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第67回 心を動かされた最近の輸入車3台
2015.12.27

今回は、12月初旬に行われたベンツ、アウディ、VWのラインアップ試乗会で試乗することが出来た車の中から特に印象に残った3台(メルセデスベンツC220d S/W、アウディTT、VWゴルフGTE)に関する簡単な試乗記をお伝えしたい。ベンツは大磯、アウディは御殿場、VWは箱根湯本ベースでの試乗だったが、いずれの場合も私たちが評価時に大切にする厳しい走行条件を含むコースが選べ、それなりの評価をすることが出来た。この3台は、コンセプト、狙いなどは大きく異なるが、一方で国産車の中に匹敵するモデルがないことも事実であり、国産メーカーにも是非とも注目してほしいクルマだ。

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C220dステーションワゴン
2015年10月から販売が開始されたC220dステーションワゴンは、非常に乗りやすく、快適で、魅力と実用性に満ちたクルマであることを確認することが出来た。ベンツのクリーンディーゼル(2.2L)の最高出力の数値こそ170psと決して高くはないが、1,400rpmから得られる400Nmの最大トルクと、Cクラスとして初めての9速ATの組み合わせにより、あらゆるスピードで素晴らしい走りが得られ、加えて軽量で剛性の高いアルミハイブッドボディーシェル、連続可変ダンパーとエアサスの電子制御などにより、低速から高速まで、また凹凸の激しい山間路でも実にフラットで快適な乗り心地が確保されている。不足のない居住性、積載性もふくめ、大変魅力的なプレミアムファミリーカーだ。

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商品概要
ベンツCクラスは、1982年に「190クラス」として登場、累計で1000万台以上が販売されてきたベンツの最量販車種で、2014年7月にフルモデルチェンジし、今回クリーンディーゼルエンジン搭載のセダン、ステーションワゴンが追加された。最新の2.2L直列4気筒BlueTECエンジンは、ピエゾインジェクターを用いたコモンレールシステムや、2ステージターボなどにより、170ps(3,000-4,200rpm)の出力と、400Nm(1,400-2,800rpm)の最大トルクが得られるとともに、Cクラスとして初めての9速オートマティックトランスミッションと組み合わされ、今回試乗したモデルでも19.6km/Lのモード燃費が得られている。また可変ダンパーとエアサスペンションを電子制御することにより、快適性と俊敏性を両立、エアサスならではの、しなやかで、上質な乗り心地も実現している。

内外装デザイン
Cクラスの外観デザインはなかなか魅力的である上に、ステーションワゴンの実用性も高く、大きすぎないプレミアムなファミリーカーとしての存在は日本市場にうってつけだ。都心の路上で見かけるチャンスが急速に拡大しているのもうなずける。内装デザインもシンプルでありながら望ましい質感がつくりこまれており、シートも前後とも着座感が素晴らしく、コーナリング時のホールド性も、後席も含めて大変良好だ。ただし是非改良してほしいのは、各種コントロールボタンの視認性だ。せめて色を付ければ大分改善されるはずだが、文字のサイズが小さいこともあり非常に見えにくい。

走る、曲がる、止まる
1,400rpmからの400Nmの最大トルクと、9速ATも貢献して、あらゆる速度で非常に良く走ってくれる上に、ディーゼル特有の騒音も全く気にならない。このように気持ちよく走れて、なおかつ優れた実用燃費を発揮してくれるのだから、クリーンディーゼルのシェアーが急速に拡大していっても不思議ではない。機会を見つけてマツダの2.2Lクリーンディーゼル搭載アテンザSWとの相対比較を是非行ってみたい。

前述のように、軽量で剛性の高いアルミハイブッドボディーシェル(アルミ使用率の拡大により旧型比で75kg軽量化)、連続可変ダンパーとエアサスの電子制御により、18インチの45(前)、40(後)タイヤにも関わらず、走りだした瞬間から乗り心地の良さに脱帽したが、低速から高速まで、更には凹凸の激しい山間路でも実にスムーズかつフラット、しなやかで快適な乗り味が確保されている。ロードノイズの低さにも驚いた。ステアリングは低速ではなかなかクイックだが、中高速では決してクイックすぎず、非常に気持ち良いのもうれしい。

試乗車グレード C220d STATIONWAGON Sports
・全長 4,730mm
・全幅 1,810mm
・全高 1,450mm
・ホイールベース 2,840mm
・車両重量 1,750kg
・エンジン 直列4気筒DOHCターボチャージャー付きディーゼル
・排気量 2,142cc
・最高出力 170ps(125kW)/3,000-4,200rpm
・最大トルク 40.8kgm(400N・m)/1,400-2,800rpm
・駆動方式/変速機 電子制御9速AT
・タイヤ(前、後) 225/45R18 / 245/40R18
・燃料消費率 JC08モード燃費 19.6km/L
・試乗車車両本体価格 6,790,000円(消費税込)


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Audi TT Coupe
新型アウディTTにはRJCカーオブザイヤー最終選考会の折にモテギのコースでTTSクーペと、ロードスターに試乗、上質な走りと、内外装デザインに大いに魅力を感じていたが、今回箱根のワインディングロードでAudi TT Coupe 2.0 TFSI quattroに試乗することが出来、230ps仕様でも全く不足のない走りと、リニアでフラット、スポーティー、かつ上質なクルマの挙動に感銘を受けた。内外装デザインも先代より一段と洗練されており、大変好感が持てる。エアコンルーバー内の各種空調コントロール機能、インストラメントクラスターも使いやすい。吸排気音の制御や、ロードスターで屋根を開けて走る際の外気の室内への進入に対するコントロールなども良好で、TTは総じて大変魅力的なスポーツカーに仕上がっている。

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商品概要
アウディTTは、1998年に初代が導入されて以来の累計販売台数が50万台を超え、アウディブランドの牽引役もはたしてきたプレミアムコンパクトスポーツだ。2代目が導入されたのが2006年、今年8月に3代目が国内市場に導入された。ボディータイプは初代、2代同様にクーペとロードスターがあるが、エンジンは2.0Lの直噴4気筒で、TTS Coupe(286ps)を除き、最高出力が230ps、最大トルクが370Nmで、全車6速Sトロニックを採用している。ベースモデルのみFWDだが、それ以外はすべて電子制御の多版クラッチを使ったクワトロフルタイム4WDだ。高張力スチールとアルミを組み合わせたコンポジット構造の軽量ボディが新型TTの特徴で、ボディーフレーム上部と、アウターパネルはすべてアルミで、試乗したモデルの重量は1,370kgにおさまっている。4人乗車は厳しいが、カップルでの長距離ドライブなどには充分な荷物積載性も確保されている。

内外装デザイン  
外観スタイル面では、ボンネットに移されたアウディマークが特色で、6つの角をもつシングルフレームグリル、LEDのヘッドライトなどにより、先代モデルに比べて、一段とシャープで、クリーンな造形となっているのはうれしい。ディメンジョン的には、先代より全長、全幅が10mm小さくなる代わりに、ホイールベースは40mm延長されている。内装デザインの上での大きな特徴は、バーチャルコックピットと呼ぶ、通常のメーター位置に、速度/エンジン回転などの表示に加えて、ナビゲーション/インフォテイメントシステムの表示が統合されたシステムで、非常に見やすい。またエアコンのルーバーの中心部にそれぞれ配置されている、「シートヒーター」、「ファンスピード」、「ACコントロール(温度)」、「モード」の操作性が非常によいこともつけ加えておきたい。

走る、曲がる、止まる
箱根のワインディングロードでは、コンフォートモードでも全く不足のない走りを示してくれるとともに、コーナリング時のロールも非常に少なく、ダイナミックモードにすると、エンジンのシフトポイントが変わり、サスも硬くなり、一段とスポーティーな走りが可能となった。クワトロゆえの安定感もあるに違いない。アクセルの踏み加減による吸排気音のコントロールもなかなか魅力的だ。ブレーキも非常にリニアで、安心して踏め、総じて、走る、曲がる、止まる、の領域は、スポーツカーとして充分に満足のゆくレベルに仕上がっている。加えてシートも、過度なホールドがなく、ゆったり座れる割に、コーナリング時の体のホールドが非常に良いのもうれしい。

試乗車グレード Audi TT Coupe 2.0 TFSI quattro
・全長 4,180mm
・全幅 1,830mm
・全高 1,380mm
・ホイールベース 2,505mm
・車両重量 1,370kg
・エンジン 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ
・排気量 1,984cc
・エンジン最高出力 230ps(169kW)/4,500-6200rpm
・エンジン最大トルク 37.7kgm(370N・m)/1,600-4,300rpm
・駆動方式/変速機 6速Sトロニックトランスミッション
・タイヤ 245/40R18
・燃料消費率 JC08モード燃費 14.7km/L
・試乗車車両本体価格 5,890,000円(消費税込)

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VWゴルフGTE
10月初旬に横浜で行われたアウディのA3 Sportsback e-toronの試乗会で、VW/Audiグループの新しいPHEVシステムに接し、その魅力に感銘、同じシステムを搭載したゴルフGTEの試乗も大変楽しみだった。モーターのみで53㎞走れ、130㎞/hまで出せる一方で、GTEモードにすれば、スポーツカーも真っ青な加速が得られる。足回りはGTIほどスポーティーではないが、ハンドリングも好感がもてる。日常の使用にはEモードを中心に使い、休日にはスポーツカーなみの性能と、充電の心配もなく長距離ドライブが出来るのは大変魅力的だ。今後より入手しやすい価格のPHEVモデルが出てくることは間違いなく、このような魅力を備えた国産PHEVが一日も早く市場にでてくることも期待したい。

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商品概要
ゴルフGTEは、これから本格的に始まる電動化を視野に入れたVW独自の環境戦略に基づき開発されたVW初のPHEVとのこと。1.4LのTSIエンジンと、電気モーターを内蔵した6速DSGで構成され、駆動用バッテリーとして8kWhのリチュームイオンバッテリーを搭載している。モーターだけで53km走れ、最高速度も130km/hまでOKだ。HEVモードでは23.8km/Lという優れた燃費を実現、その上で、GTEモードにスイッチすれば、150psのエンジンと、109psのモーターが組み合わさり、スポーツカーも顔負けの加速を楽しむことが出来るのが大きな魅力だ。単なる燃費志向のHEVとは大きく異なる、非常に魅力的なコンセプトだ。

内外装デザイン
内外装デザインは、「e-mobilityシリーズをイメージさせるブルーのアクセントを用い、C字型のフロントLEDランプはVWの電気駆動システムを採用したモデルシリーズの一員である」とVWは主張しているが、一般の人には「差別化が明確ではない」というイメージが先行しそうで、是非もっと一般の人にも見分けのつけやすい差別化をしてほしいと思うのは私だけではないだろう。

早急に改善して欲しいのはシフトノブ左側にある、GTEスイッチ(一番前方)、Eモードの切り替えスイッチの位置(後方)だ。理由は今の位置ではシフトノブが丁度邪魔になって見えないからだ。現在のシフトノブの左側からシフトノブの右側への変更は、写真でも分かるようにすでにそのスイッチの位置は確保されているので(?)、むずかしくないはずだ。またもう一点は、メータークラスターの左側メーターの、ブルー領域の0~10の意味が説明書を読んでも非常に分かりにくいのが残念で、是非もっと分かりやすい解説がほしい。

走る、曲がる、止まる
Eモードで走り始めると、モーターのみによる駆動にも関わらず、全く不足のない加速をしてくれる上に、130km/hまでモーターのみで走れ、また電動だけで走行できる距離が53kmというのも大きな魅力だ。ハイブリッドモードにすると、必要なときにエンジンが自動でかかってくれるし、GTEモードにすれば、エンジンとモーターがフルに働いてくれるので、スポーツカーも真っ青な走りを提供してくれるのが実に爽快だ。実用燃費はユーザーの使い方に大きく依存するのは当然で、毎日短距離しか乗らないユーザーで、ほとんどを電動で走る場合は、10,000kmの走行に必要な電気代は20,000円強とのこと、ハイブリッドモードだけで走行する場合の6万円弱とは大きな違いだ。一般ユーザーの場合はこの中間とみて間違いないだろう。

GTEの足回りのセッティングはGTIほどスポーティーでないが、ハンドリング、ならびに乗り心地ともに良好だ。ただし試乗したモデルがオプションではいていた18インチタイヤのロードノイズが非常に大きく、特にEモードでの走行時に大変気になったことを付け加えておきたい。

試乗車グレード Golf GTE
・全長 4,265mm
・全幅 1,800mm
・全高 1,480mm
・ホイールベース 2,635mm
・車両重量 1,580kg
・エンジン 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ
・排気量 1,394cc
・最高出力 150ps(110kW)/5000-6,000rpm
・最大トルク 25.5kgm(250N・m)/1,500-3,500rpm
・電動機最高出力 109ps(80kW)
・電動機最大トルク 33.6kgm(330N・m)
・変速機 自動6段
・タイヤ 225/45R17
・ハイブリッド燃料消費率 JC08モード 23.8km/L
・EV走行換算走行距離 53.1km
・試乗車車両本体価格 4,990,000円(消費税込)
  (ただし最大38万円のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費が適用に)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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