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論評25  コンシューマーレポート(1)
2013.4.27

今回と次回はアメリカのコンシューマーレポートに関する報告をしたい。コンシューマーレポートは生活に必要な各種商品に対する公平で客観的な評価を行う、1936年に創刊された消費者むけの雑誌で、自動車に対する評価の歴史も古い。発行部数は毎月400万部、毎年発行される自動車特集は800万部とも言われるが、近年はCosumerReport.orgというオンラインアクセスも非常に多く、読者からフィードバックされる信頼性データと、独自のテスト結果をふまえて毎年車種ごとに「リコメンド(お勧めできるクルマ)」も決定する。今回は 年初の同誌に掲載された"New Car Reliability"という信頼性の最新データを、次回は 4月号の"Who makes the best cars?"という興味深い記事のエッセンスをご紹介したい。

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コンシューマーレポートは広告を一切とらないため、メーカーに対する遠慮をする必要がなく、良いものは良い、悪いものは悪いと評価結果を非常に客観的にレポートすることが最大の特色で、自動車に関してもその価値とインパクトは専門誌の及ぶところではない。また自動車専門誌では多くのモデルの信頼性に関する広範囲な評価を自前で行うことは不可能に近いが、コンシューマーレポートは同誌ならびにオンラインを通じて毎年120万台に及ぶ車種、年式、部位別信頼性データをオーナーから入手し分析を行っている。加えて年間80台前後の新車をディーラーから購入、多くの専任スタッフにより327エーカーもある自前のテストコース、一般道で50項目に及ぶ商品性評価も行い、「リコメンド(お勧めできるクルマ)」も決定しており、新車購入に対するまたとないガイダンスとなるだけでなく、自動車メーカーにとっても貴重なクルマづくりの指標となるもので、日本にも同種のものが是非欲しいところだ。今回はそのコンシューマーレポートが年初に発刊した "BESTCARS SUVs&TRUCKS"という特別号で、"New Car Reliability"という信頼性に関する興味深いレポートを公表しているので、以下そのエッセンスをご報告したい。

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日本車
まず従来から信頼性が大きな購買要因となってきた日本車のポジションだが、今回もトップ10ブランドのうち8ブランドが日本車というように圧倒的に優位な結果となった。サイオン(トヨタの若者向けブランド)、トヨタ、レクサスとトヨタ系ブランドがトップ3を独占、中でもトヨタブランド車は27車種中16車種が最高の評価を獲得、総合2位と前年比4ランクもアップした。また今回のコンシューマーレポートのデータの中で最も信頼性の高かったモデルはトヨタプリウスC(アクア)だが、それ以外のプリウスも全て平均値以上で、トヨタ系ブランドの信頼性の高さには頭が下がる。次に良かったのが昨年同様マツダで、今回は2013年型のCX-5が大きく貢献しているとのこと。スバルも前年比3ランクアップ、総合で5位となったが、新型インプレッサによるところが大きいという。6位ホンダ、7位アキュラと続き、インフィニティが9位、ニッサンが13位となった。ニッサンの場合、大型SUV、大型ピックアップ、ベルサ(日本名ティーダラティオ)などが足を引っ張っている。ただしニッサンリーフは初めてのEVだが、トップランクの信頼性データとなった。

欧州車、米国車、韓国車
日本車には及ばないが、欧州車の中で信頼性が高いのがドイツ車で、中でもアウディの18ランクアップにはコンシューマーレポートが驚いており、総合で8位に入りこんでいる。ベンツはC250、V6のEクラスなどが貢献、4ランクアップして14位に、BMWも12車種中10車種が平均以上の信頼性データを示し、3ランクアップして16位になったが、VWはビートル、ジェッタ、GTI、トゥアレグなどが足を引っ張り、2ランクダウンの18位で終わっている。欧州車の中で大きくポジションを落として20位となったのがボルボで、C30、C70、XC90などに起因している。

米国車はどうか? 2年前にはフォードが信頼性面で9割以上のモデルが平均値もしくはそれ以上のデータを示しトップ10に入ったが、最新データでは急速に悪化し、28ブランド中27位まで転落した。最大の要因はエクスプローラー、フィエスタ、フォーカスなどの新型車が平均以下の信頼性となったことと、タッチスクリーン方式のインフォーテインメントシステムに多くの問題があったからとだという。米国車の中で大きく前進したのがキャデラックで、前年より14ランクも向上して11位となり、CTSは米国車の中で最も信頼性が高いモデルとなった。

韓国車はKiaが2ランクアップし、総合で10位に入ったが、ヒュンダイは逆に6ランクダウン、17位となった。近年コンシューマーレポートによる評価向上に大きく注力してきたヒュンダイだけに無念だろうが、今回の結果をベースに信頼性の更なる向上にドラスティックな注力をしてくることは想像に難くない。

BEST & WORST
これもなかなか興味深いデータなので簡単にご報告しておこう。カテゴリー毎の"MOST RELIABLE"(最も信頼性の高いモデル)にリストアップされたクルマは殆どが日本車だ。44車種中日本車でないモデルはわずか4車種だったということは日本車の信頼性の高さを如実に表すもので、日本のメーカー、サプライヤーの長年の努力が如実に反映されたものと思う。"LEAST RELIABLE"(最も信頼性の低いモデル)にランクされた34車種のうち日本車は3台だった。(ニッサンベルサセダン、インフィニティGコンバーティブル、ニッサンアルマダ)

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信頼性予測
これらのチャートがカテゴリー別の2013年モデルの信頼性予測で、平均値よりどれだけ優れるか、どれだけ劣るかをバーグラフで表したものだ。大幅な変更のないモデルの場合、過去3カ年のモデル別信頼性を年式毎に比較、昨年度モデルチェンジとなったモデルの場合は1年間のデータを使用、その代り*マークを付けている。赤いチェックマークのついたモデルは「リコメンド(お勧めできるクルマ)」で、これらの信頼性データに加えて、コンシューマーレポート誌によるテスト結果、更には第3者機関による衝突&ロールオーバーテストの結果などを総合して決められている。

結果はラグジャリーカー、コンパクトスポーツセダンの2つのカテゴリーを除く、16のカテゴリーで日本車がトップを占めるとともに、全18カテゴリー中11カテゴリーでトヨタ関連ブランドがトップとなった。非常に多くのアメリカ車が平均値以下で終わっている。また近年世界市場で大きく躍進してきた韓国車と日本車の間にはまだかなりなギャップがあることが分かる。

「信頼性」はクルマの購入にあたっての最も大切な指標の一つであり、コンシューマーレポートのように客観的、かつ総合的に信頼性を予測してくれるメディアは世界のどこを見回してもないといっても過言ではない。またコンシューマーレポートのデータは自動車メーカーにとっても貴重な情報であり、その改善に向けて真摯に取り組むことによりクルマの信頼性が一段と強化されてゆくことは間違いない。JAF(日本自動車連盟)のロードサービスへの注力は評価するが、1700万人とも言われる会員から毎年信頼性、商品性などに関するデータを収集分析することは可能なはずで、分析結果は購買者にとって非常に有効な指標となるとともに、信頼性、商品性の一段と高いクルマ(中でも日本車)づくりに大きく貢献すると確信する。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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