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第27回 輸入車試乗会 
2012.2.15

第32回目となるJAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入車試乗会が2月はじめに大磯で開催され、今年は91台の輸入車が準備された。最新の輸入車が一堂に会しての合同試乗会は大変貴重なもので、事前に選択した何台かのクルマを自分の設定した同じ試乗コースで評価できるのがいい。今回試乗したのは8台、以下はその中の5台に関する短評だ。日本の自動車メーカーもこのような共同試乗会を企画し、メディアや評論家による最新国産車の評価に加えてメーカー関係者の相互試乗、懇談会などを行えば、お互いに良い刺激になり、日本車の進化に資するものと確信する。心ある関係者による検討と実現を期待したい。

昨年の輸入車市場
短評の前に輸入車市場をざっと見渡してみよう。2011年の外国メーカー車の新規登録台数は203,800台と前年の180,255台を13%上回り、シェアは7.7%となった。台数上のトップ3はフォルクスワーゲン(50,631台)、BMW(34,195台)、メルセデスベンツ(30,920台)で、いずれも前年を上回ったが、アウディ(前年比+26%)、BMW ミニ(+27%)、ボルボ(+52%)などの健闘も光った。

今回短評を加えるモデル(アルファベット順)
Audi A5 Coupe 2.0T quattro..................598万円
Chevrolet Sonic LT.............................198万円
Mercedes-Benz C250 Blue EFFICIENCY....598万円
Volkswagen Golf Cabriolet....................389万円
Volvo S60 T6 AWD SE..........................519万円

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Audi A5 Coupe 2.0T quattro
試乗したのは2012年1月に発売されたばかりのマイナーチェンジモデルだ。主要変更点はヘッドライトを含むフロント周りのデザイン、内装の質感アップ、アイドルストップが追加されたパワートレインなどで、エコカー減税の対象だ。2.0Lの直噴ターボエンジンと7速Sトロニックによる気持ち良い走り、しなやかでしたたかな足まわりにより大変「Fun to Drive」なクルマに仕上がっている。マイルドで上質な乗り心地に加え、ロードノイズも低い。アイドルストップは始動時間が短い上に振動も少なく、4輪駆動ながら13.6km/LというJC08モード燃費からみてかなり良好な実用燃費が期待できそうだ。
 
外観スタイルは新しいフロント周りのデザインにより魅力がアップ、クロームをうまく使っての内装質感の向上も悪くない。クーペ故に後席居住性はぎりぎりで、後席頭上スペースは手のひら一枚程度、膝前は握りこぶし一個程度で、大柄な人にはちょっときつそうだ。ただし過去にA4、A5スポーツバックで厳しいコメントをしてきた後席からの前方視界はかなり改善されている。総じて魅力的な内外装デザインと質感、良質なダイナミックスを備えたInviting to driveなクルマであり、クーペ志向層には魅力的なモデルだが、2ドアはちょっと使い勝手が......という向きには4ドアクーペSportsbackがある。

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Chevrolet Sonic LT
一旦は破たんした世界最大の自動車メーカーGMの今後を占う意味でも最も興味をもって試乗した1台だ。2011年のデトロイトモーターショーで正式デビューしたこのモデルは、開発、生産共にGMコリア(旧大宇)が担当し、生産はそれ以外に米国、中国、ロシア、タイ、ベトナム、メキシコでも行われる世界戦略車だ。1.6Lの自然吸気エンジンは良く回りトルクも十分で、エンジン音も悪くない。ステアリング・ハンドリングも欧州車的な味わいだし、車体剛性も高く、乗り心地も良好で、ロードノイズも良く抑えられており、トータルの動的性能は多くの日本車に勝るとも劣らないレベルにある。 

外観スタイルは、シボレーのアイデンティティーあふれるフロント周りのデザインを中心になかなか魅力的だ。バイク風のメーターを含むインテリアーデザインが、各市場でどのように評価されるかは興味深いけれども質感はいま一歩だ。室内居住性は十分で、後席頭上にはこぶしが二つ、膝前にはこぶしが一つ半入り、トランクスペースも必要十分なレベルだ。日本でどのように受け入れられるかの判断は難しいし、世界市場におけるオペルとの住み分けにも興味はあるが、価格も含めて日本車とのバトルは激化するだろう。

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Mercedes-Benz C250 Blue EFFICIENCY
2011年10月に国内市場に導入されたこのモデルとAudi A5 Coupe 2.0T quattroは全く同価格(598万円)だ。エンジンはA5の2.0L直噴ターボに対して1.8L直噴ターボ、トランスミッションはA5の7速Sトロニックに対して7速ATで、両モデルともエコカー減税が適用される。走り始めた瞬間から1.8Lの4気筒とは思えない走りに魅了され、エンジン音もノイズというよりサウンドに近く、これなら6気筒不要とも思えた。抑制されたロールと18インチの35タイヤを見事に履きこなし、低速では路面の凹凸をしなやかにこなし、その気で攻めると実にしたたかな走りをしてくれる上に、ロードノイズも低い。 

外観スタイルはコンパクトな中にもベンツらしさとスポーツ性がよく表現されており、内装もメーターデザインを含み全体の造形が「Inviting to drive」で質感も高い。標準装備のやや太めのAMGスポーツステアリングホイールの触感はこの日試乗したクルマの中では断トツで、日本車には比較するものすらない。オプションで装着されていたパノラミックスライディングルーフの開口面積は広いが、フロントヘッダー部分が太く前席の開放感にはあまり貢献しない。総じて大変魅力的なクルマに仕上がっており、私にとっての魅力度はA5 Coupeより明らかに上だ。

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Volkswagen Golf Cabriolet
初代ゴルフカブリオレの導入が1979年、以来3代にわたり68万台も生産された世界に冠たる乗用車派生オープンカーだ。新型が日本市場に導入されたのが2011年10月、その魅力点は、収納時に後方視界を阻害せず10秒前後で折りたたみできるソフトトップ、ルーフの収納と関わりなく250Lが確保されたトランクスペース、リアシートのトランクスルー機能、万が一の転倒時に乗員を守るロールオーバープロテクションシステム、そして後席からの風の巻き込みを効果的に防ぐウィンドディフレクターなどだ。

かつてRX-7カブリオレの開発責任を負った私が注目したのが、車体振動の制御と真冬のオープンエアードライビングの快適性だった。モデルチェンジ前の日本仕様のゴルフカブリオレでは、車体振動を誘発する17インチタイヤのオプション設定にかみついたものだが、新型では標準装備の17インチの45タイヤを見事に履きこなし、あらゆるスピード、路面で実に気持ち良い走りを見せてくれた。車体剛性の高さが走りに貢献している。また冬のオープンエアーを目指してRX-7カブリオレに「エアロボード」と名付けたウィンドブロッカーを開発、装着した経験から今回の真冬の試乗がどのように対処されているか期待したが、ゴルフは高速でも後方からの風の巻き込みを効果的に遮断し、快適なオープンエアー走行が可能だった。ただしネックウォーマーがあればさらにいいのだが。

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Volvo S60 T6 AWD SE
ボルボといえばこれまでは「安全性」がその代名詞で、必ずしも「Fun to drive」とは言えなかったが、S60は違う。乗り始めた直後から、横置き直列6気筒の3Lターボエンジンは素晴らしい走りを見せてくれ、車体剛性の高さにも支えられてか、サスペンションがばたつかず、しなやかに動き、ステアリングの反応もリニアで、走ることが大変気持ちの良いクルマに仕上がっていることを確認した。ただしこのモデルの燃費はJC08モードで8.5km/L、価格と燃費を気にする向きには1.6Lターボエンジン搭載のS60DRIVe(375万円、12.8km/L)がおすすめだろう。

外観スタイルも従来のボルボよりずっとエモーショナルかつスポーティーだが、Aピラーの傾きはやや行き過ぎではないか。内装デザインもドイツ車とは一味違い、ドアトリムや独特の薄型センターコンソールもそれなりの雰囲気と質感を醸し出しているが、機能を重視するスカンジナビアデザインの割にはセンターコンソールの後方スペースの機能は、相変わらず私には良くわからない。また前席のヘッドレストがあまりにも高く、後席の前方視界が非常に悪いのが残念だ。今や中国資本下に入ったボルボだが、クロスオーバー車の展開も含みフォード時代よりもクルマづくりに積極性を感じるのは私だけではないだろう。中国市場はもちろん、今後は日本市場でもボルボの勢いが強まってゆきそうだ。

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執筆者プロフィール

1941年(昭和16年)東京生まれ。東洋工業(現マツダ)入社後、8年間ロータリーエンジンの開発に携わる。1970年代は米国に駐在し、輸出を開始したロータリー車の技術課題の解決にあたる。帰国後は海外広報、RX-7担当主査として2代目RX-7の育成と3代目の開発を担当する傍らモータースポーツ業務を兼務し、1991年のルマン優勝を達成。その後、広報、デザイン部門統括を経て、北米マツダ デザイン・商品開発担当副社長を務める。退職後はモータージャーナリストに。共著に『マツダRX-7』『車評50』『車評 軽自動車編』、編者として『マツダ/ユーノスロードスター』、『ポルシェ911 空冷ナローボディーの時代 1963-1973』(いずれも三樹書房)では翻訳と監修を担当。そのほか寄稿多数。また2008年より三樹書房ホームページ上で「車評オンライン」を執筆。

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