三樹書房
トップページヘ
syahyo
第77回 ダイハツムーヴキャンバス
2016.10.27

9月初めに導入されたダイハツムーヴキャンバスの試乗会で好印象をもち、このたび広報車両を借り出して実用燃費も含む商品性評価を行ったのでご報告したい。最近の軽自動車はひと昔前のものと比べると大きな進化が見られ、現在のムーヴの導入時にもその動的性能の進化を高く評価したが、ムーヴキャンバスも内外装デザイン、使い勝手、走り、実用燃費、動的性能などの面から大変魅力的なクルマに仕上がっており、「新ジャンル」とまでは言えないにしても、実用性の非常に高い「新感覚の軽ワゴン」として女性を主軸に月販目標5,000台を超える販売台数が期待できそうな気がする。

04-dai7701.jpg

商品の特徴
全高1,700ミリ以下の軽自動車クラス初の両側スライドドアの採用を筆頭に、ルーミーな室内居住性と実用性の高いパッケージング、のびやかで可愛らしく女性に喜ばれそうな外観デザイン、新鮮で質感も良好な内装デザイン、自然吸気だがCVTとの組みあわせも良く不足を感じない走り、優れた実用燃費などがムーヴキャンバスの特徴だ。今や軽自動車は日本になくてはならない存在であり多様なコンセプトの軽自動車が存在するが、ムーヴキャンバスはムーヴともタントとも一味異なるクルマで、ダイハツから配布された資料の冒頭にもあるように「自身のライフスタイルを楽しむ女性に寄り添う新感覚スタイルワゴン」がその狙いで、開発段階から非常に女性を意識したモデルだ。

04-dai7702.jpg

04-dai7703.jpg

04-dai7704.jpg

04-dai7705.jpg

04-dai7706.jpg

04-dai7715.jpg

04-dai7716.jpg

内外装デザイン
エクステリアは、シンプルでのびやかで愛らしさを感じるスタイルに仕上がっているが、私の視点からはやや女性を意識しすぎたデザインとの印象がぬぐえない。このままだと男性にやや気恥ずかしさを与えるデザインではないだろうか? フロント周りやリア周りをもう少し「凛々しく」「力強い」デザイン処理をしたバリエーションモデルが用意されれば男性にも十分にアピールすることが可能となるだろう。

内装デザインはシンプルだが新鮮で好感の持てるものだ。カラーリングの選択も魅力的で質感も悪くなく、女性ユーザーに特化したという印象は受けない。ひと言注文を付けたいのはスピードメーターの照明だ。造形は悪くないしメーター内のライトがついているときの視認性は良好だが、メーター内のライトがつかない昼間、光線の具合によっては非常に視認性が悪くなるのが残念だ。昼間でも光線の具合によってはメーター内のライトが点灯するケースがあり(いずれも上記の写真をご参照いただきたい)、その場合の視認性は良好なので、メーター内のライトを常時点灯するようにしてはどうだろうか。メーターの視認性は非常に重要だからだ。

04-dai7707.jpg

04-dai7708.jpg

04-dai7709.jpg

04-dai7710.jpg

04-dai7711.jpg

04-dai7714.jpg

居住性と使い勝手
最近の多くの軽はコンパクトカーより優れた室内居住性を備えているものが多く、ムーヴキャンバスも例外ではない。加えて「使い勝手」への配慮もこのクルマの大きな魅力点だ。ドアハンドル上のボタンワンタッチで開閉する左右の電動スライドドアはこのクラス初とのこと(装着グレードはGとXリミテッド)、狭い場所でのドア開閉はもちろん、後席への荷物の出し入れも含めて非常に使いやすい。リアシートのスライド、リクライニング機能もうれしいし、左右リアシートクッション下の「置きラクボックス」と命名された物入れも便利だ。「置きラクボックス」にはA4サイズの書類も入り、中敷きを立ち上げれば倒れては困るものの収納にも便利だ。

ひと昔前のダイハツの軽はシートサイズがもう一歩だったが、最近のダイハツ車はシートのサイズ、着座感、ホールド感も改良されており、ムーヴキャンバスのシートもそれなりのレベルに仕上がっている。メーカーオプションで純正NAVI装着車に限られるが、そのアップグレード仕様のパノラマモニターも便利だ。

04-dai7712.jpg

04-dai7713.jpg

走りと燃費
ムーヴキャンバスは自然吸気エンジン仕様しかないが、実用回転領域のトルク特性、ラバーバンドフィーリングなどと言われる独特の加速感があまり気にならないCVTとのマッチングなどにも起因してか、低速走行、市街地走行、高速走行などいずれの状況においても走りが良好で、高速ドライブも十分に楽しめる。私の視点から見てもターボエンジン仕様のニーズはまずないといってよさそうだ。

実用燃費は以下のような結果となった。
西台~大田区の自宅(市街地走行のみ):19.1 km/L(車載メーター)
自宅~横浜往復(国道15号の一般道):21.1(同)
五反田~西台(首都高):26.8(同)
試乗車借り出し~返却までの市街地走行が大半の条件での満タン法による燃費は18.3 km/Lとなった。コンパクトハイブリッドカーの燃費には若干とどかないし、カタログ燃費(28.6 km/L)とのギャップも小さくないが、ひと昔前の軽自動車では考えられない、優れた実用燃費だ。

曲がる・止まる・乗り心地・ロードノイズ
現在のムーヴが導入された時にその動的特性の進化に感銘したが、ムーヴキャンバスも走り始めたとたんにその車体剛性の高さを実感するようなクルマに仕上がっていることを確認した。ステアリングに舵角を与えた時のクルマの動きがひと世代前のムーヴやタントなどに比べて大きく向上している。市街地もそうだが、高速道路の巡航時の気持ち良さは軽であることを忘れさせてくれるレベルだ。また坂道発進時に有効なヒルホールドシステム(坂道での停車の際の後退を一時保持するシステム)が全グレードに標準装備されるのもうれしい。

ただし言いたいこともある。まず第一点は乗り心地だ。借り出したクルマの乗り心地は総じてそれほど悪くはなかったが、市街地や住宅地の低速での凹凸路では今一歩のレベルだったので空気圧を測定してみると、正規の240kPaに対して220kPaになっていた。空気圧が低ければ乗り心地には有利なはずだが、それでも乗り心地が今一歩なのだ。また粗粒路を中心にロードノイズもかなり気になった。タイヤの選択や空気圧の設定により、乗り心地とこのロードノイズが改善されればムーヴキャンバスの魅力は間違いなくアップするはずで、その場合仮に燃費に若干の影響が出ても許容できると思う。是非そのようなグレードを設定してほしいところだ。

ムーヴキャンバスを一言でいえば
以上がムーヴキャンバスの項目ごとの印象だが、一言でいえば実用性が非常に高く、走りや燃費も十分に満足のゆく魅力的なクルマで、女性をメインターゲットとした魅力的な「新感覚の軽ワゴン」に仕上がっている。惜しむらくは男性へのアピールがもう一歩なので、前述のように外観スタイルをもう少し男性的なものにしたバリエーションの登場を是非とも期待したい。

試乗車グレード ダイハツムーヴキャンバス X"リミテッドメイクアップ SAⅡ"
・全長 3,395 mm
・全幅 1,475 mm
・全高 1,655 mm
・ホイールベース 2,455 mm
・車両重量 920 kg
・エンジン 水冷直列3気筒12バルブDOHC
・排気量 658cc
・圧縮比 11.3
・最高出力 52ps(38kW)/6,800
・最大トルク 60Nm(6.1kgf・m)/ 5,200rpm
・駆動方式 FF
・変速機 CVT
・タイヤ 155/65R14
・タンク容量 30L
・JC08モード燃費 28.6 km/L
・試乗車車両本体価格 1,479,600円(消費税込)

このページのトップヘ
BACK NUMBER

第82回 スズキワゴンRスティングレイ(ターボ)

第81回 最近の輸入車試乗記

第80回 マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)の再版によせて (後半その2)

第79回 RX-7開発物語再版に寄せて(後編その1)

第78回 RX-7開発物語の再版によせて(前編)

第77回 ダイハツムーヴキャンバス

第76回 ニッサン セレナ

第75回 PSAグループのクリーンディーゼルと308 SW Allure Blue HDi

第74回 マツダCX-5

第73回 多摩川スピードウェイ

第72回 ダイハツブーン CILQ (シルク)

第71回 アウディA4 セダン(2.0 TFSI)

第70回 マツダデミオ15MB

第69回 輸入車試乗会で印象に残った3台(BMW X1シリーズ、テスラモデルS P85D、VWゴルフオールトラック)

第68回 新型VW ゴルフトゥーラン

第67回 心を動かされた最近の輸入車3台

第66回 第44回東京モーターショー短評

第65回 ジャガーXE

第64回 スパ・ヒストリックカーレース

第63回 マツダロードスター

第62回 日産ヘリテージコレクション

第61回  りんくう7 DAY 2015

第60回 新型スズキアルト

第59 回 マツダCX-3

第58回 マツダアテンザワゴン、BMW 2シリーズ、シトロエングランドC4ピカソ

第57回 スバルレヴォーグ&キャデラックCTSプレミアム

第56回 ホンダ グレイス&ルノー ルーテシア ゼン

第55回 車評コースのご紹介とマツダデミオXD Touring

第54回 RJCカーオブザイヤー

第53回 スバルWRX S4

第52回 メルセデスベンツC200

第51回 スズキスイフトRS-DJE

第50回 ダイハツコペン

第49回 マツダアクセラスポーツXD

第48回 ホンダヴェゼルハイブリッド4WD

第47回 ふくらむ軽スポーツへの期待

第46回 マツダアクセラスポーツ15S

第45回  最近の輸入車試乗記

第44回 スズキハスラー

論評29 東京モーターショーへの苦言

第43回 ルノールーテシアR.S.

論評28 圧巻フランクフルトショー

論評27 ルマン90周年イベント

第42回 ボルボV40

第41回 ゴルフⅦ

第40回 三菱eKワゴン

論評26 コンシューマーレポート(2)

論評25  コンシューマーレポート(1)

第39回  ダイハツムーヴ

第38回 第33回輸入車試乗会

第37回 マツダアテンザセダン

第36回 ホンダN-ONE

第35回 スズキワゴンR

第34回 フォルクスワーゲン「up!」

第33回 アウディA1スポーツバック

第32回 BRZ、ロードスター、スイフトスポーツ比較試乗記

第31回 シトロエンDS5

第30回 スバルBRZ

第29回 スズキスイフトスポーツ

第28回 SKYACTIV-D搭載のマツダCX-5

論評24   新世代ディーゼル SKYACTIV-D

第27回 輸入車試乗会 

論評23 モーターショーで興味を抱いた5台

論評22 これでいいのか東京モーターショー

論評21 日本車の生き残りをかけて

執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

関連書籍
ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
トップページヘ