三樹書房
トップページヘ
syahyo
第28回 SKYACTIV-D搭載のマツダCX-5
2012.4.27

今回試乗した車両はSKYACTIV-D(ディーゼルエンジン)搭載のXD 4WD車で、房総半島半周と箱根往復を含む広範囲な走行条件で評価することが出来た。先日の箱根試乗会での印象とも合わせて、CX-5を一言でいえば、改善要望点は若干あるものの、総じて非常に魅力的なクルマに仕上がっており、中でもSKYACTIV-Dのインパクトは強烈だ。SKYACTIV技術の開発にあたるマツダ開発陣の努力に心より讃辞を送るとともに、日本市場におけるディーゼルエンジン乗用車の市民権確立、欧州、北米、中国市場などにおけるマツダビジネス拡大などに期待したい。小排気量SKYACTIV-Dの登場も待遠しい。

04-dai2801.jpg

【マツダCX-5】
・試乗車グレード XD(4WD)
・全長 4,540mm
・全幅 1,840mm
・全高 1,705mm
・車両重量 1,610kg
・エンジン 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
・排気量 2,188cc
・最高出力 175ps(129kW)/4,500rpm
・最大トルク 42.8kgm(420N・m)/2,000rpm
・変速機 電子制御6速オートマチック
・燃料消費率 JC08モード燃費 18.0km/L
・車両本体価格 2,790,000円(税込)

04-dai2802.jpg

04-dai2803.jpg

爽快な走りと良好な燃費だが注文も
このクルマに関してはまずは動力性能と燃費から始めたい。前報で「走り始めた瞬間から驚かされたのが低速トルクの豊かさで、低回転で高トルクが得られることのメリットを痛いほど思い知らされた。次に驚いたのが従来のディーゼルとは異なる吹けあがりで、その気で踏みこめば5500rpm近くまで軽快に吹きあがって行く。」と述べたが、今回、市街地、郊外、高速道路、登坂などを含む広範囲な走行条件下で、改めてSKYACTIV-Dによる爽快な走りを確認することが出来た。エンジン騒音もよく抑えられており、アイドリング以外ではディーゼルであるとは思えないほどだ。

今回は各種の実測燃費も計測することができたが、初日の房総半島半周(往路は世田谷から首都高、京葉道路経由で千葉へ、千葉~勝浦往復は一般道、帰路は千葉からアクアライン経由川崎、そこから世田谷までは一般道)トータル327kmの燃費は満タン法で16.0km/L(メーターで16.8)、往路の世田谷から千葉までの高速区間のみ(max 90km/h前後)では19km/L、高速平坦路でオートクルーズを75km/hにセットして走行した折にはなんと25km/Lという良好なデータが得られた。

一方で翌日の箱根往復(往路は御殿場まで東名高速、帰路は小田原~厚木道路&東名)トータル266kmの燃費は満タン法で13.2km/Lとなり、二日間の各種トライアルから、燃費が速度、負荷に大きく依存することが判明した。この理由は必ずしもSKYACTIV-D本来の特性ではなく、多くの日本車同様、国内燃費測定モードに特化したセッティングに起因している可能性も否定できない。 このあたりは是非究明したい点で、その面からも欧州市場に導入されるSKYACTIV-Dの高速実用燃費は大変興味深い。

e燃費はまだ公表されておらず、今回は車評コースでの燃費測定も行えなかったが、ユーザーの平均実用燃費はコンパクトカー並みの14~15km/Lあたりになるのでは? 軽油のコストメリットを考慮すると1.6トンを超える4WD車でありながら、燃料コストはハイブリッドコンパクトカーに近そうで、小排気量SKYACTIV-Dを搭載したコンパクトカーやコンパクトクロスオーバー車の登場が待ち遠しい。i-stop(アイドルストップ)システムは、大容量バッテリー劣化時の交換コストは気になるが、再始動時間は0.4秒と非常に早く、始動時のショックも小さい。

04-dai2804.jpg

新開発のSKYACTIV-DRIVE(トルクコンバーター式6速電子制御オートマチックトランスミッション)はロックアップ領域がJC08モードで従来の50%から80%近くに拡大され、非常にダイレクトなドライビングフィールが実現、変速ショックもほとんど感じない。また降坂時の自動シフトダウンも非常にうれしい機能だ。このトランスミッションによる燃費への貢献は4~7%という。

04-dai2805.jpg

人馬一体感に拍手
「走る」に加えて、「曲がる」、「止まる」の領域も人馬一体感の優れたクルマに仕上がっていることを確認した。ペダル配置、ドライバーと各種操作系とのインターフェイスも良好だ。まずアクセル操作に対するクルマの挙動がリニアで気持ち良く、長距離走行時のドライバー疲労にも効果がありそうだ。次にステアリング操作に対するクルマの挙動が自然で、箱根のワインディングロードなどでは重心の高いSUVに乗っていることを忘れるほどだ。高速直進性にもいい。そしてブレーキも踏力に対する制動力がリニアで、コントロールが容易だ。総じてSKYACTIV-CHASSIS、SKYACTIV-BODYにも起因したトータルビークルダイナミックは上々の出来栄えで、ロードノイズ、ウィンドノイズの低さなども含めて、運転することが楽しく、気持ちの良いクルマに仕上がっていることを確認した。

乗り心地には一部注文あり
二日間の各種走行条件下での乗り心地の印象は総じて良好で、箱根で私がよく使う「舗装悪路ワインディングロード」をその気で走った時のしなやかでしたたかな走りには大変感銘したが、注文をつけたいところが無いわけではない。サスペンションストロークが微小な低速の舗装悪路や高速道路上の連続した舗装継ぎ目などにおけるタイヤのばたつきと乗員への振動伝達で、特に後輪からの入力が大きいと感じた。今回の17インチタイヤ装着車でも明らかに改善が必要だし、過日の箱根試乗会時に比較した19インチタイヤ装着車はよりばたつきが大きかった。乗り心地に限らず、スタッドレスへのはきかえや摩耗時のタイヤ交換コストなども含めて、タイヤサイズに対する私のお勧めは断然17インチだ。

04-dai2806.jpg

居住性と使い勝手
この面での評価はまずシートからはじめよう。フロントシートのサイズ、クッション性、ホールド性などはなかなかの出来だ。ただし後席はシートフラット化の犠牲になったのか、シートサイズがやや小さく、シートクッションの底突き感が気になった。また後席のシートバックに3段程度でもよいから角度調整機能が欲しいと思うのは私だけだろうか。

前後席の居住性、荷物の積載性などは全く不足なく、さらにうれしいのはリアシートのワンタッチ式の4:2:4分割可倒機能とフルフラット化だ。SUVオーナーにはスキーやスノーボード愛好家も多いはずで、かくいう私もスキーマニアだが、最近の短いカービングスキーをルーフ上に載せる人は非常に少ないにもかかわらず、それに対する配慮がされたクルマが意外に少ない。CX-5なら室内に4人分のスキーは十分入りそうだ。また後席からの前方視界が良好なのもいい。家族や仲間とのスキー旅行などにも最適だ。

04-dai2807.jpg

04-dai2808.jpg

つぎにうれしいのはサイドモニター、バックガイドモニターだ。サイドモニターの採用により、SUV特有の不細工なフロントフェンダーミラーが省かれているのはうれしが、それ以上に縦列駐車時にタイヤと舗道段差などとの距離が認識しやすく、高価なホイールに傷をつけることが避けられそうだ。今後この装置が広範囲な車種に採用されてゆくことを期待したい。また30km/h以上なら作動するというリアビークルモニタリングシステムも車線移行時に有効で、今回のクルマにはスマートシティーブレーキサポート、AT誤発進抑制制御とのパッケージでオプション装備されていたが、その効果を考えれば、78,750円という価格は非常にリーズナブルであり、是非ともおすすめしたい。

04-dai2809.jpg

使い勝手の中で一言言及しておきたいのがドアミラーだ。このクルマは全幅が1,840mmとかなり広い上に、ミラーの端から端までの距離は全幅より320mm以上も広く、折りたたんでも全幅より70mm近く広いので、各ご家庭にある駐車場への出入りや、立体駐車場などへの駐車時には注意が必要であり、できるだけ早急に見直すべきだろう。

04-dai2810.jpg

04-dai2811.jpg

外観スタイルと内装デザイン
最後になったが、チーターをイメージしたという外観スタイルは存在感、躍動感あふれるもので、自然光のもとで見ると一層好感がもてる造形だ。ただしフロント周りのデザインならびに質感に関してはもう一踏ん張りしても良かったのではないか。これまでのマツダ車の大きな課題であった内装の質感はほぼ問題のないレベルにアップグレードされていると思うし、メーター、コントロール系の視認性、ステアリングホイールの握り感なども好感のもてるものになっている。総じて外観スタイル、内装デザインも十分に合格点が与えられる。

このページのトップヘ
BACK NUMBER

第84回 アウディQ2 1.4 TFSI

第83回 アバルト124スパイダー(ロードスターとの同時比較)

第82回 スズキワゴンRスティングレイ(ターボ)

第81回 最近の輸入車試乗記

第80回 マツダRX-7(ロータリーエンジンスポーツカーの開発物語)の再版によせて (後半その2)

第79回 RX-7開発物語再版に寄せて(後編その1)

第78回 RX-7開発物語の再版によせて(前編)

第77回 ダイハツムーヴキャンバス

第76回 ニッサン セレナ

第75回 PSAグループのクリーンディーゼルと308 SW Allure Blue HDi

第74回 マツダCX-5

第73回 多摩川スピードウェイ

第72回 ダイハツブーン CILQ (シルク)

第71回 アウディA4 セダン(2.0 TFSI)

第70回 マツダデミオ15MB

第69回 輸入車試乗会で印象に残った3台(BMW X1シリーズ、テスラモデルS P85D、VWゴルフオールトラック)

第68回 新型VW ゴルフトゥーラン

第67回 心を動かされた最近の輸入車3台

第66回 第44回東京モーターショー短評

第65回 ジャガーXE

第64回 スパ・ヒストリックカーレース

第63回 マツダロードスター

第62回 日産ヘリテージコレクション

第61回  りんくう7 DAY 2015

第60回 新型スズキアルト

第59 回 マツダCX-3

第58回 マツダアテンザワゴン、BMW 2シリーズ、シトロエングランドC4ピカソ

第57回 スバルレヴォーグ&キャデラックCTSプレミアム

第56回 ホンダ グレイス&ルノー ルーテシア ゼン

第55回 車評コースのご紹介とマツダデミオXD Touring

第54回 RJCカーオブザイヤー

第53回 スバルWRX S4

第52回 メルセデスベンツC200

第51回 スズキスイフトRS-DJE

第50回 ダイハツコペン

第49回 マツダアクセラスポーツXD

第48回 ホンダヴェゼルハイブリッド4WD

第47回 ふくらむ軽スポーツへの期待

第46回 マツダアクセラスポーツ15S

第45回  最近の輸入車試乗記

第44回 スズキハスラー

論評29 東京モーターショーへの苦言

第43回 ルノールーテシアR.S.

論評28 圧巻フランクフルトショー

論評27 ルマン90周年イベント

第42回 ボルボV40

第41回 ゴルフⅦ

第40回 三菱eKワゴン

論評26 コンシューマーレポート(2)

論評25  コンシューマーレポート(1)

第39回  ダイハツムーヴ

第38回 第33回輸入車試乗会

第37回 マツダアテンザセダン

第36回 ホンダN-ONE

第35回 スズキワゴンR

第34回 フォルクスワーゲン「up!」

第33回 アウディA1スポーツバック

第32回 BRZ、ロードスター、スイフトスポーツ比較試乗記

第31回 シトロエンDS5

第30回 スバルBRZ

第29回 スズキスイフトスポーツ

第28回 SKYACTIV-D搭載のマツダCX-5

論評24   新世代ディーゼル SKYACTIV-D

第27回 輸入車試乗会 

論評23 モーターショーで興味を抱いた5台

論評22 これでいいのか東京モーターショー

論評21 日本車の生き残りをかけて

執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

関連書籍
ポルシェ911 空冷・ナローボディーの時代 1963-1973
車評 軽自動車編
トップページヘ