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第53回 スバルWRX S4
2014.10.27

WRXは従来インプレッサのグレードの一部だったが、今回から「スバル最高峰のAWDスポーツセダン」として独立した車種となり2014年8月に導入された。WRXには、モータースポーツでこれまで使用されてきたショートストロークの2.0L水平対向エンジン(308馬力)に6速マニュアルトランスミッションを組み合わせてモータースポーツへの活用も視野に入れたSTIと、2012年にレガシィに搭載されてデビューした水平対向4気筒2.0L直噴ターボエンジン(300馬力)に、従来のリニアトロニックの変速レスポンスを向上してよりスポーティーな走りが可能となったトランスミッション(CVT)を組み合わせたS4という万能型スポーツセダンの2つのバージョンがある。今回はS4の2.0GT-S EyeSightというモデルで那須高原を往復、山間部でのかなりハード走行も含めて総合的な評価も行うことができたのでご報告したい。

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・試乗車 スバルWRX S4  
・グレード 2.0GT-S EyeSight
・全長 4,595 mm
・全幅 1,795mm
・全高 1,475mm
・ホイールベース 2,650mm
・車両重量 1,540kg
・エンジン 水平対向4気筒DOHC16バルブデュアルAVCS直噴ターボ
・排気量 1,998cc
・圧縮比 10.6
・最高出力 300ps(221kW)/5,600rpm
・最大トルク 40.8 kgm(400N・m)/2,000-4,800rpm
・変速機 スポーツリニアトロニック(マニュアルモード付)
・タイヤ 225/45R18
・燃料消費率 JC08モード燃費 13.2km/L
・試乗車車両本体価格 3,596,400円(消費税、有料色込)

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スバルWRX S4とはどんなクルマ?
WRXは基本的にはレヴォーグと多くのコンポーネントを共用するが、開発はWRXが先行したようだ。その中でWRX S4は、"Sports performance"、"Safety performance"、"Smart driving"、"Sophisticated feel"の4つの"S"の融合を意味し、"Pure Power in Your Control"というコンセプトのもとで開発された「乗り手を選ばない万能型スポーツセダン」とのこと。S4のエンジンは2012年にレガシィに搭載されてデビューした水平対向4気筒2L直噴ターボで、トランスミッションは従来のリニアトロニックの変速レスポンスを向上したマニュアルモード付きCVTだ。シャシー、ボディーの性能もインプレッサWRXに比べて大幅に強化されている。スバル車全体を通して装着比率が非常に高いアイサイトはステレオカメラを刷新、カラー化するとともに視野角と視認距離を拡大、これまでの「走る」、「止まる」に加えて「曲がる」領域への運転支援も実現している。今回長距離評価したS4の2.0GT-S EyeSightというモデルにはEyeSight(ver. 3)とビルシュタインショックアブソーバーが標準装備されている。

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動力性能と実測燃費
まず動力性能から始めよう。STIの試乗はしていないので比較はできないが、一般路での走行が主体の人にとってS4の走りはスポーツセダンとして全く不足ない、というより十二分なレベルと言った方が適切かもしれない。2000rpmから40.8 kgmという強力な最高トルクが得られることもあり、省燃費モードで(Iモード)でも山間路の走りを楽しむのに全く不足は感じなかった。その気で踏み込めば5000rpm近くまでフラットな最高トルクが継続するトルク特性にも起因し、走りは非常にダイナミックで、高速道路を含む一般路での走りもスポーツセダンにふさわしいものになっている。

Sモードにするとエンジン回転数は上がり一段と活発な走りが得られ、S#モードにするとクロスレシオの8段変速となり、マニュアルモードにすればパドルシフトで思い通りの走りができるという選択肢はスポーツセダンとして大いに魅力だ。ただしS#モードを一番使いたいはずの山間路走行時に気になったのは、例えば3rdの状態からアクセルを踏み込んだ場合トルクの立ち上がりに若干タイムラグが生じることだ。このタイムラグはマニュアルモードではほとんど感じられなかったので、結果として山間路はマニュアルモードで走るのが最も気持ちよかった。ただしマニュアルシフトのためのパドルが短いため、90度近い舵角を与えた場合(山間路ではかなり頻度が高い)パドルの位置を探すのがむずかしく、かといってシフトレバーでは変速できないのが残念だ。パドルを下方へ50㎜も伸ばせばずいぶん操作性がよくなるはずで、是非今後の改善を期待したい。燃費は山間路でのハード走行も含めて東京から那須高原の往復で12.0km/Lとなり、300馬力を誇るスポーツセダンとしては決して悪くない数値だ。

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ハンドリングと乗り心地
WRX S4の魅力は動力性能だけではない。ハンドリングと乗り心地も非常に気持ちが良い。ハンドリングは、インプレッサWRXに比べて捩じり剛性で40%、曲げ剛性は30%以上も向上したというボディー、改良の加えられた前後サスペンション、更にはシンメトリカル4WD、優れた重量配分なども貢献、スポーツセダンにふさわしく、レスポンスが良く、リニアリティに富んだものだ。山間路のハード走行だけではなく、一般路でのリラックスした走行時のハンドリングも非常に楽しく、気持ち良い。

加えて乗り心地は、サスは決して柔らかくないし、タイヤも18インチの45タイヤと乗り心地に有利なスペックではないが、荒れた山間路でもタイヤからの突き上げがほとんど気にならいフラットな乗り心地がつくりこまれている。スポーツ走行が快適なだけではなく、一般路でのドライブでも角の取れた上質乗り心地を提供してくれるのはビルシュタインダンパーに負うところも大きいはずだ。

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内外装デザインと居住性
WRXの外観スタイルは力強さ感、かたまり感、立体感、迫力のあるもので、スポーツセダンとしてなかなか魅力的だ。前後のブリスターフェンダー、六角形のヘキサゴングリル、鋭い目つきのヘッドライトなどが迫力の作りこみに貢献している。内装はオーソドックスなデザインだが、Dシェイプの小径ステアリングホイールや各部のレッドステッチも含めてスポーツセダンとして質感も高く、魅力的なものに仕上がっている。またAピラー周りの斜め前方視界が良いことも、ワインディングロードを走る喜びが大切なスポーツセダンとして非常に好ましい。シートの着座感、ホールド感も良好だ。唯一改善を期待したいのはアナログメーター、中でもスピードメーターの文字が小さすぎることだ。スポーティーなこのクルマの性質からもメーターの見やすさは必須なので、フォントのサイズを是非大きくしてほしい。居住性は大人4人の乗車には全く不足のないもので、後席やトランクの広さも十分で、スポーツセダンとして大きすぎず、小さすぎず最適な車体寸法だ。

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アイサイトver.3
走り以外に高い評価を与えたいのがアイサイトver.3の「全車速追従機能付きクルーズコントロール」だ。那須高原への往路、首都高速に入って間もなくトンネル内で事故渋滞に遭遇したが、一時間半の渋滞走行中、全く不安を感じることなく追従走行してくれた。その後那須インターまで、車線を変えても、前を走る車が車線をかえても、前方にクルマが割り込んできても、的確に減速、加速、設定速度の維持をしてくれ、停車状態からの発進もステアリング上のボタンで可能なため、右足の操作をしなくても不安を感じるシーンは皆無だった。連休など交通渋滞の中でのドライブ時や、長距離ドライブ時の疲労削減効果は非常に大きそうだ。

「走る」、「止まる」に加えて「曲がる」領域への運転支援も実現した「アクティブレーンキープ」という車線中央維持機能も東北道でかなり試してみたが、ゆるいコーナーに近づくと微妙に左右のラインに接近、そのたびに自動操舵で車線中央にもどるため、自分でステアリングした方が、むしろストレスが少なく、継続的に車線中央維持機能を使用することはなかった。今後の進化に期待したい。

スバルWRX S4を一言でいえば?
スバルWRX S4を一言でいえば大変魅力に満ちたスポーツセダンだ。STIの魅力も大きいがユーザー層が限られることは明らかで、その意味でもS4は一般の顧客層の心を幅広くつかんでくれることは間違いない。アイサイトはAT車であるS4にしか装着されないので、その点からもS4の魅力は大きい。ただし国内における販売計画はS4が400台、STIが250台と控えめで、主力市場は北米になってしまうのだろう。クルマ離れが顕著な日本の若年層に対してこの種高性能スポーツセダンの魅力をいかにアピールしてゆくかは引き続き自動車業界全体の大きな課題だ。

スバルWRX S4の+と-
+力強い外観スタイルと内装デザイン
+スポーツセダンにふさわしいハンドリングとライド
+アイサイトver.3の全車速追従機能付きクルーズコントロール
-S♯で加速時のタイムラグ
-小さすぎるメーターフォント
-やや高いロードノイズ

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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