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第71回 アウディA4 セダン(2.0 TFSI)
2016.4.27

2016年2月に国内市場に導入された新型アウディA4は今後のアウディを占う上でも是非とも早期に試乗評価を行ってみたいと思っていたが、今回2.0 TFSIモデルに箱根往復も含めて試乗することが出来たのでご報告したい。アウディA4は、前身のアウディ80(導入は1972年)も合わせると累計販売台数が1,200万台を超え、近年のアウディブランド発展にも大きく貢献した基軸車種だ。A4としての初代は1994年に導入され、今回は5代目で、外観スタイルこそ4代目と非常に近似しているが、MLB evoプラットフォーム(縦置きエンジン)をベースにほとんど全てが刷新され、ファミリーセダンとしての各種要件の一層の充実に加えて「運転することの楽しさ、気持ちよさ」の面でも最先端を行くクルマに進化していることを確認した。


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運転することの楽しさ、気持ちよさ
A4についての評価はまず運転することの楽しさ、気持ち良さからスターしたい。従来のA4もこの面ではなかなか優れていたが、新型A4は走り始めた瞬間から、走行速度に関係なく運転することの楽しさ、気持ちよさが実に見事につくり込まれていることに思わず脱帽してしまった。新世代の「ライトサイジングエンジン」(2.0L 4気筒ターボエンジン)と7速Sトロニックトランスミッションによる走りも満足のゆくもので、運転の楽しさ、気持ち良さの要因であることは間違いないが、箱根への往路、高速道路で遭遇した交通渋滞で、後述するアダプティブクルーズコントロール(トラフィックジャムアシスト機能)に運転をゆだねたことにより、あらゆる速度における「ハンドルを通じてのクルマとの対話」こそが、このA4のもつ楽しさ、気持ち良さの最大の要因であることを改めて痛感した。

新型A4のアダプティブクルーズコントロールは前車に追従しての加減速だけでなく、低速時には車線逸脱を防ぐためのステアリング操作もしてくれる(もちろんステアリングに手は触れてなくてはいけないが)。当然といえば当然なのだが、この時には運転の楽しさ、気持ち良さをほとんど感じることがなかった。「ハンドルを通じてのクルマとの対話」がないからだ。今後自動運転がますます拡大してゆく中で、クルマづくりにおいて「クルマを運転することの楽しさ、気持ち良さ」をどのようにつくり込んでゆくかは、エンジニアにとっては非常に大きな挑戦課題となることは間違いない。

商品コンセプト&パッケージング
アウディA4はプレミアムミッドサイズセダンのベストセラーとして、アウディブランドの中核を任じてきたが、5代目の開発に当たっては、すべてを見直して新たなベンチマークを目指したかったとのこと。外観スタイルの進化の度合いが非常に限定されることに対してはひとこと言いたいが、アンダーフロアーの全面カバーなども含めた細部にわたる空力処理により旧型の0.27に対して0.23というCd値を実現しているのは称賛に値する。また風切り音、ロードノイズ、エンジンノイズも非常によく抑えられおり、非常に静かなクルマに仕上がっている。

エンジンはAシリーズ用に現在は2種用意されており、試乗した2.0 TFSIモデルには燃費効率と走りを高度に融合した新世代の「ライトサイジングエンジン」とよぶ2.0L 4気筒ターボエンジンが縦置きに搭載されており、変速機は従来のチェーン式CVTに代わり7速Sトロニックが採用された。また軽量設計の全輪5リンク式サスペンションを開発、優れた操縦安定性もつくり込まれている。

パッケージング面ではこれまでのものを継承しつつ、全長、ホイールベースを各々15mm、リアレッグルームを23mm、ショルダー幅、前席ヘッドクリアランスをそれぞれ17mm、24mm拡大することによりファミリーセダンとして不足のない居住性が確保された。中でも後席の膝前スペースの拡大は価値が大きいと思う。またトランクスペースもファミリーカーとして十分に満足できるもので、リアシート中央が倒せるため、スキーなどの長尺物の積載が容易なのもうれしい。車両重量は先代と比べて最大で120kg軽量化されたとのこと。一言でいえば新型A4はアウディが渾身の努力を集約した次世代のプレミアムミッドサイズセダンだ。

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内外装デザイン
新型A4の外観スタイルは、一般ユーザーが旧型との差異を瞬時に見分けることは不可能に近いと言っても過言ではなく、私の視点からみて唯一残念なポイントだ。新型A4の外観スタイルが悪いというつもりはない。総じてなかなか魅力的だし、Cd値が0.27から0.23に改善されたことも大いに評価するが、近年のアウディの外観スタイルに関していえば、モデルごとの差別化の少なさに加えて世代交代時の進化しろが限定されていることは正直言って残念だ。今後のアウディの外観スタイル面の進化に期待したいと思うのは私だけではないだろう。

一方内装面では、居住性がかなり改善された上にインパネ回りデザインが大幅に改善され、広がり感、魅力度、質感が大幅に増した。またオプションだが「バーチャルコックピット」とよぶ12.3インチの高輝度液晶モニターを用いたインストラメントクラスターも用意されているのと、「MMIナビゲーション」とよぶインフォテイメントシステムと、アウディコネクトの充実も見逃せない。

走りと燃費
A4セダン2.0TFSIに搭載さている新世代の2.0L 4気筒ターボエンジンには筒内直噴とマニフォールド内間接噴射を組み合わせたデュアルインジェクションと、圧縮行程を短縮、膨張行程を長くしたミラーサイクルが採用され、燃費効率と性能の両立がはかられている。190pの最高出力が4,200-6,000rpmの間で継続して発生、最大トルクは32.6kgmのトルクが1,450-4,200rpmの間で得られる。これにFWD仕様のA4に初めて7速Sトロニック(DSG)が組み合わされ、動力性能は非常に良好だ。カタログ燃費は18.4km/Lだが、箱根でのかなりハードな走行も含めての箱根往復の実測燃費は13.2km/Lとなった。

ステアリング・ハンドリング・乗り心地
前述したように、走り始めた瞬間から走行速度に関係なく(極低速から高速まで)、これまで体験したことのない運転することの楽しさ、気持ちよさを堪能することができた。複合材料によりボディー単体で15kg軽量化された軽量高剛性ボディーも貢献しているはずだし、ダブルウィッシュボーンの発展形の5リンク式で前後方向と横方向の力に対して別個な変位量が設定できるフロントサスペンション、従来の台形リンクに変えて新開発された5リンクのリアサスペンション、可変ダンパー、更には新開発の電動パワーステアリングなどによるところが大きいのだろう。直進状態からステアリングに舵角を与えたときのクルマの動きが実に気持ち良く、加えて箱根でよく使う凹凸の厳しいコーナリング路も(Comfort モードで)爽快に走り抜けることが出来た。またシートの着座間、ホールド感、乗り心地も大変良好だ。

アダプティブクルーズコントロール
今回から装着されたアダプティブクルーズコントロールには一言いっておきたい。まずは自動ブレーキ中に制動力が一時的に緩むことに違和感を若干感じたことと、3秒以上停車すると再始動にアクセル操作を要するのだが、自動で走り出してくれるのか、アクセル操作を要するのかの判定はドライバーがしなくてはならず、実際には3秒以上停止しているかの判断は難しいものがある。むしろスバルアイサイトVer.3のように再始動はすべてドライバーによるスイッチ、もしくはペダル操作が必要なシステムの方が違和感がなく、このあたりの今後の一段の進化を期待したい。

アウディA4の+と-
+ハンドルを通じてのクルマとの対話のすばらしさ
+静粛性と乗り心地(言い換えれば快適性)
+ファミリーカーとして必要十分な室内居住性
+内装デザインとその質感
-外観スタイルの旧型からの進化しろ
-アダプティブクルーズコントロールのドライバーフィーリングとのギャップ


試乗車グレード アウディA4セダン 2.0 TFSI
・全長 4,735 mm
・全幅 1,840 mm
・全高 1,430 mm
・ホイールベース 2,825 mm
・車両重量 1,540 kg
・エンジン 直列4気筒DOHC インタークーラー付きターボ
・排気量 1,984 cc
・圧縮比 11.8
・最高出力 190ps(140kW)/4,200-6,000rpm
・最大トルク 32.6kgm(320N・m)/1,450-4,200rpm
・変速機 7速Sトロニック
・タイヤ 225/50R17
・タンク容量 54 L
・JC08モード燃費 18.4 km/L
・試乗車車両本体価格 5,180,000円(消費税込)
・試乗車価格 6,315,000円(消費税込)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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