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第29回 スズキスイフトスポーツ
2012.5.28

2011年11月に発売された新型スイフトスポーツは、直後の箱根試乗会での印象が非常に良く、長距離総合評価を行いたいと思っていたもので、結論から言えば、見ること乗ることで心が高まる上に、お財布にも優しく、経済の低迷とエコ時代の影響を受けて大幅に縮小している日本のスポーツ・スポーティーカー市場で、改めてその価値が再認識されても不思議のないクルマであり、若者のクルマ離れへの歯止めという視点からも他の日本のメーカーにも是非注目してほしい1台だ。なお過去の車評オンライン「第25回新型スズキスイフト」も合わせてお読みいただければ幸いである。

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・試乗車グレード スポーツ(FF・6MT)
・全長 3,890mm
・全幅 1,695mm
・全高 1,510mm
・車両重量 1,050kg
・エンジン DOHC16バルブ吸気VVT
・排気量 1,586cc
・最高出力 136ps(100kW)/6,900rpm
・最大トルク 16.3kgm(160N・m)/4,400rpm
・変速機 6速MT
・タイヤ 195/45R17
・燃料消費率 JC08モード燃費 14.8km/L
・車両本体価格 1,680,000円(税込)

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好感のもてる外観スタイル、内装デザイン
このクルマの評価はまずデザインから始めよう。新型スイフトの外観スタイルは導入当初は旧型との類似性がやや気になったが、力強さ感、かたまり感、質感、存在感などなかなかのもので、国産コンパクトカーの中では群を抜いたデザインだ。新型スイフトスポーツの外観スタイルの進化は標準モデルよりも大きく、旧型に比べると一段とスポーティーで力強い非常に魅力的なデザインで、なかでも大型フロントグリル、大型フォグランプベゼルを含む、個性的なフロント周りには思わず魅せられてしまう。その外観スタイルにも起因し、スイフトスポーツは高価なクルマの横に胸を張って停められる稀有な国産コンパクトカーだ。


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インパネ周りはメーターを除き標準車と同一で、オーソドックスだが好感のもてデザインだ。高級な素材こそ使用していないがそれなりの質感も作りこまれている。スポーツシートも過度な形状ではなく、サイズ、座り心地も良好で、見た目も赤いステッチを含めてスポーティーでいい。ただしスイフトスポーツに装着されている240km/hまでの速度計は日本では全く意味がない上に、30km/hごとの速度の刻みは日本では使いにくく、200 km/hまでで、20km/hごとの刻みの標準モデルの速度計の方がはるかに日本市場には適している。またステアリングホイールの握り感も、断面形状、親指部分の形状などにもうひと工夫欲しいところだ。


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必要にして十分な室内居住性
新型スイフトスポーツは全長3,890×全幅1,695×全高1,510mmで、先代モデルに比べて全長で125mm長いが、その大半は衝突安全性の向上に使われており、室内居住性は先代とほぼ同一だ。後席の膝前ペースは私のドライビングポジションでこぶし一個は十分入り、大人4人での長距離ドライブは可能なので、2+2のスポーツカーよりはるかに日常生活での利便性は高い。トランクルームの広さはミニマムで、4人の長距離旅行用バッグの収納はむずかしい。ただしパネル1枚で仕切られた二段式の荷物室は、濡れたものの収納などにも便利だ。80mm上がっているというバックドアの開口部は重量物の積み下ろしや、小柄な女性にはやや厳しい場面もあろうが、車体剛性向上への貢献は大きいはずで許容したい。なお欧州市場向けは3ドアのみ、国内向けは5ドアのみというのも正解だと思う。


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1.6Lエンジン、6速MT の性能と燃費
1.6L DOHCエンジンは、今回は可変吸気システムの採用に加えて吸気VVT 制御の最適化、バルブリフト量の拡大などにより出力をアップ、燃費性能も向上させている。トランスミッションはMTもしくはCVTだが、MTには6速が追加された。今回借り出したのはMT車で、世田谷と千葉のアクアライン経由の往復と千葉での一般道合わせて約300kmの走行で不足ない動力性能を確認するとともに、実測燃費は14.2km/Lとなった。この燃費は、ほぼ同等条件とみなしても良い長距離走行での標準のスイフトの15.5、さらにはポロ1.2L TSIの17.4、デミオスカイアクティブの17.5には及ばないが、まあ不満のないレベルと言えよう。

エンジンの出力、走り、更には燃費に不満はないが、プレミアムガソリンが必要なのが残念だ。今日の高騰したガソリン価格を前提にすると少々の性能の犠牲はあってもレギュラーガソリン仕様であって欲しいと思うのは私だけではないだろう。また4000rpm以上のこもり音もやや気になり、今後に向けてもっと気持ちの良いドライな排気音と吸気音も含めたエンジンサウンド是非作りこんで欲しい。変速の正確さ、節度感も悪くはないが、欲を言えばもう一歩踏み込んでほしいところだ。

新プラットフォームによる気持ちの良い走り
サイドシル断面を拡大、バックドアの開口部を80mm上げ、加えて高張力鋼板を多用して実現できたという軽くて剛性の高いボディーと、専用設計のリアサス、大径化されたストラットにリバウンドスプリングを内蔵したフロントサス、欧州で大半の開発が行われたことに起因すると思われるサスペンションチューニングの影響などが大きいと思われるのが、荒れた路面でのボディーコントロール、ハンドル操作に対する車両の応答性、高速の安定感などが非常に良好な点で、他の国産コンパクトカーではなかなか味わえない乗り味だ。今回のコースは屈曲路が限られていたが、過日の箱根における試乗で、そのポテンシャルを垣間見ることができ、コーナリングが非常に楽しいクルマに仕上がっているのがうれしい。乗り心地は17インチの45タイヤにしては悪くないが、荒れた路面などではやや突き上げが気になり、助手席の家内からも複数回指摘を受けたように、長距離ドライブの快適性確保にむけてもう少ししなやかな乗り心地が欲しい。


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スイフトの更なる発展を期待
新型スイフトの狙いは「スイフトらしさの継続と発展」にあるようだが、スイフトスポーツもまさにそうだ。「スポーツ/スポーティーカー」、更には「乗ることが楽しいクルマ」が減少しつつある現在、スイフトスポーツの存在は非常に貴重で、冒頭にもふれたように若者のクルマ離れへの貢献はもちろん、熟年や老齢のクルマ好きにも大いにお勧めできるクルマだ。先代スイフトスポーツの国内販売台数が3万台を超え、新型も昨年の12月以来の月間平均販売台数が700台を超えるという事実は、スポーツカーの常である瞬間風速的な販売台数の推移とは大きく異なり、今後も安定した販売、あるいは販売数量の拡大が期待される。

スイフトのラインアップには標準車の他に「欧州チューニングの足まわりとエアロスタイル」を売り物とするRS というややスポーティーなモデルがある。これは導入直後の箱根の試乗会でその魅力を高く評価したモデルで、存在意義は大きい。スイフトスポーツをスポーツセダンと呼ぶならば、RSはスポーティーセダンとでも呼ぶのがふさわしく、クルマは大好きだが、スイフトスポーツほど突出していなくてもよいと思うユーザー層や、平日は買い物や学校の送り迎えに家族が使い週末には家族でドライブをというユーザー層などにはもってこいの仕様だ。

スイフトスポーツJr.の提案
その中でスイフトスポーツは、より「スポーツ性」を重んじるユーザーを対象としたモデルであり、部分的なリファインを施しながら一段と発展してほしいモデルだが、スイフトスポーツの魅力を継承しながらももう少し日常での使用に焦点をあてた「スイフトスポーツJr.」とでもよぶモデルの提案を以下につけ加えて、今回の車評オンラインをしめくくりたい。


① フロント部分を含むスイフトスポーツの外観スタイルはそのまま継承
② シート、ステアリングホイールなどもそのまま継承
③ エンジンは1.6L DOHC、ただしレギュラーガソリン仕様とする
④ トランスミッションは6MTまたはCVT
⑤ タイヤは16インチの55タイヤにインチダウン
⑥ 標準の200km/hまでのスピードメーター
⑦ 価格は150万円プラスα

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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