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第57回 スバルレヴォーグ&キャデラックCTSプレミアム
2015.2.26

最近のスバル車は魅力的なモデルが多い。WRXに関してはすでにS4という「万能型スポーツセダン」による長距離評価の結果をご報告したが、今回は1月下旬にレヴォーグ1.6Lターボモデルを借り出してRJCメンバーと共に白馬を往復、一部雪上走行も含む総合評価を行うことが出来たのでご報告したい。加えて2月初旬に大磯で行われた日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会で試乗した中で私の心をとらえた一台(キャデラックCTSプレミアム)の短評をご報告、次回はその試乗会で試乗することのできた他のモデル(BMW 2シリーズ、シトロエングランドC4ピカソ、アウディA1)に関する短評をご報告したい。尚今回から冒頭に300文字程度の総論をのべ、仕様を最後部に移してみた。

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スバルレヴォーグ1.6GT-S Eyesight

レガシイアウトバックがやや大きくなりすぎたこともあり国内専用に導入されたのがレヴォーグだ。内外装デザインはスポーティーで質感も高く、居住性、荷室空間も十分だ。走りは1.6L直噴ターボでも不足なく、Sモードにすると一段と活発な走りが楽しめる。ステアリング・ハンドリングも雪上を含むあらゆる路面で大変爽快だ。全車速追従クルーズコントロールは雪の高速道路でも大変使いやすかった。試乗車に装着されていた18インチスタッドレスタイヤの低速時の乗り心地は許容レベル以下で、実測燃費は白馬往復で10.8㎞/L、価格も安くはないが、総じて走ることが実に楽しいスポーツワゴンに仕上がっており、スバルブランドの向上に一段と貢献するだろう。

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商品概要
2009年以降のレガシイが米国市場に焦点をあてたためやや大きくなりすぎたこともあり、国内専用に開発されたのがインプレッサをベースとしたスポーツセダンWRXとスポーツワゴンレヴォーグだ。2種類の2Lエンジンを搭載するWRXはセダン市場の縮小もあり、余り多くの台数は期待できないと思うが、レヴォーグは1.6Lと2.0Lの直噴ターボエンジンを搭載、昨今のトヨタ、ニッサン、ホンダのラインアップにはない魅力的なスポーツワゴンに仕上がっており、好調なスバルの販売を更に押し上げる大きな原動力になりそうだ。一段と進化したアイサイト(ver.3)が全車に標準装備されるのもうれしく、全車速追従クルーズコントロールは雪の高速道路走行中の緊張感を大きく緩和してくれた。

内外装デザインと居住性
レヴォーグのデザインは、フロント周りはWRXに近いがグリル周辺はユニークで、サイド、リアの造形も引き締まっており、全体としてもスポーティーで質感が高く、大変好感がもてる。WRXと基本的には同じ内装デザインは、Dシェイプの小径ステアリングも含めて魅力的なものに仕上がっており、質感も高い。またAピラー周りを含む斜め前方視界も良好だ。WRXの280km/hまでの速度表示は意味がないだけでなく視認性も悪いが、レヴォーグは180 km/h までなのではるかに視認性が良い。シートの着座感、ホールド感も良好で、居住性は大人4人の乗車には全く不足なく、後席居住性、荷室の広さも十分だ。ただし富士重工の社内にスキーマニアやスノーボーダーが少ないためか、長尺物を車内に積載することに対する配慮(例えばリアシートが4:2:4で倒せるとか、後席アームレストの部分に長尺物を搭載できるような工夫)が不足しており「4人乗車+長尺物搭載」が至難なのは残念だ。

走りと実測燃費
レヴォーグのエンジンは1.6Lと2.0Lの直噴ターボで、今回借り出したのは1.6Lモデルだ。最高出力は170馬力とそれほど強力ではないが、1,800rpmから25.5kgmの最高トルクが得られることにも起因し、「インテリジェントモード(I)」でも不足のない動力性能が得られ、「スポーツモード(S)」にすれば一層活発な走りが楽しめる上にレギュラーガソリンでOKなのもうれしい。私のチョイスは50万円の価格差も含めて300馬力の2.0Lではなく、1.6Lターボだ。ただし実測燃費は3人乗車でかなりな荷物を積載しての558kmの白馬往復で、10.8km/Lとさほど良い数値には得られなかった。

ハンドリング、乗り心地など
ハンドリングもまたレヴォーグを「Fun to Drive Car」にすることに大きく貢献している。カタログには1.6GT-Sに限らず2.0GT、GT-Sにも「スタッドレスを装着する場合は215/50R17を装着してください」と書かれているのに、今回の試乗車には(公開される写真のホイールを標準の18インチにしたいためか)、225/45R18のスタッドレスタイヤが装着されていたが、ステアリングのセンターフィール、更にはそこから切り込んだときのリニアリティーも良好で、雪上走行性も問題はなかった。ただしこの18インチタイヤの乗り心地は、高速では問題ないものの、高めの空気圧(F:250、R:240kPa)にも起因して、低速時の凹凸路では許容レベル以下であり、レヴォーグオーナーにはコストも含めて間違っても18インチスタッドレスタイヤの装着はお勧めしない。最後に一言、同行の2名のRJCメンバーの総合評価も非常に高かったことを付け加えておきたい。

試乗車グレード 1.6GT-S Eyesight
・全長 4,690mm
・全幅 1,780mm
・全高 1,490mm
・ホイールベース 2,650mm
・車両重量 1,550kg
・エンジン 水平対向4気筒DOHC直噴ターボ
・排気量 1,599cc
・圧縮比 11.0
・エンジン最高出力 170ps(125kW)/4,800-5,600rpm
・エンジン最大トルク 25.5kgm(250N・m)/1,800-4,800rpm
・駆動方式/変速機 フルタイムAWD/リニアトロニック
・タイヤ 225/45R18
・燃料消費率 JC08モード燃費 16.0km/L
・試乗車車両本体価格 3,056,400円(消費税込)

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キャデラックCTSプレミアム

近年のアメリカ車の中で高い評価を与えられるモデルが少ない中、キャデラックATSは、デザイン&走りともなかなかのものだが、ひとクラス上のCTSは2013年にモデルチェンジ、今回試乗することが出来たCTSプレミアム(オンディマンドAWD)は脱帽に値するスポーティーセダンに仕上がっていた。内装デザインはやや煩雑だが、外観はクリーンで魅力的だ。2L 4気筒エンジンによる動力性能は予想以上で、Boseアクティブノイズキャンセレーションの効果もあってか、スムーズで静粛なエンジンに仕上がっている。良好なハンドリングと速度領域を問わない優れた乗り心地は磁性流体減衰力制御システムの貢献もあるのだろう、多くの国産車も真っ青になるレベルだ。

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商品概要
今年のJAIA試乗会で試乗したクルマの中で私に大きなインパクトを与えてくれた1台が、今回新たに追加されたオンディマンドAWDシステム搭載のCTSプレミアムだ。2013年にモデルチェンジしたCTSは旧型より少しサイズアップ、デザイン的にも魅力が拡大したが、アルミドア、ボンネットなどの採用により車両重量が先代比100kgも軽量されたという。2L直噴ターボエンジンの走りは素晴らしく、4気筒とは思えない静粛なエンジンに仕上がっている。またハンドリングと乗り心地が素晴らしく、アメリカ製プレミアムモデルの代表選手となることは間違いない。日本メーカーの開発者たちにも是非とも体験してほしい1台だ。

内外装デザインと居住性
伸びやかでスリムなプロポーションや、細部まで行き届いたクリーンな外観スタイルは、「アメ車」の中では群を抜いているとともに、旧型からも明らかに進化しており、プレミアムブランドにふさわしいデザインだ。ただし内装の造形に関しては決してシンプル&クリーンとはいえないもので、(アメリカ人好みの「プレミアム」なのかもしれないが)、もう少しシンプルな方が良いと思うのは私だけだろうか?液晶タコメーターの指針が細かく振動するのも気になり、コンベンショナルなメーターの方が私にはうれしい。後席居住性は膝前にこぶし一つ半入る程度で、決して広くはないが、シートはフロント&リアとも着座感、ホールド感ともなかなかなレベルだ。

性能、走り感
国内向けCTSのメインモデルは2L直噴ターボエンジンだが、出力は276psとパワーフルで加速性能も素晴らしく、Boseアクティブノイズキャンセレーションの効果もあってか4気筒の悲哀を感じさせないスムーズで静粛なエンジンに仕上がっており、プレミアムカーとして不足のない性能、商品性だ。総合で11.0km/Lというカタログ燃費はECモードによるものだが、これまで車評コースで測定してきた多くのクルマのデータではJC08モードよりもECモードの方がむしろ日本の実用燃費に近いことを確認しており、どのような実用燃費となるかは興味深いところだ。

ハンドリング、乗り心地など
動力性能とともに驚いたのがステアリング・ハンドリングだ。大磯での試乗車には直前に行われた雪上試乗会のためか、スタッドレスタイヤが装着されていたが、それでも広範囲な速度領域でリニアで気持ち良い走りをしてくれたのが印象的だった。1000分の1秒単位で減衰力をコントロールするマグネティックライドコントロール(磁性流体減衰力制御システム)も貢献しているのだろう、ハンドルを切りこんだ際のボディーロールもよくコントロールされており、18インチの40タイヤだが乗り心地も非常にいい。これほどハンドリングと乗り心地の気持ち良いアメリカ車にこれまで接した記憶がない。その割にはロードノイズも良く抑えられ、古典的な「アメリカ車」との決別といってもいいだろう。

試乗車グレード CTSプレミアム
・全長 4,970 mm
・全幅 1,840mm
・全高 1,465mm
・ホイールベース 2,910mm
・車両重量 1,770kg
・エンジン 直列4気筒DOHC(インタークーラー/ターボチャージャー付き)
・排気量 1,998cc
・最高出力 276ps(203kW)/5,500rpm
・最大トルク 40.8kgm(400N・m)/3,000-4,500rpm
・駆動方式/変速機 オンディマンドAWD/6AT
・タイヤ 245/40R18
・欧州モード燃費 市街地7.8、高速14.5、総合11.0km/L
・試乗車車両本体価格 6,990,000円(消費税)

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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