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第54回 RJCカーオブザイヤー
2014.12. 2

今回は1991年に発足したRJCカーオブザイヤーをご紹介したい。RJCは「日本自動車研究者・ジャーナリスト会議」(Automotive Researchers' & Journalists' Conference of Japan)と呼ばれる特定非営利活動法人で、2014年度には67名の会員、名誉会員で構成されている。毎年11月1日から翌年の10月31日までの間に導入される新型車や新技術の中から、カーオブザイヤー、カーオブザイヤー・インポート、テクノロジーオブザイヤーなどを選択し、適切な対象がある場合はパーソンオブザイヤーや、特別賞などを選定している。早いもので私も会員になって10年を優に超えるので、今回はその選定手法などをご紹介するとともに2015年次の受賞車、受賞技術に関して簡単にご報告したい。

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RJCとは?
RJCはその定款によると、自動車の性能、利便性などの評価を行い、国産車、輸入車の製造、販売、購入、使用などに関わる人たちすべてに対して、直接もしくは諸種の媒体を通じて提言を行う、また自動車の交通、安全、環境保全などの問題に対しても貢献することをめざす特定非営利活動法人で、1991年に設立以来、毎年カーオブザイヤー、カーオブザイヤー・インポート、テクノロジーオブザイヤーを選択、適切な対象がある場合はパーソンオブザイヤーや、特別賞なども選定してきた。日本も含めて多くの国にある自動車専門誌などが選ぶカーオブザイヤーとは異なり、会員もジャーナリストが多いものの、大学教授、交通評論家、自動車研究家など幅広いバックグラウンドをもった人たちの集まりで、2014年度の会員は65名、名誉会員が2名だ。

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RJCカーオブザイヤーの選定プロセス
国産車を対象にしたRJCカーオブザイヤー、輸入車を対象にしたカーオブザイヤー・インポート、技術を対象としたテクノロジーオブザイヤーの選択基準は、毎年11月1日から翌年の10月31日までに市場に導入された新型車、新技術を対象に、まず11月の初めに会員の投票により各カテゴリーにおける上位6台、もしくは6技術を選択する。続いて11月初旬にもてぎサーキットに国産車、輸入車のベスト6を集めて最終選考会(テストデー)を開き、サーキット内にある一般路でRJCメンバーが試乗、試乗後その結果もふまえてサーキット内の会議場において1位から6位までの採点(1位6点、2位5点、3位4点、4位3点、5位2点、6位1点)を無記名で行い、メーカー、インポーター関係者の立会いのもとで開票し順位を決定する。当日都合によりもてぎに来られない会員は郵送で投票することも可能だが、例年郵送の投票は非常に限定されている。今年の有効投票総数は56だった。

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もてぎサーキットにおける最終選考会
もてぎサーキット内の一般路での同時比較というこのテストデーのイベントは各社にお手数をかけることにはなるが、どんな経験の豊かな人でも、一年間の間に各所で行われてきた新型車の試乗会や、その後長距離評価を行うことのできた一部モデルの評価をベースに順位づけを行うことは至難の業で、同一条件で相対比較する意義は非常に大きい。また評価用に設定しているコースがサーキットではなく、路面が適度に荒れコーナリング評価も可能な一般路で、一般ユーザーの使用条件に近い条件で評価することが出来るのも貴重だ。もてぎのテストデーまでに自分が仮決定していた順位が、もてぎでの相対比較後の最終判断で変動することを毎回体験している。

投票が無記名であることの意義も大きい。なぜなら記名方式だと、どうしてもメーカー、インポーターの思いを気にしての配点になってしまうことが避けられないからだ。また投票総数が50以上になることの統計上の意義も大きく、偏った選択が減り、大半の選択が納得性の高い、適正かつ公正な結果となることも毎年実感している。

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2015年次RJCカーオブザイヤー
このようなシステムで行われるRJCのカーオブザイヤー選択だが、今年度のRJCカーオブザイヤーベスト6に残った国産車はダイハツコペン、スバルレヴォーグ、ホンダN-WGN、マツダデミオ、三菱eKスペース/ニッサンデイズルークス、ニッサンスカイライン、スズキハスラーの7車種だった(一次投票で6位が同点だった為)。この7台のクルマに対する最終選考結果はスズキハスラー(297点)、マツダデミオ(237点)、ニッサンスカイライン(160点)、スバルレヴォーグ(155点)、ダイハツコペン(123点)、ホンダN-WGN(111点)、三菱eKスペース/ニッサンダデイズルークス(72点)となった。

以下スズキハスラーに対する私のコメントをお伝えしよう。ワゴンRのプラットフォームやパワートレインを活用し、アウトドアーやスポーツに適した遊び心のある個性的なデザインを採用、大径タイヤ、拡大された最低地上高、ヒルディセントコントロールなどの4WD用新機能の採用などによりラフロード性能も向上させたクロスオーバーだ。自然吸気エンジンでも不足のない走りが味わえるとともに、ターボ4WDの走りは非常に良好で、実用燃費も大幅に改善されている。重心はやや高いが、好ましい乗り味が作りこまれており、後席のスペースや乗り心地も、長距離ドライブが全く苦にならない。軽自動車の新しいカテゴリーへのスズキの挑戦と、魅力的な商品性が今回のRJCカーオブザイヤーで1位を獲得した最大の要因だと思う。

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2015年次RJCカーオブザイヤー・インポート
RJCカーオブザイヤー・インポートのベスト6として最終選考まで残ったのは、アウディA3/S3セダン、BMW i3、BMWミニ、ジャガーFタイプクーペ、メルセデスベンツCクラス、VWポロの6台で、最終選考結果はメルセデスベンツCクラス(260点)、BMW ミニ(259点)、BMW i3(192点)、アウディA3/S3セダン(180点)、ジャガーFタイプクーペ(164点)、VWポロ(121点)だ。Cクラスとミニの争いは、最後の一人の開票まではミニがリードするという接戦だった。

新型メルセデスベンツCクラスは内外装デザインが非常に魅力的なものに変身、アルミニウムを多用したハイブリッドボディー、4リンク式フロントサスペンションなどにより運動性能も大幅に向上している。直列4気筒直噴ターボエンジン(1.6Lと2.0L)、電子制御7速ATにより優れた動力性能と燃費も実現、多角的な安全運転支援システムも採用された。2L直噴ターボの出力はそれほどではないが、1,200rpmから最高トルクが得られるため、あらゆるシーンで満足のゆく走りを提供してくれるし、1.6Lの走りも不足ない。一部機種にはクラス初のエアサスが装着され、高速や荒れたワインディングロードの走破性はすばらしい。「コンパクトプレミアムクラスの新しい流れを作るにふさわしいモデル」が今回一位を獲得した理由といえるだろう。

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2015年次RJCテクノロジーオブザイヤー
テクノロジーオブザイヤーのベスト6として最終選考まで残ったのは、スバルレヴォーグ/WRX S4の運転支援システム「アイサイト(ver.3)」、マツダデミオのSKYACTIV-D 1.5エンジン、ニッサンスカイラインのダイレクト アダプティブ ステアリング、スズキワゴンRのS-エネチャージ、BMW i3/i8のライフドライブコンセプト、メルセデスベンツCクラスのレーダーセーフティーパッケージで、最終選考結果はニッサンスカイラインのダイレクト アダプティブ ステアリング(306点)、マツダデミオのSKYACTIV-D 1.5エンジン(240点)、スバルレヴォーグ/WRX S4の運転支援システム「アイサイト(ver.3)」(183点)、スズキワゴンRのS-エネチャージ(167点)、メルセデスベンツCクラスのレーダーセーフティーパッケージ(142点)、BMW i3/i8のライフドライブコンセプト(138点)となった。

ニッサンの新しいダイレクト アダプティブ ステアリングシステムは、ステアリングの動きを電気信号に換えてタイヤを操舵することを実用化した世界初のシステムで、路面からの不要な情報を抑えて直進安定性を高め、遅れのない操舵感により安心、快適なドライブができるということが売りだ。今後自動運転が定着してゆく上で、貴重な技術となるという点も多くの評価点を獲得した理由だと思う。ステアリング操作感がまだ既存の一部のパワーステアリングに及ばず、重量、コストもかなり上がるため、私の選択は1位がマツダのSKYACTIV-D、2位がスバルのアイサイト(ver.3)、3位がスズキのS-エネチャージ、4位がニッサンスカイラインのダイレクト アダプティブ ステアリングだったが、RJCとしての選択結果に対しては心からニッサンを祝福したい。

RJCカーオブザイヤーの存在意義
日本カーオブザイヤー(COTY)という存在がある上にRJCカーオブザイヤーが必要かという声を聞かないでもないが、幅広いバックグラウンドをもつニュートラルな立場の人たち60名以上で構成されているRJCゆえに、普遍的、客観的で一般ユーザーの視点に近い選択が行えることは間違いない。設立当初から国産車と輸入車を分けているのも適切で、輸入高級車と軽自動車を同じ土俵で比較するには無理がある。今後可能ならば日本独自のカテゴリーと言ってもよい軽自動車の別枠を設けたいところだ。更に当初から行われてきたベスト6選定後のテストデーを経ての最終選考、無記名投票などもRJCカーオブザイヤーの貴重なポイントであるし、優れた選択手法でもあるので、今後も存続してゆく意義は十分にあると思う。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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