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第56回 AC & Shelby AC Cobra - 1
2017.3.29

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 最近になって、2015年に「50th ANNIVERSARY SHELBY COBRA 427 S/C」が50台限定販売されたのを知った。エンジンとトランスミッション無しの状態で、ファイバーグラスボディー仕様が約12万ドル、アルミボディー仕様が約18万ドルと高価だが、1965年にSHELBY AC COBRA Mk Ⅲ 427が発売されてから50年経過したいまでも、中身は変われど同じ容姿で販売されているということは、当時、最強のスーパーカーに対する憧れがいかに強烈であったか想像できる。
 そこで、今回はACコブラのベースとなったAC エースとともに、戦後のACモデルについての史料を引き出してみた。

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戦後真っ先に登場した2リッターモデルは1947年から1956年にかけて1129台生産された。これは「The Motor」誌の1948年11月3日号に掲載された広告で、バンパーの前面に「AC 1949」のプレートが付いているが、イラストのクルマは1947年のプロトタイプではないかと推察する。フレームレスのフロントウインドシールド、リアフェンダーのスパッツがプロトタイプの特徴である。ヘッドランプは実車より大きく誇張して描かれている。

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これは「The Motor」誌の1949年9月28日号に掲載された2リッターモデルの広告。エンジンは1991cc直列6気筒OHVで、ウォーターポンプがシリンダーブロックの左側面に取り付けられていた。出力は1947年当初は圧縮比6.5:1で74馬力であったが、1951年に圧縮比7:1に上げて85馬力に強化されている。ボディーは木骨にアルミパネル張りで、広告の2ドアサルーンのほかに4ドアサルーン、ドロップヘッドクーペ、カブリオレ、ウッディエステートカーなどが存在した。更に、1950年にはバックランド・コーチワークスが架装した4座スポーツツアラーが追加されている。

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これは「The Motor」誌の1954年3月3日号に掲載された、1953年に登場したAC エースのプロトタイプの広告。巡航速度100mph(161km/h)以上、素晴らしいコーナリングと乗心地、車両重量は16cwts(813kg)、4輪独立懸架サスペンションを装備すると訴求している。生産を開始しており、希望があればデモ走行も可能とある。エンジンは2リッターサルーンと同じ6気筒85馬力が積まれていた。

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量産型AC エースのカタログ。AC製1991cc直列6気筒OHVエンジンは1959年にはクランクシャフトにトーショナルダンパーが付き、圧縮比を8:1に上げて90馬力/4500rpmとなり、1960年には圧縮比を9:1に上げて102馬力/5000rpmに強化されている。トランスミッションは4速MTで1速はノンシンクロであった。サイズはホイールベース90in(2286mm)、トレッド50in(1270mm)、全長151.5in(3848mm)、全幅59.5in(1511mm)、全高(フードまで)49in(1245mm)、(スカットルまで)35in(885mm)、車両重量1685lb(764kg)。1957年にフロントディスクブレーキがオプション設定され、1960年から標準装備されている。0 - 1/4mile(402m)加速16.27秒。1953年から1962年にかけて生産されたAC エースは732台であった。

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AC エースと同じカタログに載ったAC エースカ。クローズドボディーを好む顧客のために用意されたクーペで、1954年のロンドンモーターショーで発表された。ボディー以外はエースと同じだが、ファイナルドライブユニットには防振、防音のためラバーマウントが追加されている。チューブラーフレームにアルミパネルを被せたボディー構造はエースと同じだが、一部に木骨を使い、遮音と断熱のためにエンジンバルクヘッド、ギアボックスカウリング、シート後部パネルにファイバーグラスを使用している。サイズは全長160in(4064mm)、全幅61in(1549mm)、全高52in(1321mm)、車両重量1840lb(835kg)。1962年までに生産されたAC エースカは327台であった。

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エースとエースカの運転席周り。インストゥルメントパネルはクルマの性格に合わせて異なるデザインのものが採用されており、シート、内装と同じ皮でカバーされている。ステアリングはチルトとテレスコピック機構が採用されているのはさすが。左右シートの間に見えるレバーはサイドブレーキ。

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エースとエースカの荷室。

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AC エースのシャシーは2本の直径3インチ(76mm)のパイプをメインフレームに、1.5インチ径のスカットルアンチロールバーと0.75インチのボディーアッセンブリーチューブを溶接して造られている。サスペンションは前後ともウイッシュボーン+横置きリーフスプリングによる独立懸架で、ファイナルドライブユニットはフレームにダイレクトに固定されている(エースカはラバーマウントを介して固定される)。エースには写真のようなプラスチック製の着脱可能なルーフがオプション設定されていた。

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AC エースのスペック表とAC製1991cc直列6気筒OHV 3連SUキャブレターエンジン。シリンダーブロックの側面にウォーターポンプが付いているのが分かる。このカタログは1960年のもので、エンジン出力は102馬力となっている。前輪のディスクブレーキとスクリーンウォッシャーが標準装備となったことが赤字で追記されている。

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上の2点は1961年のACエースとエースカのオフィシャルフォト。

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1957年春、より性能アップを図るべく、ブリストル エアロプレーン社(Bristol Aeroplane Co. Ltd.)からブリストルの強力なエンジン+4速MT(1速はノンシンクロ)の供給を受けて完成したのがAC エース ブリストルで、D2型1971cc直列6気筒OHVエンジンは、1958年は120馬力/5750rpm、1960年には125馬力/5750rpmを発生した。

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これはAC エース ブリストルと同時に発売されたAC エースカ ブリストルで、低速トルク型のB型2216cc直列6気筒OHV 105馬力/4750rpmエンジン+4速MTを積む。エースカにはオーバードライブのオプション設定もあった。また、エースと同じD2型エンジンを特別注文することも可能であった。

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ブリストル製100D2型エンジン+4速MT。3連のソレックス 32.PB.16型ダウンドラフト式キャブレターを装備する。
 ブリストル エアロプレーン社は1960年にホーカー シドレー グループ(Hawker Siddeley Group)と合併。このとき、ブリストルの自動車部門は独立してブリストル カーズ社(Bristol Cars Ltd.)となり、エンジンの生産を中止してしまった。そのためにACは新しく英国フォードからゼファーの2.6ℓエンジンの供給を受けることになる。

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1959年のロンドンモーターショーに登場したAC グレイハウンドのプロトタイプ。これは「The Autocar」誌の1959年10月23日号に掲載された広告で、ACエースカの品質と性能を備えた4シーターを要望する声に応えて造ったと訴求している。量産車とはサイドウインドーとクォーターピラー、フロント周りの形状が異なる。

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上の3点は量産型AC グレイハウンドのカタログ。ボディーは四角断面のチューブラーフレームとアルミパネル(但し床はスチールパネル)で構成されている。サイズはホイールベース100in(2540mm)、トレッド54in(1372mm)、全長175in(4445mm)、全幅65.5in(1664mm)、全高52.5in(1333mm)、車両重量2240lb(1016kg)。エンジンはブリストルのD2型1971cc直列6気筒125馬力/5750rpmが標準で、B型2216cc直列6気筒105馬力/5000rpmまたは1961年にはフォードの2553cc直列6気筒OHVエンジンに「Stage 1」チューニングを施した120馬力も選択可能であった。生産台数は極めて少なく、1959年から1961年の間にわずか82台が生産された。

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上の2点はAC グレイハウンドの室内。上質なレザーを使ったシートと内装、ウォールナットのインストゥルメントパネルなど、熟練した職人によって手造りされた伝統的な英国車の風格が漂う。

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AC グレイハウンドの透視図。サスペンションはAC エース/エースカとは異なり、フロントがダブルウイッシュボーン+コイルスプリング、リアはセミトレーリングアーム+コイルスプリングの4輪独立懸架であった。

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1961年に登場したAC エース 2.6。ブリストルからのエンジン供給が途絶え、代わりに英国フォードの協力で、ゼファー用2553cc直列6気筒OHV 圧縮比7.8:1 の85馬力/4400rpmを積む。フロント部分の造形が大きく変更されている。

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オプションで用意されていたプラスチック製の着脱可能なルーフを装着したAC エース 2.6。

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非力なエンジンを強化するためラッドスピード社(Ruddspeed Ltd.)によるチューニングがオプション設定されていた。ステージ1~4の4種類が設定され、ステージ1で120馬力、ステージ4では170馬力に強化することができた。写真の右がステージ3、左がステージ4を示している。
 ゼファーの2.6ℓに満足できなかったACはシボレーのスモール・ブロックV8を積もうと交渉したが断られてしまった。それを聞きつけたキャロル・シェルビーがフォードと交渉してACに救いの手を差しのべる。そして完成したのが「コブラ」である。次回はコブラの史料を引き出す予定。

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これは1962年のAC エース 2.6のオフィシャルフォト。

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執筆者プロフィール

1937年(昭和12年)東京生まれ。1956年に富士精密機械工業入社、開発業務に従事。1967年、合併した日産自動車の実験部に移籍。1970年にATテストでデトロイト~西海岸をクルマで1往復約1万キロを走破し、往路はシカゴ~サンタモニカまで当時は現役だった「ルート66」3800㎞を走破。1972年に海外サービス部に移り、海外代理店のマネージメント指導やノックダウン車両のチューニングに携わる。1986年~97年の間、カルソニック(現カルソニック・カンセイ)の海外事業部に移籍、うち3年間シンガポールに駐在。現在はRJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)および米国SAH(The Society of Automotive Historians, Inc.)のメンバー。1954年から世界の自動車カタログの蒐集を始め、日本屈指のコレクターとして名を馳せる。著書に『プリンス 日本の自動車史に偉大な足跡を残したメーカー』『三菱自動車 航空技術者たちが基礎を築いたメーカー』『ロータリーエンジン車 マツダを中心としたロータリーエンジン搭載モデルの系譜』(いずれも三樹書房)。そのほか、「モーターファン別冊すべてシリーズ」(三栄書房)などに多数寄稿。

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