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第46回 マツダアクセラスポーツ15S
2014.3.27

すべてのスカイアクティブ技術を投入した新型アクセラの販売は2013年11月に開始された。試乗会では1.5L AT、2.0L AT、ハイブリッドに試乗、更にハイブリッドは長距離評価も行ったが、ディーゼルにはまだ試乗の機会がなく、1.5L MTは広報車両が少なく借り出すことができなかった。今回アクセラスポーツ1.5L MT仕様車(ハッチバック)を数日間借り出すことができたが、このモデルは、魅力的な内外装デザインに加えて、走りの質感が高く、心配した1.5Lエンジンに起因した走りの不足を感じるシーンは限られ、実にファンtoドライブなクルマだ。アメリカのコンシューマーレポート(自動車の総合評価でも高い信頼性を誇る世界最大の消費者雑誌)の最新版もマツダ3ハッチバック(米国向けは2.0Lと2.5L)に対して「スポーティーなハンドリング、クラストップの燃費、優れた安全性能、スポーティーさと実用性のベストバランス」と非常に高い評価を与えている。

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・試乗車 マツダアクセラスポーツ15S
・グレード 15S
・全長 4,460mm
・全幅 1,795mm
・全高 1,470mm
・ホイールベース 2,700mm
・車両重量 1,240kg
・エンジン SKYACTIV-G1.5(直列4気筒直噴DOHC 16バルブ)
・排気量 1,496cc
・圧縮比 13.0
・最高出力 111ps(82kW)/6,000rpm
・最大トルク 14.7kgm(144N・m)/3,500rpm
・変速機 6速マニュアルトランスミッション
・タイヤ 205/60R16
・燃料消費率 JC08モード燃費 19.2km/L
・車両本体価格 1,879,500円
・オプション価格 257,250円(ディスチャージパッケージ、セイフティクルーズパッケージ、CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー、Boseサンドシステム)

マツダアクセラスポーツ15Sはどんなクルマ?
アクセラスポーツ15Sに対する印象を一言でいえば、「アクセラシリーズの最廉価モデルでありながら、躍動感あふれる魅力的な外観、質感の高い内装などに加えて、近年の日本のファミリーカーの中では珍しく運転することの満足感が非常に高いクルマ」となりそうだ。運転することの満足感が高い理由は、1.5Lでありながら平坦路を走る限りほとんど不足を感じない動力性能とアクセルレスポンス、FF用マニュアルトランスミッションとしては世界最良ともいえるシフトフィール、リニアで気持ちのよいステアリング・ハンドリングとブレーキング、上質な乗り心地、理想的なドライビングポジション、運転に必要な操作機器の操作性や操作フィールなどをあげることができる。

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走りと実用燃費
このクルマの評価はまず走りと実用燃費から始めよう。導入時試乗会における1.5L AT、2.0L AT の走りの印象はよく、長距離評価を行ったハイブリッドの走りも満足のゆくものだったが、今回1.5L MTを評価した結果、平坦路を走る限りほとんど不足を感じない動力性能とアクセルレスポンスに加えて、6速マニュアルトランスミッションを駆使しての走りが大変気持ちよく、久しぶりにMT車を運転する楽しみを味わうことができた。2500rpm以下のトルク特性がよいこと、高回転までストレスなしにエンジンが吹き上がること、エンジンサウンドがよいこと、小気味よくシフトできる6速のトランスミッションにより変速も楽しみのひとつとなっていることなどがその要因といえよう。

実用燃費も悪くない。都内一般道や観音崎往復を含む200kmの走行では(高速と一般道はほぼ半々)総合で15km/L、高速では18~19.5km/L、市街地では11.5~13km/Lという値になった。アクセラハイブリッドの小田原往復総合17.5、高速22~25、市街地15~18にはかなわないが、旧型アクセラ(4AT)の車評コース燃費12.8km/Lと比較してかなり改善されているとみていいだろう。なお1.5L(MT、ATとも)には、マツダがi-ELOOPと呼ぶ減速エネルギー回生システムは装着されていない。

このクルマの魅力点の中でSKYACTIV-MTと呼ぶ6速マニュアルトランスミッション(上記3番目の写真)を忘れるわけにはいかない。シフトストローク、操作力、節度感、吸い込まれ感などが適切で、変速の楽しさを存分に味わうことができる、FF用マニュアルトランスミッションとしては稀有なものだ。評価したいのはメーター中央の速度計の左にある小ぶりなタコメーターの中に表示されるギヤシフトインジケーターで(上記一番下の写真)、一見おせっかいにもみえるが、燃費を配慮した場合にどのギヤに入れるべきかを適切に知らせてくれる意義は大きい。加えてアイドルストップ後の再始動の早さと振動、騒音の少なさは、これまで経験してきた多くのアイドルストップシステムの中ではベストと言ってよいものだ。

もう一点言及しておきたいのが、ヒルローンチアシストが全てのグレードに標準装備されている点だ。最近はDSG装着車などにみられるこのシステムだが、従来のMT車で装着されたものを知らない。上り坂での発進時に数秒間自動でブレーキがかかるため、発進が実に容易であり、次のロードスターなどにも採用されることを期待したいし、欧州市場などでもウェルカムされるのではないだろうか。

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ハンドリング
このクルマはステアリング・ハンドリングもいい。SKYACTIV-CHASSISと呼ばれるフロントのマクファーソンストラットとリアのマルチリンクサスペンション、更にはそれを支える軽量でありながら剛性の高いボディーをベースに、優れた接地感とリニアなフィードバック感がつくりこまれおり、市街地における軽快な走りと高速時やコーナリングにおける安定したハンドリングが共に大変好ましいものに仕上がっている。1.5Lバージョンには205/60R16のタイヤが装着されているが、このタイヤで十分コーナリングも楽しむことができる。

乗り心地・振動・騒音
新型アクセラシリーズの中で1.5Lモデル(ハッチバックとセダン)とハイブリッドモデル(セダン)には(205/60R16)タイヤが装着され、それ以外の5ドアハッチバックには(205/45R18)が装着されているが、今回評価したアクセラスポーツ15Sはシリーズ中ベストな乗り心地といっていい。同じ(205/60R16)のタイヤを履いたハイブリッドではタイヤ種類の違いに起因してか、指定のタイヤ空気圧(2.5気圧)では低速時の乗り心地が気になったが、この15Sに装着されているタイヤの場合(指定空気圧は同じ2.5気圧だが)あらゆる速度領域でごつごつせず、ばたつきもなく、しっとりとした気持ちの良い乗り心地が体験できた。一方で、是非とも改善してほしいのはロードノイズだ。低速から高速まで、粗粒路はもちろん、それ以外の路面でもロードノイズが一番気になるからだ。これを改善することによりアクセラの商品性はかなり向上するはずだ。

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外観スタイル
当初やや違和感のあったフロントグリル内に装着するライセンスプレートだが、慣れてくるとさほど違和感がなくなった点も含めて、「魂動」をテーマにしたアクセラの外観スタイルは躍動的で、力強く、アテンザのデザインよりしまりがあり、非常に魅力的だ。マツダがシグネチャーウィングとよぶフロントグリルは、存在感、躍動感、質感をうまく表現しており、スピード感、リズミカルのあるサイドビュー、スポーツハッチというにふさわしい後半のデザインなども含めて、コンパクトカーらしくないプレミアム感に満ちたもので、外観スタイル全体的に非常に好感がもてる。セダンとハッチバックでリアドアが共通化できたことはコスト面でのメリットも大きいはずだ。マツダの新しいデザイン戦略は今後のブランド向上にも大きく貢献するだろう。

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内装デザイン
内装デザインが開放的で質感が高いのもいい。インパネ全体の造形はシンプルだが、開放感にあふれたもので、ペダル類に加えて視認性のよい単眼メーター、ステアリングホイールがドライバーに正対することにより一体感を演出、細部のクローム調のトリム類、更には各種コントロール系の見た目も質感に大きく貢献している。特筆したいのがセンターコンソール中央にあるコマンダーコントロールやオーディオのボリュームコントロールの操作性の良さと操作の質感だ。革巻きステアリングホイールの形状、シートの形状、座り感も悪くない。また最廉価グレードでもそれらが変わらない点も評価に値する。今後同種の考え方がデミオなどにも適用されることを期待したい。ただし一部グレードにあるオフホワイトのレザーパッケージを除き内装が黒一色だけではなく、もっと選択肢がほしいところだ。

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パッケージングと使い勝手
総じてコンシューマーレポートにもあるように、私もアクセラハッチバックはスポーティーさと実用性がよくバランスされたモデルだと思う。後席居住性はぎりぎりOKのレベルだが、トランクスペースはこのクラスとしては全く不足のないもので、シートバックを倒した際にはフラットになり、フロントシートを前方にスライドすれば写真のように大人がゆったりと寝られるスペースに変身するのもアウトドアー派には大変うれしいフィーチャーだ。ただし注文がないわけではない。リアシートのアームレストをトランクスルー方式にしていれば、長尺物の搭載が一段と容易になり、スキーヤー、スノーボーダー、釣り人などにとってより魅力的が増すはずだ。


マツダアクセラスポーツ15Sの+と-
+魅力的な内外装デザイン
+満足のゆく走りと良好な実用燃費
+走ることへの満足感
-ロードノイズ
-長尺物の積載性

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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