなども含めて良いことはほとんどないはずだからだ。ルノージャポンにはベースモデルと同じ17インチにもどすことをおすすめしたい。17インチタイヤにすれば300万円を切る車両本体価格もありうるのではないだろうか?

ルノールーテシアR.S.を一言でいえば
ルノールーテシアR.S. (シャシーカップ)を一言でいえば、まさに「グレート リトル カー」で、日本車の中にはほとんど同類の競合車がなく、ドイツの小型スポーティーカーとも一味違う特性をもったモデルだ。日本の交通状況にも非常にマッチしており、走りを楽しみたい一般ユーザーに最適なクルマで、国内のルノールーテシアの販売の約3割を占めるというのも十分納得のゆく。今後も販売台数が伸びてゆくことを期待するとともに、国内メーカーの開発担当者、マーケッティング担当者などにも是非とも試乗をおすすめしたいモデルだ。

試乗車グレード ルノールーテシアR.S. (シャシーカップ)
・全長 4,105 mm
・全幅 1,750 mm
・全高 1,435 mm
・ホイールベース 2,600 mm
・車両重量 1,290 kg
・定員 5名
・エンジン ターボチャージャー付 筒内直接噴射 直列4気筒DOHC16バルブ
・排気量 1,618 cc
・圧縮比 9.5
・最高出力 200ps(147kW)/6,050rpm
・最大トルク24.5 kgm(240N・m)/1,750rpm
・変速機 6速EDC(エフィシェント デュアルクラッチ)
・タイヤ 205/40R18
・タンク容量 50L
・JC08モード燃費 17.9 km/L
・試乗車車両本体価格 \3,090,000 (消費税込)

このページのトップヘ
BACK NUMBER

【編集部より】 車評オンライン休載のお知らせ

第86回 ルノールーテシア R.S.

第85回 光岡自動車

第84回 アウディQ2 1.4 TFSI

第83回 アバルト124スパイダー(ロードスターとの同時比較)

第82回 スズキワゴンRスティングレイ(ターボ)

第81回 最近の輸入車試乗記

第80回 マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)の再版によせて (後半その2)

第79回 RX-7開発物語再版に寄せて(後編その1)

第78回 RX-7開発物語の再版によせて(前編)

第77回 ダイハツムーヴキャンバス

第76回 ニッサン セレナ

第75回 PSAグループのクリーンディーゼルと308 SW Allure Blue HDi

第74回 マツダCX-5

第73回 多摩川スピードウェイ

第72回 ダイハツブーン CILQ (シルク)

第71回 アウディA4 セダン(2.0 TFSI)

第70回 マツダデミオ15MB

第69回 輸入車試乗会で印象に残った3台(BMW X1シリーズ、テスラモデルS P85D、VWゴルフオールトラック)

第68回 新型VW ゴルフトゥーラン

第67回 心を動かされた最近の輸入車3台

第66回 第44回東京モーターショー短評

第65回 ジャガーXE

第64回 スパ・ヒストリックカーレース

第63回 マツダロードスター

第62回 日産ヘリテージコレクション

第61回  りんくう7 DAY 2015

第60回 新型スズキアルト

第59 回 マツダCX-3

第58回 マツダアテンザワゴン、BMW 2シリーズ、シトロエングランドC4ピカソ

第57回 スバルレヴォーグ&キャデラックCTSプレミアム

第56回 ホンダ グレイス&ルノー ルーテシア ゼン

第55回 車評コースのご紹介とマツダデミオXD Touring

第54回 RJCカーオブザイヤー

第53回 スバルWRX S4

第52回 メルセデスベンツC200

第51回 スズキスイフトRS-DJE

第50回 ダイハツコペン

第49回 マツダアクセラスポーツXD

第48回 ホンダヴェゼルハイブリッド4WD

第47回 ふくらむ軽スポーツへの期待

第46回 マツダアクセラスポーツ15S

第45回  最近の輸入車試乗記

第44回 スズキハスラー

論評29 東京モーターショーへの苦言

第43回 ルノールーテシアR.S.

論評28 圧巻フランクフルトショー

論評27 ルマン90周年イベント

第42回 ボルボV40

第41回 ゴルフⅦ

第40回 三菱eKワゴン

論評26 コンシューマーレポート(2)

論評25  コンシューマーレポート(1)

第39回  ダイハツムーヴ

第38回 第33回輸入車試乗会

第37回 マツダアテンザセダン

第36回 ホンダN-ONE

第35回 スズキワゴンR

第34回 フォルクスワーゲン「up!」

第33回 アウディA1スポーツバック

第32回 BRZ、ロードスター、スイフトスポーツ比較試乗記

第31回 シトロエンDS5

第30回 スバルBRZ

第29回 スズキスイフトスポーツ

第28回 SKYACTIV-D搭載のマツダCX-5

論評24   新世代ディーゼル SKYACTIV-D

第27回 輸入車試乗会 

論評23 モーターショーで興味を抱いた5台

論評22 これでいいのか東京モーターショー

論評21 日本車の生き残りをかけて

執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

関連書籍
ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
トップページヘ