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第32回 BRZ、ロードスター、スイフトスポーツ比較試乗記
2012.8.27

前々回のスバルBRZ関連ブログの中で、スバルBRZ、マツダロードスター、スズキスイフトスポーツというジャンルの異なるスポーツ・スポーティーカーの比較試乗を、元マツダロードスター主査で現在は大学教授の貴島孝雄さん、軽井沢在住歯科医でテレビ信州の自動車番組を実現、クルマへの造詣が大変深い岩崎聖太郎さんらと軽井沢で行ったと述べたが、今回は比較試乗後の各車に対する私の短評に加えてお二人のコメントを抜粋してお伝えし(文責小早川)、最後に一言これからのスポーツ・スポーティーカーへの私の期待を述べてみたい。

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スバルBRZ
評価モデル(S)車両本体価格:\2,793,000
燃費:軽井沢での評価時 11.4km/L、軽井沢~東京 13.2km/L

日米のスポーツカー市場の縮小に起因し、スポーツカーの企画開発を躊躇するメーカーが多い中で、トヨタとスバルの協力により86、BRZが実現した意義は大きい。2+2といっても短距離の3名乗車が限度だが、運転の楽しさ、性能&走り感、ステアリング&ハンドリング、ブレーキングなどのダイナミック領域は市街地凹凸路での乗り心地を除き期待以上の出来だ。リアシートの折りたたみ機能を含む使い勝手、実測燃費などにもそれなりの評価が与えられる。ただし外観スタイルは造形や細部の面処理などに艶めきが不足しているとともに、内装デザインもインパネ周りを中心に"Inviting to driveな"(思わず運転したくなるような)雰囲気とはいえず、質感もいま一歩だ。価格も安くはない。いくつか気になる点はあるものの、BRZは「乗ることが楽しい」魅力的なスポーツカーに仕上がっており、販売台数が日本のスポーツカー市場特有の導入初期の瞬間風速に終わらずに継続し、他社への刺激、若者のクルマ離れに対する歯止め、低迷したスポーツ・スポーティーカー市場の再活性化に貢献することを願っている。

岩崎さんのコメントから抜粋
「サイズ&パッケージングは見事。外観スタイルはピニンファリナ風で好感が持て、中でもフロントフェンダーの造形は秀逸。しかし内装デザインはおおざっぱな上に正面にそびえるダッシュボードは威圧感があり、質感も十分ではなく、それが全てを壊している。またシートそのものは良いがヘッドレストの角度がどうしてもなじめなかった。性能&走り感は低速から高速まで3車中ベストで、ステアリング&ハンドリングはロードスターより劣るが電動パワーステアリングの味付けも含めて良好で、ブレーキも安心して踏める。総じて作り手の苦労が分かるクルマだが内装にはもっと予算をかけて欲しかった。」

貴島さんのコメントから抜粋
「性能&走り感はなかなかのもので、全体の剛性感、しっかり感もいい。ただしAピラーがかなり前方にあるためか大きなクルマを操っているような錯覚を覚える。ボクサーエンジンの高さはロードスターのエンジンよりかなり低いはずだが、ボンネット高さがロードスターより高いのは残念だ。ボンネットをあと40mmでも下げればインパネの壁感も防げたはず。フロントサスをなぜストラットタイプにしたのか、またデザイナーにもっと低いボンネットをつくれる自由度が与えられなかったのだろうか。フロントフェンダーの盛り上がりは悪くない。2,3時間走って休息後、再びハンドルを握りたくなるクルマとそうでないクルマがあるが、BRZは個々の特性は決して悪くないのに、"乗りたい"という欲求があまり湧いてこないのはなぜだろうか。」

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マツダロードスター
評価モデル(RS RHT)車両本体価格:\2,860,000
燃費:軽井沢での評価時 11.2km/L、軽井沢~東京 13.4km/L

今回初代(NA)、2代(NB)、3代(NC)ロードスターに試乗することが出来たが、「人馬一体」をキーワードに開発されてきたロードスターは車体の剛性感も初代に比べると大幅に向上、「リニアリティー」、「Fun to drive性」、「人馬一体感」が大きく前進してきたことがわかる。BRZと現行ロードスターとの比較では、同じ2Lエンジンながら、最高出力、トルクの差が示すように、走り感、中でも中高速の走りはBRZの方がかなり上だ。サウンドエンハンサー(吸気の脈動でゴム膜を振動させ室内にエンジンサウンドを導入)もBRZの方が効果的。ただしシフトフィールはロードスターに軍配が上がる。高速直進性はBRZの方がいいがワインディングロードで運転する楽しみは互角と言って良く、BRZのような低速凸凹路のごつごつ感がない。NCから採用されたパワーリトラクタブルハードトップは実用性も高く、操作性もいい。外観スタイルは3代の中ではNAがベストだ。NCは価格が高くなりすぎたが、現時点国産唯一のオープントップ2シーターとして貴重な存在であり、スカイアクティブテクノロジー搭載の小型、軽量、次世代ロードスターへの期待は大きい。またアルファロメオとどのような共通化、差別化が実現するのかも大変興味深い。

岩崎さんのコメントから抜粋
「歴代の一貫したコンセプトがわかりやすい。外観スタイル的には樽型のNCのデザインは、もっと思いきりキュートにしてほしかった。またRHTの造形もいま一歩だ。内装デザインは非常にすっきりしたもので、この先10年たっても好まれるだろうし、フィット&フィニッシュもBRZよりロードスターの方が上だ。室内居住性、シートも良好で、ヘッドレストも違和感がなく、室内のタイト感もいい。運転の楽しさ、性能&走り感の点では、安心感の中にエキサイティングな走りをいつでも楽しむことが出来るし、思い通りに応答するステアリング&ハンドリングも非常にいい。ステアリング径もベストだ。残念なのは価格で、NAVIをつけたブラックチューンは400万円近い。」

貴島さんのコメントから抜粋
「自然と一体となっての走りを楽しむオープンカーは今後も絶対に残ると思うが、ロードスターの開発にあたっては"人馬一体"に加えて日常性にも十分配慮してきたつもりだ。低重心に関して言えば、最も大切なのは路面との対話であり、低重心はそのための一つの手法にすぎない。サウンドエンハンサーはロードスターでも使っているが、ゴルフにもBMWもついており今後は必須になるかも知れない。NCはプラットフォームがRX-8と共通になり、小さく見せる努力はしたが、外観スタイルは正直言ってNAの方が良いと思う。また「人の感覚にマッチしたクルマづくり」、「乗ってこそわかるポイント」、「世代を超えたノウハウの伝承」という面で欧州車にはすでに100年の歴史があるが、日本の歴史はその半分しかなく、今後も日本のクルマづくりの上での大きな課題となるだろう。」

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スズキスイフトスポーツ
評価モデル(スポーツCVT)車両本体価格:\1,748,250
燃費:軽井沢での評価時 11.3km/L、軽井沢~東京 13.5km/L

外観スタイルの魅力は日本のコンパクトカーのなかでは群を抜いており、なかでもフロント周りのデザインがいい。内装デザインはオーソドックスだが好感のもてるもので、コストをあまりかけずにそれなりの質感も作りこまれている。スポーツシートもサイズ、座り心地ともに良好だ。後席の膝前ペースはこぶし一個は十分入り、大人4人での長距離ドライブも可能なので、2+2よりはるかに利便性は高い。今回評価したのはCVT装着車だったが、BRZ、ロードスターとの碓井峠における同時比較においてもそれなりに満足のゆく走りを示してくれた。また軽くて剛性の高いボディーと、専用設計のリアサスなどにより、荒れた路面でのボディーコントロール、ハンドル操作に対する車両の応答性、高速の安定感などが良好で、運転することが楽しいクルマに仕上がっている。実用燃費は2Lエンジン車と同レベルで、今一歩だ。ふところにやさしい価格も含めてスイフトスポーツの存在は大変貴重であり、今後他の日本メーカーの同種モデルへの注力にも期待したい。

岩崎さんのコメントから抜粋
「まずファミリーカーのスポーツバージョンとしての位置づけが明確で分りやすく、価格が安いのに貧相に感じない。大人、男性に似合うクルマだ。外観スタイルはゴルディーニのようなアピールはないが、標準車との差別化も十分で、フロント、中でもフォグランプ周辺がいい。価格の割に内装デザインにも好感がもて、メーターデザインもいい。ただし後席にはアシストグリップがなく、シートも滑りやすかった。動力性能面では加速の伸びがもう一歩だ。ハンドリングは欧州車のテイストで、応答もクイックでステアリング反力も適度だが、路面からの情報伝達はもっとほしい。乗り心地は前後席ともに良好で、振動・騒音もよく抑えられている。何かもう少し遊び心をくすぐる「しかけ」があればなお良いのだが。」

貴島さんのコメントから抜粋
「自分の評価はどうしてもハンドリングを中心としたダイナミック領域が中心となるので、自分にとってはFFというだけで10点満点とすれば6点がmaxにならざるを得ない。人間への情報伝達という面からはFRの方がはるかに良いからだ。またセダン系故にインパネの上面が高くバルキーなのもクルマとの対話には不利だ。ただしFFとしてみた場合のダイナミックスで特に気になる点はなかったし、ルノーツインゴのような走りとスポーティーなデザインは良くマッチングしていると思う。」

次世代スポーツ・スポーティーモデルへの期待
今や日本のクルマづくりは大きな変節点を迎えており、「右脳にアピールするクルマづくりが生き残りのための大切な要素」と繰り返し主張してきた。BRZ、現行ロードスターは、いずれも右脳にアピールするクルマであり存在価値も十分にあるのだが、一方では市場環境、経済情勢、地球温暖化、資源問題、若者のクルマばなれなど、クルマを取り巻く環境が大きく変わりつつあり、量販を前提とした場合、従来型のコンセプトからのシフトも必須だと思う。私の目から見たシフトとは、『小型、軽量で、燃費が良く、艶めきのあるスタイルと、"Inviting to drive"な内装を備えた、"Fun to drive"で、ふところにもやさしい新世代スポーツ・スポーティーカー』の実現であり、ライトウェイトスポーツクーペ、ライトウェイトオープン2シーター、スイフトスポーツのような小型FFハッチバックスポーツ、小型軽量FRスポーツセダン、小型軽量スポーツクロスオーバー車などはその一例だ。価格的には200万円がボーダーラインになるのではないだろうか。新世代クリーンディーゼルを搭載したモデルの実現も大いに期待したい。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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