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第48回 ホンダヴェゼルハイブリッド4WD
2014.5.27

2013年12月に導入されホンダヴェゼルの販売は好調なようだが、今回ハイブリッド4WDモデルを試乗評価することができたのでその印象をご報告したい。一言で言えば、日本市場においてファミリー用途としての適切なサイズと使い勝手、魅力的な内外装デザインに加えて、7速DCTと高出力モーターの組み合わせにより燃費一辺倒ではなく走りも楽しいクロスオーバーに仕上がっており、「リアルタイム4WD」により雪上での走行性も大幅に改善しそうだ。実用燃費もなかなか良好で、ガソリン車やFF仕様も含めて、新型フィットを除き国内の登録車市場において苦戦を強いられているホンダにとって大きな武器となるだろう。またコンパクトクロスオーバーモデルが急成長している欧州などの海外市場でもホンダブランドへの貢献が期待できそうだ。

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・試乗車 ホンダヴェゼル
・グレード ハイブリッドX (4WD)
・全長 4,295mm
・全幅 1,770mm
・全高 1,605mm
・ホイールベース 2,610mm
・車両重量 1,370kg
・エンジン 直列4気筒直噴DOHC i-VTEC
・変速機 高出力モーター内蔵7速DCT
・排気量 1,496cc
・圧縮比 11.5
・エンジン最高出力 132ps(97kW)/6,600rpm
・エンジン最大トルク 15.9kgm(156N・m)/4,600rpm
・モーター最高出力 29.5ps(22kW)/1,313-2,000rpm
・モーター最大トルク 16.3kgm(160N・m)/0-1,313rpm
・タイヤ 215/60R16
・燃料消費率 JC08モード燃費 23.2km/L
・車両本体価格 2,560,000円

コンセプト
ホンダいわく、ヴェゼルは「SUVの力強さ、クーペのあでやかさ、ミニバンの使いやすさを融合させたクルマ」で、ハイブリッドとガソリン車をラインアップ、それぞれにFFと4WD仕様が設定されている。ベースは昨年デビューした新型フィットだが、ヴェゼルはフィットより一回り以上大きく、ニッサンジューク、トヨタRAV4、スズキエスクード、スバルXVなどと近似したサイズだ。CR-V、CX-5、エクストレイルなどよりはワンランク小さい。ハイブリッド車、ガソリン車ともに1.5L直噴エンジンを採用、ガソリン車はCVTが組み合わされるが、ハイブリッドは従来のIMAシステムとは異なり、ホンダが新世代ハイブリッドと呼ぶ7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と高出力モーターを組み合わせたものだ。加えて4WDシステムは電子制御により後輪の駆動力を緻密かつ素早くコントロールするリアルタイム4WDで、雪上での走行性は大幅に改善しそうだ。

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内外装デザイン
「安定感のあるロアーボディーとクーペライクなアッパーボディー」とホンダが言う外観スタイルに正直言って当初はあまり魅力を感じなかったが、何日間かを共に過ごすうちに世の中にあるクロスオーバー車のデザインとは一線を画した造形が次第に目になじんできたのは確かで、今ではそれなりに魅力のある外観スタイルということができそうだ。ただしフロントグリル周りのデザインには何かまだ迷いを感じるのと、BMWのX6などにもみられるが、クーペライクなアッパーボディーとクロスオーバー車の融合は必ずしも私をひきつけてはくれないのも事実だ。また車体後部のデザインにも起因し斜め後方視界がかなり犠牲になっているのも残念だ。

内装デザインは近年のホンダの?マークを付けざるを得なかったものからは大きく前進しており、大変好感のもてるものに仕上がっている。ドライバーオリエンテッドなインパネ周りの造形、立体的に見えるメーターやコントロール系の視認性、操作性、内装全体の質感のつくりこみなどには拍手をしたい。ただしステアリングホイールの握り部分の形状や革の触感などがコストの制約もあるのだろうが、Inviting to driveとは言い難いのが残念だ。

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パッケージングと室内居住性
CX-5は魅力に満ちた車だが、生活環境によってはもう少し小さい方がよいと思う人も少なくないはずで、ヴェゼルの4295×1770×1605mmというサイズは「大きすぎず、かといって小さすぎず」、多くの人にとって最適なサイズと言えそうだ。フィットで採用されている前席シート下に燃料タンクをおく「センタータンクレイアウト」とハイブリッドシステムの組み合わせは◎だ。なぜなら荷室スペースを大きく犠牲にすることなく大型のバッテリーが荷室下に配置できるからだ。ちなみにガソリン車とハイブリッド車のトランクルームの床面の高さの違いは30㎜程度のようで、ハイブリッド車の床面高さはほとんど気にならない。またフィットの商品魅力のひとつでもある後席のアレンジ性、中でも後席シートクッションをワンタッチで跳ね上げることにより、植木鉢に入った植木など背の高いものを横にせず運べるのはうれしい。後席乗員の膝前スペースも十分に確保されており、後席居住性も文句ない。唯一残念なのは多くの欧州車にはみられるスキーなどの長尺物の室内積載を可能とする後席の中央のアームレストスルーなどのフィーチャーがないことだ。

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走りと実用燃費
ハイブリッドモデルの大きな魅力はやはり1.5Lの直噴エンジンと7速DCTに高出力モーターを組み合わせた新世代ハイブリッドの走りにある。ノーマルモードでも全く走りの不足は感じないし、7速DCTも大変スムーズだ。一段と活発な走りをしたい時にスポーツモードを選択すると下手なスポーツカーも真っ青になるぐらいの胸のすく走りをしてくれる。従来のホンダハイブリッドとは異なり、ワンモーターながら低速走行や緩い加速時にはモーターのみで走行できるのもうれしい。燃費面でも有利なはずだ。

前述のようにハイブリッドモデルを単なる燃費改善のクルマと位置付けるのではなく、良好な燃費とともに、Fun to Drive性にあふれる魅力的なクルマに仕上っているのがうれしい。なお車両重量はハイブリッド4WDで1,370kgとそれなりの数値に収まっている。7速DCT関連で一つ注文を付けたいのは、どのギヤに入っているかを常時表示してほしいという点だ。パドルシフトを使い手動で減速した際にはギヤが表示され、更に望ましい段数も表示されるのはいいが、それが間もなく消えてしまい、今自分がどのギヤで走行しているかが分からないからだ。

ハイブリッド4WDの実用燃費はどうだろう?今回の我々のデーターは、富士スピードウェー往復(帰路は箱根経由でかなりハードな走り)で15.0km/L、武田氏の長野往復が16.2km/L、私の那須往復(山間部走行も含む)が16.8km/Lとなった。ちなみに市街地走行では14~15km/L、高速巡航では20km/Lといったところで、絶賛できる数値ではないが、走りの良さを考えれば満足できる実用燃費だ。

ハンドリング・振動・騒音・乗り心地
このクルマは直進安定性、ハンドリングともにレベルが高いのもうれしい。中でもワインディングロードにおけるハンドリングは、ハイブリッド4WDゆえの前後の重量配分、さらにはリアルタイム4WDとそのチューニングにも起因してか、その気で攻めたくなるほど気持ち良く、また安定感も高い。ただし直進時のステアリングのセンター付近の不感帯の広さはぜひ改善してほしいところだ。

振動、騒音、乗り心地の領域も押しなべて良好だが、低速の市街地凹凸路での乗り心地はほめられないのと、高速道路の舗装の継ぎ目を乗り越えるときの乗り心地もやや気になる。また大方の路面からのロードノイズは許容できるが、粗粒路のロードノイズはもう一歩だ。

ホンダヴェゼルは誰におすすめか?
総じてホンダヴェゼルハイブリッド4WDは大変魅力的なクルマに仕上がっており、そのサイズ、使い勝手、取り回し性、走り、燃費、そして満足のゆく質感などを考えるとき、積雪地帯はもちろんのこと、都会に住みつつもたまには雪上を走るチャンスのあるアクティブなファミリー、スキー、スノーボード、キャンプなどの好きな広範囲な年齢層にとって大いにお勧めしたいモデルだ。また今回は評価できていないがFFのハイブリッド、ガソリンエンジン仕様のFF、4WDも小型ミニバンやステーションワゴンなどに代わる魅力的なファミリーカーとして広範囲なユーザー層におすすめできそうだ。

オートスピードコントロールに関して一言
最後にオートスピードコントロールに関して一言追記しておきたい。今回の那須往復時に非常に有効にオートスピードコントロールを活用できたのは、設定速度がメーター上110km/h前後まで使用できたからで、以前に所有していたRX-8のように103km/h程度までしか使えなかった時と大きな違いを感じたからだ。「高速道路の最高速度は100km/hで、それ以上の速度でのオートスピードコントロールはあってはならない」という前提で100km/hのわずか上までしか設定できないという国内市場向け国産車に対する制約は、実情を全く無視した制約であるばかりではなく、オートスピードコントロールの使用によるドライバーの疲労の予防や燃費の抑制にも貢献しないコストの無駄遣いと言わざるを得ず、一日も早い制約の見直しを期待したい。

ホンダヴェゼルの+と-
+適切なパッケージング
+魅力的な内外装デザイン
+満足のゆく走りと良好な実用燃費
-斜め後方視界
-市街地の凹凸路の乗り心地
-粗粒路におけるロードノイズ

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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