三樹書房
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第74回 マツダCX-5
2016.7.27

今回は、2012年2月に導入以来世界市場で好調な販売実績を残すとともに、マツダの基幹車種に成長、2014年末に大幅改良が行われたが試乗する機会を持てなかったCX-5マイナーチェンジ車を後述のお二人と共に評価することが出来たのでご報告したい。マツダが社運をかけて開発したSKYACTIV-Dに関しては2012年3月の「車評オンライン」で紹介、 CX-5に関しては同年4月の「車評オンライン」で SKYACTIV-D搭載の4WDの評価を行っている。今回評価したモデル(SKYACTIV-D搭載のFF)は「マイナーチェンジ」という言葉が当てはまらないくらい進化しており、モデルサイクルの後期にあるCX-5が依然として大変魅力的なクルマであることを確認した。

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CX-5の販売実績
まず冒頭に生産、販売実績に触れておこう。 2012年2月に導入されたCX-5の2016年6月までの累計生産台数は144万台、地域別販売実績(同じく2016年6月まで)は北米47万台、欧州31万台、中国、日本がそれぞれ14万台強といずれも非常に好調で、今やマツダの基幹車種だ。ちなみに日本における年度別販売実績は2012年35,000台、2013年39,000台、2014年29,000台、2015年27,000台、2016年(6月まで)13,000台と非常に安定した販売台数を維持しており、これほど安定した販売台数を確保してきたモデルは稀有だ。

マイナーチェンジとは
従来「マイナーチェンジ」といえば、ライフサイクルの半ばで開発投資を抑えつつ販売台数の大幅な低下をさけるためのささやかな変更というイメージが一般的だが、最近のマツダはCX-5に限らず、アテンザ、アクセラなどライフサイクルの半ばでかなり思い切った商品改良を行っている。新型車の開発段階でなぜそこまでできないのかという疑問がわくかもしれないが、技術進化の速度は速く、また市場からの声をいち早く反映、更にはライフサイクル中の販売台数の拡大、開発技術者育成という視点からも意義のあることだと思う。

CX-5のマイナーチェンジのキーポイント
以下がCX-5のマイナーチェンジのキーポイントだ。
・鼓動(KODO)デザインの強化 
(水平基調のフロントグリルフィン、LEDヘッドランプ&テールランプ、新デザインアルミホイールなど)
・内装の質感と使い勝手の向上
(ドライバーオリエンテッドで上質なセンターコンソール、電動パワーステアリング、コマンダーコントロールの採用、シートホールド性の向上など)
・ダイナミック性能の磨き上げ
(前後ダンパー、フロントロアアームブッシュ形状変化などによるスムーズ、フラットで質感高い乗り心地など)
・先進安全技術の進化
(防眩ハイビーム、ブラインドスポットモニタリング、レーンキープアシスト&車線逸脱警報システムなど)

内外装デザイン
外観デザインの変更はフロントグリルを見れば一目で識別でき、より精悍で洗練された外観となっている。内装もアテンザのマイナーチェンジに比べると変化代は限られが、センターコンソール周辺の質感が向上、なかなか好ましい変化だ。ひとこと言いたいのはサイドミラーへのエアコングリルのクロームメッキの反射で、次期CX-5では是非改善してほしい。

走りと燃費
今回エンジン、トランスミッションの変更は行われていないが、CX-5の国内販売の約8割を占めるSKYACTIV-D(ディーゼル)の魅力に改めて魅せられた。発進も非常にスムーズなうえに中速から高速まで実に力強く軽快に加速してくれる。1,500rpmでも300Nmを超えるトルクが得られ、最高トルクの発生回転数も2000rpmと、実用領域でのトルクが実に豊かなことなどが大きな要因だ。また5,500rpmあたりまでストレスなしにスムーズに回ること、非常にスムーズでロックアップ領域の広い自社製の6速ATにも拍手を送りたい。ただし最新のカタログにはエンジンのトルクカーブの記載すらなく、せっかくの走りの良さと気持ち良さの要因を理解したいと思うクルマへの関心の深いユーザーを軽視したカタログと言わざるを得ないのが残念だ。

実測燃費はどうだろう? 今回評価コースに選んだ箱根往復は御殿場経由ではなく、往路は平塚、西湘バイパス経由、帰路は小田原厚木道路経由だったが、箱根での芦ノ湖スカイラインを含むかなりなワインディング路も含む都内までの244kmの満タン法による実測燃費は16.5km/L、その後返却までの市街地のみの107kmの実測燃費が13.0km/Lとなった。これだけのサイズ、重量のクルマとしては非常に満足のゆくものといえよう。

ステアリング・ハンドリング・ブレーキング
初期モデルの曲がる・止まるにも高い評価を与えたが、今回試乗した後期モデルではこの領域の進化が明らかに感じられ、低速から高速までの直進が大変気持ち良い上に、舵角を与えた場合のクルマの動きがリニアで、箱根のワインディングロードなどを気持ちよく楽しく走ることができた。箱根で私が良く使う『意地悪評価路』(路面が荒れた屈曲路)でのハンドリング、接地性も抜群だった。ブレーキもドライバーの意思に忠実に作動してくれるので非常に走りやすい。一点気になるのは電動のサイドブレーキをかけた状態からアクセル踏み込むと自動解除するのだが、その際に小さなショックが伴うことだ。最新のVWゴルフワゴンで体験した実にスムーズなブレーキの自動解除などを参考に是非改善してほしい。

乗り心地とロードノイズ
初期型で「タイヤのばたつきと乗員への振動伝達」の問題に対してきびしい評価を与えたが、今回の試乗車(19インチタイヤ装着車)は多くの条件下では許容できる乗り心地となっていた。しかし50km/h以下の住宅地や市街地の凹凸路、高速道路の継ぎ目乗り越え時など、ストロークの小さい領域での乗り心地はまだ許容レベルではない。往路は標準の空気圧(250kPa)で走ったが、帰路は220に下げてみると前後席ともかなり改善された。しかしまだもう一歩だ。また路面の荒い、いわゆる「粗粒路」でのロードノイズも私の許容レベルを超えたもので、せっかくのこのクルマの快適性がかなり犠牲になっているのが残念だ。17インチタイヤの乗り心地、ロードノイズは果たしてどうだろうか? XDグレードの場合19インチタイヤが標準で、17インチがオプション(¥54,000円安い)だが、私の選択はスタッドレスタイヤの価格も含めて間違いなく17インチだ。また各メーカーのエンジニアにもお勧めしているVW式の2段階の空気圧設定(乗り心地を大事にする人に標準空気圧に加え低い空気圧も開示、ただし燃費は悪化しますとオーナーズマニュアルに明記)をマツダにも是非検討してほしい。

CX-5を一言でいえば
以上いろいろと述べてきたが、ひとことでいえばCX-5はデザイン、パッケージング、走り、燃費、運転することの楽しさなどの点から依然として非常に魅力的なクロスオーバーSUVであり、今後も好調な販売実績が続いてゆくことは間違いないだろう。一方で昨年フランクフルトショーでデビュー、中国市場にすでに導入されたCX-4は、CX-5よりは若干コンパクトでスポーティーなデザインの非常に魅力的なクロスオーバー車で、是非とも日本市場にも導入してほしいと思うのは私だけではないだろう。ディーゼルエンジンと6速マニュアルトランスミッションを搭載すれば「マツダからの新しいスポーツカージャンルの提案」と言ってもおかしくないモデルだ。その場合次期CX-5とのすみ分けも興味深い。

今回はお二人(A氏はクルマの専門家ではないが日常的にSUVを利用されている女性、B氏はクルマ好きの自動車エンジニア)からセカンドオピニオンをいただいたので是非参考にしていただければ幸いです。


セカンドオピニオン A氏

内外装
第一印象はまず「幅が広い」でした。1840mmという車幅にも起因してか、間近で見る存在感は抜群でした。しかし乗車すると、「あれ、そんなに広く感じない」と印象は一転、後席はむしろ若干狭くすら感じました。4:2:4で分割できる後席は、スキーヤーやスノーボーダーには非常に嬉しいシステムです。真ん中を倒して板を載せても2名が余裕を持って座れるからです。ただし多少でもリクライニングが出来ると同乗者の快適性が向上するのではないでしょうか。話題のマツダコネクトは、タッチパネルによるインターフェイスが多い中での独特なユーザーインターフェースなので、慣れるまでに若干時間がかかりそうです。

ドライビング
現在の愛車はトヨタクルーガーですが、この10年の技術の進歩に驚くばかりです。キーを挿さなくてもエンジンが始動、駐車ブレーキがボタン一つで操作可能なうえアクセルを踏むと解除、アイドリングストップ機能等など。運転しての一番の驚きは、平坦路も上り坂もアクセルを軽く踏むだけでスーッと走ってゆくことでした。疾走感は抜群で久しぶりに「運転が楽しい」と感じました。またこれまでディーゼルには、黒い煙、音がうるさいというイメージを持っていましたが、マツダのクリーンディーゼルでそのイメージは完全に払拭されました。うるさいどころかとても静か。運転中は多少「ディーゼル」を感じますが、むしろ感じられて良かったなと思っています。ディーゼル車は燃料が安く燃費も良い事からエコであることは間違いなさそうですが、長距離を乗ってこそメリットが発揮されると聞いたことがあり、街乗りメインと言う方にはどうなのでしょうか?

今回往路は指定の空気圧でしたが下からの突き上げをかなり感じたので、復路は圧力を下げて乗り心地を確認したところ突き上げが大幅に軽減され、前席、後席共に乗り心地がよくなりました。空気圧でこんなにも違いが出る事を改めて認識しました。

全体を通して
武骨で男っぽいデザインの車が好きで、スノーボードはもちろん、気が向いたらどこにでも足を運ぶ大切なパートナーを求めている私にとって、今回体験した「運転の楽しさ」も含めてCX-5が今後の検討車種の1つになる事は間違いなさそうです。

セカンドオピニオン B氏

マイナーチェンジ前と外観上は大きな変化は見られませんが、室内と「見えない部分」に大きな進化を感じることができました。満点とは行かなくとも、かなり高いレベルの総合評価となりました。因みに、私は過去1989年式日産サニー・2006年式ホンダシビックというともにセダン且つマニュアル車という共通項を持った、ちょっと普通と違うクルマ遍歴を持っています。

内外装デザイン・見た目の印象
外観はフロントグリルの意匠が変えられたことにより、以前より引き締まった印象を受けます。ここを除くと外観はほぼマイナーチェンジ前と変化はなく、新旧の見分けは難しいです。内装も奇をてらうことはせず、むしろ外観ともども、もうちょっと斬新なものを採り入れても良かったのでは、と思いました。別の見方をすればこれだけデザインに自信を持っているというマツダの答えなのかもしれません。マイナス点は、全幅1840mmという少々長めの全幅。狭い道では取り回しに苦労するかもしれません。

細かな使い勝手、装備
感銘を受けた装備が、ラゲッジスペースです。後部座席は3分割式、レジャーなどで長尺物を運び且つ人も後部座席に乗るというときに重宝します。また、トノカバーはトランクの下にすっきり収納できるので、大きな荷物を積むことも車中泊もできそうです。本革ステアリングの触感は高く、手にすっとフィットしました。マイナス点は試乗車の19インチタイヤで、私には17インチ仕様で問題なしです。

心から楽しめる走行性能
トルクフルなディーゼルの走行性能には頭が下がります。過去ディーゼルの研究をした経験のある私からしても太鼓判。ハンドリング・ATのレスポンスも軽快。少々高めのタイヤ空気圧設定ですが、すべての速度領域でNVH良好。また大きめの車体なので、走行安定性も高く、安心してドライブができます。カタログ燃費に対する本試乗の燃費達成比率はほぼ9割でお財布にも優しい!私はCX-5に合格点を差し上げます。


試乗車グレード マツダCX-5 XD L Package
・全長 4,540 mm
・全幅 1,840 mm
・全高 1,705 mm
・ホイールベース 2,700 mm
・車両重量 1,560 kg
・エンジン 直列4気筒DOHC 16バルブ直噴ターボディーゼル
・排気量 2,188cc
・圧縮比 14.0
・最高出力 175ps(129kW)/4,500
・最大トルク 42.8kgm(420N・m)/2,000rpm
・駆動方式 FF
・変速機 6速AT
・タイヤ 225/55R19
・タンク容量 56L
・JC08モード燃費 18.4 km/L
・試乗車車両本体価格 3,261,600円(消費税込)
・オプション価格 194,400
・試乗車価格 3,456,000円(消費税込)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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