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第49回 Automobile Council 2016
2016.9. 5

 今回は前回に引き続いてクライスラー300 レターシリーズについて紹介する予定であったが、8月5日(金)~7日(日)の3日間、幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル 2016」を訪ねたので、先に紹介したい。
 日本人は欧米人に比べ、どうも歴史と言うものに関心が薄いように思えてならない。自動車メーカーにしてもしかり、新車の開発と販売には精力的に取り組むが、過去に造りあげてきた実績であり、財産である旧車に対しては冷淡と言えるほど無関心であった。しかし、最近少しずつ変化が見られるようになり、自社の歴史についてしっかりと残そうとする姿勢を感じるようになった。
 このような変化を敏感に捉え、日本にも真の自動車文化を根付かせたいと、筆者も創刊号から全冊保存している雑誌「カーグラフィック(CG)」の加藤哲也氏が中心となって、周到な準備のうえ開催されたのが「オートモビル カウンシル 2016」である。以下、CG 9月号の記事から借用すると「ヨーロッパには歴史に敬意を払い、ヒストリックカーの魅力を訴える文化が根づいている。これを存分に表現するイベントも数多く存在し、世界に向け情報を発信すると同時に、世界中から人を集める。メーカーがこの種のイベントを積極的に支援する態勢が確立されていることも、素晴らしい伝統だ。ヘリテージを大切にする姿勢こそが、文化の構築につながり、古い車だけでなく、新車も含めた自動車全体の価値の向上に寄与することを理解しているのである。」とある。まさにそのとおりだと思う。
 初めての試みだが、日本車メーカーではトヨタ、日産、スバル、ホンダ、マツダが、輸入車メーカーではFCA、ボルボ、マクラーレン、メルセデスが出展し、ヘリティッジカー販売店17社、マルシェには28社、オーナーズクラブ7グループ、イベントオーガナイザー5社が参加、メーカーはヒストリックカーを持ち込むと同時に、新型車の発表の場とするなど、イベントを盛り上げる努力がみられた。また、日本の自動車文化の発展に携わってきた方々による講演やトークセッションも実施された。
 ここでは、会場に登場したクルマたちのごく一部を紹介する。

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「Automobile Council 2016」の公式プログラムのカバー。

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FCAジャパンは1973年のフィアットアバルト124 ラリーを持ち込むと同時にアバルト 124スパイダーを発表した。他に1964年フィアットアバルト595と2016年アバルト595を持ち込んでいた。

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ワクイミュージアムは由緒あるロールス・ロイスとベントレーを見せると同時に、社内工房の「ワクイミュージアム・ファクトリー」によるフルレストア事業を、修復途上のシルバーシャドーを展示して披露していた。

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これは珍しい1971年にロータスエランをベースに、ロンドンのヘキサゴン オブ ハイゲート社(Hexagon of Highgate Ltd.)によって2台だけ造られたエランエステート。プラネックスカーからの出品。

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ブレシアからは、1933年から1934年初めにかけて90台生産されたMG L-2 マグナの1台が参考出品されていた。1087cc直列6気筒41馬力エンジンを積む。

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マツダは「The History of MAZDA DESIGN」のタイトルで、マツダ初の乗用車1960年R360クーペから、「魂動(こどう):Soul of Motion」をデザインテーマとしたコンセプトカー「RX-Vision」に至る6台を展示。更に、今年のニューヨーク国際オートショーで発表された4代目ロードスターに電動リトラクタブルハードトップを装着したMX-5 RFが発表された。

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会場で発表されたマツダRX-5 RF。

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ガレージ伊太利屋からは後姿が個性的な1948年ランチア アプリリア 2nd シリーズが出品された。1936年のパリ・モーターショーで発表され、1937年に発売された。Bピラーレスのモノコックボディー、エンジンはランチア初の半球形燃焼室を持つ1486cc 約18°の狭角V型4気筒48馬力(1st シリーズは1352cc 47馬力)、サスペンションはランチア特許の、フロントがスライディングピラー式独立懸架、リアは横置きリーフスプリングとトーションバー+トレーリングアームによる独立懸架で、インボードドラムブレーキとボールスプライン式ドライブシャフトを装備した先進的なものであった。1949年11月に生産終了している。

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トヨタはカローラが今年、生誕50周年を迎えたので、1966年の初代カローラをはじめ、1972年のレビン1600、1979年の1600GT、最新のカローラ生誕50年記念限定車であるカローラ アクシオHYBRID G "50 Limited"を持ち込み、スポーティーカローラをアピールしていた。公式プログラムによると、カローラはデビュー3年後の1969年から2001年まで、国内の車名別販売台数(軽自動車を除く)において、33年連続で首位の座をキープし、およそ150カ国で販売され、累計販売台数は4,300万台を超える世界のベストセラーカーである。

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コーンズ・モータースが参考出品した2015年ラ・フェラーリと1982年512BB。他に1988年テスタロッサと2004年チャレンジ ストラダーレが並んでいた。

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会場ではこんなシーンも見られる。クルマはジャガーEタイプ。

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「La Festa Mille Miglia」のしゃれたディスプレイ。クルマは1948年チシタリア コロンボ スパイダー。

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L.F.A.が出展したフランス車3台とイタリア車1台。手前から1966年ランチア フルビア Sr.1、1977年プジョー104GL、1973年シトロエンGSブレーク、1973年シムカ1100GLS。

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トヨタ2000GTは2台出品されていた。これはエムズバンテックのコーナーにあった1969年型で、8,000万円(税別)のプライスタグが付いていた。もう一台、プラネックスカーから出品された1970年型はなんと1億円!

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スバルは1966年に初めてボクサーエンジンをスバル1000に搭載してから50年目となるので「50th Anniversary SUBARU BOXER」をテーマにした展示であった。スバル1000と共に、今秋発売予定の次世代プラットフォーム「SUBARU Global Platform」を初めて採用した、新型インプレッサのプロトタイプと、搭載される新設計のFB型エンジンが展示された。

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スバルのブースに展示されていた、中島飛行機が開発し、わが国で最も多く生産された航空機用「栄」(陸軍の呼称はハ25)エンジン。27.9ℓ 空冷星形2列14気筒の1000馬力級エンジンで零式艦上戦闘機、一式戦闘機「隼」、夜間戦闘機「月光」などに搭載された。

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Yamo's caféでさりげなく一息入れていたランチア アルディア650ピックアップ。1940年に発売されたが、戦争の影響で、1600台ほど生産されたほとんどが戦後生産されたものである。1953年に生産終了している。エンジンは当初903cc 狭角V型4気筒28.8馬力であったが、2ndシリーズで25馬力にデチューンしたモデルが加わり、4thシリーズでは30馬力に強化されている。

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ブガッティ クラブ ジャパンが展示していた、故小林彰太郎氏の愛車であったブガッティT23 モディフィエと、傍らに置かれていた解説ボード。

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ボルボ・カー・ジャパンは国内初公開となるS60ポールスターを発表した。後方に見えるのは木村隆之社長が所有する1971年P1800。他に850T-5RとXC90 T6 AWD R-Designが展示されていた。同時に、クラシックボルボのための特別なワークショップ「クラシックガレージ(KLASSISK GARAGE)」を、ボルボ・カーズ東名横浜内に開設することが発表された。

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アウトニーズは素晴らしいコンディションのシトロエンSMとDSを3台出品していた。

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メルセデス・ベンツ日本のブースに展示された美しい1963年190SL。他に1984年380SL、1990年500SL、2016年SL400もあり、合計4台のSLが展示されていた。

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マクラーレン・オートモーティブは日本初公開となったマクラーレン570GTを発表。他にマクラーレン初のロードカーであるマクラーレンF1が展示されていた。

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日産自動車は今年、プリンス自動車と合併して50周年を迎えたのを記念して、プリンスのヒストリックカー1964年プリンス スカイラインGT(S54A-1型)、1966年R380-Ⅰ、1972年ニッサン スカイラインハードトップ2000 GT-R(KPGC10型)および最新の2017年ニッサンGT-Rの4台を展示した。

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マルシェゾーンには30店近い楽しいお店が並んだ。上の3点はそのほんの一部。

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公式プログラムには早くも来年のスケジュールが載っていた。2017年8月4~6日に幕張メッセで第2回が開催される。今年は自動車文化の種をまき、やっと芽が出たところ。大事に育てて、やがて大きな木に育つことを期待する。

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執筆者プロフィール

1937年(昭和12年)東京生まれ。1956年に富士精密機械工業入社、開発業務に従事。1967年、合併した日産自動車の実験部に移籍。1970年にATテストでデトロイト~西海岸をクルマで1往復約1万キロを走破し、往路はシカゴ~サンタモニカまで当時は現役だった「ルート66」3800㎞を走破。1972年に海外サービス部に移り、海外代理店のマネージメント指導やノックダウン車両のチューニングに携わる。1986年~97年の間、カルソニック(現カルソニック・カンセイ)の海外事業部に移籍、うち3年間シンガポールに駐在。現在はRJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)および米国SAH(The Society of Automotive Historians, Inc.)のメンバー。1954年から世界の自動車カタログの蒐集を始め、日本屈指のコレクターとして名を馳せる。著書に『プリンス 日本の自動車史に偉大な足跡を残したメーカー』『三菱自動車 航空技術者たちが基礎を築いたメーカー』『ロータリーエンジン車 マツダを中心としたロータリーエンジン搭載モデルの系譜』(いずれも三樹書房)。そのほか、「モーターファン別冊すべてシリーズ」(三栄書房)などに多数寄稿。

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