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第52回 メルセデスベンツC200
2014.9.26

メルセデスベンツCクラスがフルモデルチェンジし、7月国内市場に導入された。コンパクトクラスのベンツは1982年導入のW201シリーズ(モデル名は190E)に端を発するが、Cクラスと名付けられたのはW202シリーズ(1993年導入)からで、その後W203シリーズ(2000年導入)、W204シリーズ(2007年導入)と続き、今回がW205シリーズだ。コンパクトクラスベンツの累計販売台数はすでに1千万台を超えるという。このたび新型CクラスのC200アバンギャルドAMGラインで箱根を往復、箱根でもいろいろ評価する機会がもてたが、内外装デザイン、動的性能、安全性への配慮など非常に魅力的なクルマに仕上がっており、国内コンパクトプレミアムカー市場の台風の目となるとともに、世界的な省資源化の中でCクラスの果たす役割は一段と大きくなりそうだ。

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・試乗車 メルセデスベンツCクラス 
・グレード C200 アバンギャルドAMGライン
・全長 4,715mm
・全幅 1,810mm
・全高 1,430mm
・ホイールベース 2,840mm
・車両重量 1,590kg
・エンジン DOHC直列4気筒 ターボチャージャー付
・排気量 1,991cc
・圧縮比 9.8
・最高出力 184ps(135kW)/5,500rpm
・最大トルク 30.6 kgm(300N・m)/1,200-4,000rpm
・変速機 電子制御7速AT
・タイヤ 前225/45R18、後245/40R18
・燃料消費率 JC08モード燃費 16.5km/L
・車両本体価格 5,240,000円(AMGパッケージ +350,000円)


新型メルセデスベンツCクラスとはどんなクルマ?
190Eから初代Cクラスまではベンツのベースモデルだったが、1997年にはAクラス、2005年にはBクラス(いずれも前輪駆動)が導入され、中でも2012に導入された新型Aクラスはハッチバック、セダン、クロスオーバーとバリエーションも豊富で世界市場で躍進を続けている。

新型Cクラスは内外装デザインが非常に魅力的なものに変身、アルミニウムを多用した「ハイブリッドボディー」(上の写真)、4リンク式フロントサスペンション(下の写真)などにより運動性能も大幅に向上、直列4気筒直噴ターボエンジン(1.6Lと2.0L)、電子制御7速ATにより優れた動力性能と燃費を実現、「インテリジェントドライブ」と呼ぶ多角的な安全運転支援システムなどが採用された。

今回試乗したC200アバンギャルドはエンジンが2.0Lターボで、装着されていた「AMGパッケージ」に含まれるものには、フロントスポイラー、サイド&リアスカートなどのスタイリングパッケージ、AMGスポーツステアリングホイール、前225/45R18、後245/40R18のタイヤ、Cクラス、そしてこのセグメントとして初めてのエアサスペンションなどがある。

新型Cクラスは、外観寸法ならびに車格的にはアウディA4やBMW3シリーズ、レクサスISなどに非常に近いクルマで、コンパクトプレミアムの戦いはますます激しさを増すとともに、今後導入される各種バリエーションも含めてベンツの中核モデルとして一段と発展してゆきそうだ。

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外観スタイルとボディーシェル
最近のベンツの外観スタイルはSクラスを筆頭に従来の保守的な方向からダイナミックでエモーショナルな方向に大きく舵が切られているが、新型Cクラスも流麗かつエモーショナルで、質感の高いデザインに仕上がっている。W204シリーズにあった2種類のフロントグリルが、ツインルーバーの中心部にスリーポインテッドスターを配したスポーティーなもの1種類に絞られたことは、保守的なプレミアムイメージからの進化を目指しているようで興味深い。外観スタイル面でも競合車に大きな挑戦状を突きつけていることは間違いない。

アルミニウムを多用した「ハイブリッドボディー」とよぶ軽量高剛性ボディーが採用されているが、ボディーシェルへのアルミ使用率が先代比5倍以上の50%(面積比)まで高められたことによりホワイボディーの重量が70kgも軽量化されたという。フロントフェンダー、ボンネット、トランクリッド、ドア、ルーフパネルなどの外板もアルミだ。また0.24というCd値は、このセグメントのベンチマークとなるもので、省燃費への貢献は決して小さくないはずだ。唯一気になったのは写真のリアドアやフィラーリッドの隙間とばらつきだ。

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内装デザインと室内居住性
内装デザインもW204の保守的な造形に比べてはるかにダイナミックでエモーショナルなものとなった。円形エアコンルーバーを含むスポーティーなデザインはメルセデスベンツのスポーツカーゆずりで、内装デザイン的にもベンツが保守的なプレミアムイメージからスポーティープレミアムな方向への脱皮を目指してしているようだ。後席居住性は潤沢とまでは言えないが、十分に許容できるもので、シートはフロント、リアとも形状、ホールド感など素晴らしい。多くの国産車との有意差を特に感じたのはリアシートで、後席に座っての箱根長尾峠の上り下りではその素晴らしいホールド性に感銘した。またトランクスペースもファミリーカーとして不足のないもので、センター部分が可倒式でスキー、スノーボードなどの長尺物の積載が可能なのはうれしい。

ステアリングホイールの握り感、タッチ感も非常に良好で、AMGパッケージに含まれているAMGスポーツステアリングは見た目もスポーティーだ。ステアリングコラム右側に配置されたターンシグナルレバーに似たシフトレバーは非常に使いやすいが、国産車に慣れた人、あるいは一家のクルマの中に国産車がある場合、ターンシグナルと誤認しやすいのがちょっと心配だ。事実私もその後都内で試乗したベンツGLAでは見事に(?)走行中に誤操作してギヤが抜け一瞬慌てた。

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動力性能と実測燃費
エンジンは2L直噴ターボで、出力は184psとそれほどではないが、30.6 kgmの最高トルクが1,200-4,000rpmの間で得られる効果は大きく、あらゆるシーンで満足のゆく走りを提供してくれる。また一般道では使用するメリットは少ないが、箱根の山間路の走行時などにドライブモードをSPORT、更にはSPORT+にセットすると、サスペンションのみではなく、エンジン/トランスミッションも走りを重視したセッティングになり、スポーティーな走りに変身してくれるのもうれしい。4気筒の割にエンジンノイズは総じて静かだが、加速時のザワザワという音はもう一歩だ。

箱根往復の実測燃費を満タン法で計測したが、東名の往復でもSPORT、SPORT+での走りをトライ、箱根ではかなりハードな走行を繰り返したことなどが影響してか9.6km/Lにとどまった。一般的な走りであればおそらく12km/L前後になるのだろう。ちなみにその数日後に那須を往復した(ただし山間部ハード走行はなし)W204シリーズ(1.8Lターボ)の実測燃費は13.6km/Lだった。

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ハンドリングと乗り心地
Cクラス、そしてセグメントとして初めて採用されたエアサスペンションのハンドリングと乗り心地はどうだろう?一言でいえば高速領域やハードな走行では、ハンドリング、乗り心地とも非常に良好で、最も感銘したのは、私が箱根の試乗でいつも評価に使う非常に荒れたワインディングロードの走破性だ。SPORT+モードでも決して硬すぎず、足がしたたか、しなやかに動き、安心して高速で走破できた。これまでに乗ったことのあるクルマの中ではベストといえるレベルだ。さすが「アジリティ」(俊敏性)をコンセプトに開発されたモデルだけのことはある。この素晴らしい走破性のベースとなっているのが軽量高剛性ボディーにあることはいうまでもない。

ただしComfortモードでも凹凸の多い市街地や住宅地における30km/h以下での走行時、あるいは高速道路の舗装の継ぎ目乗り越え時のばね下のばたつきはちょっと気になった。現在のセッティングは高速になればなるほど、また走りがハードになればなるほど優れた特性を発揮してくれるので、欧州向けのセッティングになっているのだろう。今後日本市場にベストマッチしたセッティングへの見直しを期待したい。最近試乗する機会をもったテスラモデルSのエアサスペンションの場合21インチのタイヤにも関わらず都内の凹凸路で、実にスムーズでしなやかな走りを見せてくれたことを一言付け加えておきたい。また装着されていた18インチタイヤの特性かもしれないが、ロードノイズが期待値より高かったのが一寸残念だ。

インテリジェンスドライブ
今回は評価する機会がなかったので、ここで詳しく解説することはできないが、新型ベンツCクラスを語るのに、クルマの周囲360度をカバーするカメラとレーダーを活用した複合的なセンサーシステムをベースとした「インテリジェンスドライブ」と呼ばれる安全運転システムを欠かすことはできない。先行車両、横切る車両、後方車両、対向車、歩行者などを検出し、状況に応じてアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動でアシストする、ベンツの言う「部分自動運転」の実現であり、新型Cクラスの大きな商品魅力となることは間違いない。

今後の販売動向に注目!
新型Cクラスを一言でいえばデザイン、走り、燃費、安全性などの面からみて大変魅力にあふれたコンパクトプレミアムカーであり、アウディA4やBMW3シリーズ、レクサスISなどとの競合だけではなく、その一クラス上のモデルとも十分に戦える商品力を備えたモデルだ。サイズ的にも日本のインフラに大変良くマッチしており、幅広い顧客層にアピールしそうで、今後の販売動向に大いに注目したい。

新型メルセデスベンツCクラスの+と-
+外観スタイルと内装デザイン
+ハンドリングを含む満足のゆく走り
+部分自動運転を含む安全への配慮
-低速凹凸路走行時のばね下のばたつき
-加速時のエンジンのザワザワ感
-細部のフィット&フィニッシュ

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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