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第51回 スズキスイフトRS-DJE
2014.8.27

スイフトは、2013年1月に世界累計生産台数が300万台を超えたスズキの世界戦略車種だ。初代の導入は2000年1月、現在のスタイリングに近い2代目が導入されたのが2004年11月、デザインこそ2代目に近似しているがフルモデルチェンジの3代目が導入されたのが2010年8月だ。2013年7月のマイナーチェンジでDJE(デュアルジェットエンジン)とよぶ大幅に燃費を向上したモデルが登場、2014年6月には欧州チューニングの足回りのRSモデルにデュアルジェットエンジンを搭載した特別仕様車「RS-DJE」が導入された。今回そのモデルの長距離評価を行ったが、一言でいえば、細部に改善希望点はあるものの、ハイブリッド車に肉薄する実用燃費、動力性能、ハンドリング、内外装デザインなど大変満足のゆくクルマに仕上がっていることを確認した。

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・試乗車 スズキスイフト 
・グレード RS-DJE(2WD)
・全長 3,875mm
・全幅 1,695mm
・全高 1,500mm
・ホイールベース 2,430mm
・車両重量 1,000kg
・エンジン 水冷直列4気筒 DOHC16バルブVVT
・排気量 1,242cc
・圧縮比 12.0
・最高出力 91ps(67kW)/6,000rpm
・最大トルク 12.0kgm(118N・m)/4,400rpm
・変速機 CVT
・タイヤ 185/55R16
・燃料消費率 JC08モード燃費 26.4km/L
・車両本体価格 1,602,720円

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スイフト「RS-DJE」とはどんなクルマ?
今回評価したのは「特別仕様車RS-DJE」と呼ばれるもので、1.2Lの吸排気VVTエンジンに、デュアルインジェクションシステム、クールドEGR、それらにより実現した12.0という高圧縮比、エネチャージ、新アイドリングストップシステム、エコクールなどが追加されたモデルだ。JC08モード燃費は26.4㎞/Lと非常によく、内外装面ではDJEモデル用メーターを除き特に大きな変更はない。

大変優れた実測燃費
どのような実測燃費となるか大きな興味をもっての試乗だったが、那須高原までの東北道往復と、那須高原山岳路をそれなりのペースで走った453㎞を満タン法で計測した結果、20.4㎞/Lというすぐれた実測燃費が得られた。同種の走行条件における他車の実測燃費と比較すると以下のようになり、2代目より大幅に燃費が改善された3代目スイフトと比べても一段と燃費が向上していることは明らかで、市街地燃費は12~13km/Lとハイブリッドに及ばないものの、高速燃費は22~24 km/L程度となり、高速を主体とする長距離走行ではハイブリッドに肉薄する燃費が得られるといっても過言ではない。

・2代目スイフト(箱根往復):10.9
・3代目スイフト(那須&裏磐梯往復):15.5
・VWポロTSI(八ヶ岳往復):17.4
・フィットハイブリッド(箱根往復):21.1
・ホンダヴェゼルハイブリッド(那須往復):16.8

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「RS-DJE」に搭載される省燃費技術
RS-DJEには、
・デュアルインジェクションシステム(1気筒あたり2つのインジェクターを装備)
・クールドEGR(水冷クーラーにより排気ガスを冷却して再循環)
・それにより可能となった12.0という高圧縮比
・時速13km以下でエンジン停止する新アイドリングストップシステム
・エネチャージ(減速時のエネルギーを利用して発電するシステム)
・エコクール(畜冷材を利用してアイドルストップ時の室内温度上昇を抑制)
などの省燃費技術が搭載される.

デュアルインジェクションシステムは1気筒あたり2つのインンジェクターを設置、燃料の微粒化を進めるとともに、インジェクターの配置を燃焼室に近づけたものだ。水冷式のEGRクーラーの採用により再循環させる排気ガスの温度を下げ、更にピストンやシリンダーヘッドの冷却性を向上することによりノッキング抑制効果を高め、12.0という高圧縮比を実現している。(しかもレギュラーガソリンでOK!)エコクールというシステムにも改めて拍手したい。今回30~35度Cの外気温の中での市街地走行がほとんどだったが、ほぼすべての信号待ちでアイドルストップが持続した。近年スズキが挑戦してきたこれらの一連の技術には本当に頭が下がるものがある。

全く不満のない走り
DJEモデルの走りはどうだろうか。従来モデルの試乗記の中で、「副変速機付きのCVTの装着されたモデルは非常にスムーズに走れるのだが、箱根の山坂道におけるDレンジにおける走行性能にやや不満を感じ、その後の裏磐梯などの標高の高いワインディングロードの走行時にも同様に走り感の不足を感じるシーンがあった。」と述べたが、今回のDJEモデルでは、市街地、高速道路はもしろん、標高の高い那須高原のワインディングロードの走行においても、デュアルジェットを採用した高圧縮比エンジンにより中低速トルク特性が改善されているのか、走りに不足を感じるシーンには遭遇しなかった。

ただし以前にも指摘したワインディングロード走行時のパドルシフトレバーの使いにくさには改めてふれておきたい。コーナリング時にハンドルを90度近く回すとシフトレバーの位置が非常に探しにくくなるもので、マニュアルシフトを一番使いたい走行条件下での使い勝手の悪さは何とも残念だ。今後のモデルチェンジにおいては、ダイハツコペンのようにシフトレバーの前後操作でCVTの手動変速を行う方式か、ステアリングコラムに固定したシステムをおすすめしたい。

走りの領域でもう一点指摘しておきたいのが減速中に13km/h以下になるとエンジンが停止するシステムだ。減速中に一旦エンジンが停止したあとブレーキ踏力を緩める場面では、エンジンが再始動するが、これがかなりな頻度で起こり、違和感が残る。この違和感はエンジン再始動時のギアかみこみ音(?)と始動に要する時間にも起因しているかもしれない。7km/h以下でエンジン停止するクルマでは感じなかった違和感だ。

ハンドリングも大変良いのだが
那須高原のワインディングロードでは、RSの大きなセールスポイントであるハンドリングを十分に楽しむことができた。機敏でありながら安定性が高く、ドライバーの思うように走れるのは、車体剛性の高さに加えて、欧州チューンのRSのサスペンションセッティングによるところが大きいはずだ。また4輪ディスクブレーキによる制動性も非常に良好だ。ただし今回試乗した車両の固有の問題かどうかは分からないが、ステアリングセンター付近にフリクション感があり、市街地、高速を問わず運転することの気持ちよさがかなりスポイルされていた。このフリクション感はワインディングロードではほとんど気にならなかったのだが。

乗り心地とロードノイズにも一言ふれておきたい。ワインディングロードではあまり気にならなかったが、市街地や住宅地の凹凸はもとより、高速道路での路面の継ぎ目でもタイヤからの突き上げがかなり気になった。指定空気圧の前輪250、後輪220(kPa)をそれぞれ200、180に落としてみるとはるかに上質な乗り心地となった。燃費のための高めの空気圧の設定はスズキに限ったことではないが、望ましい乗り味の追求は、わずかな燃費の有意差よりもユーザーにとってずっと大切であることを改めて日本のクルマづくりに携わる人たちにぜひ認識してもらいたい。

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外観スタイル
「先代のデザインを踏襲、進化させたデザインだが、新型の方がかたまり感、力強さ感は明らかに上で、ヘッドライトの造形もフロントの存在感に大きな影響を与えている。」と3代目の導入時に述べたが、その造形がいまだに古臭く感じず、またに日本の小型経済車のなかでは例外的に胸を張って乗れるクルマであることもうれしい。

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内装デザイン
3代目の導入時、内装デザインも日本の小型車の中では傑出したもの言えると述べた。一方で2連メーターがいずれも数字が小さくしかも中心を向いた書体のため非常に見にくかったが、今回DJEモデル用に新しくなったメーターは、書体の向きがよく、サイズも大きく読みやすく、エネルギーフローインジケーター、エコスコアなどの表示、通常運転、エコ運転、エネチャージなどを色で識別するランプなども含めて大変好感のもてるもので、質感も良好だ。加えてシートのサイズ、着座感、ホールド感などは小型経済車のカテゴリーの中ではトップレベルといっていいだろう。

ただし注文もある。センターコンソール上方にある空調のコントロールや、ステアリングホイール上にある各種コントロール、更には試乗車に装着されていたナビの操作系の表示文字があまりにも細すぎて、老眼の私には実に見にくいのだ。モデルチェンジまで変更は難しいだろうが、安全性の確保という視点からも是非とも今後これら表示の視認性の向上にも取り組んでほしい。

スイフト「RS-DJE」を一言でいえば?
3代目の導入時に、「ダウンサイジングを考えている人に最適な、インテリジェンスに富んだコンパクトカーであり、都会、地方、年令、性別を問わず迷わずお勧めできる一台だ。」と述べたが、今回のRS-DJEは実用燃費の改善幅も半端ではなく、ハイブリッドを選択肢とする人たちにも「実用燃費」、「バリューフォーマネー」、「ファントゥードライブ」という視点から是非トライすることをおすすめしたい。またこれまでスポーティーなクルマを楽しんできた人たちの心もつかむことのできるクルマだ。

スイフト「RS-DJE」の+と-
+良好な実測燃費
+運転することが楽しいハンドリング
+外観スタイルと内装デザイン
-空気圧にも起因した乗り心地
-ステアリングセンター付近のフリクション感
-HVACなどの表示の視認性の悪さ

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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